第12回記者会見要旨:令和6年 会議結果
新藤内閣府特命担当大臣記者会見要旨
- 日時:令和6年9月3日(火)14:38~15:03
- 場所:中央合同庁舎第8号館1階S108会見室
1.発言要旨
本日の経済財政諮問会議の概要についてご報告いたします。
本日は「マクロ経済運営」についての議論を行いました。議論では、「我が国経済の『新たなステージ』への移行が進みつつあり、日々の市場動向に一喜一憂せず、揺るぎないマクロ経済運営を行うことが必要。消費の回復に向け、プラスの実質賃金の定着が重要であり、賃上げの定着に向けた取組を更に強化すべき」、「生産年齢人口の減少が本格化する2030年までが、経済構造の変革のラストチャンス。『日本が成長型経済に移行しつつあること』を各経済主体の共通理解とし、賃上げや投資拡大等の前向きな行動を全国的なムーブメントにすることが重要」といったご意見を頂戴しました。
そして、そのための取組として、「全世代型リスキリングやジョブ型人事の導入などの攻めの労働政策の充実・強化。GX、DXなどの新技術の社会実装や、宇宙・海洋をはじめ、新たなフロンティアの開拓など、社会課題の解決に向けた攻めの投資促進策。年収の壁対策等を含む全世代型社会保障の構築や、経済再生と財政健全化の両立を更に前進させることが重要」といったご意見を頂戴しました。
総理からは、「賃上げと投資がけん引する成長型経済の実現」を目指すとの方向性を堅持し、秋以降も、政府を挙げて議論を深めていただきたい旨のご発言がありました。
長年、日本経済はコストカット型経済の中で停滞してきたわけですけれども、この諮問会議の場で民間議員から様々なご提案をいただきながら、私どもはマクロ経済運営に取り組んでまいりました。その結果として、成長と分配の好循環が回り始め、政府が目標としてまいりましたGDP600兆円が実現されるなど、大きな成果を挙げることができたのではないかと考えています。
次の目標である、日本経済を成長型の新しいステージに移行させる観点から、民間議員にはこれまで、「全世代型リスキリングや全世代型健康診断、生涯活躍社会の実現」、「データ駆動型社会の実現」、「中長期の計画的な投資拡大」、更には「長期的に実質1%を上回る成長」といった重要なご提案をいただきました。これらは骨太方針をはじめとする経済財政政策に反映させています。
その中で、私とすれば、各省の横串を通すことによって、政策の実効性を高めていく。また、フロンティア分野の開拓や、その原動力となるスタートアップの推進など、潜在成長率の引き上げにも心を砕いてきたつもりです。更には、こうした政策をどのような形でリターンさせるか。金額だけではなくて、様々な社会変革、こうしたものに対する政策のリターンというものを考えて、それらをEBPMの中で実現させていこうと。こうしたことに強く腐心をしまして、概算要求や様々なところで成果が出てくるのではないかと思っています。
私どもは、人口減少・少子高齢化にあっても成長していく、長い人生を皆さんが享受することになるこの時代にあって、どうすれば豊かさを実感できるか、幸せを実感できるか、そうした経済社会をつくるために引き続き取り組んでまいりたい、これが私ども政府の方針です。
経済財政諮問会議の詳細については、後ほど事務方から説明をします。
2.質疑応答
(問)今の経済財政諮問会議の件でお伺いします。今も説明いただきましたけれども、改めて総理が事実上の退陣表明をされてからの開催ということで、過去のケースから見ると若干異例ではありましたけれども、振り返る点では非常に重要なことだったと思います。マクロ経済運営、この直近の1年間は閣僚としてお支えされた大臣として、改めて岸田政権の3年間のマクロ経済運営を振り返っていただいて、どこが良かったか、あとは次の政権に課題として残されたもの、今、説明いただいた上で申し訳ないのですけれども、改めてお伺いできますでしょうか。
(答)まず、本日のタイミングというのは、概算要求が締め切って、これからいよいよ予算の編成が本格化していきます。その中で、政府として、全省庁挙げて取り組むべきこと、このポイントを整理する。そして、単に一つ一つの予算の中身だけではなくて、それぞれの政策や予算をどう連動させて成果を出していくか。そして、その目指すべきゴールはどこにあって、そこにたどるべき道はどのようなものがあるか。これをクリアにさせておくことが非常に重要だという観点から今日の会議を開きました。
そして、これまでの流れを総括しつつ、やはり今後、更に、引き続き重点強化していかなければいけない部分はどこかということを、今日の会議の中で確認をし、また、打ち出したということです。
最重要政策課題、その第一は何といっても賃上げです。安定的な物価上昇のもとで、賃上げが持続的に、また構造的に行われていく。その賃上げを可能とする企業の収益力。そしてそれを呼び起こすための投資。更には、大規模な経済をけん引していくものへの投資と、中堅企業や地域の経済を活性化させる取組。そうした社会の課題を解決する中で、新しい技術を徹底的に導入する。そこから実需をつくっていく。こうしたことをやらなければならないと思いますし、この実需をつくり出す意味で、また、新技術の社会実装の中で最も重要なことは規制改革と省庁の横串連携です。これをどこかの役所なり、どこかで実現したらば、それを社会に実装させるための工夫が必要ですので、そうしたことを是非やっていこうと思います。
宇宙や海洋、フロンティア、イノベーション、そして、それらを最大限後押しするためのスタートアップ。こうしたものが様々織り交ぜて、有機的な連携のもとで成果を出せるのではないかなと思っています。
また、この動きが一過性のものであってはならない。私どもは3年間かけてここまで持ってきましたが、そのベースにあって、スタートラインはアベノミクスです。2013年1-3月の502兆円から始まって、2015年にGDP600兆円の目標を掲げ、そして、ついにここで600兆円を超えたということで、明らかに今までの長年停滞した経済を払拭して、次の経済ステージの土台とスタートができたと。ですから、それを本格的なものにすることが必要なので、今後また様々に新たなアイデアや工夫がなされるとは思いますが、しかし、この大きな方向性が一過性に終わることなく、今後も政府内で共有して、しっかりと展開されていくものと考えています。
3.木村内閣府政策統括官(経済財政運営担当)による追加説明
令和6年第12回経済財政諮問会議です。
議題は「マクロ経済運営」です。植田日本銀行総裁から資料1のご説明をいただいた後、意見交換を行いました。
主なご意見をご紹介します。なお、松本総務大臣の発言については、書面での提出となっています。内容はお配りしているとおりです。
1人目の民間議員です。
新しい資本主義の考え方の下、官民が連携してデフレからの脱却と成長と分配の好循環に向けて取り組んできた。その成果として、足下ではGDPが600兆円を超え、民間設備投資が年間100兆円を超え、歴史的な賃上げも実現するなど、主要な経済指標が改善された。今後のマクロ経済運営においては、骨太方針2024に盛り込んだ施策をしっかり実行していくことが必要。
官民連携での投資の拡大について、民間では対応が困難な先端分野の研究開発や国内産業の基盤となる社会インフラ投資への中長期の計画的な政府投資を行うことで、民間の予見可能性を高め、そのことによって民間投資を引き出してほしい。
消費の回復については、賃金引上げだけではなく、国民の漠とした将来不安の解消が必要。そのためには、公正・公平な全世代型社会保障の構築の取組を進めるべき。
2人目の民間議員です。
岸田内閣の下の経済政策では、定額減税、燃料費補助、こども・子育てなどで、いわゆるばらまきのようなこともあったが、一方で大きな成果が上がった。最大の成果は賃上げの定着、賃金と物価の好循環が始まったことであると考えている。
骨太2024にプライマリーバランスの黒字化への道筋、財政再建の取組をしっかりと記載できた。EBPMの政策への本格的な活用はこれからだが、EBPMという言葉が人口に膾炙するようになったことも成果だと認識している。
今後、恒常的な経済成長を続けていくためには、競争力強化に取り組むことがとても大事。
また、マーケットの動きを注視していくことは必要だが、マーケットは動くものであって、そこまで過度に気にすべきでもない。日銀は正しい政策をとっていると認識している。この先、金利が上昇すれば、利払いが大変になる。今後はそうした点での取組も必要になってくるのではないか。
3人目の民間議員です。
岸田政権になって、日本経済が長年のデフレ体質から脱却し、モデレートな物価上昇が定着する道筋が見えた。すばらしい実績だと評価している。新しい資本主義の実現に向けた努力のたまものであると考えている。資料3にあるように、過去最高水準となった指標も出ている。
金融政策について、先日、WEF(ワールドエコノミックフォーラム)の会議に参加したが、異次元の金融政策に終止符が打たれたことを世界中のCEOが評価していた。これも岸田政権の実績であると言えるのではないか。
今後については、何といっても賃金上昇が大事。CPIが上がれば、賃金も上がっていくというノルムをつくり上げていくことが大事。そのためにも、引き続き、社会保障制度改革や労務費の転嫁をしっかり進めていくべき。
加えて、最低賃金の早期引上げが大切。徳島県のような50円を大きく上回る引上げという好事例も出てきている。全国平均1,500円を早期に達成するために、ロードマップを示してほしい。また、年収の壁に関する支援パッケージをしっかりとやっていくことも大事。
企業は100兆円の投資をしたいと思っている。人手不足を踏まえれば、特にDX投資を推進することが重要。これは潜在成長率の上昇にもつながっていく。
リスキリングなどにもしっかり取り組んで、65歳以上の方も働くことができる仕組みを整備すべき。労働移動の円滑化を通じて、経済のダイナミズムを維持・拡大し、経済の新陳代謝を高めていくことも大事。
4人目の民間議員です。
我が国経済は新たなステージへの移行が進みつつあり、これは岸田政権の成果の表れ。これを確実なものとするために、政策をつないで発展させていくことが重要。その観点から3点申し上げる。
第1に、賃金上昇や持続的賃上げを進めるために、労働市場改革とリスキリングを通じた能力開発が重要。こうした改革はマクロの経済にとってもポイント。
第2に、潜在成長率を引き上げ、長期的な成長に資する設備投資を行うべき。人手不足の中では、省力化投資が重要。また、官も民も、投資したままで終わるということではなく、EBPMを通じてその投資がどのような成果につながっているかということを確認すべき。厳しい財政の下では、使う金額の精査も大事だが、お金を使いっ放しということではなく、使ったお金が将来の成長につながり、税収が上がっていくという動きを確実にすることが必要。この点については世界のマーケットも注視している。
第3に、スピード感を持って施策を進めるべき。日本経済の課題については、諮問会議でも同じことを何度も取り上げている。そのゴールや、そこに至る道筋は分かっているにもかかわらず、実行のスピードが遅いという現実があって、そこに日本経済の課題があると考えている。やるべきことのスピード感を高めることが大事。
次に、閣僚からの発言です。
鈴木財務大臣です。
岸田政権における経済財政運営については、まず、少子化対策や防衛力の抜本的な強化といった、我が国が直面する喫緊の課題について、財源確保の枠組みを決定した上で対応してきた。また、物価高対策などに機動的に対応することで、経済成長を確かなものとすべく取り組んできた。そして、財政健全化の旗を降ろさず、歳出構造を平時に戻すという方向性を示しつつ、歳出改革などの取組を行ってきた。
このように、経済成長の実現と財政健全化を両立する取組を進めてきたところ。
引き続き、経済の「新たなステージ」への移行を進めるとともに、「金利のある世界」を迎えている中、有事に備え、財政余力を確保するためにも、財政健全化の取組を着実に進めていくことが重要であり、今後とも、経済財政諮問会議において、闊達な議論を重ねることが必要であると考えている。
続いて、齋藤経済産業大臣です。
ここ数年間の積極的な産業政策の推進により、30年続いたデフレ経済から脱却し、成長型経済へと転換するための道筋がつき始めた。その中で、国内投資は大きく拡大し、賃上げ率は高い水準を実現するなど、30年ぶりに日本経済に前向きな「潮目の変化」が起こっている。
一方で、指標が一時的に良くなっても、しっかり見れば、生産活動はいまだ一進一退であるなど、政府が手を緩めるべき段階ではない。元の木阿弥で縮小均衡に戻るのではなく、「潮目の変化」を継続させ、拡大均衡を目指すべき。
アメリカ、EU、中国も自国産業ファーストで、伸びゆく個別産業に、かつては考えられなかったような巨額の財政資金を投入している。企業間の競争に加えて、産業政策そのものの国際競争が始まっている。資源やエネルギー、食料を輸入に頼る日本にとって、稼ぐ力は国家の存亡に関わるもの。そのためにも、短期的な経済運営のみならず、将来の「飯の種」となる分野で、日本企業が世界で勝ち抜けるような前向きな挑戦を、政府も一歩前に出て強力に成長投資を後押ししていかなければならない。
これからも力強い賃上げの動きを政府が後押しし、継続させるためにも、中小企業が価格を引き上げる力を高められるよう、サプライチェーン全体で価格転嫁対策を徹底的に行っていく。
まさに、デフレ構造から脱却し、物価も上がるけれども、投資も増える、賃金も上がるという好循環に30年ぶりに転換できるかどうかの正念場にある今だからこそ、あらゆる政策を総動員していくべき。
次に、自由討議の中で出た発言です。
植田日本銀行総裁です。
日本銀行は、2013年に量的・質的金融緩和を導入して以降、10年以上にわたり、大規模な金融緩和を粘り強く継続してきた。こうした緩和の成果もあって、我が国の景気は緩やかな回復を続けており、コスト上昇の販売価格への転嫁、さらには物価上昇を反映した賃金の引き上げといった、我が国経済がデフレに陥った1990年代後半以降、長らく観察されなかった動きが見られ始めている。
そうした下で、本年3月には、賃金上昇を伴う形で、2%の「物価安定の目標」を持続的・安定的に実現することが見通せる状況に至ったと判断し、金融政策の枠組みを見直した。今後、物価上昇を上回る賃金上昇が定着し、賃金と物価の好循環が強まっていくか、丁寧に見ていきたいと考えている。
次に、1人目の民間議員です。
株価が上がるときは買い材料が出て上がる。現在では、半導体、AIなどが買い材料となっている。5年後、10年後どういった分野の株が買われているか、先を見越した取組が必要。個人的には、GX分野は買い材料と見ている。
産業廃棄物や売却した家電や携帯等を回収する権利を付与するなどして、資源の再利用を進めることが重要。それにより、将来的には資源輸出も可能性としてあると考えている。そのため、リサイクル材の価格体系は、国が踏み込んで変えていくことも重要。
また、金融関係では、外国人の投資家に来てもらうことも大事。
以前、今の問題点は、自分を含めて45歳から65歳の人たちが頑張ってこなかったからではないかと言ったが、まだチャンスはある。日本経済にとっては、今が最後のチャンスと捉え、引き続き取り組むことが重要。
2人目の民間議員です。
これまでの評価として、GX推進に向けた革新的技術への投資などの投資支援策について高く評価したい。特に、GX経済移行債は画期的な施策であり、驚くほどのスピードとスケールであった。これを初めとするGX戦略の推進に取り組まれたことを高く評価している。
今後の課題は、国民が抱える将来不安を払拭すること。全世代型社会保障の構築が急がれると同時に、成長力の強化と財政健全化の両立が必要。そのためには、ダイナミックな経済財政運営の考え方の下で、2025年度のプライマリーバランスの黒字化だけではなく、複数年度の平均で黒字基調を維持する経済財政運営に取り組むことで、経済・財政・社会保障の持続可能性を確保することが大事。今後も、成長力強化と持続可能性の確保に向け、重要課題に取り組んでいく。
3人目の民間議員です。
人口減少下での経済成長は大変。骨太でも記載された、ウェルビーイングが高い社会の実現が大事。予防医療を強化し、健康で働けることは生産性向上にもつながる。この分野でのスタートアップ創出にもつながる。これらを支援するベンチャーやベンチャーキャピタルの支援も大事。世界に冠たる健康長寿国である日本らしい経済成長を目指すべき。
年齢が高い人でもリスキリングは可能。自分でも生成AIを使いこなしている。日本人の持っている基礎能力は何歳になっても高い。それに合わせた退職金制度の見直しやセーフティネットの整備もやっていくべき。生涯年収の上昇は、少子化対策としても効果がある。
4人目の民間議員です。
今までにない新たな経済ステージに入るためには、今までのような縦割りの動きではなく、新しい方向への横展開が必要。労働市場改革を通じて人が横に動くこともしかり、また、産業構造も縦割りを排して、新しい構造にしていくこともしかりである。
官の立場では、省庁間連携がしっかり進むようにすべき。民間の新しい試みに対して、政策や規制が障壁となる部分もあることから、民間の新たな展開を導くような規制改革も大事。
新たな民間投資を引き出す計画をパッケージとしてつくることが重要。お金を使うに当たっては、いくら使うか、どのように使うかを長期的に計画する必要があり、その途中では、EBPMを通じて、期待した成果が出ているのかというプロセスチェックが欠かせない。経済成長の実現と財政健全化の両立にはワイズスペンディングが必須だが、そのための成果チェックにはデータが必要であって、この点も、最初の企画時点でしっかりプランニングすることが必要。
最後に、総理から締めくくりのご発言がありましたが、皆様にお聞きいただいたとおりですので、割愛いたします。
(以上)