第1回記者会見要旨:令和6年 会議結果

新藤内閣府特命担当大臣記者会見要旨

  • 日時:令和6年1月22日(月)19:20~19:31
  • 場所:中央合同庁舎第8号館1階S108会見室

1.発言要旨

 本日は、私からまず3つご報告事項があります。
 まずは、1月14日から21日にかけてダボス会議年次総会に出席するとともに、CPTPPに関する会談、さらには先端技術・スタートアップ関連の視察を行うために英国、スイス、イタリアを訪問しました。
 ダボス会議においては、日本の経済政策に関するセッションにパネリストとして参加いたしまして、経済の好循環を伴う持続的成長を目指した日本の経済財政運営の方向性を紹介しながら、参加者の皆さんと意見交換を行ったところです。
 次に、英国においては、ベイデノック・ビジネス貿易大臣、CPTPP担当の大臣でございまして、サンフランシスコに続いて今回また会談を行いました。CPTPPの今後の課題、またスタートアップ政策などについても議論を行ったところです。
 さらに、英国、スイス及びイタリアにおいて、先端技術を開発するスタートアップ企業、それからスタートアップの支援機関、またシリコンバレーとは違うかたちのスタートアップを応援する仕組みがありました。その関係機関の皆さんと意見交換をしながら、様々状況を調査したというところです。
 特にある機関においては、今後、スタートアップの日本との連携も投げ掛けまして、今後そういったことも詰めていくことにしたいと考えております。それが1つ目です。
 それから、本日は経済財政諮問会議を開催いたしました。
 議題は2つです。「中長期の経済財政に関する試算」について報告をした後に、有識者にご参加いただく特別セッションとして、「目指すべき新たなステージに向けたDX推進、新技術の徹底した社会実装、EBPMの徹底」について議論を行いました。
 まずは、政府が報告した「中長期試算」については、高い経済成長が実現する「成長実現ケース」と、「ベースラインケース」についての試算結果を報告しました。
 「成長実現ケース」においては、特に10年後の試算の終期には名目GDPが800兆円に至るという姿を示しているわけであり、これは簡単なことではございませんが、その実現に向けて、具体的にどのような手段、対策が必要かといったことを今後、経済財政諮問会議で議論してまいりたいということを申し上げました。
 また、「特別セッション」では、お二人の有識者においでいただきました。まずは櫛田健児先生より、スタートアップを日本においてどう展開すべきかといったことについて、ご意見をいただきました。
 中室牧子先生からは、EBPMの推進について、まず大前提となる行政データの整備・公開が、海外に比べて日本はまだ遅れており、取組を更にしなければいけないというご指摘をいただくとともに、EBPMの推進は私たちの国家運営の中で非常に重要な要素となっているので、データの整備、また活用の方策について、是非今後もしっかりと議論していこうと、このようなことを言ったわけであります。
 そして、総理からの締めくくり発言はお聞きいただいておりますが、中長期的な展望を見据えながら、変革期間において取り組むべき重点課題、そして、具体的な方策について、経済財政諮問会議で議論を行って、今年の夏の骨太方針において取りまとめてほしいというご指示がございました。詳細については、後ほど事務方から説明いたします。
 3つ目はたった今、終わったところですが、本日は春季労使交渉の開始に先立つ労使の代表の皆さんとの意見交換を行いました。
 30年ぶりに迎えた大きなチャンス、経済の新しいステージへの移行のチャンスをつかみ取るためには、我が国経済に何よりも物価上昇を上回る構造的な賃上げを実現しなければならない。こうした「民」の努力を「官」としても強力に後押しするための所得減税などの政策を総動員する。
 そして、本日、ご参加の経済界の皆さんには、今年の春季労使交渉について、物価動向を重視し、「昨年を上回る水準の賃上げ」をお願いいたしました。
 この夏には賃上げと所得減税を組み合わせることで、可処分所得の伸びが物価上昇を上回る状態を官民で確実に作り上げること。
 第2に、「中小企業・小規模企業における賃上げ」。我が国全体の賃金引上げを行うためには、全従業員数の7割が働く中小企業・小規模企業における賃金引上げが不可欠である。そのためには、労務費の価格転嫁交渉などをスムーズに進め、賃上げの原資を確保することが鍵となるということです。
 さらには、こうした賃上げの後押しをするために、政府としては、赤字法人であっても繰延べで黒字になった時に税制を控除する、そういった賃上げ税制、それからカタログ式の省力化投資補助金、こういったものを実行し、労務費の価格転嫁対策に取り組むということを申し上げました。
 また、昨年末に決定した、「指針」に定めた「12の行動指針」に沿った行動の徹底を産業界に要請するとともに、独占禁止法等に基づく厳正な対処を行うことを申し上げました。
 また、各業界団体に対して、指針の徹底と取組状況のフォローアップを要請いたしました。
 「コストに占める労務費の割合が高い」、あるいは「労務費の転嫁率が低い」といった、特に対応が必要な22の業種については、自主行動計画の策定や転嫁状況の調査・改善を要請いたします。
 さらに本日のような政労使の議論を地方にも波及していただくためにも、「地方版政労使会議」の開催を一層積極的に進めてほしい。日本経済がデフレに完全脱却できるか、この正念場について、このチャンスをしっかりつかんでいきたいということを政府からお願いしたというところです。
 私からは以上です。






2.質疑応答

(問)本日の諮問会議の中で発表されました中長期試算で、2025年度PB黒字化の達成が視野に入っているとのことですけれども、まず、PB黒字化達成の意義について、大臣のお考えを教えてください。
 また、2025年度PB黒字化達成の前提として、成長実現ケースによる高い経済成長の実現と、歳出効率化努力の継続が必要となっておりますが、これら2点に関してどう取り組んでいかれるのか。
 また、一部には達成できるのか疑問視する声もあるようですが、本当に2025年度PB黒字化達成できるのか、お考えを教えてください。


(答)財政の健全化は国の基本です。そして、国の借金が経済の規模に比べて上昇すれば、経済財政運営が硬直化せざるを得ないということです。
 したがって、私たちが移行すべき「新しいステージ」において、弾力的かつ柔軟な、また積極的な経済運営を行うためには、やはりPBの黒字化というのが基本になってくるということだと承知しております。
 その意味において、今回の中長期試算は、賃金上昇率が年率3%、それから物価上昇率が年率2%程度の高い経済成長が実現するというのが「成長実現ケース」です。
 これをしっかりと実現させていくこと。これが単にデフレから脱却するだけではなくて、世界に対してきちんと競争できる。我々の日本経済を大きくしていくためにも、まずこの目標というものを皆さんで意識していく必要があるだろうという意味において、非常にこれは最もうまくいった例で、難しいことではありますが、しかし、計算上やればできる、そういうケースでもあるならば、ではどうやってそれを実現させるかということ、さらにこれをみんなで工夫していこうじゃないかということだと思っております。
 それから、実現可能なのかということですが、足下の大幅赤字については、2024年度には一時的な定額減税、それから累次の経済対策等に基づく感染症や物価高騰などの対応といった、経済下支えの支出が多いということになっております。
 一方で、民需主導の経済成長が進んでいく中で、今の歳出の大宗は2024年度までに執行されるということです。
 ですから、そういう中で2025年度のPBのバランス、黒字化に向けて、最大限の努力をしていく。そのための具体的な策はどうあるべきかということをしっかり詰めていきたいと考えています。











3.木村内閣府政策統括官(経済財政運営担当)による追加説明

 令和6年第1回の経済財政諮問会議です。
 先ほど新藤大臣からご紹介がありましたように、議題は二つでした。
 一つ目の議題、「中長期の経済財政に関する試算」については、内閣府から資料1-1、資料2、資料3の説明をした後、民間議員と経済産業大臣よりご発言がありました。
 次に、二つ目の議題、「目指すべき新たなステージに向けた特別セッション」について、櫛田健児先生から資料4、中室牧子先生から資料5に沿ってそれぞれご発言があった後に、意見交換を行いました。
 それぞれの議題について、主なご意見を紹介します。
 一つ目の議題について、鈴木財務大臣から書面での発言の提出がありました。内容はお配りしているとおりです。
 また、齋藤経済産業大臣からは、お配りしている書面のほか、追加でご発言がありました。
 日本の産業経済は重大な局面に立っている。胸突き八丁のデフレからの完全脱却をすること、また、急速に進む技術革新に後れを取ってはならない。
 それに続く形で、民間議員からご発言がありました。
 1人目の民間議員です。
 経済あっての財政という考え方を基本に、ダイナミックな経済財政運営の重要性を指摘してきた。政府はGX、DXをはじめとする重要な戦略分野に関する中長期の計画を策定し、複数年度にわたって歳出額を定めながら、継続的に取組を進めることが期待される。こうした取組によって予見可能性が高まり、企業が投資を積極的に拡大することで、我が国経済の成長を後押しすることが求められる。また、企業が貯蓄超過主体から投資超過主体へ転換する中で、政府は、経済成長を通じて税収を増加させ、財政健全化を実現していくことが期待される。
 成長と分配の好循環の実現のためには、分配の議論も欠かせない。構造的な賃金の引上げに向けて、経済界として、昨年以上の熱量と決意で取り組んでいく。一方で、成長と分配の好循環の実現は、賃上げだけを意味するものではない。社会保障政策というのは再分配政策そのものであって、賃金システムを補完するサブシステムである。税と社会保障制度の一体改革が必要である。若年世代の将来不安解消のために、全世代型社会保障制度の構築が急がれる。
 次に、2人目の民間議員です。
 今まさに民間主導の経済への転換に向けた千載一遇のチャンス。転換を確たるものとし、プライマリーバランスの黒字化を達成していくことが重要。政府が全てできるわけではないので、政府が何を重点的に取り組むかを明確にすることが重要。可処分所得の増加が好循環を回す鍵であるので、可処分所得の増加を最重要政策とすべき。過去、社会保険料の増加を許してきたが、増加を止めていかなくてはならない。そのためには、賃金上昇と社会保障制度改革が重要。賃金上昇のためには、リスキリングや円滑な労働移動が必要。また、生涯年収を上げることが必要であり、75歳まで働けるという予見性を高めることが重要。在職老齢年金制度を変えていくべきであり、健康で生き生きと働ける社会を目指すべき。社会保障制度改革について、現役世代にメリットが感じられない状況にある。社会保障分野においてEBPMの徹底が必要であり、特に子育て、医療・介護の分野でEBPMを重点的に行うべき。その上で、効果がある政策へのワイズスペンディングを徹底すべき。
 次に、3人目の民間議員です。
 プライマリーバランスの黒字化が見えてきたことは一つの成果。ただし景気に左右されることから、まだ黒字化達成は盤石ではない。マーケットに携わる者として、この黒字化目標達成を盤石にするためには、財政健全化に関して、これから申し上げる二つの点を発信していくことが必要。1点目は、悲観的ではなく楽観視できるモメンタムを作ること。実現可能ラインを確実に達成できるという見通しを発信・浸透させていくことが必要。2点目は、海外では財政弛緩の傾向が多い中、日本は海外とは異なるという点を発信すること。
 次に、4人目の民間議員です。
 2025年度のプライマリーバランス黒字化が視野に入ったことは喜ばしいが、達成は厳しい状況にある。しかし諦める必要はない。大きな可能性であり、チャンスと捉えて、どうやって実現させるかということを考えていくべき。そのためには、民間活力の活用やスタートアップだけではなく、大企業によるイノベーションも重要。さらに家計の安心感、成長の実感、信頼感をどう確保するかが課題。将来のしっかりした見通しが出れば、消費も増えてくる。それを実現するための政策が必要。また、中長期の財政プランも将来の安心感につながる。中長期の財政健全化プランを考えるべき。
 二つ目の議題についてです。
 齋藤経済産業大臣のご発言については、書面での提出になりました。内容はお配りしているとおりです。
 資料4、5の説明の後、自由討議に移りました。自由討議の中で出た発言についてご紹介します。
 1人目の民間議員です。
 新しい資本主義実現会議の議論の中で、スタートアップ育成5か年計画が策定され、スタートアップ支援策として日本版SBIRを推進するという整理がなされている。是非これを有識者のご提言も踏まえながら、ブラッシュアップしていただきたい。
 デジタル化のキーは、データドリブン、すなわちデータをいかに活用してソリューションを生み出すかにある。その前提としてデータ基盤整備は不可欠であって、社会保障、ヘルスケア、防災等のパブリックセクターにおけるデータ整備を急ぐべき。自分自身、これまでもデータ基盤整備の重要性を繰り返し申し上げてきたが、今後もデジタル庁を中心に政府のデジタル化の取組を加速していただきたい。
 これに対して、有識者からもご発言がありました。
 1人目の有識者からは、SBIRは重要だが入り口に過ぎない。スタートアップで培ったデータを買ってもらうためにはコンテストが必要であって、全国展開していく大企業と自治体を巻き込んでいくことが重要というご指摘です。
 2人目の有識者からは、スピード感が大事。そのためにデータ管理の所管をデジタル庁に集約すべき。また、行政データの整備はデジタル庁を中心にすべきというご指摘です。
 次に、2人目の民間議員です。
 消費を上げるためには社会保障制度改革が重要。経済財政一体改革でEBPMを進めているが、なぜ改革が進まないのか、進まない一番の原因は何か。子育て、医療・介護の分野の改革をしていかないと、プライマリーバランスの黒字化は難しい。
 これに対して、有識者からは、どうして日本のEBPMが進まないのかという点については、我が国では概算要求でどれだけ予算を取ってくるかが行政官の評価と直結していることに問題がある。米国のように、行政事業がどれだけ成果を上げたかが行政官の評価と直結するようになるべきであるというご発言でした。
 次に、3人目の民間議員です。
 有識者に質問が一つありました。スタートアップエコシステムは重要である。日本政府は「リードバイヤー」になることが必要との指摘に関して、質のいい需要をつくり出せるグッドバイヤーに日本政府がなり得るのかどうか教えてほしいというご質問です。
 これに対して、有識者からは、活力のある自治体は十分に存在する。その自治体の困り事をスタートアップに解決してもらうことによって、良いサービスが創出されることになるというご回答でした。
 続いて、4人目の民間議員です。
 有識者に質問が二つありました。グローバルな人材交流は重要だと考えるが、これを促進するための重要なポイントは何かということが一点。もう一点が、行政データの整備・活用に当たってはプライバシーの問題に対処する必要があるが、どのように対応するべきかというご質問です。
 これに対する有識者の回答です。
 1人目の有識者からは、海外の長期留学へのネックは、資金と推薦状の書き方などのノウハウにある。資金面については、例えば奨学金制度が考えられるというご回答でした。
 2人目の有識者からは、行政データの利活用は欧州が進んでいる。データプライバシーにおいても欧州が進んでいる。日本は、最も進んでいる欧州のやり方を参考にして、データプライバシーの国際的標準にのっとることが重要であるというご回答でした。
 最後に、総理から締めくくりのご発言がございましたが、皆様にお聞きいただいたとおりでありますので、割愛いたします。
 私からは以上でございます。






(以上)