第9回記者会見要旨:令和6年 会議結果

新藤内閣府特命担当大臣記者会見要旨

  • 日時:令和6年6月21日(金)17:25~18:26
  • 場所:中央合同庁舎第8号館1階S108会見室

1.発言要旨

 本日は経済財政諮問会議と新しい資本主義実現会議を合同開催しまして、「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2024年改訂版」、また、「骨太の方針2024」を取りまとめました。その後、持ち回りの臨時閣議において、これらを閣議決定する予定となっています。
 本日取りまとめた方針については、今後の予算編成や制度改正において具体化をし、速やかに実行していく旨、総理からもご発言がありました。
 「新しい資本主義」は「官民連携」、そして「社会的課題の解決と経済成長の二兎の実現」を引き続き掲げ、中小・小規模企業の賃上げのため、価格転嫁の更なる徹底、人手不足業種についての自動化技術の利用拡大を図り、また、年齢に関わらず働ける環境の整備のためのジョブ型人事の導入、スタートアップの育成、そして、コンテンツ産業活性化のためのクリエイターが安心して持続的に働ける環境整備などについて具体策を示したものであります。
 「骨太の方針」については、デフレからの完全脱却、そして、従来の延長線上にはない、成長型の新たなステージへと日本経済を移行させていくためのビジョンと戦略をお示しし、経済を新生させるための指針を打ち出そうとするものであります。
 骨太の方針については、国民の皆様にこうした方針、また戦略とビジョンをできるだけ共有していただくために、概要ペーパーを作成しました。今日はせっかくの機会ですので、概要ペーパーに沿って説明をさせていただきたいと思います。
 まず、今回の「骨太の方針」、短期的にはデフレからの完全脱却、そして、成長型の新たな経済ステージへの移行、中長期的には、それらを実現させた上で、少子高齢化・人口減少という我が国にとって最も大きな課題を克服し、豊かさと幸せを実感できる持続可能な経済社会をつくっていく。これを目指すための新たな新生計画です。そのために、まず「5つのアクション」として、物価上昇を上回る賃上げの定着、構造的価格転嫁の実現、成長分野への戦略的な投資、スタートアップネットワークの形成、新技術の徹底した社会実装を掲げました。
 その上で、これらのビジョンとして、社会課題解決をエンジンとした生産性の向上と成長機会の拡大、誰もが活躍できるWell-beingが高い社会の実現、経済・財政・社会保障の持続可能性の確保・一体的な改革をビジョンとして掲げました。
 更に、過疎化が進む、また都市化が激しくなって財政事情が非常に厳しいという課題が出てくるわけですが、地域ごとの特性や成長資源を活かした持続可能な地域社会の形成も打ち出しました。
 そして、海外の成長市場との連結性の向上とエネルギーの構造転換。
 こうした5つのアクションとビジョンを定めまして、今、ようやく33年ぶりの賃上げと設備投資が100兆円、そして、大企業においては過去最高の経常利益が出ているわけであります。名目GDPも600兆円のところまで参りました。
 2030年までの間に、生産年齢人口が減少しても、実質1%を上回る成長を確保する。そしてまた、それを超える更なる成長を目指すという目標の下で経済を成長させていく。結果として、名目GDP1,000兆円が見えてくる。これを目がけた経済成長をしていこうではないかということです。
 次のページをめくってください。短期的な取組の中で、このグラフをご覧いただければ分かるように、賃上げは昨年から今年にかけて跳ね上がっています。これは重要なことだと思っています。それから、設備投資もバブル以来の100兆円を超えたという状態です。大切なことは、今、実質賃金がまだマイナスの状態になっています。これは物価の上昇が激しいので、これだけ賃金が上がってもまだ厳しい状態があると。しかし、ここを頑張って乗り越えていくことで、物価上昇率を超える賃上げの定着が可能になるのではないかと。頑張ればできるということをうたっています。
 加えて、投資を行って、企業の生産性を向上させて、そこから企業収益をもっと拡大させる。それが賃上げの原資につながっていく。こうした状態をつくらなければならないということで、潜在成長率を底上げさせるためにも、生産性向上のための戦略的投資を行っていくことが短期的な目標です。それらをどう具体化させるか、この骨太の方針の中にそれぞれの方針を書かせていただいたと。しかもそれは単発だったり別々のものではなく、連携させながら、社会課題を解決しながら、経済を成長させるとともに、国民負担について非常に心配されている社会保障を維持しつつ、過疎地においても元気に暮らしていける、満足を少しでも得られるような、そういう地域をつくるためには、各種の政策を総合的に連携させる。それが今回の骨太の方針の中の大きな骨子です。
 次のページをめくってください。中長期の経済財政運営です。2030年までが改革のラストチャンスと、よく私どもは申し上げるのですが、上のグラフをご覧いただくと、生産年齢人口と規定されている15歳から64歳の人口で言うと、2030年以降激減していくことが統計上明らかになっています。一方で、25歳から74歳というカテゴリーで言うと、まだ2030年代は減少率を抑えることができるわけです。ですから、この15歳から64歳が激減する2030年までの間に、きちんとした将来の予見可能性を高めて、それぞれが、望んだ方が望むだけ働ける、安心して老後や子育てができる、そういう社会を全体的な政策の連携の中でつくっていくことで、最終的にはまた人口を少しずつでも増やしていくと。こういうことが見て取れるわけであります。
 そのためにも、まずは65歳から74歳の健康な方で、また労働の参加意欲のある方には道を開こう。女性の更なる雇用の拡大を図ろう。非正規から正規雇用へと、そうした働き方の改革も進めていこう。これが骨太の方針の中でうたわれています。
 それから、左下のグラフは2030年代以降の長期推計ですが、現状投影の今までのトレンドで行けばどんどんと実質成長率が下がっていってしまう。しかし、長期安定から、更に成長実現ケース、実質1%を安定的に上回る成長を確保する、そうしたことができていけば、安定した経済がつくれると。そのためには、DX、新しい技術を徹底して社会実装させる。また、フロンティアの開拓をしていこうと。リスキリングも全世代に渡ってのリスキリングが必要です。
 この中で一番重要なのは、高齢化が進むとともに社会保障が膨らんできます。歳出改革の努力は継続しますが、それに加えて、大きな病気にならない。それから、自分で活躍できる方には活躍する機会をつくっていく。そうした中で、予防医療や健康づくりを全世代型で取り組んでいこうということを骨太の方針の中に今回初めて取り込みました。そして、現役世代の可処分所得の向上と、それらが相まみえますと、少子化対策にも結果としてつながっていく。こうした連携が大事であるということを申し上げたわけです。
 そして、これは参考ですが、とても重要なことで、成長実現ケースでこの国の経済が新しくつくれるならば、2030年以降は高齢化が進み、高齢人口が更に増えていくわけですが、その中においても、医療の高度化をする、歳出改革努力をする、それらを行った上で、給付費の改革をしながら経済成長もしていく場合には、結果的に2033年以降の社会保障、国民負担率は横ばいから、場合によると少しずつでも下げることができると。こういう経済が実現できないかということを私たちは今回の骨太の方針の中で問うてるわけです。
 次のページをめくってください。そのために何ができるのかという中で、一番大元にあるのは、一人一人が豊かさと幸せを、それぞれの地域で、自分たちでしっかりと自立しながら生活していける地域・社会、そうしたものをつくらなければならないと。だとするならば、やはり意欲のある方々が年齢・性別に関わらず、自由で柔軟に活躍できる、そうした働き方、給与体系をつくっていこうではないかと。そして、自らのキャリア設計の中で希望に応じて働くことで、生涯所得を拡大させることができるのではないかと。
 世界の平均的な65歳の疾病状況が左上のグラフのラインです。それに対して、日本は76歳になって世界の65歳並みの健康状況になる。日本人は世界において長寿の国ですが、加えて、元気な高齢者が多いということがこのデータ上も明らかになっていて、「だから皆さん働きましょう」ではなくて、それだけ元気な方々がいらっしゃるので、それぞれの求めに応じて、皆さんが自分の納得できる、満足できる生活を送れるようにしなければならない。高齢層の労働参加率の推移も、過去20年間で5歳分若返っている。これが現状です。ですから、そうしたご希望に応じて活躍できる社会、結果的に私たちが健康で長生きをしていくということは、社会保障費の負担軽減にもつながっていくことになるわけです。そこが一番の根本だと思います。
 この人口構造の中でも日本経済を維持するためには、どういう観点でみんながそれぞれ自分の役割を果たしていくかということが大事だと思っています。その上で、最終的に経済の規模を拡大させつつ、経済再生と財政健全化を両立させていかなくてはならないということで、そのためにも今回の骨太の方針で、まずは財政健全化の旗を降ろさずに、これまでの目標に取り組んでまいります。そして、2025年度の国・地方のPB黒字化を目指すとともに、計画期間を通じ、その取組の進捗成果を後戻りさせることなく、債務残高対GDP比の安定的な引き下げを目指す。経済財政と財政健全化の両立の歩みを更に前進させていく。その際に、「経済あっての財政」であると。そして、現行の目標年度を含むこの目標によって、状況に応じたマクロ経済政策の選択肢がゆがめられてはならないということ。これが今回の健全化目標でうたったところです。
 予算編成の基本的な考え方としては、まずは2025年度から2027年度、この3か年について、これまでの歳出改革努力を継続していく。日本経済が新たなステージに入りつつある中で、経済や物価動向等に配慮しながら、各年度の予算編成過程において具体的な検討をしていく。その際には、重要な政策の選択肢を狭めることがあってはならないし、機動的なマクロ経済運営を行いつつ、潜在成長率の引き上げにも取り組むという形で書きました。
 これは全てがうまくいくと約束されているわけではありません。でも、様々な要素が、我々の国はもっと新しい経済をつくって、そこで成長していきながら、自分たちとしてまた違うステージでこの国を成長させていくことができるのではないかということが、あらゆるデータで出ております。そういった中で、今回の骨太の方針では、これまで骨太の方針の中では計画期間を設けまして、「経済・財政再生計画」を作りましたたが、ちょうど切り替え時だったので、再生計画、従来の延長ではなく、新生計画という形で、新しい計画期間を設け、新しい計画内容にして、それをまずは当面の予算編成に活かしていこうと。こういう提案をしたということです。
 骨太の方針自体は大部であり、様々な政策が織り合いながら進めていくわけですが、まずは概要ペーパーを作りました。ここに書いてあるのは、今お示しした概要ペーパーです。それから、これらの政策に対してどんな政策があるのかというのが、経済ステージや社会課題への対応や、持続可能な経済社会をつくるためのということで、具体的な15の政策をピックアップしまして、政策ファイルを作って、これは広く国民の皆さんにもご覧いただけるようにホームページ等で公開します。皆さんにはお手元にお配りしました。
 新しい経済のステージというのは、キャッチフレーズといいましょうか、言葉だけで終わらない。必ず実現させる。そのためには政策連携が必要で、ありとあらゆる政府の政策をできる限り連携させながら相互連携、相乗的な効果を出しながら、新しいステージに持ち上げるための規制緩和、スタートアップ、新技術の徹底実装、こうしたものを使いながら実現をさせていきたい。このように思っていまして、総理といろいろ相談しながら新しい計画を作りましたので、これをしっかり実行できるようにしていきたいと思っています。
 私からは以上です。






2.質疑応答

(問)3問あります。今回、3年ぶりに2025年度のPB黒字化が明記されましたが、達成に向けた大臣の意気込みをお聞かせください。
 そして、一部報道に、総理が電気料金の補助の再開や年金生活者への給付など、物価高対策を表明するということがありました。この事実関係についてお聞かせください。
 最後に、この物価高対策の財源にもよりますが、仮に大型の補正予算の編成となりますと影響も生じると思います。経済再生と財政健全化を両立するために望ましい歳出はどういったものがあるのか。大臣のお考えをお聞かせください。


(答)まず、2025年度の国・地方のPB黒字化については、これまでも政府の健全化目標として旗を掲げてきたわけであり、今回、その旗は降ろさないということで骨太の方針の中にも明記をしています。そして、今も少しそこは説明しましたが、この実現に向けては、私たちの国の経済をこれまでの延長線ではない新しいステージに移行させなければならないと。これは半年ですぐ簡単に変わるわけではありません。しかし、これまでの延長ではない新しいステージをつくるための努力をしながら、まずは目の前の厳しい生活や物価対策をやっていく。その織り交ぜた対策が必要で、経済の規模を拡大させながら、経済再生と財政健全化の両立を図るということを改めて確認しているところです。
 そのためにも、官民連携の下での国内投資を更に活性化させようと。さらには、歳出改革努力は不断の努力が必要だと。このようにも思っています。そして、これらを、EBPMと呼んでいますが、データに基づいて、どういう効果を上げるかといったものを検証しながら、メリハリの効いた予算編成に取り組みたいと思っています。各省にそれを促していきたいと思っています。それは、経済財政諮問会議においても、とても重要な議論をこれまでもやってきましたし、骨太の方針の中に織り込ませていただいています。
 ですから、多年度にわたる政策をどうやって連携させながら効果を出していくか。これがとても重要なので、一つ一つがいいか悪いかに加えて、それがどの政策と連動して、どういう効果を上げるのかということを検証できるようにしていきたい。また、それを各省に促していきたい。そのためのEBPMの強化策、これは今後も検討期間がございますから、更にそれを深めていきたいと思っています。
 それから、一部報道でこの後に総理が会見をということですが、それは会見を聞いていただかないと、私どもは何とも申し上げようがないです。ただ、一昨日の党首討論において岸田総理は、賃上げの流れを確実なものとするためには、今月から実施している定額減税、これに加えてエネルギーの高騰などについて、また年金生活者、中小企業等に対しての配慮、これを秋に向けてやっていかなくてはならないというようなことを討論の中でも触れておりました。
 それから、国会において、経済の好循環を実現させるために、来年度以降に物価上昇を上回る賃上げを定着させていくと。今年、実質賃金をプラスにしながら、そうした構造的賃上げを実現させながら、それを来年度以降も定着させていく必要があると。そのための様々な政策を総合的・多面的に講じていくと。それも状況を見ながら機動的な政策運営をしていくのだと。これは私たちがずっと申し上げていることですから、その中で、この後に総理からどういうことがあるか、それはしっかりとお聞きいただきながら、いずれにしても、何かがあれば、具体的な調整は与党も含めて今後やっていかなければならないだろうと思っているわけです。
 それから、PBの黒字化を目指すことと、仮に新たな追加の財政支出をすることに矛盾はないのかという質問だと思いますが、まず、2025年度のPBに影響を及ぼすのは、2025年度の財政執行についてです。ですから、それは注意深く見ていかなければならないのですが、我々とすれば、健全化の旗を降ろさない、しかも、それは複数年度に渡って機動的なマクロ経済運営をしながら実現させていくということを申し上げています。その中で、やはり過度な影響の出ないような配慮をしながら、でも、目の前で打つべき政策は打っていく。こういうバランスの中で行っていくことではないかなと思っていますし、それについては常に現状を見ながら検討していきたいと考えています。



(問)実質1%の成長の考え方について確認させてください。これまで政府目標としてきた名目3%、実質2%とは数字が違っているわけですけれども、前の会見では更に高い成長を目指すということで矛盾はしていないということだったとは思うのですが、今回、閣議決定された骨太の方針最終案には実質1%と、それの延長線上にある経済の姿として、名目1,000兆円というのは数字として入っていますが、名目3%、実質2%というのは数字としては入っていません。
 先ほど画面で説明された資料のほうには成長実現シナリオということで実質2%の成長を想定したものは入ってはいましたが、閣議決定の文章には入っていないということで、これは実質的に政府目標の成長率の書き換えということにはならないのか。つまり、実質2%を実質1%の成長目標に変えたということにはならないのかということを改めて確認させてください。


(答)3ページを出してくれますか。今のご質問は左下のグラフの話ですよね。ここにあるのは2030年、2035年、2040年、2045年と、長期推計なのです。2030年以降の段階になると、生産年齢人口が激減していく中で、現状の成長率とは違う経済の姿が出てくるわけなのです。ですから、現状の目標を変えておりません。
 ただ、将来の、私たちが新しいステージに移行した場合に考えていかなければいけない経済のステージというのは、前提条件として、少なくとも15歳から64歳は激減していく一方で、25歳から74歳は減少率は横ばいになっていきます。今、65歳から74歳までは生産年齢人口に入っていないですから、そういうような前提条件が変わる中で、我々が長期安定から成長実現を目指す。少なくとも、2030年代以降の実質1%というのを今回、次なるステージの目標として挙げたのであって、現状の政府目標を変更したものではないということでこの間も説明しました。そこを国民の皆さんにも丁寧に説明していかなければならないと思いますし、現状でも実質1%を超えた成長になっていますから、この現状を下げようということではないのです。
 ただ、将来は、実質1%を上回り、それでも更に上を目指すことによって、こういったものが見えてくると。そのために何をやるべきかをみんなで考えながら、政策を打っていかなければいけないと今回うたっているということです。



(問)2030年度までは分かったのですが、2030年度以降の実質1%と、名目1,000兆円を目指すというのは、それ自体は政府目標なのですか。つまり、2040年頃に名目1,000兆円の経済を目指すというのを目標にするということなのでしょうか。


(答)政府の経済目標というのは、今の当該年度を始めとする当初のある期間においての目標を、まず現実的な目標として設定します。これはあくまで長期推計であって、私たちの将来の経済のステージを目がける中での目安を示したものであって、仰っている目標とは次元も取扱も違うと私は考えます。



(問)大臣、骨太の方針の策定、お疲れ様でした。21回目になるのですけれども、今年もまさに骨太も成長戦略も第1章の書込みにかなり体温とか汗のにおいを感じました。
 骨太を振り返って、国家の、政権の戦略というのでしょうか、何をしようとしているかということが全て盛り込まれてよく分かるような資料になっていると思うのですけれども、骨太を1年間やられて、御所感と、今後、骨太の在り方について課題があると考えられていたら、それがどこかお伺いしたく。
 まさに2001年に宮澤総理が骨太という言い方をおっしゃって、策定されて。最近外れているのですけれども、構造改革も随分進められて、郵政の改革とかを進めてきました。その後、政権交代になると、今度は徐々に各省がいろんな政策を持ち込んできて、それをまさにさっきおっしゃったように横の連携を意識しながら策定されてきたと思います。
 一方、毎年同じものが見えるとか、私が聞いたエコノミストの方では、国家の何十年後かのどういう国を目指すのかというのももう少し盛り込んでほしいというお話も受けました。今回、まさに2060年の姿を見たのですけれども、数字そのものも大事なのだけれども、もう少しこうありたいのだというものを見たいという意見もありました。これはあくまでも私の取材ベースなのですけれども。そのような中で1年間策定されて、今回、1年間を振り返っての御感想と、今後、骨太はどうあるべきかという何か御所見がありましたらお願いいたします。


(答)まず、私は経済財政政策担当であって、経済再生担当をはじめ六つの大臣を拝命しているのですが、全て連携しています。就任に当たって、冒頭お尋ねされた時にお答えしましたが、いかに政策の横串を刺していくか。今の延長にないといっても、全く別物とか、今までのものを壊して何か別のものに変えるということではなくて、現状を踏まえた上で、しかし、将来のこの国の人口構造や、世界における位置、また、技術の進展といったものを加味して、全く違う形に切り替えない限りは、従来の高度経済成長の頃のモデルがまた戻ることにはならないし、地方から集団就職で農業から大規模に工業に移るとか、こうしたことはもう起きないわけです。
 ですから、私とすれば、あらゆる政策をいかに連携させながら、そして、この枠組みを超えていくか。それには規制改革が必要であり、これまではできなかったことを可能にする新しい技術の開発が必要であり、また、それをなぜできないのか、原因を徹底追求しながら、直せるところを直そうということを1年間ずっと続けてきましたし、今もやっています。それぞれ理由があるのですが、理由がはっきりすればするほど解決の道が見えてくるので、そういった詰めを行っているところです。
 大事なことは、何が原因なのか、何がネックになっているのかが分かってきているが、今までの慣行や今までの枠組みの中で、「分かっているのだけれども直せないんだ」を打破しないといけない。なぜならば、それは国の構成が変わってしまうわけですから、この構成と地方も過疎は簡単には止められないわけです。でも、過疎であってもきちんと自立していける、そういう対策を打たなければならないと。
 今回、説明の中ではさらっとしか言いませんでしたが、全国各地でコンパクトシティーをやろうと。でも、一つ一つの、1788の自治体の中でコンパクトシティーをつくっても、そもそも維持できない。であるならば、そもそもの地域の広域化も、場合によっては地勢だとか市町村や県を越えて、そうした中でこのエリアで一つの広域圏をつくろうと。その都市単位で役割をどう分担するか、それでもサービス可能なような交通動線であったり、交通サービスであったり、DXをつかったり、そうしたこともできるようになってきているので、そうしたことをできないならば、その理由が分かったならば、どうすれば実現できるかということを追求していきたいと思っています。
 それから、目の前で大事なことは、リスキリングにしても、カタログ式の補助金にしても、制度は作りましたが、実行性をいかに上げるか。カタログ式の補助金で企業が設備投資するチャンスですと。大企業は自分たちの力で大きな投資をどんどんやっていきますが、中小企業の生産性を上げるためには国がお手伝いしなければならない。なので、カタログ式の補助金は作りましたが、それを使ってもらうためには、各業界や各企業が使い勝手の良い制度にしなければならないわけです。
 私たちは今、国でカタログを出して、いよいよ申請を受けるのですが、それは一つ一つの機器を、この機器については簡単に申請をできるようになりますよと。でも、ある業界は機械はいくつか入れてシステム化しないと省人化できないのだと。でも、全体が整って一つのシステムになるのに、カタログ式の対象になっているものが一つしかなかったり、ぽつりぽつりとある程度では効果が出ないわけです。こうしたことが分かってきます。そうすると、ならばカタログの中の対象を変えていこうではないかと思います。
 リスキリングも、日本においてはリスキリングが大事だということは皆さん分かっているが、実際は、失業した人が次の職に移るための取組と捉えられています。しかし、今は希望して失業していない限りほとんどの方が働いています。ですから、このリスキリングも、若い方だけではない、世代を問わず、どのような世代であっても、どんな講座を受ければ、自分は新しい職種、同じ会社の中でより給料の高い、もしくは自分の能力を活かせる職種に就くことができるのか、そのために必要な研修を受けてもらう。国が助成をして、自分のスキルを上げながら、ジョブ型という企業が求める仕事、そこに就いていただく。このジョブ型もいよいよこれから本格的にします。
 ですから、メニューはだいぶ出そろってきたのですが、これを本当に世の中で使いこなしていただく、リスキリングがブームになったと。誰も彼もがみんなで、さあどうやって自分はリスキリングの講座を受けようかって、そういうムーブメントが起こせるかどうか。今、周りの企業が省人化投資ですごい勢いで投資していると。国の用意した予算が足りなくなっていると。このような状況をどうやってつくりますかと。
 中小企業1万社を海外にハンズオンで輸出企業になっていただくことを打ち出しましたが、実際にどういう企業が何をすれば、どこの国に輸出をすれば、それが実現できるのだと。これをもっと業種ごとにやらなければならない。ですから、私たちが今やるべきは、目の前で実行性を上げるための工夫と、その先にあるたどり着くべきゴールを明確にして、そこに行くためのバックキャストをして、何年度に何をやっていくかということを、しかも、取り残される方のないように、みんなが納得して、よし、では私たちはそっちの方向に向かっていくんだということが、国民全体がそれを目標とできるような、私はムーブメントと呼んでいるのですが、世の中がそうした変革のムーブメントをつくり出せるかどうか、それが私たちの課題だと思っているわけです。











3.木村内閣府政策統括官(経済財政運営担当)による追加説明

 本日は、経済財政諮問会議と新しい資本主義実現会議の合同会議という形で開催しました。
 私からは、第9回経済財政諮問会議の部分の概要をご報告します。本日は、「骨太方針2024」について意見交換を行いました。
 井林副大臣から、前回の経済財政諮問会議でお示した原案からの主な変更点を説明した上で、4名の民間議員からご発言がありました。
 まず、1人目の民間議員です。
 岸田政権は、「デフレからの完全脱却」、「成長と分配の好循環」を目指して取り組んできた。約30年ぶりの水準の賃上げ、100兆円を超える民間投資の実現など、施策効果が現れつつある。「骨太方針2024」は、この流れを加速、新たなステージに移行させるための施策が盛り込まれており、高く評価する。特に、人口減少が本格化する2030年以降を見据え、経済構造を変革するという視点も踏まえて、当面の取り組むべき課題を整理した点を高く評価する。
 その上で3点申し上げる。
 1点目は、適度な物価上昇の実現。物価上昇を上回る賃金引上げの定着の前提は、2%程度の物価上昇である。政府・日銀においては、これまでの共同声明に基づき、この実現を図っていただきたい。
 2点目は、多年度でバランスさせるダイナミックな経済財政運営の実現。民間の予見可能性を高める中長期の計画的な設備投資を、当初予算で着実に措置し、その財源を一体的に検討すべき。
 3点目は、公正・公平の観点からの全世代型社会保障改革の実現。給付と負担の将来見通しを踏まえ、税と社会保障の一体改革について早急に検討を開始すべき。
 今後の施策展開に向けては、我が国が抱える「人口減少・少子高齢化」、「資源を持たない島国」という2つの制約の中で、「公正・公平」、「持続可能性」という2つの観点を踏まえた経済財政運営を期待している。
 2人目の民間議員です。
 骨太方針の中身については、それぞれが検討を重ね、それぞれの事情・思いを踏まえつつ、現時点でできそうなものが最大限書かれているものと承知している。特に、2030年までの見通しが入っていることを評価している。あとは、これをどういう形で達成できるのか、実行力に期待している。特に、実質GDP成長率1%の達成に期待する。そのために、副題にもある「賃上げと投資がけん引する成長型経済の実現」の中で、特にGX投資を活用しながら、成果を出していただきたい。賃金上昇、金融政策の修正など、現在は歴史的転換点にあり、ここからどのように成長軌道に乗せていくかが重要。賃金上昇を含め、実際に数字で結果が出てくることが望ましい。
 その上で、秋以降の諮問会議の検討課題として3点申し上げる。
 1点目は、EBPMの徹底。EBPMはうまくいかないという声があることも承知しているが、コスト・ベネフィットを徹底的に見ることが大事。実行してきた政策のコストと効果をしっかり検証し、それを示すことが、国民の皆様の理解を得るのにも重要であり、その結果を諮問会議に報告することが大事。
 2点目は、独立財政機関につながる仕組みの検討が重要。プライマリーバランスの見通しなどを客観的にどう見るのか、諮問会議がそうした役割を担うことも重要。
 3点目は、財政健全化の一層の推進。足下の円安に関し、短期的には金融政策の影響があるかと思うが、長期的には財政健全化に取り組んで、そのコミットメントを発信していくことも重要。
 3人目の民間議員です。
 3点お話がありました。
 1点目は、健康をベースに、年齢や性別に関係なく、誰もが活躍できるウェルビーイングが高い社会というビジョンを実現させることが大事。実現に向けて、年収の壁の抜本的改革や、社会保障を「治療」から「予防」へと転換していくような環境整備が大事。
 2点目は、人口減少は地域の課題を多様化・複雑化させている。国が一律に対応するのではなく、地方自治体が裁量を持って、例えば民間企業の誘致を柔軟にできるようにしていくことが大事。
 3点目は、EBPMに基づくPDCAの徹底が必要。情報開示やデータ整備の徹底によって、ビジョンを実現させていくことが重要。
 4人目の民間議員です。
 世界全体及び日本の経済構造が大きく転換する中で、中長期的な社会の方向性、具体的に取り組むべき施策の内容を示したことは非常に意義深い。第3章の「経済・財政新生計画」を定めたことも高く評価できる。
 ワイズスペンディングの推進が重要であって、データに基づき施策の進捗を把握し、EBPMを進めていくことが重要。そのため、EBPMの予算をしっかりとつけていくことも重要。
 財政健全化を含め、政策の実行力が問われている。取りまとめた施策内容を国民の皆様に対して、アピールすることも重要。その観点から作成された概要資料は有用なので、しっかりと使ってほしい。
 社会の構造転換に合わせて、経済の在り方の見直しや制度改正を進めることが重要。本方針に示された副題を実現するべく、諸課題を推進していくべき。
 日本が転換期にある中で、内外のステークホルダーに対して実行力をしっかり発揮していくことが求められていると考える。本方針に盛り込まれた施策とその成果をしっかりとアピールしていただきたい。
 最後に、総理から締めくくりのご発言がありましたが、皆様にお聞きいただいたとおりですので、割愛いたします。






4.坂本次長(内閣官房新しい資本主義実現本部事務局)による追加説明

 続きまして、新しい資本主義事務局から、新しい資本主義実現会議の議事について、御紹介させていただきます。
 本日は、経済財政諮問会議との合同会議ということで、新しい資本主義実現会議からは11名の委員に御出席をいただき、時間の関係もありましたので、9名の委員から御発言をいただいております。
 まず、シンクタンクの代表の委員からの御発言です。
 本日の実行計画改訂版に挙げられている労働市場改革、企業の参入・退出円滑化、国内投資促進などは、いずれも日本経済がダイナミズムを取り戻し、持続的な成長を実現するために必要なものである。今後、働き手が減少し、手をこまねいていると圧倒的な供給力不足に陥りかねない。持続的な経済成長に必要なことは、人への投資により、若者、高齢者、女性が潜在的能力を発揮できるようにすること、労働生産性の向上に裏づけられた実質賃金の上昇が実現していくことであり、それらを通じた経済の強靱化が、少子化対応にも結びつく必要がある。今回の成長戦略をしっかりと実行に移し、今後も揺るぎなく進めていくことが重要であるという発言でございました。
 続きまして、企業経営者の委員からの御発言です。
 本日の改訂版については、異論はない。今回の改訂版で賃上げの定着、ジョブ型人事の推進、労働移動円滑化が明記をされているが、日本経済の活性化のために、これらが確実に実行されることを期待します。スタートアップの育成については、引き続き国を挙げて取り組んでいただきたい。2年半の新しい資本主義実現会議の積み上げが非常に大きな成果となっている。インバウンドについて、日本経済を支えていくであろう観光政策については、移動の足の不足の問題の解決を目指し、タクシー事業者以外のライドシェアの参入促進をはじめ、制度設計について引き続き検討し、結論を出していきたいと思います。
 続きまして、中小企業団体の代表の委員からでございます。
 今回、政府が成長型経済への転換を果たしていくというビジョンを打ち出されたことを高く評価します。実行計画の速やかな実施を図られたい。中小企業の生産性向上、付加価値創出は、人とデジタルへの投資にかかっていると思います。経営者自らの自己変革を促進するとともに、社員のリスキリングや省力化に対する政府の後押しを強く求めていきます。新たな経済ステージへの移行を果たすためには、取引の適正化、価格転嫁の商習慣化が不可欠であるが、これはまだ道半ばである。社会の意識が変わるよう、官民一体となった一層の努力が必要です。地域経済への目配りも重要です。地域社会を支える中小企業の生産性向上、また、円滑な事業承継等への支援をお願いしたい。
 続きまして、ファンドの経営をされている委員の方からでございます。
 今回の実行計画改訂版に書いてあることが全て実現できれば、日本は新しい時代に入ってくると思う。非常にわくわくします。一方で、ある記者の方から、新しい資本主義は何もやっていないという話も聞いたが、この改訂版を全て読めば、同じわくわく感を感じていただけると思うので、この内容を丁寧に国民に伝えていくことをお願いしたいということでございました。
 続きまして、企業経営者の委員の方からです。
 十倉会長が出された選択的夫婦別姓の話には大賛成である。明らかに社会・経済の節目、潮目が変わってきている。30年間動かなかったことがいよいよ動き出しているので、それをどう変えていくかということが、実行計画にはほぼ全部書かれているので、これをやればいいと思います。この実行をさらに加速をさせてやっていくこと、国民の多くの方、特に若い世代が期待しているところだと思いますので、よろしくお願いしたい。
 続きまして、経済団体の代表の委員からでございます。
 GX・DX、科学技術・イノベーションへの投資をはじめ、サーキュラーエコノミー、コンテンツ産業など、新たな成長分野に力を入れる点を多数盛り込んでいただいた。こうした成長分野への投資を国際競争力につなげるべく、労働市場改革、柔軟な働き方の実現など、今後、さらなる施策の展開を期待しています。今年度、デフレからの完全脱却を実現する歴史的な年とするため、今回の改訂版の早期実現、官民連携の強化をお願いしたい。
 続きまして、大学の研究者の委員からでございます。
 新しい資本主義としてこれまで進めてきた方向性は正しい。成果はしっかり出ているが、世の中に伝わっていないことがもどかしいと感じています。少なくとも、AIに関してここ数年、改善を続けており、状況はよくなってきている。スタートアップに関しても元気になっており、志す人も増えてきています。DXやリスキリングなど、必要なところにも力が入っており、よい方向に雰囲気が変わってきている。そういった領域が少しずつ広がっているということを感じています。粘り強く進めていけば、大きく変わっていくと思うので、この方向で粘り強く進めていただきたい。
 続きまして、スタートアップの経営をされている委員の方からでございます。
 今回の実行計画には、社会課題解決、インパクトという言葉が多数使われています。社会課題をネガティブに捉えるのではなく、解決すれば大きなマーケットになるという新しい資本主義の基本コンセプトの一つである課題解決を通じての新たな市場の創造、すなわち、社会課題解決と経済成長の二兎の実現への意思が伝わってくる内容だと思います。社会課題解決の名の下に、政府、大企業、スタートアップ、NPO、国民全員が手を取り合いながら進んでいく、新しく明るい未来が近づいてきていると思う。イノベーション投資を加速させ、ビジネスの構造改革を行うことで、持続的な賃上げを実現し、みんなで豊かになる、この強い思いを民間でもしっかり実現していきたいと思います。
 最後に、労働組合の代表の委員からでございます。
 本日の取りまとめに当たって、労働者の立場から改めて強調したい点について申し上げます。持続的賃上げを目指す三位一体の労働市場改革については、能力開発に加えて、セーフティーネット機能の強化や取引適正化、労働者保護ルールを一体的に進める必要があります。ジョブ型人事の導入や労働移動、M&Aや私的整理の円滑化に関しては、職場の実態を踏まえた労使の協議、労働者の意思の反映が重要であり、労働者保護を大前提とする必要があります。解雇の際の金銭解決制度は、不当な解雇を促進しかねないことから、導入すべきではないと考えますという御意見でございました。
 こういった議論が行われた後、新しい資本主義実現会議の取りまとめとして、本日の案は了承されたということでございます。






(以上)