第10回記者会見要旨:令和5年 会議結果

後藤内閣府特命担当大臣記者会見要旨

  • 日時:令和5年7月20日(木)15:51~16:21
  • 場所:中央合同庁舎第8号館1階S108会見室

1.発言要旨

 経済財政諮問会議の概要について、ご報告いたします。
 本日は、まず、「年央試算」について内閣府から報告をいたしまして、それを踏まえて、「予算の全体像」について議論が行われました。
 「年央試算」について、ポイントを申し上げますと、2023年度は、輸出の減速等による景気下押しは見込まれるものの、サービス消費をはじめとする個人消費の回復や、企業の設備投資の増加が期待されることから、GDP成長率は実質で1.3%程度、名目で4.4%程度と見込まれます。
 2024年度について、一定の想定の下に試算いたしますと、GDP成長率は実質で1.2%程度、名目で2.5%程度と、民間需要主導の緩やかな成長が見込まれるということです。
 「予算の全体像」について、主に次のような意見がありました。
 我が国経済は緩やかに回復しているが、物価高による所得の実質的な下押し等の懸念材料があり、構造的賃上げと投資拡大の継続に向けて、今が正念場である。
 また、供給力の強化、構造的賃上げ等の重要政策への資源配分の重点化を図りつつ、物価・経済の動向に応じて機動的なマクロ経済運営を行うべきである。
 それから3番目でありますが、財政政策に当たっては、潜在成長率の上昇と社会課題の解決に重点を置くべきである。特にコロナ禍で経済の下支えから供給力強化に政策の軸足を移すべきであるというような御意見等がありました。
 総理の締めくくりの発言については、皆さんもお聞きいただいたとおりでありますが、骨太2023で示したように、未来への投資の拡大と構造的賃上げの実現に向けた新しい資本主義の取組を加速させ、「成長と分配」の好循環を実現していく。また、民需主導の持続可能な成長を確実なものとすることを目指して、令和6年度予算に向けて、骨太方針に盛り込まれた取組を現実の政策にしていくことが必要、というような御発言がありました。
 本日の議論を踏まえまして、次回の会議において、経済財政諮問会議として「予算の全体像」をとりまとめる予定です。
 第2点でございますが、7月14日から昨日19日まで、ニュージーランド及びシンガポールに出張に行ってまいりました。
 まず、7月15日土曜日及び16日日曜日にニュージーランドを訪問いたしまして、CPTPPの最高意思決定機関であるTPP委員会の第7回閣僚会合に出席いたしました。
 今回の会合では、英国のCPTPPへの加入を正式に承認する決定を採択いたしまして、我が国の政府代表として、私自身で加入議定書に署名をしてまいりました。
 また、デジタル経済・グリーン経済等といった新たな課題における協力や、新規加入要請へのエコノミーへの対応等について議論を行いました。
 更に、この機会を利用しまして、CPTPPの会合の合間を縫って、議長国ニュージーランド、カナダ、オーストラリア、シンガポール、マレーシア、ペルー、英国の閣僚と二国間会談を行いました。
 シンガポールでは、スタートアップ担当大臣として、タン・シーレン人材開発大臣兼第2貿易産業大臣との会談を行うとともに、スタートアップのインキュベーション施設や支援機関、大学等を訪問しまして、スタートアップ育成の在り方、スタートアップエコシステムについて意見交換を行っています。
 今般の意見交換等も踏まえまして、スタートアップ育成5か年計画を着実に推進し、日本にスタートアップを生み育てるエコシステムをしっかりと創出してまいりたいと思います。
 なお、ベトナム訪問につきましては、当初、チン首相、ジエン商工大臣との会談を予定しておりましたが、誠に残念ながら、台風の影響で飛行機、ベトナム便が欠航となりまして、ベトナムへの訪問自体が中止になりましたので、今後の機会に期待をしたいと考えております。
 以上です。






2.質疑応答

(問)物価高対策について伺います。本日開かれた経済財政諮問会議では、民間議員から、物価高対策について段階的な縮小・廃止を求める提言がありました。この点について、大臣の受け止めをお願いいたします。


(答)物価高対策につきましては、政府はこれまで、電力・ガス、そしてガソリン、肥料、低所得世帯等への給付金など、累次にわたる対策を講じてきています。電気・ガス料金の負担軽減策によって、消費者物価指数(総合)の上昇幅を1%ポイント程度抑制するなど、対策の効果は現れていると考えています。
 こうした中、日本経済は、コロナ禍からの経済社会活動の正常化が進み、緩やかに回復しており、また、足下では、30年ぶりの高い水準となる賃上げや企業の高い投資意欲など、前向きな動きが着実に生まれています。
 こうした前向きな動きをさらに進めまして、賃上げが当たり前となる経済、そして、物価高に負けない賃上げを実現していくことが重要です。
 政府としては、国内の供給力強化のための未来への投資拡大と、コストの適切な転嫁を通じたマークアップの確保、また、リスキリングによる能力向上支援など三位一体の労働市場改革など構造的賃上げの実現に向けた取組を加速させ、「成長と分配の好循環」の実現に取り組んでまいります。
 その上で、今後の物価高については、物価の上振れが家計の実質所得に与える影響には十分な注意が必要であり、政府としては、引き続き物価・経済の動向や、その国民生活への影響を見極めつつ、必要があれば機動的な対策を講ずるなど国民目線に立った対応を進めていきたいと考えています。



(問)年央試算の件で伺います。今年度の試算については1.3%、来年度については1.2%と、今年度に関しては下方修正されておりますけれども、数字としては高くもなく低くもなくくらいかという気がするのですが、この経済状況の見通しをどう受け止められているか、お聞かせいただければと思います。


(答)年央試算については、GDP成長率で今、御指摘のように、2023年度で実質1.3%ということでありまして、民間需要主導の緩やかな成長が見込まれているということだと考えています。



(問)それから、もう1点、消費者物価のところ、今年度は2.6%に、結構高い上方改定をされ、また来年度は1.9%と、結構高めの状態が続いていると思うのですが、こちらに関して何か対策等が必要かというようなお考えはありますでしょうか。


(答)政府としては、今年の6月、骨太2023において、「日本銀行においては、経済・物価・金融情勢を踏まえつつ、賃金の上昇を伴う形で、2%の物価安定の目標を持続的・安定的に実現することを期待する」としておりまして、単年度のCPI上昇率だけではなく、賃金や物価動向の持続性・安定性を確認していくことが重要だと認識いたしております。2023年度では消費者物価(総合)の上昇率が2.6%程度、2024年度では1.9%程度と見込んでいるわけであります。また、年央試算で示した消費者物価上昇率は、電気・ガス料金等の激変緩和措置の影響を含む値でありまして、これによりまして2023年度は0.5%ポイント程度の押下げがあります。2024年度はプラス0.5%程度、これは緩和措置がなくなることを前提とした裏の押上げ寄与が含まれた値になっているわけであります。
 そういう意味では、1.9%というのは、それを調整した1%台半ばぐらいまでと鈍化するものだという見通しであるわけですが、いずれにしても「賃金と物価の好循環」と「成長と分配の好循環」をしっかり実現できるように、経済財政運営全般として対応を図っていきたいと考えています。
 先ほど、物価の対策等に対する考え方は申し上げたとおりです。











3.木村内閣府政策統括官(経済財政運営担当)による追加説明

 今回、令和5年第10回の経済財政諮問会議では、先ほど後藤大臣の方からも御紹介がございましたように、二つの議題でございました。
 まず、年央試算につきまして、私の方から資料1の説明をいたしまして、続ける形で令和4年度の決算について、鈴木財務大臣から資料2の説明がございました。そして、「予算の全体像」について、柳川議員から資料3の説明がございまして、その後に二つの議題について、各議員からまとめて御発言を頂いたところでございます。
 その主な御意見を御紹介させていただきます。
 まず、経済産業省、里見政務官が出ておられましたが、これから申し上げるような御発言がございました。
 本日の説明にもあったように、長引くデフレを超えて、DX、GXといった成長分野を始め、民間投資は増加の傾向にある。今年の春闘での賃上げ率は、30年ぶりの高水準となった。今後、この大幅な賃上げの効果がまずます目に見える形となり、実質的な消費拡大へとつながっていくものと期待している。そして、国内投資の拡大、賃金の上昇という潮目の変化を捉え、日本経済をしっかりとした成長軌道に乗せていく今が大きなチャンス。人手不足等の成長制約になりかねない課題を逆手に取り、省人化、AI活用、成長分野への人材の移動など、政府として未来の成長への投資に向けた呼び水となる予算を確保し、合わせて民間の事業革新など産業構造の改革も進めることで、中期的に日本経済を再び世界のトップグループに押し上げ、世界経済を牽引する存在になることを目指すといった御発言がありました。
 ここからは民間議員の御発言ということで、一人目の民間議員からはこれから申し上げるような発言がございました。
 デフレ経済や失われた30年から脱却していく上で、今が正念場であると考える。そうした認識の上で、3点重要である。1点目は、構造的な賃金引上げを実現すること。30年ぶりの高水準となった春季労使交渉の賃上げのモメンタムを維持し、構造的な賃上げを実現するために成長産業への円滑な労働移動を促していくことなどが重要である。2点目は、消費拡大のための国民不安の解消が大事である。短期的には予期せぬ物価変動に対する国民の皆様の不安を解消するとともに、中長期的には全世代型社会保障の構築を進めていくことが重要である。3点目は、社会課題の解決を経済成長につなげていくことが大事。そのために官民が連携して、国内投資を拡大していくことが大事である。
 次に、二人目の民間議員の方からはこれから申し上げるような御発言を頂戴しました。
 潜在成長率の向上に対する民間投資をいかに引き出していくかということが大事である。一時的な賃金引上げではなくて、構造的に賃金が上昇していくことが大事だ。このために、生産性を高める民間投資、個々人の能力を向上させるリスキリング、価格転嫁対策といった総合的な対策が必要である。そして、予算執行、決算のデジタル化が長い目で見た財政政策の在り方を考える上で大事である。また、基金の中長期的な管理も大事。単年度ではなく中長期で見たときの歳出の在り方を考えていくことが必要ではないか。数年にわたって経済構造をどうしていくかが問われている、といった御発言を頂いたところでございます。
 次に、3人目の民間議員の御発言について御紹介します。
 需給ギャップの改善や賃金上昇など、岸田政権における経済政策により、潮流は変化していると感じる。一方で、米国や中国など海外経済においてはリスクがあって、海外経済への見通しが二分される中で、今年後半には米国経済が減速するという見方もあり、そのリスクにどのように備えるかが大事である。骨太方針2023に関して、御自身も認知度を上げる取組をしているが、まずは政策の実績を出していくことが大事だ。そのために3点大事であると考えており、1点目は、GX分野において成功例を残すことが大事だ。GX分野はスタートアップが多い。どのようにGX分野で成功するのか、日本がどのように絡んでいくのかという戦略が重要である。2点目は、財政健全化に向けた長期的な見通しを立てることが大事である。また、基金の執行管理も大事である。3点目は、メリハリの利いた予算のために、データ整備を行っていくことが大事である。データによる見える化、PDCAサイクルを回して効果検証をしっかりやっていくためにも、データ整備が最も重要な課題だという御発言でございました。
 最後に、4人目の民間議員から御発言がありました。
 労働需給のアンバランスについて考えていくことが必要。質の高い人材がサービス産業に入っていくことが重要であり、デフレマインドからモデレートインフレマインド、内外環境が安全でなくなったこと、人手不足、といった環境変化を踏まえて、従来の延長線ではない対応を考えるということが必要だ。最低賃金1,500円達成だけでなくて、夫婦2人とも正規雇用で働くといった目標を掲げるとともに、その目標達成に向けた仕組みづくりが必要だ。また、70歳まで働ける仕組みを作っていくことも重要だ。さらに、新しい産業政策を進めるためにも民間から資金を引き出す仕組みを作っていくことが大事。併せて、103万円、130万円の壁解消に向けて、真剣に議論をして早期に結論を出していくべきではないかといったような御発言があったところでございます。
 最後に総理から御発言がございましたが、この点は先ほど大臣から概要を御報告しておりますので、割愛したいと存じます。
私からは以上でございます。






(以上)