第9回記者会見要旨:令和5年 会議結果
後藤内閣府特命担当大臣記者会見要旨
- 日時:令和5年6月16日(金)18:54~19:30
- 場所:中央合同庁舎第8号館1階S108会見室
1.発言要旨
経済財政諮問会議・新しい資本主義実現会議の概要についてご説明をいたします。
本日は、経済財政諮問会議と新しい資本主義実現会議を合同開催いたしました。「骨太方針2023」と「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2023改訂版」などを取りまとめました。その後、持ち回りの臨時閣議において、これらを閣議決定いたしました。
我が国が「時代の転換点」とも言える構造的な変化と課題に直面する中、30年ぶりとなる高い水準の賃上げや、企業部門における高い投資意欲など、前向きな動きが現れています。足もとでのこうした動きをさらに力強く拡大すべく、新しい資本主義の実現に向けた取組を加速させてまいります。このため、今年の骨太方針の副題は「加速する新しい資本主義~未来への投資の拡大と構造的賃上げの実現~」といたしました。
新しい資本主義の推進、まず人への投資・構造的賃上げと労働市場改革を進めてまいります。また、社会課題の解決に向けたスタートアップの育成や国内投資を進め、「成長と分配の好循環」を実現してまいります。グリーン、経済安全保障、AI、半導体・電池といった戦略分野など、市場や競争に任せるだけでは過少投資となりやすい分野において、官民連携の投資を拡大し、持続的で包摂的な成長へとつなげてまいります。さらに、こども・子育て政策を抜本的に強化しまして、少子化トレンドを反転させることとします。
総理からの締めくくりの発言についてはお聞きいただいたとおりでありますが、本日取りまとめた政策方針に基づき、今後、予算編成や制度改正の具体化を進め、速やかに実行し、国民全体が将来に明るい希望をもてる経済社会をつくってまいりたいと考えております。
私からは以上です。
2.質疑応答
(問)2点伺います。
まず1点目ですけれども、防衛財源確保に向けた税制上の措置の時期について、原案から今回閣議決定に至るまでの間に、「25年以降のしかるべき時期とすることも可能となるよう」という表現が加わりました。防衛財源、要は増税の先送りを示唆しているのではないかという見方も出ておりますが、この記述について、大臣にご説明をお願いできないでしょうか。
(答)骨太方針において、防衛力の抜本的強化等の財源確保につきましては、各年度の予算編成過程において、歳出改革の継続、決算剰余金の活用、税外収入の更なる確保に努める、そして、税制措置の開始時期については、令和7年以降の然るべき時期とすることも可能となるよう、税外収入の上積み等の取組の状況を踏まえ、柔軟に判断するという記述になっております。
お尋ねの税制措置の開始時期については、昨年末閣議決定した、そうした枠組みの下、行財政改革を含めた財源調達の見通し、そして、景気や賃上げの動向及びこれに対する政府の対応等を踏まえて、今後、与党税制調査会において判断していくこととしており、このことは、これまでも総理からもご説明しているとおりであります。
昨年末に決定した防衛力強化のための財源確保のフレームや政府のこれまでの説明は全く変わるものではありません。税制措置の開始時期については、閣議決定した枠組みの下で、引き続き、政府・与党で緊密に連携して柔軟に判断していく、そういうことでここは書かれております。
(問)2点目ですが、こども施策のところで、児童手当に関して、所得の制限撤廃を盛り込んでいるというところに関しまして、経済同友会の新浪代表幹事から「大反対である」というようなご発言がありますとか、また経団連の十倉会長からも「財源の中でメリハリを付けていかなければならない、納得感は少ない」と、少々反対されるお声があるわけですけれども、こちらに関して大臣のお考えを教えてください。
(答)児童手当の所得制限の問題、また少子化対策の財源のあり方については、こども未来戦略会議において、構成員の皆様方から様々なご意見があったというのは、これは事実であります。
その上で、13日に開催した第6回会議では、児童手当の所得制限の撤廃や、消費税などこども・子育て関連予算充実のための財源確保を目的とした増税は行わないことなどを内容とする「こども未来戦略方針」をとりまとめていただきまして、同日、同方針について閣議決定を行ったところでございます。
所得制限撤廃への反対意見につきましては、会議では児童手当の所得制限の撤廃について、慎重の意見があった一方で、多くの構成員の方からは、全てのこども・子育て家庭を支え、分断を生まないという観点や、子育てを社会全体で支えるという強いメッセージを発出するということから、所得制限の撤廃が必要であるというご意見も多数あったと承知をいたしております。
とりまとめに当たり、こうした会議でのご議論も踏まえ、児童手当について、これは文章をそのまま申し上げますと、「次代を担う全てのこどもの育ちを支える基礎的な経済支援としての位置付けを明確化する」ため、所得制限を撤廃することとしたというふうに明記しております。
また、もう一つ指摘のありました、「加速化プラン」を支える安定的な財源の確保について、でございますが、方針でお示しもしておりますが、国民的な理解を得ることが重要であると考えています。このため、消費税などこども・子育て関連予算充実のための財源確保を目的とした増税は行わない。それから、2028年度まで徹底した歳出改革等を行い、それによって得られる公費の節減等の効果や社会保険負担軽減の効果を活用することによって、国民に実質的な追加負担を求めることなく少子化対策を進めるということにしたわけであります。
こうした考え方に基づいて、国民の皆様のご理解が得られるように、引き続き、丁寧に説明をしていくとともに、年末に向けて具体的な説明をしていきたいと思っています。
(問)中長期の財政運営に関する記述で伺いたいのですが、今回の骨太方針で、「多年度にわたる計画的な投資については財源も一体的に検討し歳出と歳入を多年度でバランスさせる」という記述が入りました。実質的に単年度主義の単年度の財政の運営の弊害の是正という文脈で出てきていると思うのですが、実質的に単年度の赤字を容認するような記述とも取れるのですが、歳入を含めた複数年度での規律をどう担保していくのか。また、そこが運営上緩めば財政規律が弱まるような方向にも働きかねないと思うのですが、この点についての大臣のお考えを教えてください。
(答)「新しい資本主義」を実現していくため、社会課題を解決する中長期的な計画的な投資を促進することが重要でありますが、このために必要となる歳出の増加に対しては、財源を一体的に検討することで、歳入と歳出を多年度でバランスさせていくということを記載させていただいています。
岸田政権では、これまでもPB黒字化を目指す中で、GX投資など、真に必要な新たな財政需要については、これに対応した安定的な財源を確保してきたところでもあります。
今後も必要な政策対応に取り組むとともに、経済の再生を図っていく、そして、市場や国際社会における中長期的な財政の持続可能性への信認が失われることのないように、責任ある経済財政運営を行っていくということだと思います。
ご指摘の記載の部分についていえば、歳入と歳出を多年度でしっかりとバランスさせていく。そのことについていえば多年度で扱っていきますが、しっかりとバランスさせていくことで財政の緩みが生じないように運用していくことも必要だと思います。
それから、もう一ついえば、単年度の財政のルールと、そうした多年度のルールというのはそれぞれある程度独立して考えるべきことでしょうが、一体的な取扱いについてのことは、また今後どうしていくのかも含めて、幅広く検討はしていきたいと思います。
(問)今回の骨太方針ですが、経済安全保障であるとか少子化、教育など、事業の部分ではかなり多くの記載がある半面、改革という意味では後退しているのではないかというふうにも見えますが、今後、少子化や防衛などでかなり歳出改革などが必要になる中で、大臣としては具体像をどのように示していかれるようなお考えなのか、お伺いできますでしょうか。
(答)基本的にいえば、今回の骨太方針は、まず第1章1の「本基本方針の考え方」でも示したように、変化が生まれてきた、今の例えば賃金、投資など、四半世紀にわたって日本がマクロ経済運営においてデフレの中で歩んできたいろんな多くの課題を、「新しい資本主義」によって解決して進んでいく、そういった改革の道筋をお示ししているつもりです。その中で、例えば賃金と物価の好循環の問題、そうした新しい意識を社会で、皆で共有していくこと、また、労働市場においては構造的賃上げにつながる三位一体の労働市場改革にしっかり取り組んでいくということ、また、イノベーション等に対して非常に積極的になるように、官民が連携をしながらしっかりと投資をしていくことについても著述していますし、この中ではさほど取り上げていない少子化対策も、これも長年の大きな我が国の課題に対して、これは別途、閣議決定もしておりますから、そのエッセンスだけを抜いておりますが、そうしたことに取り組むということで大きな改革だと思っています。
それから、一方で歳出改革、あるいは長期的に見て財政健全化をしていくためにEBPMをしっかりやること、KPI等の目標に従って検証すること、あるいは中長期的な財政検証、指標をつくっていくことなど、そうした面においての改革もやっていかなきゃいけないということを書いており、改革が薄まっている内容であると、私は思ってはいません。
それから、子どもの対策にせよ、先ほどおっしゃった防衛の問題にせよ、相当な歳出改革を前提にして、そして、財政の安定を図るように努力していくわけで、そのこと自体も大きな歳出構造改革を前提にしたものであって、しっかりと取り組んでいく必要があると思っています。
3.三浦次長(内閣官房新しい資本主義実現本部事務局)による追加説明
まず冒頭、藤丸副大臣から、6月6日(火)の新しい資本主義実現会議以降の主な修正点ということで、
5ページ、成長分野の労働移動の円滑化と合わせて「低生産性企業の生産性向上を図る」と追記。
13ページ、最低賃金の引上げについて、広く地域間格差の是正に向けた努力を明確化するため、「地域間格差の是正を図る。」を文末に置いた。
32ページ、パーキンソン病もあるので、「認知症等の脳神経疾患」と表現を追記。
35ページ、クリエイターへの支援検討対象について、「映画・音楽・放送番組」を追記。
63ページ、GIGAスクール構想について、「国策として推進する」と追記。
66ページ、観光地域づくりについて、温泉等も文化であるという観点から、「観光資源・文化資源」と追記、
という説明がありました。
続きまして、出席委員から発言ということで、まず、IT企業の代表者から、実行計画の改訂版について異論はない。実行あるのみで期待している。特にスタートアップについては、新しい事例が出てくることが重要。内容について、理系の学生の女性割合を増やすことが追記され、これは非常にすばらしい。ダイバーシティや人材確保の観点で女性の割合が高いのは重要、という御発言がありました。
続いて、中小企業の経営者の方です。昨年10月から実行計画の改訂について意見交換する機会を頂き、感謝。中小企業経営者として賃上げなどの改革を行い、社員とともに未来に夢を描ける企業を目指すという信念に基づき、イノベーションや生産性向上、価格転嫁などのサポートについて申し上げてきた。とある中小企業経営者から、報道を見て、政府は新しい資本主義の議論において、我々中小企業を力強く応援してくれている。しっかりと役割を果たす必要があると言っていた。改訂版が迅速に実行され、大きな成果を上げることに期待。
続きまして、経済団体の長の方です。取りまとめに当たり、自分たちの意見を反映いただき、感謝。今後、改訂版を着実に実行し、日本経済のダイナミズムを取り戻さなければならない。そのためには、GX、DX、科学技術・イノベーションへの投資、スタートアップ振興とともに、サーキュラーエコノミー、エンタメコンテンツ、バイオ分野など成長産業についても官民で取組を進めることが重要。労働市場改革も欠かせない。政府においては、雇用のマッチングの強化、労働移動推進型のセーフティネットに向けた環境整備をよろしくお願いしたいという話がありました。
続いて、コンサルティングファームの方です。今の株価の動向を見ると、世界は新しい資本主義を支持してくれているということではないかと思う。人への投資、構造的賃上げ、三位一体の労働市場改革は非常に大きい。未来に向かって進むというメッセージになると思う。企業の参入と退出の円滑化も同様である。また、観光産業については、将来の基幹産業になっていくと思うので、しっかり議論していってもいいのではないかという話がありました。
それから、経済団体の長の方です。かつて言われてきた日本企業の六重苦のうち、労働市場の硬直性は残された大きな課題。日本でも賃上げの機運が高まり、大変明るい兆しである。絶好のチャンスを逃さず、まず企業経営者が大胆に意識を変え、自ら行動していく必要がある。賃金の引上げ、リスキリングの支援など、競争力の磨き上げをする企業行動こそ、国内投資の拡大、持続的な賃上げを実現し、賃金と物価の好循環につながっていく。
時代の転換点を迎える中で、企業は投資の重点をタンジブルアセットから人材育成などのインタンジブルアセットへと移行し、切磋琢磨していくべきと思う。自分たちとしても社会課題にも向き合う、そういう企業経営を行う資本主義を掲げて、取組を実行してまいる所存というお話がありました。
続いて、大学の先生です。AIの専門家ですが、実行計画は非常にすばらしい内容になっている。AIについて、計算資源のサポートが必要がということに同意する。今日、経済産業省からスパコンのサポートが発表された。日本のデータセンターのGPUは、現在合計1エクサFLOPSであるが、それを3倍にするという内容。3倍にしてもOpenAI1社に劣っている状況で、継続的なサポートが必要という話がありました。
続きまして、スタートアップの経営者の方です。まずは、実行計画の改訂について、感謝。少子高齢化、長期的な経済の低迷、気候変動による自然災害の増加など、日本はなかなか厳しい状況にある。社会課題を置き去りにせず、私たちの世代で解決する必要がある。若者が明るい未来を信じられる社会を作るため、抜本的な策を打っていく。人への投資、成長産業に人材を流動させ、構造的な賃上げを促すこと、子供を産み育てることに対して金銭的な不安、育児か仕事かといった二項対立にならない状態を作ることなどが大切。岸田政権は未来を信じ、挑戦できるような世界を作ることに向けて、しっかりと取り組んでいると思う。引き続き進めていただきたいという話がありました。
続きまして、大学の先生です。経済の大きな変化とダイナミクスが生み出されていることをみんな実感するような政策を打っていくことが大事。紙に書かれている政策がしっかりと実行され、変わってきたと実感できるようにすることが何より求められている。賃上げがその代表例になるが、スタートアップ、起業が増えてくる、あるいは将来の成長につながるような投資がしっかり増えていくことを一人一人が実感できるような、スピード感のある対応が求められている。労働市場改革、参入・退出の円滑化、こうした辺りについて、しっかりとした仕組みを作っていくことが重要。是非実行していただきたいという話がありました。
最後に、労働組合の長の方です。去年10月から議論を重ね、新しい資本主義のグランドデザイン及び実現計画が取りまとめられた。三位一体の労働市場改革は、安定的な雇用、構造的賃上げを目指しているが、人への投資を中心に、セーフティネットの構築も含め、総合的な施策の推進が重要。政府は魅力ある産業の育成にも注力すべき。また、政府には環境整備にしっかり取り組んでいただきたい。その際、労働者への影響を慎重に検討するべきであるという御発言がありました。
私からはまず以上でございます。
4.村瀬内閣府政策統括官(経済財政運営担当)による追加説明
経済財政諮問会議部分の概要を報告いたします。
「経済財政運営と改革の基本方針2023」、骨太方針について議論を行っていただきました。副大臣から、前回【P】になっていた部分に記述が入ったことなどについて説明した上で、4名の民間議員からご発言がありました。民間議員の皆様から、関係者の労を労い、評価された上で、それぞれ発言がありました。
1人目の民間議員です。今後働き手が減少していき、財政需要は一層増大していくことが見込まれる。この難局を乗り越えていくためには、ワイズスペンディングが重要であり、質を落とさず効果的な政策を実行していくために、規制改革等を行っていくことが大事。また、社会保障分野については、データを活用することで、質の向上を図っていくべき。それが社会保障関係費の抑制にもつながる。各種施策が効果的に実行されているかを、経済財政諮問会議や経済・財政一体改革推進委員会の場でモニターをしていく仕組みを作っていくことが大事。
2人目の民間議員です。骨太方針2023には、賃金と物価の好循環から、成長と分配の好循環の実現を通じて、分厚い中間層を形成していくための政策が盛り込まれており、高く評価したい。国内投資の拡大が今後重要である。GX推進法の実行など、政府の迅速な対応に期待したい。そして、中長期の経済財政運営については、「経済あっての財政」というのが重要であって、全世代型社会保障の構築に向けて、中長期の大きな改革に関する議論をしていくことが重要である。
3人目の民間議員です。前向きで良い副題を付けていただいた、ということに加え、1点目、今後の実行が大事であって、競争力を高めるためにスピード感を持って、各種政策を実行していくことが大事だ。2点目、金融政策と財政政策のポリシーミックスが大事であって、過度な円安が進んだりしないかといったことなどについても気を配りながら、しっかり柔軟に考えることが大事だ。3点目、公的データベースの整備が大事だ。PDCAサイクルを回していくためにもしっかりデータベースを構築・整備して政策に反映をしていく必要がある。最後に、財政健全化についてもしっかりこれを実行していく必要がある。
4人目の民間議員です。副題について、すばらしいタイトルである。今後は、未来への投資を成果に結びつけられているかということをチェックし、モニターしていくことが大事だ。正にEBPMを行って、政策効果をモニターして、その状況によって政策を変えていくことが大事だ。また、この骨太方針にも書いてあるが、中長期的な経済財政の枠組みを作っていくことが重要だ。そして今後、どのようなプロセスで財政健全化を進めていくかという絵姿を見せていくことが大事であって、そのことによって内外の関係者やマーケットに安心感を与えられる。何をチェックする必要があるのかということについては、しっかりこの経済財政諮問会議で今後議論していくことが大事だと考える。
最後に総理からご発言がありました。
以上でございます。
(以上)