第12回記者会見要旨:令和5年 会議結果
新藤内閣府特命担当大臣記者会見要旨
- 日時:令和5年9月26日(火)18:29~19:01
- 場所:中央合同庁舎第8号館1階S108会見室
1.発言要旨
まず、経済財政諮問会議の概要について、ご報告いたします。
本日の議題は2つです。「新内閣・諮問会議における重点課題」と、今朝の閣議で、岸田総理から御指示がありました、経済対策を含む今後の「マクロ経済運営」についての議論を行いました。
「新内閣・諮問会議における重点課題」につきましては、少子高齢化の下で経済・財政・社会保障の持続可能性、分厚い中間層の拡大、気候変動とエネルギーコストの高まりなどの課題についての対応方針を明らかにすべき、という意見がございました。
次に「マクロ経済運営」につきましては、物価高という当面のリスクに対処する政策と、労働市場改革、国内投資の拡大など、経済を新たな成長経路に乗せるための政策の両方を見据えたマクロ経済戦略が必要だという意見がございました。
経済対策では予算や税制、規制・制度改革などの政策手法を適切に組み合わせることが必要ということもお話がありました。
総理からの締めくくり発言は、お聞きいただいたとおりであります。私としては本日の総理の御指示を踏まえ、10月末を目途に経済対策を取りまとめる。その対策は新たなステージへのスタートダッシュとなるようなものにしたいと思っておりますし、国民の皆様に将来に向けて明るい希望を持っていただけるようなものにしたいと願っております。
詳細につきましては、後ほど事務方からご説明をさせていただきます。
また、本日の諮問会議では、諮問会議の更なる活性化ということで、今日は久しぶりの自由討議も行いました。
加えて、私の下に、私的な懇談の場として、諮問会議のメンバーの方を中心にしながら官民の若手エコノミストに参集してもらい、「経済財政検討ユニット」というものをつくって、そこで自由闊達な議論をしたいと思っています。
これは経済財政諮問会議の下部機関ではありませんが、議論の準備として、より広く、様々なことをみんなで意見交換しながら、建設的な提言ができればなと思っております。
そしてまた、諮問会議においても御指摘がありましたが、やはりいろんな経済政策を打っていく中で、エビデンスベースできちんと議論をしていく、その強化のためにも役立てたいと思っております。
中身、メンバーにつきましては今後関係者と調整しながら、決まりましたら皆さんにご報告したいと思います。
2.質疑応答
(問)1点目ですが、本日の諮問会議では民間議員から、光熱費、燃料費の急騰抑制といった生活支援で、厳しい状況にある方々を重点的に支援するとの意見がありました。経済対策の取りまとめを今後進めていく中で、低所得者などに対象を絞り込む必要性について、大臣はいかがお考えでしょうか。お願いします。
(答)私ども政府は、これまで、物価高に対し、国民生活を守るという観点から、まず幅広い国民・事業者を対象とするガソリン価格、電気・都市ガス料金の激変緩和策を講じているわけです。そして、併せて物価高の影響を受けやすい低所得世帯を対象にした給付金の支給も行っています。
ですから、必要なものを適切に組み合わせながら、物価高対策は幅広く、価格低減策を講ずることと併せて、所得の厳しい世帯に対して重点的支援策を組み合わせているということでございます。今後も経済状況を見ながら様々な対策を適切に打っていきたいと考えています。
(問)もう1点、今のご発言があった「経済財政検討ユニット」についてお願いします。主にこれはどういった議論をするのかというところで、マクロ経済政策についてなのか、それとももうちょっと幅広く産業育成なども含めて実施するのか、そのあたり、大臣のお考えを伺えますか。
(答)将来に向けて新しい経済のステージを作り上げて、そしてそれに向けて国民が明るい希望を持ち、事業者は投資を促進し、また先行きが見えるところで物価上昇を超える賃金上昇が実現できるのではないかと思っています。
そして、マクロ経済の議論をする際には、結局マクロを構成するミクロの部分も議論せざるを得ないということで、諮問会議の民間議員に御協力いただきながら、様々なジャンルの若手の方も含めたエコノミストの皆さんと議論をしていきたいと思っています。
ですから、あらかじめこれをというよりは、私の下で、経済財政政策担当大臣が様々な施策を打っていく中で必要なものを、皆さんと相談しながら議論していきたいと思っています。
(問)今の検討ユニットについてちょっと関連でお伺いしたいんですけれども、今、関心事としては新たな経済対策をどういうふうにしていくかというところだと思うんですけれども、それとの関連で検討ユニットはどういった役割を果たしていくのか、今の時点でのお考えはどうでしょうか。
(答)新たな経済対策は来月末を目途に取りまとめるわけでありますから、もちろんその作業に資するのであればこれもいいと思いますが、もう既に総理の指示のもとに政府全体でこの作業が始まります。それを私たちが取りまとめしながら全体の方向性を調整する役割でございます。
経済財政諮問会議はマクロ経済、中長期の経済がどうあるべきかということを大所高所から御議論いただきながら、そのためには短期的課題をどう解決すべきか、こういうことをやっているわけなので、それらにそれぞれ資するような議論ができるものにしたいと思っています。
私からこの場で提案をして、これから作り出すものですから、作業の進捗によってその時に活用できるものは活用していきたいと考えています。
(問)1点だけ、今回の経済財政諮問会議について、冒頭、様々な御意見があった旨、お知らせいただいたと思うんですが、民間議員の方から新たな経済対策についてどういった意見が出されたか、教えていただけますでしょうか。
(答)賃上げを構造的に実現するためにはどうしたらいいのかということ、それから、詳細は後ほど事務方からの説明がありますが、やはり順番として、物価の上昇が先行して、そして後から賃上げでは効果はなかなか出ないだろうと。だから、そういうタイミングというものをきちんと考えながら議論すべきだと。
それから、やはり新しい経済をつくるためには新たな投資が必要です。その投資は将来の投資ではあるが、それは目の前の経済対策にもなり、それが地方の経済や個々の皆さんの家計所得にも影響が出る政策を打つ必要があると思っています。
ですから、そういうことに関する戦略的なもの、そしてエビデンスベースの議論をきちんとした中で対策を組むべきだと、こういうような御意見がありました。
(問)「経済財政検討ユニット」に関してですけれども、今後いつぐらいに立ち上げて、どれぐらいの頻度で議論をして、最終どういった成果物というか取りまとめの方向に向かうのか、もうちょっとイメージを教えていただければと思います。
(答)可及的速やかに立ち上げたいと思います。もう既に新たな経済をつくる、今まで総理がコストカット、そして冷温の経済というふうにおっしゃっていますが、これを成長の熱量を感じられるような、そういう力強い新しい経済をつくろうじゃないかということを私たちは目標にしています。
もう既に対策は始まっているわけですから、できる限り素早く立ち上げて、そして、まずは短期的な政策に対して反映できるものがあれば、それをきちんと反映させたいと思いますし、そのためには結局、中長期のきちんとした展望がないと短期の政策も最大の効果を上げることができないということから、結局のところ、総合的な対策を検討するということになります。
今、正に私のほうで立ち上げたばかりですから、まずは経済財政諮問会議の民間議員の皆さんと意見交換をしながら、人選も含めてやっていく。まだ詳細は決めていませんが、ある程度コアメンバーはいるにしても、様々なテーマに応じて、皆さんで出入りしてもらいながら議論を活性化していきたい、そういった工夫もあっていいのではないかなと思いますし、結論を出せという会議ならばそれなりの作業が必要ですが、一方で、まずはきちんと議論して積み上げていこうということの中から、今あるものをどうやって、さらにより効率的なものにできるかという、そういう成果が得られるのではないかと期待しています。
3.木村内閣府政策統括官(経済財政運営担当)による追加説明
令和5年第12回の経済財政諮問会議について、先ほど新藤大臣からも御紹介がございましたように、議題は二つでございました。
一つ目の議題は「新内閣・諮問会議における重点課題」です。もう一つの議題が「マクロ経済運営」についてです。
まず、一つ目の議題の「新内閣・諮問会議における重点課題」については、柳川議員から資料1に基づき、民間議員からの御提案を頂きました後、内閣府から資料2の説明をいたしました。
続きまして、議題二つ目の「マクロ経済運営」については、私の方から資料3を説明いたしました後に、中空議員から資料4に基づき、民間議員からの御提案を頂きまして、それに続く形で、植田日銀総裁から資料5の説明を頂戴しました。
二つの議題について、各議員よりまとめて発言がございました。主な御意見を御紹介申し上げます。
まず、閣僚です。鈴木財務大臣でございますけれども、我が国を取り巻く環境が激変する中、「経済あっての財政」という方針に則って、急速に進行する少子化など、多様な社会課題に対応する財源を確保しながら、持続可能な経済財政運営を行っていくことが必要不可欠。
当面の課題として、まずは物価高から国民生活を守り、30年ぶりとなる高い水準となる賃上げ、企業部門に醸成されてきた高い投資意欲など、前向きな動きを更に加速させ、「成長と分配の好循環」を成し遂げることが重要。
その際、コロナ禍から脱していく中で、緊急時の財政支出を必要以上に長期化・恒常化させず、歳出構造を平時に戻していくことにも合わせて取り組んでいく必要がある。
こうした観点から、今回の経済対策においても、規模ありきではなく、真に必要で効果的な政策を積み上げていくことが必要であると考えており、その内容について、関係省庁とともによく検討を進めていきたい。
続きまして、経済産業大臣です。コロナ禍、ロシアのウクライナ侵略を経験し、時代が大きく変化しており、新しい時代の経済構造が求められている。
現在直面する物価高に加えて、今後も継続する構造的な人手不足、そして将来起こり得る金利高といった課題を乗り越えていくために、日本経済全体の構造改革を進め、この20年を取り返すような、力強い成長を実現していく。
需給ギャップがほぼ解消している中で、需要喚起ではなく潜在成長率を引き上げるため、新しい時代の構造改革のための投資の呼び水となり、世界をリードする技術・イノベーションを大胆に後押しし、日本を持続的な成長軌道に乗せるための経済対策を打ち出していく。
そのために、GX、DXといった投資分野において、日本がイノベーションによって世界をリードしていくための投資を後押ししていくとともに、同志国とのサプライチェーン強靱化、省人化・省力化・省エネなどによる人手不足対応と物価高に負けない賃上げ、イノベーション・スタートアップ支援等を講じ、供給力強化を通じて潜在成長率を大幅に引き上げるための国内投資を促進することが重要である。
多くは地方への投資であり、地方で賃金上昇につながる雇用を生んでいる。所得向上という結果を伴う地方が牽引する形の「新しい時代の列島改造」。また、そのためのインフラも必要となってくる。工業用水やアクセス道路、公共交通などのインフラも整備していく。
日本は保護主義にはならない。一部の貿易や投資は安全保障の観点から管理はするが、同志国間は自由な貿易・投資関係を作っていくことが成長につながる。
GXについては、日本が世界をリードしていくために、「成長志向型カーボンプライシング構想」の下、国として20兆円規模の大胆な先行投資支援を行い、今後10年で150兆円を超えるGX投資を官民協調で実現していく。
昨日から、世界40か国程度の参加を得て、東京GXウィークが始まったが、各国とも、多様な道筋の下、水素、アンモニア、CCUSなどの様々なイノベーションへの挑戦の表明があった。
再エネ導入が進んでいるドイツ、イギリスなど欧州諸国から学ぶべき点は多いが、理想論に陥ってはならない。ドイツは2030年再エネ8割を目指しているが、家庭用電気代が約2倍となり、イギリスは10年で石炭を4割から1割にしているが、電気代が約1.5倍になった。経済成長や電気代の状況を見ると、これらの国の政策をそのまま持ってくることは不適切。省エネ型の経済構造、サーキュラーエコノミーを実現するなど、日本の実情に合った、エネルギー危機に対して強靱なエネルギー政策を進めてまいりたい。今後とも再エネ、原子力などあらゆる選択肢を追求し、エネルギーの安定供給、脱炭素化、経済成長を同時に達成する。
中小企業の時代の変化に応じた取組への意欲も感じている。生産性向上を通じた賃上げに取り組む中堅・中小企業等への支援などについては、事業再構築補助金など、中小企業の挑戦意欲を引き出す政策も用意している。毎回約2倍の倍率で非常に強い意欲を感じており、中小企業の果敢な挑戦を支援していきたい。
さらに、格差の問題にも目配りし、セーフティネット対策も行うことで、包摂的な社会を作ることも重要。物価高については、輸入物価上昇ではなく、成長とそれに伴う賃金上昇によって2%目標を実現していく。足下のエネルギー価格による物価高については、常に出口のことを念頭に置きながら、激変緩和措置を引き続きしっかり行っていく。
こうした観点を盛り込んだ経済対策の策定に向けて、経済産業省としても全力を挙げて取り組んでまいりたい。
ここからは民間議員の発言です。
1人目の民間議員です。
ポイントは「成長と分配の好循環」をどのように実現するかという点。政府においては、企業の国内投資の活性化、賃上げの環境整備をお願いしたい。
全世代型社会保障の構築に関して、モデレートな物価上昇に負けない賃金の引上げは極めて重要だが、賃金の上昇だけでは「成長と分配の好循環」を実現できない。消費の喚起が重要である。しかし、若い世代は貯蓄性向が高く、少子化の要因ともなっている。将来への漠とした不安を解消するために、全世代型社会保障の構築をお願いしたい。社会保障の財源については、財政の問題でもある。公費の負担を下げて、社会保障の負担を上げることとなれば、現役世代の負担を増大させることになる。世代を問わず、応能負担を徹底していただき、税と社会保障のベストミックスを政府内で議論していただきたい。
エネルギー安全保障については、食料安全保障や経済安全保障とは異なり、有志国・同志国からの融通に依存できず、DX等に伴ってエネルギー需要の増大が見込まれる中にあっては最重要課題である。安価で安定したエネルギーを調達できるよう、原発の着実な再稼働、次世代核融合炉の開発への支援強化をお願いしたい。
次に、2人目の民間議員です。
先週、ニューヨークで総理が講演をされたが、GDPや投資、賃金についてデータでもって語られたことが、マーケットの評価が高かった理由だと思う。マーケットに前向きな評価をしてもらうためにも、数字をしっかり出していくべき。
日本がどこで勝っていくのか、勝ち筋に投資していくことが重要。格付のリスクは常に注意していくべき。物価対策をし続けると財政が弛緩していくが、格付や資金調達コストに留意すべき。
続きまして、3人目の民間議員です。
コストカットによるデフレ経済下では、企業がリスクを取らず、現状維持が最善であった。今は緩やかなインフレ下であり、民需主導の経済への移行の千載一遇のチャンスである。国に頼って需給ギャップを埋めるのではなく、アニマルスピリッツでもって、民間主導の経済で財政を支えていくことが重要。今後3年間を集中期間として、本年は足掛かりの年とし、恒常的な実質賃金の上昇と可処分所得が増加していくことが重要。金利のある経済は、新陳代謝の経済である。
国内投資の誘発が重要で、このために大胆な投資減税を行うべき。デフレ経済下では補助金が必要であったが、緩やかなインフレ下では企業が自ら行動していくことが重要である。
構造改革をすべき。例えばライドシェアのような規制改革をしていくといったメッセージを示していくべき。個人も企業も低金利優遇をしていくべき。
キャリアデザインやリスキリング、雇用慣行の是正など、人材の流動化が起こり、可処分所得を増加させていくことが重要。教育訓練投資の税額控除など、使いやすいものにしてほしい。
保育・介護人材の問題について、女性活躍のためにも外国人労働者について考えるべき。
税収が名目で増えていく中で、EBPMを徹底し、乗数効果の高い政策に重点化していくべき。エネルギーコストが高いことについても、何かしら手当すべき。
最後に、4人目の民間議員の御発言です。
今後、経済対策を取りまとめ、実行していくことが重要。その結果、マクロ経済全体がどこに向かっていくのか、経済社会の姿や道筋を見せて、諮問会議で議論をし、方向性を示していくことが必要である。
マクロ経済政策は、財政政策、金融政策だけではない。経済に影響を及ぼすような規制改革、子ども・子育て政策もマクロ経済政策となり得る。色々な政策について、相互作用があるのか、歩調を合わせるとどうなるのか、トータルで考えるべき。
諮問会議のほか、それぞれの会議で議論されている政策について、諮問会議においてデータを示し、エビデンスを確認しながら、全体的な視点で積極的に議論していきたい。
その後、自由討議がございました。主な御意見を御紹介申し上げます。
まず、日銀総裁です。賃上げについては企業の一部に積極的な動きが見られ、賃金と物価の好循環を実現する中で、こうした変化の芽を大事に育てていくことが重要。賃上げと投資拡大の変革をサポートする施策に大変意義がある。人口動態の変化を踏まえつつ、成長力の強化を図っていくことが重要。
次に、自由討議での1人目の民間議員です。これまでは生産性あっての賃上げだったが、人手不足が加速する中でモメンタムが変わって、賃上げあっての生産性となった。今や、まずは賃上げを行い、労働力を確保した上で、彼らのモチベーションを向上させ、生産性向上に向けた動きにつなげていかなければならない。
中小企業については、人件費の価格転嫁を徹底しなければならない。
自由討論での2人目の民間議員です。賃金上昇については、構造的で、持続的であることが重要。このためには、良好なマクロ経済環境、そして適度な物価上昇が必要。
良好なマクロ経済環境のためには、全世代型社会保障の構築による個人消費の増加や、GX移行債等による国内投資の拡大、規制改革、労働市場改革が重要。
適度な物価上昇については、デフレ脱却、成長と分配の好循環には、賃金を上昇させることだけではなく、様々な取組が必要。
自由討議での3人目の民間議員の御発言です。時間軸については、効果がすぐに出るもの、長時間かかるものもある。長期でやるべきものについては、時間をかけて成果を出していく。短期、中期、長期で組み合わせていくことが重要。
結果のタイミングについて、賃金と物価の好循環といっても、順序が大事。賃金が上がってから物価が上がっていくことが重要であって、どういう順序で政策を打ち出していくかが重要である。
自由討議での4人目の民間議員です。金融界は日銀の次の一手を注視している。2013年の政府と日銀の共同声明に基づき、マクロ経済政策運営の状況やポリシーミックスなどについては、引き続き、経済財政諮問会議で定期的に議論していく必要。国内外の経済情勢が不透明な中にあって、機動的に財政政策、金融政策に取り組むことが肝要。金利上昇が経済に及ぼす影響など、仮説の検証も重要であり、諮問会議で議論していく必要があるのではないか。
最後に、総理から締めくくりの発言がございましたが、これは皆様がお聞きになられたとおりでありますので、割愛いたします。
私から以上でございます。
(以上)