第14回記者会見要旨:令和5年 会議結果

新藤内閣府特命担当大臣記者会見要旨

  • 日時:令和5年11月6日(月)19:35~20:03
  • 場所:中央合同庁舎第8号館1階S108会見室

1.発言要旨

 本日、経済財政諮問会議を行いました。議題は2つです。総合経済対策の決定を踏まえた、「マクロ経済運営」と「中長期の重要課題」について議論を行いました。
 1つ目の議題である「マクロ経済運営」では、経済対策の効果を高めるためには、省庁間の連携が重要であることから、政策群ごとに中心となる省庁を定め、施策の早期実行と進行管理に責任を持たせるべきというご意見や、「新たなステージ」へ移行するため、3年程度の「変革期間」でフロンティアの開拓、デジタル技術の社会実装等、供給力の強化に向けて、施策を集中的に講じることが重要といったご意見がありました。
 なお、私からは、今回の経済対策のポイントと政策ファイルをご紹介させていただいたところです。
 次に、2つ目の議題である「中長期の重要課題」では、政府が取り組むべき「ミッション」を持ってはどうか、その「ミッション」を達成するための目標としての「ビジョン」、また「ビジョン」を実現するための手段としての「アプローチ」、こうした段階を設定して、その上で議論を進めてはどうか、その際には、「少子高齢化・人口減少を乗り越え、国民が幸せを実感できる経済社会を実現していく」観点を踏まえた議論を行ってはどうかというご意見がありました。
 総理からの締めくくり発言は、お聞きいただいておりますが、経済対策の早期の実行に向けて、その裏付けとなる補正予算を速やかに編成し、臨時国会に提出して、早期に成立させていく。経済対策に続けて、令和6年度予算や規制・制度改革により第2の矢を放ち、新しいステージに向けた動きを確実なものとしていくといったご発言がありました。
 また、総理から私に対して、中長期の重点課題について、広く有識者の知見を集めながら、検討を進め、その成果を諮問会議に報告するよう指示がありました。
 これを受けて、私の下に、私的な懇談の場として「経済財政検討ユニット」を立ち上げたところです。様々な分野のエキスパートの方をお招きしつつ、議論を深めることにしており、その第1回目として、本日はディー・エヌ・エーの南場智子会長からお話を伺いました。「経済財政検討ユニット」のヒアリングの第1回目となります。
 今後7人のメンバーと議論を重ねながら、そして折々に有志の皆さんのヒアリングを行って、そうした様々な議論を踏まえた成果を諮問会議にインプットしていきたいと考えています。
 詳細につきましては後ほど事務方から説明します。






2.質疑応答

(問)今日の会議で民間議員から、ポストデフレのマクロ経済運営について多角的な検討をという提言がありました。大臣の受け止めと今後の対応をどうしていかれるかとともに、ポストデフレの経済運営のイメージというものがございましたら御説明いただければと思います。


(答)総理からも申し上げておりますが、我が国経済は30年ぶりの大きなチャンスを迎えている、デフレ脱却の千載一遇のチャンスであり、賃上げや投資、株価など含めて様々な良い兆しが見えています。
 ですから、この日本経済を、これまで「低物価・低賃金・低成長」に結果としてならざるを得なかった、いわゆるコストカット型の経済の仕組みから、「持続的な賃上げや活発な投資がけん引する成長型経済」への変革を図り、熱量あふれるステージへ移行させていきたい。これが私たちの目指す当面の目標であり、そのための第1弾が経済対策です。
 そして、今回の民間議員提案は、こういった移行によって、これまでのデフレ下とは異なる経済環境となる中で、どのような経済運営を行っていくべきか、あらかじめ検討しておくことが重要という趣旨のご意見があったと理解しています。
 そして、例えばその際には、需要を単に埋め合わせる政策ではなく、供給力を強化し、日本経済の潜在成長力を引き上げることを重視する。また、経済成長と財政健全化の両立を図るための中長期的な視点を重視した経済財政運営の取組といった論点が考えられると理解しています。
 まずは熱量あふれるステージへの移行に向けて、今般の経済対策を迅速に実行していく。そして、またその時々に発生した経済状況に合わせて適切なマクロ経済運営を行っていきたいと考えています。



(問)中長期の重要課題についてお尋ねします。今回、新たにこのテーマが設定されたのではないかと思いますが、今回議論することになった理由、経緯を教えていただきたい。また、資料9で民間議員の方からペーパーが出ていますが、ここには7つのアプローチがあり、それぞれどんなご意見が出たのか、どういったイメージを持たれているのか、今後の議論の進め方についても教えてください。


(答)まず、我が国経済を新たなステージに移行させるためのスタートダッシュというのが今回の経済対策の位置付けです。私たちの国の根本的な課題は、少子高齢化・人口減少であり、これはある方から言わせれば国難に等しいと。こういう国の構造的で、今、乗り越えるべき深刻な課題を持っています。
 ですから、そういう状況であっても、国民が明るい希望を持ち、豊かさと幸せを実感できる、そういう経済社会をどう実現すべきか、そして、それは何の手段をもって可能になるのか。こういった議論は、私たちが対策を打つ中で全てそれにつながっていくものにしていかなくてはいけないと思っていますので、そういう意味において、あえて中長期的な課題に関する議論を同時並行で進めていきます。
 今の対策の効果をどのように出していくかについて、まずは国民の皆さんにご理解いただきながら共感を持ってもらい、みんなでそこに向けて集中していただく流れをつくりたいと思っています。
 ですから私とすれば、今回の対策の意図、それからその先にある我々が目指すものを丁寧に、またできるだけ分かりやすく説明したいと思っています。
 そういった計画をつくる際には、常に、それは一体何のためにやるか、みんなが共有できる使命の議論が必要だと思っています。そして、その使命を達成するために必要な目標としてはどういうものがあるのかについても明確にしていく、そこまで設定できればよいと考えています。
 その目標を達成するための手段は、既にもう今、政府の中にたくさんありますし、これからもたくさん生まれてきます。ある一つの政策はその目的を達成するための手段で、それは他の政策と重ね合わせることによって別の成果を上げることができます。そして、結果的にそれらの重ね合わせが全体的には私たちの国が目指す、国が国民に提供できる社会像というものを明らかにしていけるならば、私たちの国の力はもっと強く発揮できるに違いなく、これは政策検討の根本だと思います。
 そういったことを改めて、今日は経済財政諮問会議からもご指摘いただきましたし、私どもは一遍に総括してではなく、柱を立てて、その柱の実現に向かってどんな手段を活用していくかという議論をしっかりやりたいと思っています。
 ですから、その前段となるワーキングとして、「経済財政検討ユニット」というものを私の私的な諮問機関としてつくらせていただきました。そこでは本当に自由な議論をしていただきながら、専門家の知見をまとめ、様々な方の意見に触発されて、また新しいものが生まれることを期待しています。そうした題材を経済財政諮問会議に提供することで経済財政諮問会議の議論が更に深まり、活性化しているのではないかとイメージしながら進めています。



(問)今日の「経済財政検討ユニット」では、ディー・エヌ・エーの南場智子さんを呼ばれて議論されたと思いますが、今日ありました議論の内容をご説明いただきたいのと、あと、南場さんに今回来ていただいた狙い、理由について教えていただければと思います。


(答)この議論は特に公開することを想定しておりません。今日は企業経営者の立場から、日本が未来に希望を持てる国になるためにはどのような課題があり、その対応としては何があるかというようなことについて、新しいフロンティアやイノベーションを進めてきた方でもあるので、スタートアップも含めて、そういったことに対する問題意識を含めたお話をいただきました。
 既に南場さんはこれまでも政府のいろんな政策決定に大きく関与していただいています。今後もそうした専門家を招くのですが、うまくスケジュールが合い、今、経団連の副会長だったと思いますが、経団連の活動も踏まえて、第1回目にふさわしいということでお呼びしたということです。



(問)今日の諮問会議でも10月末の日銀の金融政策決定会合についての説明があったかと思います。為替が今、150円近辺でうごめいていることもあって、それが日本経済の重しになっている部分もあるかと思いますが、政府や大臣として日銀の金融政策の在り方について、経済対策の観点も踏まえてどういうふうに考えていらっしゃるか、お聞かせください。


(答)金融政策決定会合における議論については、そこでの政府出席者の発言も含めて日銀において公表されることになっておりますから、それをご覧いただきたいと思います。
 今日の経済財政諮問会議におけるご発言についても経済財政諮問会議の概要として発表がございますので、その中でご確認ください。
 金融政策の具体的手法が日銀に委ねられていることは言うまでもありませんが、日銀には、政府との密接な連携を図りながら、賃金上昇を伴うかたちでの物価安定目標の持続的・安定的な実現に向けて、適切に金融政策運営を行っていただくことを期待しています。











3.木村内閣府政策統括官(経済財政運営担当)による追加説明

  令和5年第14回の経済財政諮問会議です。先ほど新藤大臣からもご紹介がありましたように、議題は二つでした。
 一つ目の議題、「マクロ経済運営」について、日本銀行の内田副総裁から資料1をご説明いただき、それに続く形で、私から資料2及び3を説明した後、意見交換を行いました。
 次に、二つ目の議題、「中長期の重要課題」について、内閣府から資料8を説明した後、意見交換を行いました。
 それぞれの議題について、主な意見をご紹介いたしますが、出席された大臣のご発言は、書面配布しましたので、割愛させていただきます。
 まず、1人目の民間議員です。
実質賃金のマイナスが長期化している。国民が厳しい状況にある中で、1年間の時限措置としての所得減税に賛成。実質賃金をプラスにし、持続的な賃上げを達成させるためには、一つ目として人材の供給制約の解消、二つ目としてDXによる生産性の向上が重要。具体的には、人材移動の制約、技術のミスマッチ、デジタル人材の供給不足などの解消が必要。
 また、高齢人材について、社内外のキャリアデザインによるリスキリングをして、さらに、そのことについての情報開示をしていくことが重要。
 加えて、エネルギーコストの引下げが必要。未来永劫エネルギー価格に対する補助金は続けられないため、国民の皆様にエネルギーの現状を知ってもらうことが重要。
 続きまして、2人目の民間議員です。
国内投資促進のための税制措置に期待する。
 令和6年度税制改正で議論されることになっている戦略分野の国内生産促進イノベーションボックス等の税制は、供給力の強化に向けて大胆な内容としていただくようお願いする。
 そして、我が国は外国から電力を融通してもらうことができない。次世代革新炉の開発、安定的な電力供給の確保に向けた取組も併せて対応をお願いする。
 続きまして、3人目の民間議員です。
 一般論として申し上げると、日本は財政がよくない、膨張しているという状況。また、これから金利が上がっていくことが予想されている中での減税は違和感があるということかもしれない。
 しかし、日銀が昔から、日本人には賃金が上がらないというノルムがあると言っているが、もし今回デフレ脱却できなければ、もっと皆さんの財布のひもが堅くなるかもしれないということを考えれば、確実にデフレ脱却につながるのであれば、減税という手段も国民に理解されるものではないか。
 今回の経済対策にあたっては、正しくきちんと低所得者の方にお金が入っていくこと、また、36項目にわたる規制改革・制度改革や6項目の税制措置のポイントが列挙されているが、これがきちんとワークすることが重要。内容によってはもっと踏み込んでもらいたいものもある。
 マーケットが動くときというのは数字がきちんと示されて動くとき。前回、明確な賃上げが株価の上昇につながったように、今回の経済対策もその可能性を持っている。
 つなぎの経済対策を推し進める中で、賃金を上げる、日経平均を上げるということにつなげてもらいたい。
 続きまして、4人目の民間議員です。
 資料5の副題にも記載されているように、日本経済を熱量あふれるものとすること、新たなステージに移行させることは非常に重要。前者、つまり熱量あふれる経済の実現については、本経済対策を通じて明るい未来を作るとのメッセージをしっかり国民各層に示し、ご理解いただくことが重要。
 後者、つまり日本経済の新たなステージへの移行については、規制改革・制度改革を推進し、ビジネスをしやすい環境を整備することが肝要。
 さらに、持続的な賃上げの実現に向けて投資と雇用の好循環を作り出すことが重要。
 また、高齢者や地域の小さな投資の動きを促進すべきであり、その後押しのためにもリスキリングが重要。
 次に、自由討議です。
 まず日本銀行の内田副総裁からです。
賃金と物価の好循環ということなので、物価から賃金、賃金から物価の双方向の波及が必要である。まず、物価から賃金という意味では、労働需給がタイトであること、すなわち人手不足の状況が続くことが大事。一方、賃金から物価という面では、中小企業などで人件費上昇分のコスト転嫁はなかなか難しいという声がある。製造から小売までの各段階で適正な価格転嫁をできるようにすることが大切。そして、最終的にはそうした値段で製品が売れることが必要なので、個人消費の増加が持続することも重要な要件である。
 この人手不足、個人消費の増加は、いずれもマクロ的には経済環境が良好であるということを意味するので、日本銀行としてもしっかりと経済を支えるよう、粘り強く金融緩和を継続していきたいと考えている。
 昨年の海外からのコストプッシュが、この春の賃上げにつながった背景には、この10年間のマクロ政策の下で雇用と企業収益が増え、労働需給がタイトであったことがある。そうした素地がなければ、2008年のようにスタグフレーションに陥った可能性もあった。現在のコストプッシュが収束した後も、賃金と物価の好循環が自律的に回り続けるよう、良好なマクロ環境を維持していきたいと考えている。
 続きまして、西村経済産業大臣です。
実質賃金が物価上昇を上回るためには、5%プラスアルファの賃上げが必要。今回の経済対策において、省人化・省力化などの支援を盛り込んでおり、GX、環境、エネルギーなどの分野で民間には大胆な投資をお願いしたい。人手不足をチャンスに、構造改革、新陳代謝を図ることが重要。リスキリングによって成長分野への労働移動を進めていく必要がある。
 次に、民間議員です。
国内投資について2027年度に民間投資115兆円とする目標等を掲げている。こうした目標の実現に向けて、DX、GXを中心に経済対策の供給力の強化が力強い後押しになると期待。国内投資を盛り上げていきたい。
 賃金については、物価上昇に負けない賃金上昇を掲げ、最大の熱量を持って取り組んでいる。しかし、現在の消費者物価を見ると、政府のエネルギーへの支援があってのものであり、消費者の実感する負担はそれ以上のものになっている。政府、日銀による適度な物価上昇に向けた取組も必要。
 次に、二つ目の議題に関する主なご意見です。大臣のご発言については書面配付のとおりです。
 自由討議でのご発言をご紹介いたします。
 1人目の民間議員です。
民間主導の経済で税収を伸ばし、持続可能な社会保障、財政につなげていくことが重要。そのためには、人手不足の解消が必要で、年収の壁を抜本的に解消し、女性の活躍を促進していくことが重要。70歳、75歳まで生き生きと生涯現役で働ける健康長寿社会の実現を図るべき。高齢者もリスキリングの対象として人材投資をすることが重要。企業版ふるさと納税の拡充や寄附税制など共助の拡充も重要。デジタル人材の教育が重要。生涯現役をサポートするためにも、50代の研修が重要。年齢が高いというだけでバイアスをかけるのは間違い。具体的な好事例の横展開が重要。
 2人目の民間議員です。
最も重要なのは全世代型社会保障。これは少子化対策にも直結する。欧米では出生率は2を切っている。東アジアも出生率が下がっている。ここで踏みとどまるべき。社会保障を持続可能にする歳出歳入改革は、我が国の財政問題そのもの。負担の仕組みについて見直し、最新の人口推計を踏まえた社会保障全体の給付と、それに関する新たな将来設計を明示し、国民が安心する将来像を提示することが必要。現在検討されている支援金制度の内容についても、賃金引上げへの影響、全世代型社会保障の議論と矛盾することなく、現役世代に負担が偏らないよう整理をお願いしたい。
 3人目の民間議員です。
地域におけるスモールビジネスは、DXの進展もあって大きな可能性を秘めている。高齢者の更なる活躍を促しながらビジネスを回していくことが肝要。ある程度の稼ぎがあれば、持続可能な生活を送ることができる地域も少なくない。生活の持続可能性を担保しながら、ウェルビーイングを実現することができる生活の基本スタイルや標準形を諮問会議において提示すべき。
成長可能な投資が世界中に生まれつつあり、国内でもそのような投資を促進することは大事。一方で、GXやDXへの投資が国民生活にどうプラスの影響を及ぼすかが必ずしも明らかでない面があり、国民各層に分かりやすく示していくべき。
 4人目の民間議員です。
中長期的に最も大切なことは、競争力をどう強化していくかということ。日本の中長期的な課題としては、人口減少、社会保障、教育格差など様々あるが、一つだけ挙げるとすれば、競争力を強化すること。そのためには、今日示していただいた36項目の規制改革・制度改革をしっかり一つずつやっていくこと。世界からどうすればマネーを呼び込んでいくことができるのか、そういうことを考えるべき。例えば、GXでも排出権の枠組みを設定するということだが、それは最低限守った上でアジア、欧米のお金をどう取り込んでいくのか、潜在的な能力を我が国は有している。そして集めたお金をどうやって勝ち筋に投下していくのか。極端に言えば、1社に対して集中的に支援を投下していくということも選択肢。大胆な競争力強化に向けた取組が必要。
 重ねて競争力の強化を訴えたい。今やるべきことは、活力ある日本にしていくこと。その源泉は競争力。よいものが日本にはたくさんある。
また、資産立国を総理も掲げているが、いかに日本に投資してもらうか、その環境を根づかせるか。さらには、ESG、気候変動の中でも、日本はかなりや特許を有している。アメリカでは、特許などを担保にして資金調達するファイナンスの手法も広まってきているので、これも参考とすべき。アニメや漫画など魅力的なコンテンツがたくさんあるので、その中で勝ち筋をどう作っていくかということも重要。
 最後に総理から締めくくりのご発言ございましたが、皆様にお聞きいただいたとおりでありますので、割愛いたします。
 私からは以上でございます。






(以上)