第11回記者会見要旨:令和5年 会議結果

後藤内閣府特命担当大臣記者会見要旨

  • 日時:令和5年7月25日(火)18:01~18:35
  • 場所:中央合同庁舎第8号館1階S108会見室

1.発言要旨

 経済財政諮問会議の概要について、ご報告いたします。
 本日は、「中長期の経済財政に関する試算」について内閣府から報告した上で、前回の民間議員からのご提案に基づき「予算の全体像」を取りまとめました。また、概算要求基準について了承を得たということでございます。
 「中長期試算」につきましては、実質2%程度の成長率となる「成長実現ケース」の国・地方のPBは、歳出自然体での黒字化は2026年度となりますが、これまでの歳出効率化努力を継続した場合の黒字化は2025年度と、1年程度の前倒しが視野に入ります。
 「ベースラインケース」の国・地方のPBは赤字基調が続き、公債等残高対GDP比は、試算期間後半には上昇に転じるとの試算結果でございました。
 また、岸田政権が掲げた人への投資、スタートアップ、DX・GX投資の政策などに取り組むことで、米国並みの生産性上昇率に至ることが示された「参考ケース」、これは全要素生産性(TFP)上昇率が1.1%のケースですが、この「参考ケース」でも歳出効率化努力を継続した場合には、2025年度に国・地方のPB黒字化が視野に入るとの結果が示されております。
 これらの中長期試算を踏まえ、主に次のような意見がありました。
 成長効果の高い政策に予算・税制・規制の面から重点的に取り組みまして、潜在成長率を高めるべきである。
 それから、今回新たに示された「参考ケース」の分析は非常に示唆に富むものである。
 こうした意見がございました。
 総理からの締めくくりの発言はお聞きいただいたとおりでありますが、私に対して、中長期的な経済財政の枠組みの策定に向けて、これまでの経済財政の改革の進捗を点検・検証し、課題と成果を総括する必要があり、経済財政諮問会議に報告するように指示がありました。
 まずは、本日決定した「予算の全体像」を踏まえまして、来年度予算において、歳出構造を平時に戻していくとともに、新しい資本主義の取組を更に加速させていきたいと考えております。
 以上です。






2.質疑応答

(問)今回の中長期の財政試算についてですが、1月の試算の時と同じで、高い経済成長率の「成長実現ケース」でなければ2025年度のPB黒字化は難しい結果となっていますが、試算そのものについて成長率の見通しが甘いのではないかという指摘が以前からあると思いますが、その受け止めをお願いします。
 また今後、こども・子育ての歳出が増える可能性もあると思いますが、その中で財政健全化をどのように進めるのか教えてください。


(答)まず、試算の「成長実現ケース」でありますが、政府の政策実現により、デフレを脱却し、実質2%程度の経済成長に至る姿を示したものです。このケースでは、TFP上昇率は、日本経済がデフレ状況に入る前の期間に実際に経験したTFP上昇率の平均である1.4%程度に到達すると想定をしたケースであります。
 人への投資や成長分野への大胆な投資拡大、またスタートアップ政策などの取組により、潜在成長率を引き上げ、持続的・安定的な経済成長を実現してまいりたいと考えています。
 なお、今回は、TFP上昇率の前提が「成長実現ケース」よりも低い「参考ケース」もお示しをしております。岸田政権が掲げた人への投資、それからスタートアップ、DX・GX投資などの政策などに取り組むことで、米国並みの生産性上昇率に至ることが期待される「参考ケース」においても、2025年度の国・地方のPBは、これまでの歳出効率化努力を継続すれば、同年度の黒字化が視野に入る結果となっております。
 こうした新しい「参考ケース」もお示しをしており、このことについては先ほども申し上げましたが、経済財政諮問会議の民間議員からも非常に意欲的な、そして示唆に富む、そういうアプローチであるということが指摘をされています。
 それから、こども・子育て関連の歳出増等も見込まれる中で財政健全化をどのように考えていくのか、健全化目標をどうするのかというご質問だったと思いますが、その点につきましては、財政健全化目標については、まず結論として申し上げれば、骨太方針2023において、「財政健全化の「旗」を下ろさず、これまでの財政健全化目標に取り組む」としており、引き続き、2025年度PB黒字化等の目標を目指していくことに全く変わりはありません。
 そのためには、コロナ禍を脱し、経済を正常化させる中で、歳出も平時に戻していくとともに、人への投資や成長分野への大胆な投資拡大などの取組により、潜在成長率を引き上げ、持続的・安定的な経済成長を実現していくことが何より重要です。
 なお、御指摘のこども・子育て関連の歳出増についてでありますが、少子化対策の「加速化プラン」の実施に伴う追加的な経費について、必要な経費について安定財源を全体で確保するというスキームになっております。
 PBへの影響については、今後の予算編成過程において、事業の毎年度の執行の規模、財源の入り方、そうしたものが明らかになった段階でしっかりと試算に反映してまいりたいと考えています。
 いずれにせよ、足下の経済状況に機動的に対応しつつ、潜在成長率を引き上げていくとともに、市場や国際社会における中長期的な財政の持続可能性への信認が失われることがないように、責任ある経済財政運営を行ってまいりたいと考えています。



(問)今回、新たに設けた「参考ケース」について教えてください。今、少し伺ったこととかぶってしまうかもしれませんが、ケースでTFPの上昇率を1.1%と置いた理由と、この1.1%というところの上昇率の妥当性について、教えていただけますでしょうか。


(答)中長期試算では、従来から「ベースラインケース」と「成長実現ケース」を示してきたところです。このことについては変わりありません。骨太方針2023において、「経済シナリオの位置づけや政策効果の発現の仕方など中長期の経済財政の展望の分析を拡充する」と指摘されたことを踏まえ、新たに「参考ケース」をお示ししたわけです。
 この参考ケース、TFP上昇率について、「成長実現ケース」ではデフレ状況に入る前の平均の1.4%程度に設定しているのに対して、「参考ケース」では、デフレの時も含めて、過去40年平均の1.1%と設定いたしております。
 この意味でありますが、新たにお示しした「参考ケース」では、岸田政権が掲げた人への投資やGX・DX等の投資、スタートアップの推進の政策などにしっかりと取り組むことで、米国並みの生産性上昇率に至ること、すなわち1.1%のTFP上昇率の下で歳出効率化努力を継続すれば、2025年に国・地方のPB黒字化が視野に入ることが示されております。
 まずは、こうした姿を着実に実現していくこととし、政策実現に向けた取組をさらに加速していくこととしたいと思います。
 この先進的な推計の内容については、冊子の中のボックスの中に記述がされておりますので、そうしたものも見ていただければと思っています。
 こうした「参考ケース」は、今後、中期的な経済財政の枠組みを議論する際の参考としてまいりたいと考えています。



(問)今日の会議で総理から大臣に対しまして、仰っていたように、これまでの経済財政の改革の取組について、進捗について、点検・検証して諮問会議に報告するようにという御指示があったと思うのですが、今後どれぐらい、いつごろまでにそういった点検を報告するかといったスケジュール感と、あとは大臣としてここを重視して、ここを注目ポイントとして点検していくといったところがございましたら教えてください。


(答)骨太2023におきまして、これまで取り組まれてきた経済・財政一体改革の進捗については、2024年度に点検・検証を実施することとされています。
 今般、ご指示のあった経済財政の改革の進捗の点検・検証については、経済財政諮問会議の下に置かれている経済・財政一体改革推進委員会において、「新経済・財政再生計画」、工程表で定められた「経済・財政一体改革」の取組を点検・検討するとともに、その背景となる経済財政の状況・変化、評価の視点なども含めて、今後、内閣府において点検・検証作業を行っていくということにします。
 その体制、点検・検証の射程、スケジュールについては現時点では未定でありますが、2024年度の骨太方針に最低限活用できるように、できるだけ速やかに検討を進めていくこととしたいと考えています。



(問)もう1点よろしいでしょうか。今日の同じく総理の御発言でも、歳出構造を平時に戻していくという、骨太の方針に盛り込まれた文言が概算要求基準のところで再び言われました。これが含意しているのは、コロナ禍、2020年度以降、結構膨らんでいたところを、2019年度以前ぐらいの規模にして、補正予算等も含めていくということを含意していると理解してよろしいのでしょうか。


(答)基本的には新型コロナの3年ちょっとの間に、国民の命と暮らしを守るために、財政を出動させることによって、そうした政策を実現してきました。未知のウイルスとの闘いにおいて、そうした政策は国民の命を守るためにも非常に重要だったと考えていますが、今こうして感染状況が一区切りついて5類になった今の状況で、やはりこうした歳出についてしっかりと見直しをしていく必要があるということでありまして、おおむね御指摘のとおりと思います。



(問)今日の総理の御発言で、2025年度の黒字化について、1月時点の時よりも、1月は総理がもう少し前向きとまでいかなかったような御発言があったと思うのですが、今日は視野に入っているということで前向きになった印象を受けたのですが、この背景には、そもそもGDPは1月時点よりも見通しが下方修正された中で、どの辺がその背景にあると御覧になっていますか。もしくは、そもそも総理が全然変わっていないということなのか、それとも少し前向きになられて、2025年が近くなって、こども予算等はありますが、もう少し歳出改革が進みそうだと考えられているのか、その辺はどうお考えになっていますでしょうか。


(答)一つは、認識について、それほど大きな違いがあるという認識ではありませんが、いずれにしても2025年度の基礎的財政収支、PBの黒字化が視野に入るという認識については、変わりはないと思います。
 ただ、今回、「参考ケース」でもお示ししているように、30年ぶりに賃金が上昇する、そして企業も投資に対して前向きな動きが出てきた、そういう意味では、経済に新しい風が起きている、そういう認識を肌身で感じている、そういうことが全体として経済の堅調につながっていくという認識を強く持っているということが背景にあると思います。
 基本的に実質の数字について言えば大きな変化はありませんし、今年度は物価が高くなったことで名目値が高くなっていますが、これもしっかりと、いわゆる成長と分配の好循環に基づく、そうした正規の軌道に従って拡大をしていくという方向性を強く認識しているということの結果です。











3.木村内閣府政策統括官(経済財政運営担当)による追加説明

 令和5年第11回の経済財政諮問会議について、今回は、先ほど後藤大臣からも御紹介がございましたように、三つの議題でございました。まず、「中長期試算」及び「予算の全体像」について、内閣府から資料1、資料2を御説明させていただきました。
 続けて、中長期試算を踏まえた形で、柳川議員の方から資料3に基づき民間議員からの御提案を頂きました後、令和6年度予算の概算要求基準につきまして、鈴木財務大臣から資料4の説明があったところでございます。
 これら三つの議題につきまして、各議員からまとめて御発言を頂戴しました。
 主な御意見、御発言を御紹介したいと存じます。
 まず、閣僚でございます。鈴木財務大臣でございますが、今回の中長期試算では、歳出効率化努力を継続することにより、2025年度にPBが黒字化し得るという姿が示された。今後の財政運営に当たっては、コロナ禍を経て経済が正常化していく中で、歳出構造を平時に戻し、民需主導の経済成長を実現していくことが何よりも重要だ。一方で、賃金、物価動向など、新たな課題への対応も求められている。こうした中、来年度予算は厳しい編成になると考えているが、必要な政策対応はしっかりと行う一方で、歳出の中身を精査し、必要な財源を確保していくことにより、経済成長と財政健全化の両立に取り組んでまいる。
 続きまして、経済産業省の里見大臣政務官でございます。我が国の経済は、春闘での賃上げ率が30年ぶりの高水準になった。今年の国内投資は100兆円を超え、バブル期以降最高となる見込みであるなど、長い間続いてきたデフレのマインドから、今まさに脱却しようとしているところである。こうした潮目の変化を捉えまして、日本経済をしっかりとした成長軌道に乗せていく大きなチャンスである。
 2025年度のPB黒字化も視野に入ってきたが、経済あっての財政であって、経済の動向に応じて柔軟で機動的なマクロ経済運営を行う視点も重要だ。財政健全化に向けては、効果の高い投資を積極的に促進することで、得られる税収が増加することも踏まえた財政政策の在り方を議論することが必要である。経済産業省としても、GX推進法に基づく官民での150兆円規模の関連投資の実現や、生成AIに代表される非連続的な技術革新のような生産性を高める取組を後押しし、国内投資とイノベーションと所得向上の三つの好循環を実現していきたいと考えている。
 それに続きまして、民間議員の方から御発言がございました。
 まず、1人目の民間議員からの御発言でございますが、我が国経済がダイナミズムを取り戻し、デフレ脱却を確実なものとしていくためには、国内投資を拡大し、成長と分配の好循環を実現していくことが重要だ。中長期の経済財政運営を考えるに当たって、三つの観点が重要だ。一つ目は、官民の役割分担について。民間活動の活性化のために、人への投資、スタートアップ等を後押しする税制措置が必要だ。また、市場の失敗に対する政府の役割も重要だ。社会課題の解決に当たり、リスクの高い投資分野や社会資本整備分野については、民間の投資を呼び込むための政府の投資も必要だ。二つ目は、分配面のフォローについて。成長と分配の好循環の実現状況について、各種の指標でフォローしていくことが必要だ。その上で分厚い中間層の底上げが重要だ。三つ目は、中長期の経済財政フレームについて。経済・財政・社会保障の将来像を示していくことが重要であって、経済を考えていく上で漠とした不安を解消し個人消費を増やしていくためにも、全世代型社会保障の構築が急がれる。社会保障分野においては、公費負担だけではなく社会保険料を含めた全体像を政府内で議論をしていくべき。
 次に、2人目の民間議員でございます。中長期試算について3点申し上げる。1点目としては、徹底した正常化が必要だ。2020年以降の支出が財政の姿に大きな影響を与えたことは否めない。財政健全化の旗を降ろさないためにも、こうした措置に頼らず経済成長していく姿を描く必要がある。また、コロナ関連の予算の中で何が効果的であったのかと、しっかりとその結果を見える化し見直していくことが大事だ。2点目としては、提示されるシナリオは楽観的過ぎても悲観的過ぎても望ましくない。一方で、不確実性が増す経済情勢の中で正確性を期することは難しい。参考ケースの提示等でリアルな姿を見せていくことが大事だ。また、今回、加筆されたリスク分析は望ましいものだが、為替レートが変化した場合のことについても注視すべきではないか。3点目としては、財政健全化目標の重要性について。今回の試算で2025年度のプライマリーバランス黒字化目標の実現が視野に入ることが示され、正に財政健全化実現の好機となっているということが明らかになった。既存の中期財政フレームがその力を発揮したものだと考えており、今後の中期財政フレームについては、ほかの民間議員ともよく連携をしながら、諮問会議で議論していきたい。
 最後に、中長期試算は重要な推計だが、各種の取組を実際に実現していくことこそが最も肝要である。GXを含む政府の取組について優先順位を練り、しっかりと議論を重ねて実施していくことが大事。
 続きまして、3人目の民間議員の発言でございます。デフレマインドからモデレートインフレマインドに変わっていく中においては、経済の躍動感が生まれてくる。中長期の経済財政運営を考えるに当たっては、過去の延長線や予定調和でないことが大事だ。
 新産業政策を進めるためにも、大規模な財政投融資を行うべき。エネルギーコストを下げていく取組、あるいは、70歳まで働ける社会を実現するために、デジタルやヘルスケアの分野での規制改革、年収の壁解消といった取組を進めることが大事だ。賃金が上昇して人手不足が起きるといった社会が変わった中で、リスクを取ってかんかんがくがくの議論をしていくことが重要だ。民間の資金、知恵を使いつつ、景気の「気」を作っていくことが必要だと、こういう御指摘がございました。
 最後に4人目の民間議員でございますが、中長期試算について、成長実現ケースとベースラインケースの乖離や、成長実現ケースがいつ実現するのかという課題があった。今後成長実現ケースをしっかり達成していくことが重要だ。中長期試算について2点申し上げる。1点目として、供給力を上げるための改革の重要性について。既に岸田政権下で進められている人の投資、スタートアップ、GX、DXへの投資は重要だが、それ以上に新しい技術への規制改革や国際的なルールづくりなど、国や政府でないとできないことにも取り組むべきだ。例えば生成AIは倫理面含めて欧州などでルールづくりが進められている。2点目として、歳出改革について。次元の違う歳出改革が必要となるわけだが、そのためにはまずEBPMの考え方によってデータに基づいて支出の効果等について考えることが大事だ。加えて、デジタル行財政改革も大事であり、民間企業やそれ以上の効率化を図るべき。最後に歳出改革に知恵を出した公務員、官僚、閣僚を評価するような仕組みが必要ではないか。
 また、中期の財政フレームを考えるに当たっては、世の中がどう動いていくのか、国をどうしていきたいのか、大きな議論をして方向性を示すことが大事だ。中期の財政フレームは一つ一つの政策について考えるのではなくて、大きな流れとセットで考える必要があると、こうしたことについて経済財政諮問会議で議論していきたいという御発言があったところでございます。
 あとは総理の締めくくり発言でございますが、これは皆様お聞きになられたとおりであり、また、先ほど大臣から概要を御報告しておりますので、割愛いたします。
 私から以上でございます。






(以上)