第10回記者会見要旨:令和6年 会議結果

新藤内閣府特命担当大臣記者会見要旨

  • 日時:令和6年7月19日(金)12:17~13:08
  • 場所:中央合同庁舎第8号館1階S108会見室

1.発言要旨

 まず、出張の報告です。7月7日から7月13日にかけて、シンガポール、ベトナム、カタール及びアラブ首長国連邦(UAE)に出張いたしました。目的は大きく2点です。1点目は、日本の経済政策・成長戦略を対外的に発信することで、国際社会から日本への関心を高め、経済の連携を進めるとともに、関係各国との信頼の強化・構築を目的にいたしました。
 もう一つは、各国のスタートアップ関係者との協議を経て、グローバルネットワークの形成の中に、是非この地域も組み込んでいきたい、また、御一緒したいという思いがあり、日本のスタートアップ政策と各国地域との連携を取るためのきっかけとなる視察をしたわけです。
 この考え方は、昨年9月の就任以来、スタートアップに関しては、アメリカ、イギリス、フランス、スイス、イタリア、フィンランド、更に今回、シンガポール、中東と、そうした世界のスタートアップを進めていく方々との連携を強化する中でネットワークをつくると。我が国もその世界のハブになるし、また、私たちも海外のハブと連携していく。こういう形をつくろうということで、おおむね今回の出張をもって必要な行くべき地域は全て回れたかなと思っております。
 そして、今回は各国で16の機関、40名を超える方々と面会をいたしまして、スタートアップ、更に、ベトナムにおいてはCPTPPの今後の展開、それから、各国に対して対日直接投資の拡大を働きかけ、協議をしたわけであります。
 シンガポールにおいては、ガン副首相兼貿易産業大臣と面談を行って、TPP、スタートアップ、またその他様々な経済の連携についての意見交換を行いました。
 シンガポールにおいては、「スタートアップ国家」ということで、世界でも非常に素晴らしい活動をされているわけですけれども、シンガポールのグローバル研究拠点や投資機関など、スタートアップ関連の所を訪問いたしました。関係の方々とは、今後、私どものGSC(グローバル・スタートアップ・キャンパス)との連携を更に深めていこう、実務的な協議を進めていこうということで合意をいたしました。
 ベトナムにおいては、まずはチン首相に表敬いたしまして、我が国の成長戦略について説明申し上げるとともに、両国の経済状況や政策についての意見交換をいたしました。また、技能実習、これは今回「育成就労」という形に制度を改善していくわけですけれども、今後の人材協力の在り方、それから、ベトナムにおいてもスタートアップというものはありまして、こういったものの協力についての意見交換を行いました。
 また、ジエン商工大臣とは、昨年のサンフランシスコのCPTPPの会議に引き続き、2度目の会談を行いました。今後のCPTPPの課題や発展の可能性について、更には、ベトナムにおける日系進出企業のためのビジネス環境整備などについて意見交換を行ったわけです。
 首相、商工大臣と重要な方に直接面会し、非常に密接なコミュニケーションを取ることができました。これは両国間の一層の信頼関係の中で私どもも一つの役割を果たせるのではないかなと、大いに期待をしているわけです。
 また、その後に中東に参りまして、まずカタールではムハンマド商業・工業大臣、UAEではアル・マッリ経済大臣などとの会談を実施しました。お二方は自国の経済成長、経済戦略やスタートアップ等を担当されていて、この中で私ども日本の大きな新しい動きというものを説明しながら、「中東の皆さんも是非、私たちと一緒にやっていきましょう」と、また、「GSCに対して参加をしてください」、「連携協力しましょう」ということで合意しました。今後、何が具体的にできるのか、実務的な打ち合わせをすることにいたしました。
 あわせて、政府系ファンドの関係者とも会談をしました。巨額の投資を行っている投資機関があります。こうした機関の直接の責任者とお会いして、日本への投資、スタートアップへの更なるバックアップ、こういったものを議論しながら、是非、今後よりGSCに対する関心を高めていただく、そのきっかけになればなと思いましたし、あちらからは、「是非、今後も情報をいただきたい」というようなお話がありました。
 今回の視察では、これまでのアメリカもヨーロッパも含めてですが、日本経済の変化に非常に注目をされている、関心が高まっていると実感します。私が想像している以上に日本の政策の変化を期待し、また、分析をしていると。そしてまたそれは、本当にそれが行われるかどうかを非常に注目しているという意味において、日本への期待とともに、我々はそれに応えなければいけない、その我々の努力を更に進めていかなければならないと、思いを新たにしたところです。これが私からの1点の御報告です。
 もう一つは、本日、経済財政諮問会議を開催しました。本日の議題は二つでありまして、「内閣府年央試算」を踏まえた当面のマクロ経済運営、それから、「予算の全体像に向けて」について議論を行いました。
 まず、本日公表しました「内閣府年央試算」について少し御説明したいと思います。まず1ページ目。ここで申し上げていますのは、2024年度の実質成長率は0.9%になると見込まれるということです。そして、高水準の賃上げ、堅調な企業収益、定額減税などの各種政策効果に支えられて、消費が回復するとともに設備投資が増加する。2023年度とは内容が少し変わって、まさに内需が主導する形で、内需寄与度が上がった中で経済が成長していくことが試算として示されたということです。
 それから、2025年度の実質成長率は1.2%ということで、前年度から若干高まると見込んでいます。消費者物価上昇率が前年度の2.8%から2.2%に落ち着いていく中において、消費の回復、堅調な設備投資に支えられて、民需主導の堅調な経済が実現することを期待しています。
 2ページ目は、我が国の経済、生産性に大きな影響を及ぼしている設備投資についてですが、引き続き拡大をしていくことが試算の中で示されました。2023年度に100兆円を超えた設備投資は、2024年度には108.1兆円、そして、2025年度には113兆円まで拡大していく、堅調な増加を見込んでいます。
 その上で、今回一つ目の年央試算に関する議題においては、低所得者、中小企業などに焦点を当てた時限的な支援を講じつつ、賃上げ・可処分所得増加に向けた政策を総動員すべきという御意見、企業の設備投資計画の実現に向けて、投資促進策と規制・制度改革をパッケージとして、今回の骨太方針2024に盛り込みました取組を加速し、我が国の競争力を更に強化すべきという御意見、また、金融政策や国債管理政策に関してマーケットとの緊密な対話が重要だという御意見を頂戴したところです。
 そして、二つ目の議題ですが、「予算の全体像に向けて」ということで、民間の予見可能性を高める中長期の計画的な投資を推進するとともに、経済・物価動向等に配慮しながら、これまでの歳出改革努力を継続するなど、メリハリのある予算編成を行うこと、また、経済財政諮問会議において、省庁間や政策間の横断的な連携について審議し、PDCAによるプロセス管理を徹底することなどを通じて、政策の実効性の向上につなげるべきだということ、そして、DXにより生成されるデータの蓄積や研究機関・大学における分析を駆使して、EBPMの強化によるワイズスペンディングの徹底に取り組むべきという御意見を頂戴しました。
 総理からは、私に対して、本日の諮問会議の議論も踏まえ、EBPMの強化に向け、重要政策・計画について、来年度の概算要求とあわせて関係府省庁からエビデンス整備の方針の提出を求めるとともに、年末にかけて、収集するデータや検証方法、実効性のあるEBPMの体制等を検討し、アクションプランとして取りまとめるように御指示がありました。
 諮問会議の詳細については、後ほど事務方から説明をします。






2.質疑応答

(問)年央試算についてお伺いしたいのですけれども、これまでの見通しから0.4ポイント引き下げて、0.9%程度にしたと思うのですけれども、円安による物価高等、懸念材料がまだまだある中で、こうした下方修正したことについての大臣の受け止めをお伺いしたいと思います。
 加えまして、賃上げに関しては30年ぶりの高水準となっておりまして、明るい兆しもある中で、デフレ脱却への関心も高まっておりますけれども、そのデフレ脱却に関するお考えもお伺いできますでしょうか。


(答)御指摘のように、本年の経済見通し時点では、2024年度の実質成長率を1.3%程度と見込んでいたものが、今回の試算において0.9%程度へと下方修正をしたわけです。この主な要因は、個人消費が落ち込んだことが挙げられると思っています。具体的に言いますと、本年の1~3月期に一部自動車メーカーの認証不正問題に伴う生産・出荷停止が生じたことが大きく影響し、それによって、個人消費が前期試算に比べて落ちたことによる影響が大きかったということだと思います。
 一方で、1ページ目の2023年度と2024年度の成長率の比較を我々は注目しておりまして、2023年度の実質成長率、内需の寄与度がマイナス0.5%で、2023年度の経済は外需よって引っ張られて成長したことが姿として見えてくるわけです。
 一方で、2024年度は賃金が上がっていく。そして、消費が前年度比でプラス0.5%になっているということ。更には、設備投資が前年度比プラス3.3%ということで、伸びてまいります。こういったものを踏まえますと、結局、外需がマイナス0.0%、内需がプラス0.9%ということで、内需が主導した自律型の成長経済が見えてきているのではないかなと思いますし、そのために骨太の方針等で、民需主導、自律型の成長経済、そしてそれは新しいステージに移行するためのものでなければならないと。こういうものを更に進めていく。それによって、この試算をより良い形で実現させていきたいと考えているわけです。
 何よりも、デフレには二度と戻らない状況をつくることが重要で、今素晴らしい兆しが見えている経済を継続して、また、拡大していけるような政策をしっかりと打ち込んでいきたいと考えています。



(問)定額減税の効果についてお尋ねします。今回の年央試算で定額減税が民間消費にどのように寄与したと見ていらっしゃいますでしょうか。また、定額減税の効果について、大臣の現状での御評価をお聞かせください。


(答)今年の春季労使交渉は、平均賃上げ率が5.1%ということで、33年ぶりの高い水準になりました。この結果はまさに今、7月、8月と具体的に皆様方の賃金に反映されていっている状態です。給与に交渉の結果が本格的に反映されることによって、賃上げの動きが力強くなっていく。それを中小企業や地方経済に、全国津々浦々にきちんと浸透していけるかどうか。それを我々は注視していますし、そのための様々な支援を行いたいと思っているわけです。
 ちなみに、賃上げについては、春闘に参加した企業は、7月、8月、9月と今反映が進んでいきます。あわせて、春闘の対象とならない、いわゆるエッセンシャルワーカー、医療従事者などの医療職に対しては、6月に診療報酬改定の結果が反映された給与になっています。
 パートの方は最低賃金の引き上げが好影響を出せると思うのですが、最低賃金の引き上げは10月からです。更には、公務員は人事院勧告に伴う公務員給与の遡及改定が12月です。
 春闘の結果を経て賃上げの動きができ、それに様々な給与をいただいている方々の賃上げの流れもできていく。その中で今、大きな動きをつくりたい。物価上昇率を超える賃上げ率が当たり前だというような通念、ノルムをつくらなければならず、しかもそれは今年度に実現した上で、来年度以降も安定的に持続していく流れをつくることが重要だと思うわけです。
 定額減税のタイミングは6月です。ですから、ボーナスが支給され、賃上げが始まる、でもまだ全部始まっていない状況の中で、家計を応援するとともに、消費を拡大させるための一つのきっかけになればということで、これは一定の効果が出てきたのではないかなと思っています。
 年央試算における定額減税の効果については、本年度にその規模の3割程度、来年度までにその半分程度が消費に回るのではないかと見込んでいます。



(問)2点お願いしたいのですが、まず1点目は先月に表彰があった職員向けの政策アイデアコンテストです。優勝に選んだアイデアのうち一つが、労働弁護団などから「労働規制、社会保険料負担の脱法的な回避ではないか」ということで、批判と説明を求める談話が出ていると思います。内閣府としては、政策を実現するためではなく、組織の活性化や人材育成のためにやったということを御説明されてはいますが、ではなぜこういう法的なリスクがあるアイデアを優勝に選んだのか、このアイデアのどこを評価したのか。政権が掲げている全世代型社会保障やコストカット型経済からの脱却という方針にも逆行しているように見えるのですが、なぜこのアイデアを評価したのか、どこが優れているというのか、改めて教えてください。
 もう一点は年央試算で、下方修正をしたとはいえ、民間の予想に比べるとだいぶまだ政府予想のほうが強気です。特に内需寄与度で差が出ているのですが、改めて、なぜ大臣としては民間よりも強気の予想で、内需が特に強いと見ているのか。そのことの説明もあわせて教えてください。


(答)まず、年央試算の件ですが、これは民間と比較して政府がどうするかではなくて、政府は政府で様々な分析の上で積み上げたものです。先ほど説明したように、内需寄与度を高めるとともに、もちろん外需も引き込んで、その上で民需主導の自律型成長経済をつくっていく、そのための様々な政策を打ち込んでいます。それを来年度の予算を目がけて更に強化しようという中で、分析の結果、計算を積み上げた結果がこうなったと御理解をいただきたいと思います。
 それから、政策アイデアコンテストですが、これはまさにアイデアで、個人の自由な見解を出していただいたものです。自分の所掌に関わらず、他省庁の方や民間の方とも、とにかくいろいろなアイデアを、自分が政策を作る上でどのような工夫をするかということをコンテストしようということでして、内容のそれらを実際の政策立案にということは全く考えていません。
 そもそも人事部局が行ったものでして、今回、予想を超えて様々な他省庁の方や、いろいろなきっかけで内閣府で仕事をしている方々がそういう気持ちを持って臨んでいただいて、自由な発想をいただきました。ですから、その内容について、私どもとすれば、公的なコンテストではなく、あくまでも内部のものであり、内閣府がみんなで頑張ろうと、士気を上げていこうというためのものです。まさに内閣府は政策の宝庫です。一方で、いろいろな役所から出向しているという、たくさんの人の集まりの場でもあります。ですから、それらの一体性と、それから、どこの部局に行っても内閣府の一員・政府の一員としていろいろなことを考えましょうということを促すためのものでございまして、内容について特にこれがどこが問題があるかではなくて、そもそもどういうふうに独創性を持ってコンテストに応募してきたかということが評価の観点になったということでございます。



(問)独創性を持ってということであっても、違法性のリスクがあるものを選んだということは、内閣府はそれを推奨しているようにも受け取られかねないと思うのですが、違法性のあるものを選んだことに対して問題はなかったとお考えでしょうか。


(答)今、まさに「リスク」とおっしゃいましたけれども、現実の政策立案をする際には、これまでの私たちの考え方に変更はございませんので、そういったリスクはありません。
 また、このアイデア自体は逆に個人の自由な工夫、独創性、そういったものを出していただいたものですから、それらは次元の違うものに考えていただきたいと考えています。











3.木村内閣府政策統括官(経済財政運営担当)による追加説明

 令和6年第10回経済財政諮問会議です。
 議題は2つです。一つ目の議題では、「内閣府年央試算」について、私から資料1-1を説明し、その後、意見交換を行いました。二つ目の議題、「予算の全体像に向けて」では、意見交換を行いました。
 それぞれの議題について、主なご意見をご紹介いたします。
 一つ目の議題に関するご意見です。
 1人目の民間議員です。
 マクロ経済政策の課題は、デフレ脱却を果たし、成長と分配の好循環を実現すること。そのために3点申し上げる。
 1点目は、賃金引上げのモメンタムの維持・強化が大事。賃上げについては、今年の春闘では大幅な賃金の引上げを実現した。賃金引上げのモメンタムを来年も継続させるためには、2%の適度な物価上昇を安定的に実現することが必要。賃金引上げのモメンタムを維持・強化する環境整備を着実に進めてほしい。
 2点目は、消費の拡大。消費性向の低い若い世代の方々を中心とした、国民の皆様が抱える漠とした将来不安の払拭が大事。公平・公正で持続可能な全世代型社会保障の構築に速やかに取り組んでほしい。
 3点目は、投資の拡大。様々な調査を見ても、民間の積極的な投資意欲があると思われる。この機会を逃すことなく、中長期の計画に基づいた政府投資を当初予算で着実に実施することで、民間の予見可能性を高め、民間投資を積極的に引き出していってほしい。
 2人目の民間議員です。
 実質GDP1%成長を達成するための新たなステージに向けて、マクロ経済政策運営に関して2点申し上げる。
 1点目は、現状の金融市場で最も気にされている円安について。円安が消費に歯止めをかけていると考えられる中、過度な円安は阻止すべき。円の価値を上げる、信頼を回復するためには、円安が日米の金利差に由来するのであれば、日銀が金融政策をフリーハンドで実施することと、それとあわせて、財政健全化を進めていくことが大事で、それを内外に示していくべき。
 2点目は、日本の競争力を強化すること。国が具体的な動きを示し、その具体的な動きを国民の皆様に認知していただくことが大切だと考えている。日本の競争力であると考えられる分野を選別し、真に必要な分野については、日本の利益として確保するところまで資金を投下し、競争力を高めていただきたい。
 3人目の民間議員です。
 賃金が上がり、ボーナスが上がっている状況の下で、家計の防衛本能が強いことに驚いている。あるべき姿に経済運営ができていないことに危機感を持つべき。国民の皆様は物価高に関心がある。消費低迷にならないように、実質賃金が低い地方や中小企業にフォーカスして対応すべき。過度な円安を回避し、物価をコントロールすることが大事。消費者物価上昇率を必ず超えて、賃金が上昇するという通念、ノルムの形成も大事。
 社会保障に関して、応能負担とする社会保障改革に早急に着手すべき。最低賃金を全国で1,000円以上、早期に目標の1,500円、その先の2,000円を実現していくことが必要。年収の壁・支援強化パッケージをしっかり機能させ、第3号被保険者に関しても年金改革の中でしっかり取り組むべき。
 価格転嫁について、価格転嫁が1割から3割しかできていない中小企業が増加していることは問題。独禁法や下請法の執行強化が大事。外国人材の活用や育成就労支援の制度を早く実現させることが大事。エッセンシャルワーカーの賃上げも重要。
 金利が上がることを前提に政府は対応していくべき。その際、意欲のない企業に補助金を与えるのではなく、新陳代謝を進めていくべき。その際には、全世代型リ・スキリングやセーフティネットの充実も大事。
 4人目の民間議員です。
 当面のマクロ経済運営において、家計が防衛的な行動に迫られないようにすることが大事。その上で、供給サイドの話として、潜在成長率をしっかりと引き出す投資をいかに増やしていくかということを考えなければ、先々の経済の大きな見通しは変わらない。投資を潜在成長率の引上げにつなげていくことが重要。
 企業の設備投資計画、意欲は高いが、資材の高騰や人手不足による制約で投資が実行できていない部分があるため、ここを解決していく必要がある。省力化投資を行うことも中長期的には大事。リスキリングによって人の能力を高めていくこともやっていってほしい。
 次に、自由討議の中で出た発言です。
 1人目の民間議員です。
 投資の予見可能性で一番大事なのは、中長期にわたるエネルギーの安定供給の確保。電力の安定供給を確保するために、核エネルギーの次世代革新炉の開発を強化していくことが急務。我が国は資源を持たず、隣国から電力を供給してもらうこともできない。産業基盤に不可欠な電力の安定供給を図りつつ、気候変動問題への対応から、ゼロエミッション電源を確保することが喫緊の課題。
 ゼロエミッション電源の確保に当たっては、再生可能エネルギーを最大限に導入しなければならないが、我が国の場合には地理的制約がある。このため、原子力発電を含む核エネルギーの利活用は不可避と考えている。
 第6次エネルギー基本計画では、2030年の原発比率は、20%から22%とする予定になっている。今後、産業立地競争力の確保やAIデータセンターなどで電力需要の大幅な増加が見込まれる中、次世代革新炉の開発による新増設やリプレースが必要。核エネルギーの利活用、現存原発の核燃料のリサイクルにおけるバックエンドの問題、新増設・リプレースに向けた次世代革新炉の開発は、国が先頭に立って取り組むべき課題だと思っている。とりわけ、次世代革新炉の開発に向けては、政府は人と金が集まるように、今までにない大規模な投資を進め、開発ペースを大幅に加速していくべき。
 2人目の民間議員です。
 円安は輸入物価の上昇、消費者マインドの停滞をもたらす。実質実効為替レートで見ると、1970年代の水準に戻っているので、競争力を高めていくことが大事で、そのことが根本的な解決になるのではないか。
 他方、短期的には、円安の収益化に取り組むべき。インバウンドを取り込む、海外の工場を日本に回帰させるといったことなども考えられる。例えば、インバウンド客に対する消費税の還付金をなくすことを検討してみてもいいのではないか。したたかに稼ぐことも考えていいのではないかと思っている。税制としては問題があるかもしれないが、円安の収益化という観点からの意見として申し上げておきたい。
 米国経済は様々な懸念点が出てきていると見ており、米国は金融緩和の方向に動くことも考えられる。その場合には、結果的に円高の方向に進む。米国の大統領選も予定されている中で、どのような状況になっても、ポジティブな点は全面的に受け入れ、ネガティブな点は可能な限り減らすような工夫をしていくべき。
 次に、2つ目の議題に関するご意見です。
 1人目の民間議員です。
 1点目は、中長期の視点について、来年度の予算編成に当たっては、「経済あっての財政」の考え方の下で、社会課題の解決に向けて、中長期の計画的な投資を当初予算で着実に実施し、企業の予見可能性を高め、民間投資を引き出すべきと考えている。また、財源を一体的に検討し、歳出と歳入を複数年度でバランスさせるダイナミックな経済財政運営の考え方を取り入れていくことが必要。
 2点目は、官民連携の強化。中長期の計画的な予算措置については、GX・DXや科学技術イノベーションなどについて、民間投資を引き出す官民連携強化を進めていくべき。また、引き続き、スタートアップの育成やコンテンツ産業、サーキュラーエコノミーなど、新たな成長分野における取組についても官民連携をより一層強化していくべき。
 2人目の民間議員です。
 EBPMを項目ごとに立てていく際に、EBPMは目的ではなく、手段であることを念頭に、KPIの設定を注意して行っていくべき。
 民間議員ペーパーの別紙に記載されている少子化対策の項目だけでは人口減少に歯止めがかかるとは思えない。事後の効果検証の観点からも、こども・子育てで使用した資金がどう配分され、どう役立ったかについて検証していただきたい。少子化問題にはお金がかかるという問題点もあると思うが、塾に通わずとも、公立学校で勉強するだけで大学入学できるようにするなど、文教が重要な関わりを持っていると考えている。そのような意味でも、EBPMアクションプランについて、省庁間でしっかりと連携してもらいたい。
 半導体関係の投資促進に当たっては、大きな国費が投入されており、EBPMが大事。予算の質や予見可能性を高めるために、複数年度での支援を実施し、計画的に行うことも大事。
 令和7年度予算に向けては、予算の質を高め、リターンが見込めるものに特化して集中的に支援することが重要であり、その上で、EBPMは政策の正当性を見極める際に極めて重要なものであると考える。
 3人目の民間議員です。
 民間主導に変えていくため、予算編成の在り方を変えるべき。予算を単年度ベースから複数年度で柔軟に考えていくためにも、EBPMが重要。EBPMはワイズスペンディングの基盤であって、中長期的に乗数効果の高い事業に予算が配分されるようにしていくべき。
 政策の継続性が重要。EBPMの効果が一番出てくるのは、社会保障制度改革。少子化対策に地方の視点も入れて、東京一極集中を是正し、地方の活性化を図っていくということも重要。
 データを出すと不都合な真実が見えてくるが、政策の哲学として不都合な真実を出していくべき。
 民間投資がその施策によってどれだけ出てきたかということも把握すべき。意欲のない企業が退出し、新陳代謝を図るためにも、例えば、補助金支給要件を成果連動型にするということも考えてはどうか。
 4人目の民間議員です。
 日本経済の潜在成長率をいかに引き上げるかが大事。そのための大きなポイントは民間の設備投資。質の高い投資を引き出すために、データで検証しながら政策を実行していくことが必要。
 EBPMを強化し、どこまで政策目標が達成されたのかを検証することが必要。政策立案の段階からEBPMを意識して取り組むことが大事。不都合な真実が出てきてしまう可能性があるが、それを見せていくことも大事。EBPMの実行のため、人や予算を確保し、予算編成の中でそれをしっかりと盛り込んでいくことが必要。
 次に、石井経済産業大臣政務官です。
 国内投資は100兆円を超え、春季労使交渉の賃上げ率は5.10%といずれも30年ぶりの高水準を実現した。賃上げや設備投資の意欲は引き続き旺盛ではあるが、他方で、物価高に直面した家計のマインド悪化など、この2年間の良い方向での潮目の変化が息切れしかねないリスクにも直面している。
 経済見通しにおいて示された内需主導の経済成長を実現するためには、こうした民間の投資意欲の高まりや賃金上昇の好循環の流れを継続させなければならない。そのためには、DXやGXなどの重点分野において、明確な方向性を示すことで、民間の予見可能性を高め、前向きな挑戦を後押しし、成長期待を後退させないことが大事。
 日本経済が「潮目の変化」を迎えている今、足下の変化の兆しを確実なものとし、「コストカット型経済」から「投資も賃金も物価も伸びる成長型経済」への転換を必ず成し遂げるという決意が必要。そのため、半導体や蓄電池、AI、バイオなどの将来の「飯の種」を生み出し、賃金や成長の源泉となる社会課題解決型の国内投資を後押しするべく、あらゆる政策を総動員して取り組んでいくべきである。
 次に、自由討議の中で出た発言です。
 1人目の民間議員です。
 社会保障制度改革と健康診断をしっかり行うことが重要。予防に対して、民間が投資できるようにしていくことが必要。健康で自信を持って仕事をできる社会を実現していただきたい。
 2人目の民間議員です。
 EBPMの仕組みづくりを行うことが大事。今までは政策の結果としての数字を事後的に集めることをやってきた。今後は、政策立案の段階からEBPMの体制づくりをすることがポイント。体制ができていないと、事後的に都合のよいデータだけを集めることになりかねない。
 民間の大学や研究者の分析も活用しながら、EBPMの実行体制を構築していくべき。予算編成時にEBPMに必要なエビデンス整備の方針を評価し、評価できるものであれば、予算をつけていくということにしていくべき。そうしたサイクルを実現することで、EBPMの強化によるワイズスペンディングが進んでいくと考える。
 最後に、総理から締めくくりのご発言がありましたが、皆様にお聞きいただいたとおりですので、割愛いたします。






(以上)