第11回記者会見要旨:令和6年 会議結果

新藤内閣府特命担当大臣記者会見要旨

  • 日時:令和6年7月29日(月)17:26~17:52
  • 場所:中央合同庁舎第8号館1階S108会見室

1.発言要旨

 本日は経済財政諮問会議の概要について、ご報告をいたします。
 議題は3つです。「中長期の経済財政に関する試算」について内閣府から報告をした上で、前回の民間議員からのご提案に基づき、「予算の全体像」を取りまとめました。また、「令和7年度予算の概算要求基準」について了承を得ました。
 中長期試算については、PB(プライマリーバランス)対GDP比は民需主導の堅調な成長が続く中、一定の前提の下で、2025年度に黒字化する姿となります。公債等残高対GDP比は、ゼロ近傍の成長を投影している「過去投影ケース」では試算期間後半に上昇に転ずるが、日本経済が成長型の新たな経済ステージへと移行していく「成長移行ケース」では、PBが黒字化する中で徐々に低下をするとの試算結果でした。
 その上で、中長期試算を踏まえた経済財政運営について、民間議員からは、「機動的な政策対応は重要だが、真に必要なものに集約し、2025年度のPB黒字化を目指した経済財政運営を行うべき」、「金利上昇下で債務の持続可能性を確保するためにも、中長期的に実質1%を上回る成長を目指すべき」、「中長期試算について、経済情勢に応じて、不断の見直しを行うべき」というご意見がありました。
 総理からは、経済あっての財政の考え方の下、経済成長を確実なものとするとともに、財政健全化の取組を継続していく旨、また、令和7年度予算について、本日決定した「予算の全体像」及び先ほど閣議了解しました「概算要求基準」を踏まえ、メリハリの効いた予算編成を進めていく旨、ご発言がありました。
 私としても来年度予算は、予防・健康づくり、リスキリングや新技術の社会実装、省力化投資などによって、個々の政策効果にとどまらず、関係する政策間の連携を通じて、日本全体の働き方、また、生活の生涯を通した質などが改善するといった、社会変革という政策投資へのリターンが得られる、そのような資源配分へと財政の質を変化させ、実需を生み出していくこと、また、EBPMの手法を本格的に導入し、予算編成においても最大限活用することで、政策の実効性を向上させることが特に重要だと考えています。新たなステージへの確実な移行に向けて、しっかりと取り組んでまいりたいと思っています。
 諮問会議の詳細については、後ほど事務方から説明をします。






2.質疑応答

(問)今回の中長期の経済財政試算では、2025年度のPB、基礎的財政収支が黒字化する姿を示しました。ただ、秋に策定を目指しております経済対策は、今回の試算には織り込まれておりません。また、経済対策の裏付けとなる補正予算の執行は翌年度になるものも多く、更にここ数年、大規模な補正予算が編成されており、PB黒字化の達成は容易とは言えない状況ではないでしょうか。PBの黒字化達成に向けた大臣の意気込みをお聞かせください。


(答)今回の中長期試算においては、民需主導の堅調な成長が続く中で、2025年度のPBが黒字化する姿が示されました。これはリーマンショック以降、初めて試算結果として黒字化の目標達成が示されたということになります。まだ試算結果ではありますけれども、PB黒字化の目標達成への道筋が見えてきたと言えるのではないかと思っています。
 今後の経済財政運営については、「骨太の方針2024」で示しましたように、経済あっての財政との考え方の下で、経済情勢等を常に注視しつつ、必要な政策対応に取り組んでいくことが大前提だと考えています。その上で、我が国の成長を確固たるものとするべく、必要な方策はしっかりと講じ、それによって経済規模を拡大させる中で、2025年度のPB黒字化を目指す。こうした財政健全化目標に沿ったものとなるように検討していかなければならないと考えています。
 いずれにいたしましても、経済の新たなステージへの移行を実現させる中で、2025年度のPB黒字化を目指して、メリハリの効いた予算編成や政策の実効性の向上に取り組んでいきたいと考えています。



(問)PBの2025年度の黒字化の評価について伺います。今回の黒字化が実現すれば、2000年代に政府として掲げて以来、初めてとなりますが、時期として妥当と考えるかをお聞きします。過去、何度か達成時期を先送りしてきた経緯もありますが、2025年度の達成が遅いという見方もあるかと思います。大臣の見解をお願いします。


(答)まず、この間のデフレが続く中で、非常に苦しい経済運営を強いられてきたこと、また、国民生活・国民経済が非常に厳しい状況というのは何度もありました。そうした中を国民の皆様の努力によって、また政府としても、経済を成長させながら財政を健全化させる、歳出改革努力を続けていく、そうしたバランスの取れた経済財政運営を心がけてきたということだと思っています。
 振り返りますと、まず「骨太の方針2001」において、PBの黒字化というものを目標設定したわけです。その後、「骨太の方針2006」で2011年度を目標年度としたわけなのですけれども、リーマンショックが2008年にあって、それによって延期を余儀なくされたということです。そして、2010年度には2020年度が新たな目標設定となりました。これは民主党政権の頃だったわけですけれども、消費税率の引上げに伴う財源の使途変更、こうしたものの実施を踏まえて、更に「骨太の方針2018」で2025年度への延期を決定したと。そして、その後にコロナという厳しい状況があって、それを経ながら、ご指摘がありましたように、試算において初めて黒字というものを示すことになったということです。
 私とすれば、これまでの様々な努力と、また経済は生き物ですから、いろいろな状況が起きます。それを乗り越えながら、まさに国民の皆様が必死に努力した結果、ここまで来たということです。ただし、これはあくまで試算ですから、きちんと黒字化の道筋を付けると。しかも大事なことは、本日の諮問会議でも出ていますけれども、単年度で、2025年度に黒字化を達成するだけではなくて、今後もきちんと経済財政運営を行いながら、PBの黒字化を基調にした運営が必要だと。そうしたことを、持続的な形ができるように努力しなければいけないと思っています。



(問)冒頭の補正予算等、PBの関係の質問に対するお答えのところで、健全化目標に沿ったものにしないといけないと考えているとおっしゃっていましたが、これはつまり、補正予算をやると、質問にもあったように黒字がなくなってしまって、赤字に転落する可能性が高いといわれていますけれども、健全化目標に沿ったものにしないといけないと考えているというご発言は、やはりあくまで黒字にこだわりたいと、補正予算をするにしても、25年度は赤字にならないようにするという決意ということでよろしいでしょうか。


(答)冒頭にも申しましたけれども、経済あっての財政という考え方を基本に、しかし経済情勢等を常に注視しつつ、必要な政策対応に取り組んでいく、このことを「骨太の方針2024」では打ち出しています。その上で、我が国の成長を確固たるものとすべく、必要な方策は講じつつ、PBの黒字化を目指す。それには経済規模の拡大も重要だと思っていますし、補正の在り方というものもよくよく検討していかなければいけないだろうと考えているわけです。











3.木村内閣府政策統括官(経済財政運営担当)による追加説明

 令和6年第11回経済財政諮問会議です。
 本日の議題は3つです。「中長期の経済財政に関する試算」及び「予算の全体像」について、内閣府から資料1-1及び資料4を説明しました。続いて、「令和7年度予算の概算要求基準」について、財務大臣から資料5の説明があり、その後、意見交換を行いました。主なご意見を紹介いたします。
 1人目の民間議員です。
 経済成長と財政健全化の両立に向けて、官民連携による戦略的な投資拡大を通じ、実質1%を安定的に上回る「成長移行ケース」を実現することが重要。2025年度という単年度のプライマリーバランス黒字化ではなく、その先の複数年度でプライマリーバランス黒字を維持していく、黒字基調を維持していくことを経済の基本に置くべき。
 また、公正・公平で持続的な全世代型社会保障の構築も重要。医療・介護分野の給付の適正化、サービス提供の在り方等の見直しなど、歳出改革も重要だが、社会保障制度の負担の議論を避けて通ることはできず、年齢に関わらず、負担能力に応じた応能負担を徹底する必要がある。税と社会保障の一体改革に取り組んでいくべき。
 2人目の民間議員です。
 中長期の経済財政に関する試算を出していくことは重要。中長期試算は甘過ぎず厳し過ぎず、バランスの取れたものであることが必要。その上で3点申し上げる。
 1点目は、補正予算の規模感を示すこと。2025年度のプライマリーバランス黒字化を目指している中、補正予算でプライマリーバランスが悪化するのではないかとの懸念がある。プライマリーバランスとの関係で、黒字を維持できる規模の補正予算はどの程度なのかということも含めて示していくことが必要ではないか。
 2点目は、EBPMの強化が大事。EBPMをそれぞれの政策でしっかりと進めていくことが必要。それぞれの政策がどう役立ったのか、役立たなかったのかを検証していくべき。
 3点目は、45歳から65歳の方々に、日本を強くするために立ち上がろうということを申し上げたい。特にこの世代が、政策を自分事として捉えることが必要であるということを、同世代の方々に向けて発信していきたい。
 3人目の民間議員です。
 財政健全化に向けては、潜在成長率を高め、税収を増やしていくことが必要。「成長移行ケース」や「高成長実現ケース」におけるTFPを実現していくためには、経済構造を変えていく必要がある。そのためにこれから申し上げる3点が重要。
 1点目は、生産性の向上。人材の流動化が重要であって、生産性の高い分野に人材が移動していくことが必要。全世代型リスキリングや失業保険等のセーフティネットの充実が重要で、ダイナミズムのある仕組みをつくっていくべき。また、最低賃金の引上げについては、将来にわたる賃金上昇の予見性を与え、中小企業の生産性を上げていくことが重要。
 2点目は、人口減少への対応。労働のインプットを増やし、人手不足を緩和していくことが大事。何歳になっても働ける社会に向けて、社会保障制度改革、在職老齢年金など年金改革を行い、働き方に中立的な制度を早期に確立していくことが必要。また、治療ではなく予防を重視することや外国人材についても議論していくべき。
 3点目は、エネルギー。エネルギーは生産性向上と持続的な賃上げのバックボーンである。エネルギー分野について官民でしっかりと投資をしていくべき。
 4人目の民間議員です。
 プライマリーバランス黒字化のめどが立ってきたということは、経済にとって非常に明るいニュース。「成長移行ケース」を現実のものとするためには、経済成長率を引き上げていくことが何よりも大事。そのための大きな鍵は、成長につながる民間投資を促していくこと。将来の成長につながるような投資を促していくことが何よりも肝であって、そこをしっかりと見ていくことが我々に求められている。
 付加価値や生産性の高い投資を促していく、将来の成長率につながる計画性をもった投資を官民挙げてやっていくことが大事。特に、今の状況は人手が不足しているので、人が少なくても経済が回っていくような省人化投資、省力化投資、リスキリングが必要。これらと併せて、企業のDXや組織改革など、産業構造の転換を促すことも重要。
 単に投資を促すだけではなく、プロセス管理をしっかりやっていくことが必要。そのためのEBPMだが、成長につながるものになっているかをチェックし、望ましい投資を促すことが大事。これは、民間だけでなく、政府に関しても言えることである。予算の着実な執行を促していく。しかも、有効な執行を促していく。そうしたチェック体制によって、歳出改革と経済成長のバランスを取ることが大事。
 次に、閣僚からの発言です。
 鈴木財務大臣です。
 本日示された中長期試算の結果に関して、民間議員からは、今後の経済財政運営については、秋に策定することを目指す経済対策が、2025年度のプライマリーバランスに影響することを踏まえるべき、金利上昇が債務に与える影響や、国債発行が市場金利に与える影響等について、これまで以上に注意を払う必要があるというご指摘をいただいた。
 財政に対する市場の信認を確保し、将来世代への責任を果たしていくためには、引き続き財政健全化目標の実現に向けて取り組むことが重要。足下で必要な財政需要には機動的に対応しつつ、徹底した歳出改革努力を行うこと等を通じて、経済成長の実現と財政健全化の両立に向けて取り組んでいく。
 続いて、齋藤経済産業大臣です。
 今年の春季労使交渉の全体の賃上げ率は平均5.10%となったが、中小企業の賃上げ率は平均で4.45%になっており、裾野の広い賃上げが実現している。こうした前向きな変化を継続的な成長の好循環につなげていかなければならない。
 中長期試算においては、2025年度のプライマリーバランスが黒字化する姿が示された。昨年度の税収は過去最高を記録し、今年度以降も高い水準の税収が見込まれている。これらは積極的な成長投資が実を結んだ結果であり、経済成長による財政健全化の成果である。
 足下、産業政策そのものの国際競争が激化している。アメリカやEU、中国など、各国が自国産業ファーストの観点から、大胆な産業政策に大きく舵を切っており、個別産業にも資源を投入している。ここで差をつけられたら、挽回することができない。
 秋に策定を目指す経済対策も含めて、増えた税収を成長投資に振り向けることで、現在生じているDXやGXによる投資の流れを生かし、半導体や蓄電池、AIなど、将来の成長産業への戦略投資をさらに進め、高い成長を目指すべきだと考えている。その結果として税収が増加し、財政が健全化するという拡大均衡型の財政健全化を目指していくべきだと強く思う。
 次に、自由討議の中で出た発言です。
 1人目の民間議員です。
 金利のある世界については、金利上昇それだけで取り上げると、借金が増えるという観点でネガティブに捉えられてしまうが、むしろ、市場のメカニズムが機能し、日本経済の成長にとってプラスと考えるべきではないか。大事なことは、金利よりも経済が成長する、物価よりも賃金が上がるということであり、そのための政策を履行していくべき。
 2人目の民間議員です。
 民需主導の経済成長には、生産性向上と供給力強化を通じた潜在成長率の向上が必要である。そして、そのためにはイノベーションの創出が必要。これは民間の役割ではあるものの、民間だけで行うことは困難。大きなリスクを伴う革新的な技術開発には政府が先行して投資を行うべき。こうした分野に対して、政府は複数年度にわたる財政出動を行い、民間企業の予見可能性を高め、民間投資を呼び込む、官民連携によるダイナミックな経済財政運営を行うべき。
 中小企業の投資促進については、企業が切磋琢磨する環境を用意する必要がある。中小企業の価格転嫁や省力化投資は労働生産性の向上に資する。カタログ式補助金はすばらしい制度であるので、政府にはそのような支援を引き続きお願いしたい。
 3人目の民間議員です。
 政策の乗数効果については、EBPMによって測定・検証していくことが重要。
 少子化対策が効果を上げていくには時間がかかる。例えば、空き家が相当増えている中で、リノベーションを行うことなどにより、有効な資産として活用することで、少子化対策としての効果を把握する。住宅の問題を解決すると、どの程度出生率が改善するかなど、少子化対策のメニューがどのように効果を上げていくのかを世の中に示していくことも大事。
 可処分所得が増加していく社会に向けて、民間投資を入れて社会保障費の抑制をしていくことが重要。また、イノベーション、ヘルスケアの分野の民間投資の拡大、規制改革、投資減税をフルに活用して、税収を最大限増加させること、また、需給ギャップを埋めるということではなく、その政策の乗数効果を見ていくことが大事。
 4人目の民間議員です。
 EBPMを具体化していく上では、しっかりとした体制を整備していくことが大事。必要な情報をどのように集めて、データ化して、把握するのか。また、それを分析して、検証していく、そうした枠組みをつくって、チェックするという体制が必要。
 具体的には、経済財政諮問会議の下にある経済・財政一体改革推進委員会にEBPMアドバイザリーボードがある。ここに専門家の人が集まっているので、例えば、こうしたところでEBPMに向けた取組のプランを話していただいて、きちんとそのプロセスが回るかどうかを検討していくことも大事。そのプロセスは各省庁の中だけでやるのではなくて、外部の研究者や専門家を活用することも大事。さらに言えば、プランをつくっていただいて、それを予算編成にしっかりと活かしていき、実効性のあるものにすることが大事。
 続いて、鈴木財務大臣です。
 経済財政諮問会議のリーダーシップの下、政策ごとの中長期的なEBPMの分析・評価に取り組んでいくことは、予算の中身の重点化や施策の優先順位付けを徹底し、政策の実効性を向上させていくためにも、重要な取組であると考えている。
 今後、令和7年度予算の概算要求と同じタイミングで各省からエビデンス整備方針が提出され、年末には「EBPMアクションプラン」が策定される予定だと認識している。財務省としても、年末に向けて各施策のKPIの在り方を含め、EBPMの強化について各省庁との間でしっかりと議論していきたいと考えている。
 最後に、総理から締めくくりのご発言がありましたが、皆様にお聞きいただいたとおりですので、割愛いたします。






(以上)