第15回記者会見要旨:令和5年 会議結果
新藤内閣府特命担当大臣記者会見要旨
- 日時:令和5年11月28日(火)18:50~19:30
- 場所:中央合同庁舎第8号館1階S108会見室
1.発言要旨
本日、経済財政諮問会議を行いました。議題は2つです。「令和6年度予算編成の基本方針」の原案と、「経済・財政一体改革」について議論を行いました。
まず、1つ目の議題である「令和6年度予算編成の基本方針」に関する議論では、来春の賃上げ、そして政府の所得下支えによる可処分所得の引上げによって、総需要を引き出すとともに、価格転嫁対策などにより、安定的な物価上昇を実現させるべきというご意見や、「賃金と物価の好循環」に向けて、来年度の予算編成は、賃金・物価動向をしっかり反映したものとする、また、これまで以上の歳出効率化によって、これまでの骨太方針で定められた、歳出の目安に沿ったものとすべきといったご意見がありました。
「令和6年度予算編成の基本方針」につきましては、今後、与党でご議論いただきます。それを踏まえた上で、次回の諮問会議において、総理からの諮問と諮問会議としての答申案の決定を行いたいという旨を今日申し上げました。
次に、2つ目の議題である「経済・財政一体改革」に関する議論です。サービス水準を維持しつつ、歳出を効率化するためには、デジタル技術の実装を通じた政府サービスの高度化・効率化が重要であり、DXを省庁横断で進め、抜本的な社会変革につなげるべきというご意見や、DXの関連事業などについては、その経済効果や歳出効率化効果を検証する、そして、今後、その結果を活用するなど、予算編成にEBPMの手法を反映する仕組みを構築するべきだというご意見がありました。
総理からの締めくくり発言は、お聞きいただいたとおりでございますが、河野大臣に対し、デジタル技術の実装によるサービスの質の向上や歳出効率化を推進すること、その際に、予算や事業のデータによる見える化や、行政事業レビュー等を通じたEBPMの強化にも取り組むよう、ご指示がありました。
また、全体を通じて、来年度予算がメリハリの効いたものとなるよう、予算編成の基本方針の取りまとめに当たってほしいということで、私のほうにもご指示があります。
詳細につきましては後ほど事務方から説明します。
2.質疑応答
(問)経済財政諮問会議で議論されました「令和6年度予算編成の基本方針案」についてお伺いします。
コロナ禍から脱して、経済活動が平時化していく中で、賃金上昇が物価上昇に追い付いていない状況です。また、個人消費や設備投資など、内需は力強さを欠いている状況で、経済再生の重要性が増しています。一方、基本方針案には歳出構造を平時に戻していくと明記されました。
経済の再生が最優先課題であり、依然として歳出圧力が高まる中で、政府として今後、経済再生と財政健全化の両立にどのように取り組んでいかれますか。大臣のお考えをお聞かせください。
(答)物価の上昇は依然として続いておりますが、直近の物価の動向を見ますと、生鮮食料品が夏の酷暑の影響で高いという顕著な例が出ております。そのほかの生鮮食品を除く食料品物価につきましては一服感が見えてきております。既に欧米、ヨーロッパにおいては物価もだいぶ落ち着いてきています。
傾向といたしましては、物価はまだ高い水準にありつつも、なだらかに平準化している。そういう中で、私どもの今年の7月の年央試算においても、来年においては春闘の結果も踏まえた上で賃金上昇率が物価の上昇率を超える、そのタイミングが来るのではないかという予測が出ております。
それから、企業の投資について一服感があるとご指摘がありましたが、一方で企業の投資計画は16ポイントプラスということで、企業においても投資の意欲というのは旺盛なものが見えています。まだそれが実施に移り切れていないというところがありますが、依然として厳しい状況を常に細かく見ていきながら、しかし、トータルとすればやはり30年ぶりのチャンスを迎えている、このトレンドには大きな変更はないのではないかと思っています。
ですから、まずは物価高に負けない構造的賃上げに向けた環境整備、そして生産性の向上と供給力の強化に関する投資の拡大を促す。今回の経済対策、そして補正予算、更には税制にはこういった点を織り込んでおります。短期的に目の前の物価高から国民の暮らしを守ることと併せて、構造的な日本経済の変化を促しながら、力強い民需主導の、日本の今の人口構造や社会課題があっても成長していける、新しい経済をつくる、その方向に向けて精いっぱいの努力をしていきたいと思いますし、そのための第1弾が今回の経済対策でございます。
経済活動を平時化していくというのは、そういう意味ではこれまでのコロナ禍における本当の経済が縮小している中で国民の暮らしを守るためには、大規模な歳出もやむを得ず、様々な給付金もいろんなかたちでやりました。
そういう構造から、今回は国民の暮らしを守るためのそうした直接投資も残しつつ、次の手立てを打ちながら、そして平準化をしていく。経済成長と財政健全化は車の両輪ですから、ある日、突然切り替えるのではなくて、自然の中で自律的な経済をつくるために、そういうことをしていかなければならないと思っています。
そして、今回の補正予算と併せて、来年度予算において、一体的に切れ目なく、デフレからの完全脱却と、また民需主導の自律経済の実現に向けた必要な予算措置、また予算を組んで、それを国会でご審議いただきたいと思います。その中で、我々とすれば今が正に正念場であって、いい方向に脱皮できるチャンスなのだということを訴えていきたい。また、総理を先頭にして、信念を持って国民の皆さんに訴えていかなければならないと思っています。
(問)新たな経済対策の裏付けとなる補正予算案についてですけれども、国会の審議が明日の締めくくり、総括質疑を控えまして佳境に入っていると思います。大臣は国会の論戦の中で、分かりやすい説明を、ということでおっしゃっていましたけれども、今回の論戦を通じまして理解は得られたとお考えでしょうか。
(答)論戦の中で、減税、それから給付金、これについてのご質問が多かったというのは皆さんご案内のとおりです。
しかし、そういう中で、総理も、また私も、給付金と減税は可処分所得の向上を目指すものであって、それによって構造的賃上げを促しながら、そして、企業の業績拡大を通じて構造的な賃上げ、そして、将来の予見可能が高まる中で企業が投資を活発化する、こういう目的を持った、総合的、一連のシナリオのものであるということは粘り強く説明をしてきたつもりです。
それは結局のところ、実行に移していく中で効果が現れた時に国民の皆さんには最大限理解をいただけるものですから、今、私たちは説明をしながら、政策を一つ一つではなくて連続性を持って、ストーリーと言いましょうか、全体の役割、どういう役割で構成されているかということを説明する、これには一貫性を持って説明したつもりです。
まだまだ足りないと思いますが、あらゆる機会を通じて丁寧に説明をしていきたいと思いますし、潜在成長率の引上げを目指すことが最大の課題です。ですから、そのための布石を打っているんだということです。
賃上げも、ただ上げてくださいではなくて、賃金を上げるにふさわしい新しい技術やスキルを身につけてもらう、そのためのリスキリングもきちんとやりましょう。得られた技術を生かせるジョブ型の雇用というものを導入しようではないかということです。
また、リスキリングをして新しい技術を身につけたら、ほかの会社に転職しますではなく、自分の会社でそういった技術を生かせるような新たな省力化投資、そういったものも我々は補助金や税制を通して企業の中の仕事の構造を変えようとしているわけです。その新しい設備を取り入れた時に、その設備を使いこなせる技術を持った人にリスキリングによって社内の人材なのか、外からこの機会に入ってくるのか、それはあらゆるチャンスの中でそういったことを生かしてもらうという中で構造的な賃上げがあります。
そして、今日も質問が出ましたが、巨額の内部留保を抱えている、そうした企業体質が、一方で投資が遅れて、投資意欲が高いと言いました。そして、このまま投資しなければ世界の競争の中で日本は追い付いていけないわけです。ですから、投資をせざるを得ないような状況がある中で、我々はそれをお手伝いしながら、投資先を新たなものをつくっていきます。
そして、その推進のエンジンの一つとしてスタートアップも徹底的にやっていこう。それから、新たな新技術の社会実装、ドローンだとか自動運転レベル4、こういったものもいよいよ実用化し、ドローンを運航させるためには目視外飛行の規制緩和が必要で、そういったものも今回の対策に入っています。自動運転を実際に社会実装させるためには様々なルールの変更などが出てきます。
そういうものが重ねあっていくということでございまして、経済対策の理解をいただけるように更に説明を尽くしていきたいと思います。
(問)先ほど、所得の下支えのところにも関係するのですけれども、定額減税と低所得者向けの給付金のはざまにある方々への支援に関して、どの方々にいくら給付ですとか給付方法とか、時期等も含めて、現在の検討状況を教えていただければ思います。
(答)まず、私は、はざまという言葉は使わないことにしております。そうではなくて、所得の一定の方々への給付金と、それから均等割のみの方々と、それから納税の方がいて、納税の中でも今回の定額減税の4万円に納税額が満たない方たちがいます。ですから、この中間にある人たちをどうやって支援していくかと考えています。
定額減税と住民税の非課税世帯の中間にいらっしゃる方々に対する支援の制度設計は、まず、分かりやすく事務負担が少ない簡素なものにする。それから、低所得者の方々への支援は迅速に行う。そして、できるだけ公平で適切、そういった観点のバランスを取れたものにしようということで、現在、鋭意検討中です。
特に住民税均等割のみを課税される世帯につきましては、住民税の非課税世帯への支援と同水準のものを目安としたいと思っています。そして、補正予算が通りますと真っ先に給付される住民税非課税世帯に続き、できるだけ早期に支給できないかということで、今、自治体の業務の実態をお伺いしながら検討しております。
そして、低所得者の中でも子育て世帯については、これらに加えまして、地域の実情に合わせて物価高騰に伴う子育て世帯支援は既に重点支援地方交付金の推奨事業メニューの中で、各地域で実施されています。これに今回、5,000億円をまた増額したわけですが、これに加えて更に上乗せ給付をしようということで考えています。定額減税や他の給付措置とのバランスを確保しながら、これも最終的な検討に入っているという状態であります。
また、所得税を納付されているけれども、定額減税の4万円の満額を受けられない方々がいらっしゃいます。この方々に対しては定額減税や他の給付措置とのバランスも確保しなくてはなりませんが、来年度、新年度の住民税が確定するのは6月です。それ以降できるだけ速やかに、定額減税に満たない部分は給付を行うわけで、この組合せについてデジタルを積極的に活用しながら、自治体の事務負担を極力減らしつつ、速やかに対処することを今考えています。
特に支給事務においては、まずは今回の10万円となる給付につきましても、既にこれまで何度となく自治体は給付をしていますし、少なくとも3万円の給付が先行しています。既に給付ルートができているものを活用して、給付いたします。
他方、前回は3月に予備費で決定しましたが対処したのが6月議会になってしまった自治体があります。そこで3か月のラグが出てしまったわけです。そういうことのないように、今回は補正予算が成立次第、12月の地方議会にすぐに対処していただけるように、そういったことも今、事務的な連絡をしているとともに、その中でも申請から給付までができるだけ簡素に、しかも迅速にできるような、いわばファストパスのようなものをつくれないかと考えています。
また、自治体では既にもう独自のオンラインシステムを持っているところがあります。そういうところはそれを活用すれば速やかに素早く配ることが可能です。それぞれ自治体が使いやすい、また、やりやすいかたちの選択制も含めた、そういった事務の効率化も考えているということでありまして、これは補正予算が仕上がることが第一です。
それから、減税につきましては、税制大綱の与党の検討があって、そこの中で枠が決まった中で、速やかにそれぞれの対処をしたいと考えています。
(問)関連でお尋ねします。今、御発言もあったのですけれども、本日の予算委員会の中でも、ファストパスを入れられないか検討中というようなお話がありまして、こういった検討を進める問題意識とか背景、あと、ファストパスが適用される対象者といいましょうか、そういった方々がどういったところを念頭に置かれているのかというあたり、あと、申請から給付までの期間をできるだけ早くと先ほどおっしゃっていましたけれども、どのぐらいの期間で給付に至るようなイメージをされているのでしょうか。
(答)そこはこれから方式を決定して、国民の皆様にお知らせするタイミングで詳らかになることにしようと思っていますが、ファストパスというのはノーマルパスがあるわけです。一辺倒でこれじゃなきゃ駄目だとか、このやり方で一つにしてくれといえば、それぞれのご都合があります。
ですから、まず今、申しましたように、各自治体で現状一番素早くできる体制というのを皆さんお持ちです。ですから、それをお持ちの方はそれを生かしていただければと思います。
例えば、マイナポイントを活用して給付することも可能です。既に重点支援地方交付金の生活支援の関係では、地域のローカルポイントで配っている自治体もあります。マイナポイントで給付を行う場合は、支給を受けようとする本人がコンビニの端末に行って、自分でマイナンバーを打ち込んで申し込めば、その場でポイントが移行されますから、即刻支給されます。そういうスーパーファストもあります。また、今までどおりの紙で手続きをしたいというならば紙でおやりになってもいいと思います。あるいは、申請書をいただいて、それを今度は自治体から、あなたはこういうものを受け取れますという通知が行った時に、例えばQRコードを見て、携帯電話とかで電子でもって申請する、そういうことで選べば、これも手紙のやり取りよりは早くなります。
そういうようなことを、今、工夫をしているということでございまして、選択しながら、私とすればできるだけ速やかにこういったものは簡素な手続で、しかも自治体が支給するために支給のチームをつくり、たくさんのパートさんを集めてとか、そういったことをしなくても済むようなかたちで、既存のルートがあるならばその中でやっていく。そして、電子の力を使うことによって人手は限りなく少なくなっていきます。
そういったことでこれまでの経験を生かしながら、速やかで簡素で迅速、そして、皆さんにとっても公平な適切なバランスの中で支給する、こういうものを今、目指しているということです。
(問)関連になりますが、今、ファストパスの答えの中で、ポイントで給付することも可能だというようなお話をされていたのですけれども、ポイントで給付するという選択肢もあるということなのか、もう少しご説明いただけますか。
(答)そこは既に地方創生推進事務局から、重点支援地方交付金はそういったポイントでも配ることができるというような連絡をしているところもあります。
ただ、実際に自治体側でそういうローカルポイントを発行しているか、それは自治体の事情がありますので、ただ、それを自治体が選択し、かつ受け取る方がポイントでもらってもいいと思えば、それはスーパーファストです。そういった選択肢もありますよということであって、それはあくまで自治体と、それから給付を受けようとする国民の皆さんの選択に委ねるということです。
3.木村内閣府政策統括官(経済財政運営担当)による追加説明
令和5年第15回の経済財政諮問会議です。
先ほど新藤大臣からご紹介がありましたように、議題は二つでした。
一つ目の議題、「令和6年度予算編成の基本方針(原案)」について、内閣府から資料1、資料2、資料3の説明をした後、意見交換を行いました。
次に、二つ目の議題、「経済・財政一体改革(非社会保障)」について、柳川議員から資料5に基づいて、民間議員からの提案のポイントをご紹介いただいた後に、意見交換を行いました。
それぞれの議題について、主な意見をご紹介いたします。
一つ目の議題に関する主なご意見です。
1人目の民間議員です。
令和6年度予算編成及び今般の経済対策を通じて、我が国経済が新たなステージに移行することを期待している。若者の不安解消のために、全世代型社会保障の構築を進めていくことが必要であるほか、成長と分配の好循環の実現につなげていくための予算にすることも大事である。
この国の持続的な成長には、供給力強化を通じた潜在成長力の引上げが必要であって、中長期的な取組を継続していくべき。また、国民の安心につなげるため、物価高から暮らしを守ることが重要であり、また、人口動態の変化も考慮した予算編成に期待する。
2人目の民間議員です。
消費支出は7か月連続のマイナスで、スタグフレーションの懸念がある。民間主導の経済へ、今、正に時代の転換点にある。来年度予算編成が時代の転換点に向かっている予算編成になっているかということの確認が必要。
その上で、3つご指摘がありました。1点目、中長期の視座が必要。人手不足や構造的賃上げなどは、単年度では解決できない。複数年度で効果を見ていくべき。また、国民の可処分所得を下げるような社会保険料の引上げはすべきではない。
2点目、需給ギャップを埋めるための真水の議論ではなく、限られた財政の中で乗数効果の高い政策へと認識を変えていくべき。そのために、EBPMが重要であって、官庁エコノミストの育成なども必要。
3点目、経済の新陳代謝を図る必要がある。そのためには、人への投資が必要で、新陳代謝を妨げる補助金はなくしていくべき。20代、30代の方だけではなくて、50代の団塊ジュニアの活力を生かすためにも、全世代型のリスキリングの推進とキャリアデザインの拡大を図るべき。
3人目の民間議員です。
3点ご指摘がございました。1つ目が、デフレからの脱却に関しては、社会通念を加味することが重要。現在、日本の将来がどうなるか分からないという社会通念があるため、デフレから脱却するという固い決意を示すことが重要。
2つ目、伝え方が重要。外国人投資家からは、岸田政権の取組は高評価を得ている。岸田政権の取組をどのように伝えていくかが重要であり、分かりやすく伝えていくことが重要。
3つ目、ポイントを絞ることが重要。GX、DXが今後重要な点であることから、COPの会議においても、GXの重要性をしっかりと伝えていくべき。
4人目の民間議員です。
足元では賃金が上がり始めている。このタイミングにおいては供給力の強化が重要。現在は総需要が拡大したとしても、人手不足の深刻さもあって、供給力が追い付いていかない。供給力強化なくしては経済が回らない状況。供給力強化においては量的なもののみならず、質、生産性向上も重要。全世代型のリスキリングにより、シニア層の活躍に向けた人への投資を行っていくべき。また、新陳代謝も含めた企業の成長投資の拡大も重要。
供給力強化策はすぐには成果が出ない。政府がリーダーシップを発揮して、時間が掛かってもやるのだというメッセージを出すことが、予算編成においては大事。
次に、自由討議です。
日本銀行総裁からです。
賃金と物価の好循環の実現に向けて、新藤大臣から指摘がありました3つのポイント、いずれも欠かせない重要なものと考えている。まずは、経済の総需要が力強く推移することが重要である。その上で、賃金上昇については、今年の春季労使交渉において30年ぶりの高い賃上げ率になるなど、既に確認されている面もあるが、来年の春季労使交渉で、こうした流れが更に広がっていくか注視していくことが重要である。
また賃金の物価への波及については、人件費の継続的な上昇を念頭に値上げを実施したとの声が聞かれる一方で、中小企業からは賃金上昇の価格転嫁が難しいとの声も聞かれている。転嫁が実現していくか不確実性は高く、今後の情勢を丁寧に点検していく必要があると考えている。
1人目の民間議員です。
価格転嫁について、ポジティブなモメンタムを最大手の企業が積極的に示していくべき。ベースアップをするということを示していくべき。価格転嫁をノルムとして、CPIが上昇すると賃金も上昇するといった指針づくりが必要。最低賃金も1,500円では年収換算にすると低いので、2,000円を目指していくべき。人手不足の影響をマクロ経済モデルでも分析すべき。
2人目の民間議員です。
デフレ脱却に向けた官民協力が非常に重要。現在の物価高はモデレートな2%を超えている。このコストプッシュ型のインフレから国民を守るためには、可処分所得を増やしていくことが大事。我々民間は賃上げをして、政府は苦しむ人々を手当するといったように、官民協力を通じて物価高を克服し、今後デフレには戻さないことが大事。
価格転嫁に関しては、経団連でもパートナーシップ宣言への参画を積極的に呼びかけており、発注側は多くが参加しているという状況。今後はこれをソーシャル・ノルムにしていかなければいけない。
3人目の民間議員です。
賃金上昇分をスライドし、財政に反映すると、例えばスペインのように財政が弛緩し、信頼が低下するということが課題。一方、物価が上昇していく中、現在のやり方ではいけない。予算の考え方は、物価の上昇を加味しながら、総量をキャップすべき。現在の欧州各国の財政弛緩に鑑みても、日本は手堅く総量をキャップしながら、ワイズスペンディングを行っていくべき。
次に、二つ目の議題に関する主なご意見です。
1人目の民間議員です。
一つのポイントはデジタル技術の実装である。省庁横断で抜本的な改革を進めれば、相当な歳出削減につながる。自治体DXについては国が率先して推進すべき。医療・介護DXは社会保障へのインパクトも大きい。GIGAスクールについても、目指すべき成果や教育の将来像を踏まえつつ、EBPMによって施策を見直していくべき。予算の執行状況を把握する仕組みを構築すべき。また、官民連携の強化によって、インセンティブ改革や見える化を通じて、サービス価値の向上や支出の歳出の効率化を図るべき。
二つ目、EBPMの徹底強化が重要である。政策の成果を確認し、次の予算編成に反映させる仕組みを構築すべき。
2人目の民間議員です。
中長期的な視点で経済・財政一体改革を進めていくべき。ここ数年は年度途中に大きな補正予算が組まれており、計画的とは言い難い。中長期の計画の中で複数年度にわたって歳出計画を立て、これらを当初予算で措置すべき。これによって、予見可能性が高まり、民間の設備投資や人材育成にもつながりやすくなる。また、各事業の政策を定期的にレビューし、必要な修正や見直しを行っていくことが重要である。そして各政策の財源についても、中長期的な観点から考えていくべき。
我が国の新たなステージでは、物価や金利動向に注目しつつ、「経済あっての財政」という考えを持ちながら、財政規律にも注意していくことが重要。
3人目の民間議員です。
乗数効果に基づいたワイズスペンディングとEBPMは不可欠である。一体改革で今まで取り組んでも進んでこなかった事項もあり、危機感がある。一体改革推進委員会をEBPMを中心とした委員会に衣替えをして、見える化を進めていくべき。見える化によって、ステークホルダーである国民の皆様が見ることができ、危機感を持って取り組める。
共助が重要である。民間のノウハウを活用すべき。ソーシャルインパクトボンドなどを進展させるとともに、企業版のふるさと納税を半恒久化してはどうか。
また、インフラの老朽化について、AI等の先端技術を用いて、予防保全をしていくべき。
4人目の民間議員です。
3点あり、1点目、データの見える化が必要。日本は、海外と比較してもデータの見える化が進んでいない。中小企業の価格転嫁に関しても、データで可視化させることにより、次の打ち手が見えてくるのではないか。
2点目、データの一元化が必要である。各領域でデータが分散しており、データを連携し、一元化すべき。例えば、医療領域においても手続が分散してしまっている。現在、マイナンバーカードを進めているが、マイナンバーを活用したデータの一元管理を更に進めてほしい。
3点目、競争力の強化が重要。社会保障は時間が掛かるが、競争力強化はより短期的。DXによって金の流れが見える化されると、海外投資家は意欲的に必要なところに投資を行う。
次に、自由討議です。
河野デジタル行財政改革担当大臣です。
デジタル行財政改革は、利用者起点で我が国の行財政の在り方を見直し、デジタルを最大限に活用し、公共サービス等の維持・強化と地域経済活性化を図り、社会変革を実現するもの。
資料7のとおり、様々な課題に取り組んでおり、先週の第2回会議でも総理から取組を加速するようご指示を頂いた。
社会変革の実現のためには、政府の取組を丁寧に説明し、国民の皆様の納得と理解を得る必要がある。このために、政策によって実現したい成果を明らかにし、進捗をデータ等でモニタリングしながら、不断に見直しを行うEBPMの取組が重要である。これは、特別難しいことではなく、行政として当然の営みだと理解している。
今年の秋のレビューを見ていても、データの取得と利活用が課題だと感じたが、まずは、ダッシュボード等による「見える化」から着手し、データを活用した意思決定のための基盤づくりにも取り組むこととしている。年末までに教育や介護の分野で具体案を示したい。年明け以降、他の分野も含めて議論を加速していきたい。
また、行政事業レビューシートへのIDの付与、データベース化を進めており、来年度には全省庁を通じた経年比較、分析等が行えるようにしたい。
1人目の民間議員です。
進捗管理に利用可能なデータが増えてきている。経済学、統計学の進展により、見えないものを分析して数値化するような、学問的な成果が上がっている。これらを利用していくことが重要。
進捗管理は政策を実現するための武器。政策が立案されたときに、議論されていたことがしっかり実行されているか確認をして、期待する政策効果を実現することで、更に政策効果を向上させることができる。
進捗管理や政策評価を予算編成に組み込む上では、政策の事後評価だけではなく、期待する効果をデータで示す事前評価も重要である。
2人目の民間議員です。
日本は検証が嫌いな国民性がある。検証して間違いが見つかったら責任を取らされるからである。責任を問うよりも、やめる、修正することをエンカレッジするカルチャーづくりをすべき。
3人目の民間議員です。
EBPMを行うにはKPIの設定が重要。KPIは変わっていくものであるため、設定が非常に難しいが、トライ・アンド・エラーが必要。トライ・アンド・エラーを行っていくと、ネガティブな意見が出てくる。ネガティブな意見に押されないように、トライ・アンド・エラーの先には、このような将来像をつくるということを示す必要がある。
鈴木財務大臣です。
予算編成においても、意味あるスリム化を進めていくためにはEBPMの観点が重要である。
最後に総理から締めくくりのご発言がございましたが、皆様にお聞きいただいたとおりでありますので、割愛いたします。
私からは以上でございます。
(以上)