第13回記者会見要旨:令和6年 会議結果
赤澤内閣府特命担当大臣記者会見要旨
- 日時:令和6年11月1日(金)18:34~19:20
- 場所:中央合同庁舎第8号館1階S108会見室
1.発言要旨
防災庁設置準備室の発足についてご報告をいたします。本日、石破総理にご出席をいただき、内閣官房防災庁設置準備室の発足式を執り行いました。発足式は準備室の看板掛けを行うとともに、総理から、国民を災害から守るため、防災業務の企画立案機能を抜本的に強化し、平時から不断に万全の備えを行う「本気の事前防災」に取り組む防災庁の組織づくりを進め、人命最優先の防災立国を早急に構築するよう訓示をいただきました。
また、私からの訓示でも、防災庁として政府の災害対策を強化するためには、第1の柱として避難所環境、備蓄体制の抜本的改善など、被災者が安心して過ごせる避難生活環境の整備、第2の柱として、ボランティア等の育成強化、防災教育の充実など、官民連携による災害対応力の強化、そして、第3の柱として、新総合防災情報システムを活用した情報連携・共有強化などの防災DXの推進、こうした3本の柱を中心に内閣府防災と連携し、目指すべき方向性とそのために必要な体制の在り方について企画・立案を進めることや、防災庁が政府の災害対応の司令塔機能をいかんなく発揮できる組織となり、今後発生する全ての災害の犠牲者・被害を劇的に想定より減らし、国民の生命・身体・財産を守り抜けるように各々の役割を十分に果たしていただきたい旨の訓示をいたしました。
今後、防災庁設置準備室において、令和8年度中の防災庁の設置に向け、具体的な議論を進めてまいります。
次に、本日は石破政権として初回となる経済財政諮問会議を開催いたしました。その概要についてご報告しますが、ここに来る前に官邸のぶら下がりでお話しした内容を繰り返しておきます。本日は初回の経済財政諮問会議なので、開始する前に総理にお目にかかりました。そこで言われたのは、「我々石破政権は岸田政権の経済政策を引き継いで、しっかり発展、それから加速していくということである。経済財政諮問会議は司令塔であるが、メンバーは替わらないけれども、石破政権の目玉である『賃上げと投資がけん引する成長型経済』の実現に向けてしっかり経済財政諮問会議をリードするように」というご指示をいただいたところであります。そのことは官邸でもお話ししました。
本日の経済財政諮問会議の概要についてご報告します。本日の議題は二つありまして、「新内閣・諮問会議における重点課題」と「マクロ経済運営」について議論を行いました。
一つ目の議題は「新内閣・経済財政諮問会議における重点課題」ということで、コストカット型経済から高付加価値創出型経済への移行に向けて5項目ほど申し上げます。1番目が適切なマクロ経済財政運営。2番目には、「地方創生×デジタル」の好事例の発掘や地方文化都市の創出など、地域資源を中心とした新たな価値の創造。3番目に、賃金向上及び人手不足対応。4番目に、投資立国実現による付加価値生産性の向上。更に5番目に、防災機能の抜本的な拡充など、国民の安心・安全の確保。これらに取り組んでいくことが重要といった提案がございました。
二つ目の議題「マクロ経済運営」では、デフレ経済から完全に脱却し、「賃金と物価の好循環」を定着させる上で、今、極めて重要な時期であり、今後、需要不足から供給制約の局面へと変化していく中、人手不足対策など、供給力向上による中長期的な生産性向上・成長力強化が重要。以上の観点から、経済効果を有する必要かつ十分な経済対策を講じることで、個人消費に力強さを取り戻し、「賃上げと投資がけん引する成長型経済」を実現することが重要。「経済あっての財政」との考え方に立ち、必要かつ十分な経済対策を講じる一方で、来年度予算は骨太方針2024に基づく歳出効率化努力、財政健全化の流れを継続し、持続可能な財政構造を確保すべきであるといった提案がございました。
総理からは私に対し、「今回の対策がこれまで以上の充実したものとなるよう、本日の議論を踏まえ、与党とも相談しながら、対策の取りまとめを進めるよう」というご指示が会議の中であったところでございます。また、「最低賃金の着実な引き上げを可能とし、物価上昇を上回る賃金の増加を定着させるため、今後の経済財政諮問会議において、賃金のあり方をマクロ経済の観点から議論する、特別のセッションを開催する」とのご発言もありました。
経済財政諮問会議の詳細については、後ほど事務方から説明させていただきたいと思います。
2.質疑応答
(問)今、大臣からご説明いただいたように、先ほど開催された経済財政諮問会議で新内閣の重点課題の確認、内閣府の年央試算のアップデートなどが行われて、経済対策も11月中の取りまとめに向けて大詰めを迎えていると思います。そうした中で、自民党と国民民主党の政策協力に向けた協議も始まって、国民民主党が重視する年収の壁対策、そして、トリガー条項の凍結解除、これが注目を非常に集めている状況だと思います。
基礎控除の引き上げに関しては7~8兆円、トリガー条項の凍結解除は1.5兆円とされる巨額の財源確保などが懸案となっていて、ハードルはかなり高いとの見方が強いかと思いますが、改めて政策の実現可能性について大臣のご所見をお願いいたします。
(答)石破総理は自民党総裁として、「党派を超え、優れた方策を採り入れ、意義ある経済対策を実現することが重要である」という旨を述べられたと承知をしております。その上で、政党間の協力に当たっての個別の施策の取り扱いについては、各政党間で議論されるべき事柄と承知をしておりまして、今日、ここで私がこうして閣僚としての記者会見の場に立っており、この場でお答えすることは差し控えたいと思っています。
現在、総理から指示された経済対策策定の趣旨や三つの柱に沿って具体的な施策を検討しているところでございます。関係省庁の協力も得て、優れた方策や効果的な施策を積み上げながら、意義ある経済対策となるように検討を進めてまいりたいと考えております。
(問)大臣の冒頭発言でもありました防災庁の準備室の関連で伺います。大臣は総裁選の前から石破総理とともに防災庁の設置の必要性を訴えられてきましたが、今日、準備室が設置されたということで、その受け止めについて改めてお願いします。
(答)私は19年丸々議員をしていますけれども、その19年間、ある意味、頭の中心というか、常時半分以上というか、考えてきたことが形になるということでありますので、私自身にとってはライフワークである防災について一つ、石破政権の「守る」でありますけれども、国民の皆様の生命・身体・財産を守り抜くと、日本の未来を創り、日本の未来を守り抜くと言っている政権としては、これが形にできれば本当に意味があるし、私自身一人の政治家としてもライフワークが形になるということで感慨は非常に深いものがあります。
石破総理もお話しになっていますが、国民を災害から守るためには防災業務の企画立案機能を抜本的に強化して、平時から不断に万全の備えを行うことが必要不可欠です。私がいろいろな機会に皆様に申し上げていますように、西日本豪雨を見ても、能登半島地震を見ても、事が起きた時の事態対処はしばしばパンク寸前までいっているように見えます。そしてまた、事が起きると事前防災が中断、そちらに人を取られてお休みみたいな感じに見えますので、そのようなことを考えると、そこは防災庁に専任の大臣を置き、十分な数の災害対応のエキスパートをそろえて、本気の事前防災のための組織とすることを考えています。
ひとたび災害が発生した場合には様々な関係機関・団体が一致団結して被災者の支援に取り組む必要がありますが、防災庁は行政各部、更には民間の団体とも緊密に連携しながら、政府の災害対応をリードする司令塔としての役割を果たすことになります。準備室においてはこうした意義を有する防災庁の令和8年度中の設置に向け、目指すべき防災対策の在り方や、必要な体制などについて具体的な議論を進めていきたいと考えております。
(問)防災庁について関連でもう一点お伺いします。現状、衆議院では与党過半数割れの状態ですけれども、今後、関連の予算や法案など、国会での審議を求めていくこともあるかと思います。この辺りの見通しについて、現状の大臣のお考えを伺えますか。
(答)いざ防災庁をつくるとなると法律が要ります。法律について言えば、私どもはベストな内容のものを全力で作り上げて、与党のご理解も得て国会に提出しますけれども、今お尋ねになったスケジュールとかはむしろ国会のほうでいろいろご議論いただいて、野党のご理解もいただきながら何とか成立を目指すという類いのことでありますので、我々としては目指すべき防災対策の在り方や必要な体制等について具体的な議論を進めた上で、所要の法案提出のスケジュールも組み、できるだけ早く提出したいと思っていますけれども、スケジュール全般について言えば、特に国会に提出した後は国会でお任せするようなことですので、なかなかこの場で具体的なこととか、明確なことを申し上げられるものではないと理解しております。
(問)経済対策での防災分野についてお伺いしたいのですけれども、先ほど、防災庁設置準備室の発足の訓示式でも、石破首相が「地方創生関係交付金を活用した新たな枠組みの創設」というようなご発言もありました。他にも国民民主党が避難所として多く使われる公立の小中学校の体育館にエアコンを設置することなどを求めていますが、こうしたメニューも経済対策に盛り込むお考えがあるか、可能な範囲でお伺いできますでしょうか。
(答)繰り返しになる部分もありますが、石破総理は自民党総裁として、「党派を超えた優れた方策を採り入れ、意義ある経済対策を実現することが重要である」という旨を述べられたと私は承知をしております。その上で、日本全国どの地域であっても災害時に住民の安全・安心が確保されることが重要です。
石破総理も繰り返しおっしゃっていますけれども、暮らしている市町村の違いで救われる命があったり、救われない命があったりということは我々は耐えられないことでありますので、そのようなことのないように、日本全国どの地域であっても災害時に住民の安全・安心が確保され、満足いただける同じレベル以上の水準の防災を提供できないといけないと思っていますので、そのような意味で、こうした考えのもと、避難所の生活環境を改善し、安全・安心を守ることで若者・女性から選ばれる地域づくりを目指す自治体の取組を応援することが検討されていると承知をしております。
具体的には快適なトイレ、温かい食事や多様なメニュー、プライバシーを守るパーティション、簡易ベッド。石破総理のお言葉で「TKB48」とおっしゃっているようですけれども、48時間以内にそういったものがそろう。避難所の生活環境を抜本的に改善するために、資機材を自治体が購入する際の支援策について、経済対策の取りまとめも見据えて検討が進められていくものと考えております。
これだけ災害が頻発化・激甚化すると、災害が起きた時にこの地域に住んで、あるいは子育てして大丈夫かということは、皆様も本当に考えることだと思うので、その点、地方創生の観点でもそれを売りにする自治体が出てきて全くおかしくありませんし、そのような意味で競っていただけるのであれば、我々は本当に歓迎をするということでございます。
(問)民間議員ペーパーにも言及がありましたが、社会保障関連についてお伺いします。年末に向けて厚生労働省では医薬品の公定価格である薬価の中間年改定の議論が始まっております。2016年末にそれまで2年に1回だった薬価改定を毎年実施するという方針を決めた際には、当時の経済財政担当相も参加をされていて、赤澤大臣のお仕事の所掌の範囲内だとは思うのですけれども、現時点での赤澤大臣ご自身の薬価政策とか、薬価改定へのご見解をお聞かせください。
(答)これについては、全世代型社会保障ということで、私の担当に当然関わってくる部分ではございます。ただ、今日の経済財政諮問会議ではそういったお話というよりは、冒頭申し上げました二つの議題についてお話をさせていただき、「新内閣・諮問会議における重点課題」と「マクロ経済運営」という議題の中で、民間議員のご意見もいただきながら議論しましたが、そこで社会保障の話が中心的な議題になったわけではございません。
しかしながら、いろいろな議員の中から出てきた話の中には、消費が伸びなかったりするのも、将来に不安を持ち、それは高齢者も若者も一緒ですけれども、そのような意味で社会保障についても国民にしっかりと安心をしていただけるようなものにしていかなければならないという意味で、今おっしゃったことが当然、社会保障の財政的な面での強靱化を図っていく上では大事な議論だと思うので、しっかり議論をしていきたいとは思っております。
ただ、これまでの議論もいろいろなステークホルダーがいろいろな考えに基づいていろいろなことをおっしゃる中で、大変微妙なバランスの上に出来上がってきているものだと思いますので、私自身も現時点で何か確たる方向性、今までと違う流れとか、今までのままでとか、自信を持って申し上げるような状況にはございませんが、しっかり議論の前提となる過去の経緯も踏まえて、今後いろいろなことを考えていきたいと考えております。
(問)昨日10月31日、日銀の金融政策決定会合の2日目に大臣も参加されていると思います。そこで政策金利を据え置かれましたけれども、植田和男総裁から「時間的余裕との表現はもう使わない」というようなご発言もありまして、12月の利上げ観測が高まっています。デフレからの完全脱却がまだ達成できていない中で、改めて大臣として日銀の利上げ判断にどのような視点を期待されますでしょうか。
(答)まず、昨日の金融政策決定会合では、金融市場調節方針は維持するということで、具体的には政策金利、無担保コールレートオーバーナイト物を0.25%程度に現状維持することが決定をされました。
私も会合に出席をいたしましたが、感想としては、経済、物価情勢などを丹念に検討し、必要な金融政策の方針を決定していただいたというふうに受け止めております。繰り返し申し上げているように、金融政策の具体的な手法については日銀に委ねられるべきと考えておりますので、植田総裁の発言について私からコメントをすることは控えさせていただきたいと思います。
いずれにせよ、政府と日銀は緊密に連携をし、十分な意思疎通を図りながら、マクロ経済運営を進めていくことが重要でありまして、本日の経済財政諮問会議における日銀総裁と政府におけるマクロ経済運営の議論もその一環であると考えております。
(問)経済財政諮問会議の特別セッションについて伺います。先ほどの総理発言の中で、「賃金のあり方に詳しい有識者も参加する特別セッションを開催する」との発言がありましたけれども、大まかにいつ頃にどのような内容をテーマや柱にして開催したいか、大臣のお考えをお願いします。
(答)最低賃金の着実な引き上げを可能とし、物価上昇を上回る賃金の増加を定着させるため、今後の経済財政諮問会議において賃金のあり方について見識のある有識者にもご参加いただく特別のセッションを開催するよう、総理からご指示があったのはご指摘のとおりです。
特別セッションの具体的なスケジュールは現在まさに検討中でありまして、次回の春季労使交渉や最低賃金の改定の検討に資するように、節目節目のタイミングで開催していきたいと思っております。そのような意味では、1回限りではどうもないということであります。
政労使の意見交換との役割分担についても、政労使の意見交換が、次回の春季労使交渉及び最低賃金の今後の中期的引上げ方針について議論を行うものである一方、経済財政諮問会議の特別セッションでは、物価上昇と賃上げの関係とか、人手不足への対応を含めた供給力強化の必要性など、マクロ経済の観点から、賃金向上の意義・必要性、求められる政策対応について議論することとしております。
いずれにしても、賃金向上担当大臣である私が両会議ともに担当しておりますので、会議での議論の内容を生かしながら、物価上昇を上回る賃金の増加や最低賃金の着実な引上げを実現してまいりたいと考えております。
(問)特別セッションについて石破総理は「見識を持つ有識者の方を招く」とおっしゃっていますけれども、これは民間議員4人の方以外の方を想定されていると思いますが、どのような方を想定されているのかというのと、物価上昇を上回る賃上げをここで話し合うということで、政府は物価上昇目標として2%を掲げていますが、この集中審議でそれから更に何%上回るとか、数字の目標や水準を話し合うということなのかの2点について教えていただければと思います。
(答)まずどのような人を選ぶかというのは、まさに申し上げたとおりで、賃金のあり方に関して見識のある有識者ということしか今この時点で申し上げられることはありません。私も念頭に何人かおられますけれども、相手の方のご都合もあるでしょうし、これからベストと思われる方を選んでいきたいと思っております。
それから、物価安定目標についてお話がありました。確かにこの件は日銀とのアコードというのですかね、あのような中でもうたわれていて、私どもが具体的な金融政策の手法については物を言わないけれども、そのような面では真摯に話し合うということでありますが、現時点において2%というのを何か動かすことを考えているとか、そのようなことは特にありません。私自身は、現時点においては諸外国の掲げている同様な物価安定目標などと比べても適切なものではないかと考えております。現時点で申し上げられることはそれだけでございます。
3.木村内閣府政策統括官(経済財政運営担当)による追加説明
令和6年第13回の経済財政諮問会議です。
議題は2つです。一つ目の議題「新内閣・諮問会議における重点課題」について、柳川議員から資料2に基づき民間議員からの提案についてご説明いただいた後、意見交換を行いました。
次に、二つ目の議題「マクロ経済運営」について、植田日銀総裁から資料3をご説明いただきました。そして、内閣府から資料4を説明した後、十倉議員から資料5に基づき民間議員からの提案をご説明いただきました。その後、意見交換を行いました。
それぞれの議題について、主なご意見をご紹介いたします。
1つ目の議題に関するご意見です。
1人目の民間議員です。
石破内閣の経済政策のキーコンセプトは、「成長と分配の好循環」である。総理が言う「賃上げと投資が牽引する成長型経済」は言い換えれば、消費と投資の拡大である。
投資については、GDPギャップがゼロ近傍に縮小している現状に鑑みれば、供給サイドの強化を通じた潜在成長率の引上げに注力すべき。そのためには、GXやDX、半導体、AI、コンテンツなど、成長分野を中心に官民連携での投資の拡大が重要。
地方創生の観点からは、各地の食や文化を発信し、インバウンドを活性化することが重要であり、大阪・関西万博はその絶好の機会でもある。
エネルギーの安定供給の確保に最優先で取り組むべき。脱炭素電源の確保に向けて、再生可能エネルギーの活用はもちろんのこと、既存原発の再稼働、次世代革新炉や核融合の開発、さらには核燃料サイクルの確立など、核エネルギーの利活用に国が先頭に立って取り組むべき。
消費については、賃金引上げのモメンタムの維持・強化を掲げ、昨年を起点、今年は加速の年として、来年はこれを定着させたいと考えている。
消費の拡大は賃金引上げのみではなし得ない。国民が抱える将来不安の解消が欠かせない。そのためには、社会保障の給付と負担を見直す方針を示し、公正・公平で持続可能な全世代型社会保障制度を構築することが急がれる。税と社会保障の一体改革の議論にも速やかに着手すべき。
2人目の民間議員です。
3点お話がありました。
1点目は、地方政策の強化について。問題点は東京から見た地方政策になっていることではないか。必要なことは、仕事を地方につくり、持っていくということ。金融都市構想で手を挙げたのは東京、大阪、福岡、札幌だが、人口減が進んでいる都市が手を挙げるべきだった。経済特区化して、そこに人が住む仕組みをつくることができないか。グリーンエコノミーに着目をし、取引市場で取引可能な排出権を、例えば地方自治体が発行し、取引できる仕組みがつくれないか。熊本における半導体など、うまくいっている仕組みを横展開できないか。アメリカのシリコンバレーのように、地域に人が集まる仕組みができないか。地方創生と経済成長の両立が大事。
2点目は、財政健全化について。財政健全化が遠のくという懸念を持っている。コロナ後も補正ありきになっている。災害対策の観点からも、何よりもまず財政余力を持っておくことが必要。
3点目は、iDeCoについて。収益を上げて元本を増やしても受け取り時に課税される。貯蓄から投資への動きを促進する仕組みに向けて、NISAも含め、もう少し工夫することが必要ではないか。
3人目の民間議員です。
インフレ圧力によって消費者の生活防衛意識が非常に強い。後期高齢者負担金や社会保険料の上昇などで手取りが減っている。先々の手取り減少に対する懸念も強い状況。今こそ手取りを増やす施策をうち、年齢を問わずに働きたい人が働けるような仕組みをつくっていくべき。潜在成長率を向上させ、社会保障制度改革を通じて、将来の明るさを示していくことが大事。
雇用の7割を占める中小企業の生産性を上げる必要がある。最低賃金の1,500円への引上げに向けて、予見性を持って対応していくべき。生産性を上げるために投資を行い、よい経営人材を集めるべき。現状のように、中小企業を補助金で守るようなことはやめるべきではないか。
日本は健康長寿国である。人手が足りない中で、リスキリングを進めるべき。新しい産業の創出にもつながる。
壁が存在しているのは103万円ではなく、106万円であり、130万円である。しかし、103万円の壁という感覚は強く労働者に染み込んでいる。企業も103万円を境として、依然として扶養控除しているところがあり、これはやめるべき。結婚やパートナーシップの締結をしたら一時金を支払うなどの制度に変えていくべきではないか。
一方で、応能負担を進めるべきである。後期高齢者負担金については凍結するか下げるべき。
4人目の民間議員です。
地方創生をどう考えるかという点について、今の経済で大事なものは無形資産。アメリカのいわゆるGAFAはほとんど無形資産でもっている。無形資産をどれだけ高めていくかが大事であり、その中で大きいのは人的資本である。人への投資、リスキリングを進め、シニア層、積極的に働きたい女性・若者が活躍できるようにすることが地方創生の基本。
加えて、地方には自然資本、文化資本がある。しかし、ただあるからというだけでは価値は生み出せないので、人的資本と組み合わせて、どうやって価値を高めていくか、ウェルビーイングを高めていくかが肝となる。その点では、リスキリングも大事だが、外部から人を取り込むことが重要。様々な人が入ることで新しいアイデアが生まれる。小さなビジネスでもよいので、スタートアップや社会起業家を育て、雇用創出につなげていくことが重要。そのためには、基本的なデジタル化などを進めていくことも重要。
次に、閣僚からの発言です。
村上総務大臣です。
「地方創生」については、石破内閣の最重要政策の一つであり、総務省としても、産学官金などの連携による地域経済の好循環、人の流れの創出・拡大、デジタル技術の活用による持続可能な地域社会の実現に取り組んでいく。
特に、地域DXの基盤となる自治体情報システムの標準化・共通化については、必要な経費の支援などを通じ、各自治体の標準準拠システムへの円滑かつ安全な移行に向け取組を進めていく。
「ハード・ソフト両面での防災・減災」については、消防分野では、緊急消防援助隊・消防団の充実強化やDX推進などに取り組んでいく。また、通信・放送分野では、官民連携等による緊急対応力の強化やインフラの強靱化を進めていく。
我が国においては、総人口は平成20年をピークに減少に転じ、債務残高のGDP比は260%を超えるなど、経済・財政・金融など様々な分野で課題を抱えていると考えている。
こうした中、地方創生2.0を含め、今後のグランドデザインをどのように描いていくのか議論を深めていくことが重要と考えており、総務省としても必要な検討を行い、しっかりと議論に貢献していく。
次に、2つ目の議題に関するご意見です。
1人目の民間議員です。
近年の気象状況を見れば、我が国はもはや亜熱帯地域になったと言わざるを得ない。大規模地震、パンデミックなども含め、有事の備えとして財政基盤をしっかり維持していくことが重要。こうした観点では、当面の物価高対策は真に困っている方に絞るべきと考える。
現在の供給力不足の局面では、DX、GX、半導体、AI等の成長分野において、供給サイドにターゲットを絞って生産性向上や成長力の強化を進めていくことが期待される。民間だけではリスクが高く、対応が困難な先端分野の研究投資や社会インフラ整備に政府投資を行っていただきたい。これにより企業の予見可能性が高まり、積極的な民間投資につながる。
2人目の民間議員です。
デフレ脱却はよいところまできているが、私のようなシニアは実感がない。物価の上昇に対し、賃金の上昇に実感がないと思う。現状はインフレになり、物価が上がったことに対する不満が充満しているように見えるので、国民に対して、デフレ脱却がいかに重要なことであるかを説明していくことが必要。
GXに期待しており、日本にはGXしかないと思う。日本の強みをしっかりと見極めて、そこに集中的に投資をするべき。一方で、補助金は大盤振る舞いになりがちである。きちんと効果が出たか検証を行うEBPMが重要。EBPMを行うためにはデータの集積と蓄積が大事であるが、医療分野など、データ不足の分野もあるので、その改善が大事。
最後に、財政健全化を標榜することが非常に重要。金利が上がると利払い費が上がっていくことは自明である。災害リスク等を抑えるためには備えが必要で、その最たるものは財政余力と考えている。そのような考え方を国民全体でシェアすることが重要。
3人目の民間議員です。
供給制約は深刻である。100兆円の投資を目指しているところで、資金が集まっても投資が実現しないのは、エッセンシャルワーカーが足りていないからである。時給1,800円としても人手が集まらないと聞く。民需主導の投資といっても、こうした制約があると実現はできない。エッセンシャルワーカーに対して特別な対策が必要と考える。
デフレ脱却に至っていない理由は、潜在成長率が0.6%と心もとないからではないか。1%の潜在成長率を実現し、後戻りしないというレベルを目指すべき。そのためにも、7割の雇用を擁する中小企業の生産性向上が必要。最低賃金1,500円をしっかりと打ち出し、よい人材を集める必要がある。デジタル化ではなく、その手前のIT化をするだけでも、相当程度生産性は上がるものと考えている。
デフレ時に財政が拡張してしまったことは仕方がなかったが、今はEBPMを通じて財政出動を見直すべき時であると考える。
4人目の民間議員です。
どれだけ潜在成長力を高めるかがポイントであり、人手不足が大きなポイントになってくるとすれば、省人化投資を様々な規模の企業がどれだけ促進できるかが大事。人が減っていく中で、それぞれの人が活躍できれば、実質的に人は減らない。厳しい状況にある方たちへの重点的な支援は大事であるが、単にお金を配るだけではなく、その人たちが将来活躍できるような能力開発や就職支援をやっていかないといけない。
経済対策の効果が予想されたものになっているかチェックすることも必要。フォローアップ体制が大事。お金を配ったが実際には執行されなかった、あるいは執行されても効果を生まなかったということではもったいない。しっかりと政策効果が出ているかどうかをデータで見るための体制をつくっていくことが大事。
財政健全化は大きなポイント。マーケットは大きく反応するので、長期的に見て日本が財政健全化の方向でしっかりできるということを示していくことは、日本経済の安定感を内外に示すためにも大事。持続可能な財政構造をつくっていくために、財政健全化の流れを止めないということが大事。
次に、閣僚からの発言です。
加藤財務大臣です。
日本経済は、まさにデフレ脱却に向けて回復の兆しをしっかりとした足取りにするチャンスを迎えており、このチャンスを取り逃してはならないと考えている。
そのため、まず策定する経済対策では、物価高に苦しむ方々を支援すること、物価上昇を上回る賃上げや積極的な国内投資を促進すること、地方経済を発展させ、それを日本全体の経済成長につなげること、災害対応を含め、国民の安心・安全を確保することといった重要課題に向け、関係省庁と連携しつつ、予算、税制、財政投融資や規制・制度改革といった手法を総動員し、真に必要で効果的な政策を積み上げていく。
その上で、今般のマクロ経済運営については、「経済あっての財政」という考え方の下、経済再生と財政健全化の両立、すなわち、力強く経済財政運営を進める中で、財政健全化を実現していくことが重要であり、来年度予算編成に向け、経済財政諮問会議でも活発な議論を重ねていきたい。
続いて、武藤経済産業大臣です。
「賃上げと投資が牽引する成長型経済」の実現に向けては、国内の成長投資により潜在成長率を引き上げ、市場の成長期待を高めることで賃金や消費の拡大につなげることが不可欠。
そのため、今般の経済対策においても、短期的な物価上昇への対応のみならず、GX・DX等の戦略分野への投資促進により、競争力の強化を通じて、中長期的な成長力を引き上げるための国内投資を拡大させることが重要。
こうした成長投資の中で特に重要であるAI・半導体は、他のあらゆる産業の発展やGX等の社会課題解決に不可欠であり、地域への大きな波及効果も期待される。例えば、半導体については、今後は必要な財源を確保しながら、複数年度にわたり大規模かつ戦略的に支援を行うことが必要と考える。こうした支援により、国内で50兆円規模の官民投資と160兆円規模の経済波及効果の実現を目指したいと思う。
また、中堅・中小企業が賃上げを継続するための十分な対策に取り組む。今後も物価高に負けない賃上げを実現するため、適切な価格転嫁対策とともに、省力化投資や生産性向上支援にもしっかりと取り組んでいく。
一通りの発言があった後、数名の民間議員から追加のご発言がありました。
1人目の民間議員です。
11兆円を使っているエネルギー補助金については再考するべき。モラルハザードにならないように対応することが必要。日本の省エネ技術は世界一で、活用するべきであるし、個人が家庭で省エネを推進する余地もあろうと考えている。
2人目の民間議員です。
これまで投資に費やしてきた予算に対し、どれぐらい理解が得られたと考えているのか。もう少し数字やデータが出てきてもよいと考えており、データの開示やその横展開についてもやっていくことはある。
3人目の民間議員です。
GX投資をやれば必ず国内投資につながる。そして、そこに新しい技術も出てくる。昨日、総理にはGX実行会議を開催していただいたが、そこでやっていただいたことをぜひアジアにも展開していただきたい。
最後に、総理から締めくくりのご発言がありましたが、皆様にお聞きいただいたとおりですので、割愛いたします。
(以上)