第3回記者会見要旨:令和6年 会議結果

新藤内閣府特命担当大臣記者会見要旨

  • 日時:令和6年4月2日(火)19:14~19:54
  • 場所:中央合同庁舎第8号館1階S108会見室

1.発言要旨

 本日、開催をいたしました経済財政諮問会議の概要についてご報告します。
 議題は二つです。まず、「マクロ経済運営」、そして、「経済・財政一体改革の点検・検証と中長期政策の方向性」。この二つについて議論を行いました。
 一つ目の「マクロ経済運営」に関する議論においては、物価・賃金・金利等が動き出した新たな経済環境において、2%の物価安定目標の下、持続的な経済成長が実現するよう、引き続き政府・日銀の連携が必要という意見、賃金も物価も上がるという前向きな意識を定着させ、経済の活性化につなげることが重要であり、そのためには生産性を引き上げて、成長力を強化することが必要不可欠であるという意見、金利のある世界への移行を見据え、財政健全化に向けた取組を推進すべきといった意見がありました。
 また、二つ目の議題の「経済・財政一体改革の点検・検証と中長期政策の方向性」については、少子高齢化・人口減少の下でも持続可能な経済・財政・社会保障を構築していくため、実質1%を上回る経済成長、医療・介護給付費対GDP比の上昇基調に対する改革、また、一定幅のPB黒字化の維持が重要であり、人口減少が本格化する2030年までに、こうした持続可能な経済社会を軌道に乗せるべく、今後3年程度で集中的な取組を講じていくことについての議論がなされました。
 本日の議論においては、足元の成長力の強化に加えて、生涯活躍できる社会の構築や、出生率の向上等を進めるべきという意見、今後の予算編成に当たっても、経済・物価動向等に配慮しながら、EBPMの徹底によるワイズスペンディングを図り、歳出改革を継続すべきといった意見をいただきました。
 総理からの締めくくり発言においては、私に対し、これからまとめる骨太方針に向け、中期的な経済・財政の枠組みの検討を進めるようご指示がありました。その際、民間のさまざまなアイデアを募り、社会課題の解決に資する新技術を徹底して社会実装するため、投資や起業の促進策も検討していきたいと考えております。
 諮問会議の詳細については、後ほど事務方から説明をします。






2.質疑応答

(問)今、ご説明いただいた経済財政諮問会議について質問です。今回、経済・財政一体改革の点検・検証結果や、2060年までの経済・財政・社会保障の試算結果が示されました。これを受けて、民間議員からは、金利のある世界への移行を見据えた財政健全化の取組の推進を求める提言がありました。今後、骨太方針の策定に当たっては、財政健全化目標や歳出の目安の在り方が焦点になると思いますが、今回の議論をどのように反映させるか、お考えをお聞かせください。


(答)本日の諮問会議においては、まず実質1%を上回る成長。また、医療・介護給付費の対GDP比の上昇基調に対する改革。また、一定幅のPB黒字基調の維持。これが実現できれば、長期的な経済・財政・社会保障の持続可能性を確保できると示されました。
 そして、これらは長期を展望した際に求められる要素でありますけれども、今後の金利のある世界への移行を見据えて、骨太方針に向けては、こうした内容からバックキャストしていかなくてはならない。そうした考えが重要だと考えています。
 例えば、経済あっての財政であって、財政健全化を実現化していくには経済成長との両立が不可欠であるということ。また、政府はPB黒字化を目標としていますが、それは単年度で実現すればよいということではなくて、安定的に実現していく必要があります。そのための経済・財政の構造をいかに獲得していくか、変革させていくか。こういった課題があります。こういった視点は、今後重要になってくると考えています。
 また、経済・財政一体改革の点検・検証において、これまでの歳出の目安に沿った予算編成、これがPBの改善と社会保障給付費の対GDP比の安定化に貢献してきたことが示されました。こうした実績と、物価・賃金・金利が上昇に転じたことを踏まえて、今後の財政運営に当たっては経済・物価動向等に配慮しながら、EBPMのさらなる徹底の下で歳出改革を継続していく必要があるという認識を共有しました。
 本年1月の中長期試算においては、民需主導の高い経済成長の下で歳出改革を継続していった場合には、2025年度のPB黒字化が視野に入ることが示されています。経済を立て直し、そして財政健全化に取り組むとの考え方の下で、2025年度のPB黒字化が視野に入ることを念頭に努力を続けていきながら、2026年度以降についても目標などを検討していきたいと考えています。
 本日の議論も踏まえ、今後、骨太方針に向けて中期的な経済・財政の枠組みの具体化を検討していきたいと考えています。



(問)本日の試算では、1%程度の成長率を今後維持していければ、財政も社会保障も安定的に推移できると示されました。ただ、2000年以降から足元までの日本の実質GDP成長率、大体平均すると年0.8%前後だと思いますが、果たしてこれから人口減少も本格化する中で、1%成長をずっと続けていくことが可能だとお考えでしょうか。また、それをどうやって達成していかれるのでしょうか。逆に、それを下回ってしまった場合は財政と社会保障は持続が難しいということかと思いますが、それに関するご見解を教えてください。


(答)これまでの30年間を考えれば、簡単ではないということだと思います。しかし、これを成し遂げなければ、人口減少、少子高齢化の日本社会において、将来的な持続的な成長や安定的な財政運営、これは極めて難しくなる。ですから、なんとしても乗り越えていかなくてはならないし、新しい経済のステージをつくりたいと思っています。そのことが、現実に可能かどうかが重要です。
 どう可能にさせていくかの方策はこれから詰めていかなくてはならないですが、これまでの国の成長の成果、今後の起こり得るべき改革によって、また、経済・財政・社会保障の一体改革が進んでいったときに、指標としてはそういったものが見せられるところまでの可能性があるということだと私は思っています。
 ですから、まさに30年ぶりのチャンスを迎えている中で、新しいステージに置き換えていかなくてはいけない。今までのやり方で業績拡大だけを図っていく、投資だけを膨らませていく、それは私たちが迎えている次の新しい時代のための経済には、まだそのままストレートにはなり得ないと思いますので、そこの工夫が必要だと考えます。
 何よりも、中長期的な成長を見据えるためには、潜在成長率をいかに高めていくか、これが重要です。そのための労働投入や資本投入、生産性の向上、それぞれについて経済対策にも盛り込みましたし、予算の中にも入っております。それをできるものは入れながら、具体化に向けて検討をしているということです。
 さらに加えますと、本日の資料においては、生産性の向上と労働参加の拡大、これはこれまでも常にセットで申し上げてきましたが、出生率の上昇の重要性もこの資料の中で指摘をしております。
 出生率の上昇に対しては、「こども未来戦略」に基づいて、少子化対策の強化が重要になります。加速化プランを実現するための各種支援策を盛り込んだ「子ども・子育て支援法等の一部を改正する法律案」、本日衆議院で審議が始まったところですけれども、これも、この「こども未来戦略」や「子ども・子育て支援」は、その分野だけの政策にとどまらず、今後の少子高齢化・人口減少社会においても経済が成長していく日本、そのための重要な要素として、子ども・子育て支援も含めた全世代型社会保障の構築、これが重要であって、その実現のための改革工程を既に示しています。そして、医療や介護制度の改革、こういったものも具体的な提案が出てきています。
 ですから、こういったものをあわせて、総合的に横ぐし連携させながら取り組んでいく。その先に私たちが迎えるべき新しい経済ステージの姿、これが見えるように努力していきたい。このように考えています。



(問)諮問会議とは別の質問ですが、今日衆議院で「子ども・子育て支援法」の改正案が審議入りしました。児童手当の拡充など、メリットがある一方で、財源の支援金をめぐっては懸念とか負担が増えるんではないかというような野党の指摘もあります。
 大臣は予算委員会でもさまざまな論戦をしてきたと思いますが、こうした「子ども・子育て支援法」についてどのように国会で審議をして、理解を求めていきたいか教えていただけますでしょうか。


(答)今回の「こども未来戦略」の中で、子育て支援の加速化プラン、予算につきましては既存予算の活用と、徹底した歳出改革、そして、新たな支援金制度、この三つの要素で財源を捻出していく。しかも、それは安定性のある持続的な制度にするということで打ち出しています。
 特に支援金については、この制度の設計上、歳出改革の効果によって負担軽減がなされる社会保険料のその軽減の枠の中で支援金の捻出をお願いする。こういうことで、従来からの負担の範囲で、実質の負担が増えない範囲での制度になっている。ここをやはり丁寧に説明をしていかなくてはならないと思っています。
 そして、その制度はなぜそこまでするのか。少子化対策であって、子育て支援金はなぜ全世代の皆さんに理解をお願いして、それを構築していこうとしているのか。それはまさにこれからの少子高齢化・人口減少社会の日本で、経済と財政と社会保障を維持していくためには、みんなで工夫しながら、働きやすい、若い人たちの所得が上がる、結果として結婚もしやすくなるし、また、子どもを安心して育てられる。そういう状態をつくるとともに、これから増えていく高齢者を支える現役世代、この方たちは、まずその前に子どもが生まれてこなければ現役世代に育たないわけですから、そういう各世代が連帯をしながら、そして、今いる私たちだけではなくて、次の将来世代に向けてもこういった制度が必要ではないかということを丁寧に質問に対してお答えしていきたいと思います。
 総理も、こども政策担当大臣も一生懸命に答弁をされて、説明されていますが、私はこの経済・財政の全体の政策の枠の中で、いかにこの部分が必要かということを説明させていただきたいと考えています。



(問)諮問会議についての最初の答弁で、PBの単年度黒字化だけではなく、安定的に見ないといけないということで、今後、骨太の方針に盛り込んでいく中で、中長期の枠組みを意識するというような趣旨のことをおっしゃったと理解したのですが、ここで言っている中長期というのはどれぐらいのスパンで考えていらっしゃるのか教えていただければと思います。


(答))今、私が申し上げたのは、本年1月の中長期試算においては、民需主導の高い経済成長の下で歳出改革を継続した場合には、2025年度のPB黒字化が視野に入る。まず、2025年度のお話を申し上げました。
 その上で、これは2025年度の単年度で終わる話ではなくて、その後も財政の健全化に取り組みながら、2026年度以降についても目標などを検討していきたいと、このように申し上げたわけでありまして、今後、議論をしながら、骨太方針に向けて枠組みの具体化を進めていきたいと申し上げました。



(問)つまり、2026年度以降の目標を具体的にいつ頃までをターゲットにするというのは、まだこれからの議論ということでしょうか。


(答)まだこれからですし、今、まずは2025年度に向けて努力をしているところです。しかし、その先のことも考えていかなくてはならない。賃上げを持続的、構造的なものとしなければならないのと同様に、この財政健全化というものはしっかりと先の目標も立てなくてはいけない。しかし、その大前提は、経済が成長していく、力強い経済を実現した上で財政をきちんと維持していく。この今まで出している方針の下で、どのように工夫していくかということを検討していきたいと申し上げたわけです。











3.木村内閣府政策統括官(経済財政運営担当)による追加説明

 令和6年第3回の経済財政諮問会議です。
 新藤大臣からご紹介がありましたように、議題は2つでした。「マクロ経済運営」と、「経済・財政一体改革の点検・検証と中長期政策の方向性」についてです。
 前段の議題については、日本銀行の植田総裁から資料1のご説明をいただき、その後、意見交換を行いました。
 2つ目の議題については、内閣府から資料4から6を説明した後、意見交換を行いました。
 主なご意見をご紹介します。
 まず、1つ目の議題です。
 1人目の民間議員です。
 物価上昇に負けない賃上げに取り組み、大手企業を中心に昨年を大きく上回る回答が相次いでいる。こうした賃上げの力強い動きを持続的なものにするためには、適度な物価上昇の下、良好なマクロ経済環境が維持されることが必要。政府・日銀には、これまでの共同声明に基づき、2%程度の適度な物価上昇の実現を目指していただきたい。
 良好なマクロ経済環境の実現には投資・消費の拡大が必要である。また、マクロ経済政策、社会保障・税制、労働政策といった3つの分野で一体的に取り組む必要があり、若年世代の将来不安を解消するためには、全世代型社会保障制度の構築が急務である。
 デフレからの完全脱却や成長と分配の好循環といった岸田内閣の取り組むべき重要課題については、賃上げのみによって解決するのではなく、今後も経済界と政府・日銀が一体となって取り組んでいくことが必要。
 2人目の民間議員です。
 市場関係者に対して、「脱デフレ宣言をしたほうがいいのか」、「アコードの見直しをすべきか」ということについてのアンケートを投資家に取ったので、その内容を共有したいということでした。
 まず、脱デフレ宣言については、脱デフレをしたほうがいいという意見が多数を占めた。タイミングとしては、4月あるいは定額減税が始まる6月以降という意見が多かった。若年世代の方からは、まさに新しい時代が来たということを表明してほしいという声もありました。
 目標とすべき指標については、従来、物価上昇率を指標としていたが、今後は賃金上昇率、経済成長率へと指標を変える必要があるのではないか。よって、例えば経済成長するという観点からは、実質GDP1%の成長といった明確な目標を対外的に発信する必要があるのではないか。
 次に、日銀とのアコードに関しては、比較的ポジティブに受け入れられている。今後、新たな目標を再設定することも重要ではないかという声があった。
 3人目の民間議員です。
 いまだ実質賃金そのものが変わっていくには厳しい状況である。いわゆる好循環の入口に入ったところであることを肝に命ずるべきである。
 好循環を確固たるものにするためには、中小企業の実態の把握、人材の流動化の2つが重要。産業別の中小企業や非正規の方も含めた月ごとの実質賃金をモニタリングすべき。中小企業の価格転嫁対策はまだ道半ばであって、しっかりと対応していくべき。
 さらに、人材の流動化については、生産性の向上、賃金上昇が重要。中高年層の活躍が大事であることから、リスキリングをして、大企業から中堅・中小企業に労働移動する流れをつくっていくことが大事。
 4人目の民間議員です。
 マクロ経済環境が重要な局面を迎えており、持続的な賃上げを実現するために生産性の向上が重要。金融政策の正常化が行われたが、今後は市場経済のメカニズムが適切に機能し、経済のダイナミズムを取り戻すことが重要。
 何より大事なのは投資の促進である。デジタル投資、省力化投資、科学技術への投資、リスキリングを含めた人材への投資を進め、成長力を高めることが肝要。一方で、民間だけでは過小投資になりやすい分野については政策的な手当てが重要。
 その後の自由討議ですが、日本銀行の植田総裁からはこれから申し上げるような発言がありました。
 我が国のような人口減少社会にとって、中長期的な成長を実現するためには、リスキリングなどを含め、様々な形で人への投資を拡大し、労働参加を促していくことや、企業が生産性を持続的に高めるための投資を積極的に行っていく必要がある。
 日本銀行としては、2%の物価安定目標を持続的・安定的に実現していくことを通じて、企業が前向きの動きを強め、経済が健全に発展していくことに資することができればと考えている。
 次に、民間議員です。
 金利のある市場、昨今の為替市場に対しての見方を紹介したいということでした。
 金利のある市場に関しては、しばらく直面していなかったため、半信半疑ではあるが、ポジティブな影響がある。特に余剰資金は収益のあるほうへ向かうので、投資へのモメンタムが出てきている。
 為替市場に関しては堅調であり、日本銀行が政策変更をしても円安のトレンドは変わらないという反応。円安は輸入物価という観点で国民の生活に影響がある反面、企業やインバウンドにはポジティブな影響がある。よって、両者のバランスを見る必要がある。
 世界の目は今、日本に向いている。GXといった有望な投資先があるため、政府としての重点的な政策を強調し、PRすることが必要。
 次に、2つ目の議題についてのご意見です。
 松本総務大臣から書面での発言の提出がありました。内容はお配りしているとおりです。
 1人目の民間議員です。
 持続的な経済成長を実現するのは容易ではなく、生産性の向上、労働参加の拡大、出生率の上昇といった難しい課題に取り組み、結果を出す必要がある。こうした課題を解決するためには、官民が連携して、総力を挙げて取り組むことが必要。
 社会課題の解決をエンジンにすることが求められており、経済あっての財政という考え方を基本とすべき。政府は社会課題の解決に向けて、民間だけでは解決できない分野にターゲットを絞り、戦略的に取り組むべき。なお、その際には補正予算ではなく、当初予算で取り組んでいくことが企業の予見可能性を高め、国内投資を促すことを通じて持続的な経済成長につながる。
 成長政策と同じぐらい分配政策にも取り組まなければならない。社会保障制度に関しては、今後、応能負担の徹底を進めるべきであって、現役世代にとって過度な負担となっている社会保険料ではなく、国民全体で税による負担を進めていくことも重要。これは、税と社会保障制度の一体改革の議論であり、時間がかかることから、早めに議論を始めていくことが必要。
 2人目の民間委員です。
 中長期において重要な観点を3つ紹介したい。
 1つ目は、実質GDP1%の成長を政府として明確に打ち出す必要。実現は非常に困難であるが、GX、DX、AIといった勝ち筋を絞るべきである。
 2つ目は、データの整備に基づきEBPMを実施すること。新しい分野にはどのようなデータが必要なのかを明確にする一方、医療といった既存分野は引き続き、どのようなデータベースを整備していくのかを明確にしていくべき。
 3つ目は、財政健全化の重要性について。予備費や補正予算の中身にはよく注視が必要。弛緩させることと柔軟であることとは別である。PBの設定等適切な指標を設定する必要がある。
 3人目の民間議員です。
 中長期の経済財政運営については、経済を活性化させ、税収を上げ、可処分所得を向上させることで財政健全化を達成していくべき。
 現役世代の可処分所得を上げるために令和の時代に即した社会保障改革が必要。社会保険料の負担が増えないようにするためにはEBPMが重要。社会保障分野を見える化し、1人当たり医療費の地域差是正やセルフメディケーション、リフィル処方箋の進展も図るべき。
 エッセンシャルワーカーが減少していく中で、年収の壁の解消に向けた抜本的改革を行うことや、年金制度改革の議論を始めていくことが必要。また、求人情報を可視化するプラットフォームの構築も重要である。
 少子化対策の効果が現れるまでには時間がかかるので、外国人材の受入れの議論もしていくべき。また、キャピタルゲインの補足や応能負担の原則の徹底が重要。
 ミクロ面では空き家対策も重要。住宅費は若年世代の方にとって負担であることからも、都市部での空き家を自治体がリフォームして有効活用し、若年世代の方に提供していくことも重要ではないか。
 4人目の民間議員です。
 経済・財政・社会保障の持続可能性を確保した上で、経済成長のダイナミズム、ウェルビーイングが高まる経済社会を目指すことが大事。
 重要分野に的を絞った支出を推進することが肝要であり、そのためにもEBPMの強化が必要。
 経済・財政一体改革に向けた取組は道半ばだが、経済・財政一体改革委員会での議論を経て、相当程度、歳出改革が進んだものも少なくないと認識しており、その成果をしっかりと国民の皆様にアピールすべき。
 データを用いた施策の検証は重要。これからは事後的な検証ではなく、施策の企画立案の段階で検証体制を埋め込むことが必要。このことこそがワイズスペンディングにつながっていくと考える。
 その後の自由討議です。
 1人目の民間議員です。
 投資促進のためには、企業の予見可能性の確保が必要。足元では、為替・金利・物価等について不確実性が高まっていることから、政府・日銀には予見性を高めるような政策を期待している。
 社会課題の解決に向けて、民間だけでは対応が難しい分野にターゲットを絞った、政府による戦略的な先行投資をお願いしたい。いわゆるモダン・サプライサイド・エコノミクスであって、GX経済移行債がその代表例だと思うが、AI、ロボット、デジタル、エネルギー、セキュリティー、半導体といったその他の分野でもこうした取組を進めていただきたい。
 2人目の民間議員です。
 中小企業に必要なことは、デジタルよりもマネジメントノウハウである。
 働く人の所得向上については、シンガポールにおける、民間も協力している求人情報プラットフォームが参考になる。キャリアデザインを浸透させていくべき。
 3人目の民間議員です。
 長期推計の3つのケースのうちの成長実現ケースを実現するためには、改革工程表等の取組を着実に進めることが重要。実現のハードルは決して低くないが、成長実現ケースが実現した場合には、国民に向けて明るいメッセージとなるのではないか。
 パーソナルヘルス分野の成長産業化は、まさに、財政健全化との二兎を得る取組であり、しっかりと進めていくべき。医療DXとそれに基づく歳出改革を進めることも大事である。
 ここからは閣僚の発言です。
 まず、鈴木財務大臣です。
 今回、内閣府の試算において、経済・財政・社会保障の長期的安定性を確保するためには、実質経済成長率を1%以上に引き上げていくとともに、医療・介護給付費対GDP比の上昇基調に対する改革に取り組み、財政健全化を推進することが必要であると示された。
 経済成長率の引上げについては、潜在成長率の押し下げ要因となってしまう少子高齢化・人口減少を克服するため、官民を挙げて、これまで以上に様々な改革努力を積み重ね、民間主導の持続的な成長を実現していくことが不可欠と考えている。
 同時に、今後の財政運営においては、物価や金利が上昇に転じる中で、歳出改革の取組を継続すること等を通じ、財政の持続可能性に対する市場の信認を引き続き確保していくことが重要と考えている。
 引き続き経済あっての財政という方針の下、経済成長と財政健全化の両立に向けてしっかりと取り組んでいきたい。
 次に、齋藤経済産業大臣です。
 この数年、取り組んできた産業政策の成果も出始めていて、日本経済はマクロ面において大きく変化するチャンスを迎えているが、ここで気を緩めてチャンスを逃してはならない。30年間続いたコストカット型の縮み思考を2年間で簡単に変えられるものではない。ここからが正念場である。
 同時に、技術革新が飛躍的に進展する中で、国家間の政策競争も激化している。将来の「飯の種」を生み出す、社会課題解決型の国内投資を後押しするため、財政支援を含めて、積極的な産業政策をさらに展開し、継続していくことがコスト競争を勝ち抜くためには必要。
 経済状況に応じて柔軟に財政を運営しながら、成長に向けた投資を進め、成長を通じて税収が増加し、財政健全化を実現する。つまり、拡大均衡型の財政健全化を目指していかなければならない。まさに、経済あっての財政であるといったメッセージを明確に打ち出し、具体的な政策を講じていくことで、企業の予見可能性を高めることが何よりも求められている。
 半導体・AIや蓄電池、水素、洋上風力、バイオなど日本には有望な分野が多く存在している。こうした分野で、世界で勝負して勝ち抜くことで将来が開かれていく。今生じている「潮目の変化」を日本経済の構造変化につなげ、デフレ完全脱却を実現し、「投資も賃金も物価も伸びる成長型経済」に移行するため、まさにこれからが勝負。
 次に、武見厚生労働大臣です。
 最大の課題は、少子高齢化・人口減少である。その中でも、必要な社会保障を確保しながら、社会のダイナミズムを維持・向上させていくことが重要。
 本日の試算では、医療の高度化などによる医療費の伸びが懸念されているが、国民の健康を考える上では、イノベーションの成果が国民に行き渡っていくこととの両立を考えることが必要。
 社会のダイナミズムを維持・向上させていくためには、DXの推進等により生産性を向上させ、また、国民が健康を維持し、いつまでも活躍できる社会を実現していくことが不可欠。
 医療DXについては、「医療DXの推進に関する工程表」に基づいて、電子カルテ情報共有サービスの構築等の各取組を進めているところ。電子カルテ情報共有サービスの令和7年度の本格稼働や電子カルテ普及に向けて、必要な予算の確保についてしっかりと議論していきたい。
 また、昨年末の「改革工程」に盛り込まれた提供体制の効率化、健康寿命の延伸、能力に応じた全世代の支え合いなどの、全世代型社会保障の構築に向けた様々な取組を、国民の皆様の理解を得ながら、しっかりと進めていく。
 最後に、総理から締めくくりのご発言がございましたが、皆様にお聞きいただいたとおりでありますので、割愛いたします。
 私からは以上でございます。






(以上)