第3回記者会見要旨:令和5年 会議結果

後藤内閣府特命担当大臣記者会見要旨

  • 日時:令和5年3月30日(木)18:38~18:48
  • 場所:中央合同庁舎第8号館1階S108会見室

1.発言要旨

 経済財政諮問会議の概要について御報告をいたします。
 本日は有識者にも御参加をいただく特別セッションを開催しました。「成長と分配の好循環の実現」をテーマに議論を行っております。
 議論における主なポイントを御紹介しますと、例えば世界各国で政府が供給サイドに働きかけ、民間投資を喚起する取組が重要視されている。特に人への投資、GX、世界的サプライチェーンの強化、経済安全保障など、外部効果が大きく過小投資となりやすい分野が今後の成長の鍵である。G7サミットでは新しい資本主義の重要性と、こうした取組への国際連携の必要性を訴えるべきである。また国内においても、こうした分野にリソースを集中していくべきであり、補助金だけではなく、税制、規制改革等の手段を適切に組み合わせ、最も効果的かつ持続的な成果を上げていくべきである。施策の実施に当たり、事前のEBPM、事後のPDCAを徹底すべきである。市場だけでは解決できない社会課題の解決を通じた包摂的成長の実現により、好循環の持続性を高めることが重要である。包括的な教育、労働市場改革を粘り強く進めるべきである。また、好循環の進捗について、指標を用いて量・質両面から見える化を図って、その成果を施策にフィードバックするべきである、というような議論がありました。
 総理からの締めくくり発言については皆さんもお聞きいただいたとおりですが、世界各国とも、直面している社会課題に対して、官民連携して投資を喚起する取組が大きな流れとなっており、そうした考え方と軌を一にする新しい資本主義の重要性や国際的な連携の必要性について、G7サミットで議論を進めていく。それから、更にG7での議論を受けて、OECDなどの国際機関において政策対応の議論を深めていくべく、我が国としても積極的に貢献していく、というような御発言がありました。
 また、本日は黒田総裁が参加される最後の経済財政諮問会議ということで、最後に黒田総裁からも御挨拶をいただいております。
 詳細については後ほど事務方から御説明いたします。






2.質疑応答

(問)今日の諮問会議では、成長と分配の好循環について有識者の方から意見が出たかと思われますが、これについて今後骨太の方針にどのように反映されていくお考えかお聞かせください。


(答)経済財政諮問会議の特別セッションでは、昨年末に総理から検討するようにという御指示のあった3つの論点、すなわち1つは、「中長期を見据えたマクロ経済運営の在り方」、それから「成長と分配の好循環の実現に向けた考え方」、そして「目指すべき経済社会構造の在り方」、こうした3点が課題として提示されています。そうした中で、特別セッションにおいて、このようなテーマを深堀して考えていくということで臨んでいるわけであり、本日は御指摘の通り「成長と分配の好循環の実現に向けた考え方」について、学者の先生方、有識者の皆様から御意見を伺ったということです。
 今後、更に特別セッションを開催し、残りの2つの論点についても有識者の先生方から御意見を頂きたいと思います。その上で、具体的にどのように骨太方針に反映されるかという点も含めて、今後、経済財政諮問会議の場で議論を深めていきたいと考えています。


(問)もう1点お願いします。今日、総理からは、新しい資本主義のバックボーンを理論的に明らかにするとともに、成長と分配の好循環の成果と課題を見える化し、議論を進めてほしいという御発言がございましたが、この点に関しては大臣としてはどういった狙い、また、今後どのように進めていこうとお考えか、お聞かせください。


(答)こうした経済財政諮問会議のセッションの前にも、学者の先生方からも御意見も伺っています。
 その中では、例えば新しい資本主義、またモダン・サプライサイド・エコノミクスだとか、あるいはヨーロッパ等で行われている新しいサプライサイドに注目した経済政策、そうしたものの考え方、その類似点や相違点、そして今後、新しい資本主義の政策を理論的にもしっかりと整理をしながら、国際連携にしっかりと繋げていけるように、理論的なバックボーンを明らかにしていきながら、しっかりとそうした政策の実現と、そうした国際的な対話もできていけるようにという総理の考え方に従って、我々も経済財政諮問会議の運営を行っているつもりです。
 そうした議論の中で、やはり今、サプライサイドに注目した政策、また、外部効果の大きい分野に対する投資の重要性や共通の問題点、あるいは今後、我々が目指していくべきマクロ経済政策の方向性も、より明確になってきていると思います。そうしたものを今後、骨太の方針にしっかりとまとめていくということになると思いますし、その前になりますが、G7においてもそうしたことを各国の共通の認識として、日本が議論をリードしていくように進めていくというふうに考えています。
 会議で岸田首相から、G7でも新しい資本主義やその考え方について議論をされるというような御表明がありましたが、具体的にどういうことを議論されるのか。例えば日本はこんな新しい資本主義をやっている、といった考え方を提示して、各国の意見を募るのか、皆さん一緒にやっていきましょう、といったような連携を募るのか。どのようなかたちで議論をされるか、少しイメージを教えていただければと思います。
 ただ、我々としては、総理が国際的なリーダーたちとの間で日本の新しい資本主義の政策、そして世界が今また同じように取り組もうとしている新しい政策課題について、やはりお互いによく連携を取りながら、国際的な協調の中で、そしてサミットで提示したような問題をOECDのような国際的な場面でよりしっかりとそれを具体化していく。そういう中でサミットの役割を果たしながら、日本の世界的な経済に対する貢献ができていくということだと思います。








3.村瀬内閣府政策統括官(経済財政運営担当)による追加説明

 令和5年第3回経済財政諮問会議について、概要を報告いたします。本日は、先ほど大臣からも御紹介がありましたように、「成長と分配の好循環の実現」をテーマに議論を行いました。渡辺努先生以外の7人の有識者の方々に御参加いただく形で第2回目を開催しております。
 以下、主な御発言を紹介いたします。
 まず一人目の有識者です。バイデン政権でも推進しているモダン・サプライサイド・エコノミクスの観点から話をするとした上で、過去のサプライサイド政策は小さな政府・市場により経済活性化を目指すものであった一方で、MSSEは減税や市場任せではなく、政府が一定の役割を果たすもの。その背景として、脱炭素や格差問題などの新たな課題が生じるなど、状況が変わってきたということが挙げられる。一方、極めて厳しい財政状況の中でMSSEを実現するため、ワイズスペンディング、費用対効果の小さい歳出の削減、社会保障関係費の抑制、今後起こり得る危機に備えた平時からの財政健全化も必要。中長期的な備えとしては、インフラ、子育て、教育、温暖化対策等には投資をしていくが、政府債務を過度に拡大することは避けていくべき。市場経済とその失敗を是正する政府により、市場と政府でのポリシーミックスを行うことが大事。
 二人目の有識者です。今後のマクロ経済においては、生産性を向上させ、中長期での成長を実現するため、サプライサイドに政策目標をシフトした経済政策を進めていくことが重要。イノベーションについては、スタートアップなどを含め新たな担い手からの新規参入を促し、新鮮味のあるイノベーションを発生させることが重要。異業種への新規参入をしやすくするよう、例えばIT分野や医療・介護分野などにおける規制緩和などにより、異業種間の壁を取り除くことも重要だ。セーフティネットの再構築については、諸外国では給付付き税額控除等により実施されているような例もあるが、勤労者を支えるセーフティネットを構築していくことが重要。
 三人目の有識者です。成長のダイナミズムを生み出すために、痛みを伴う構造改革が必要。デジタルインフラ整備により持続的・長期的な成長を促す投資を行うことが重要。一方で、それらは社会保障費と競合する面もあるので、ダイナミズムを向上させることは難しいという側面もある。持続可能な変革には、社会資本構築により成長の質の向上が必要だ。生涯を通じた能力開発、職業の柔軟性の向上、若い世帯、子育て世代の支援、女性の活躍支援などにより、生活の質を高めることができる。
 四人目の有識者です。持続的賃上げが必要。その要因は、労働生産性や労働分配率、交易条件の改善、といったようなものに整理される。労働生産性を上げていくためには、交易条件の悪化の要因を探り、これを改善するということが大事で、有形資産と人的資本など無形資産への投資を持続することが重要。労働分配率については、大企業では付加価値の7割、中小企業では9割が人件費となっている。労働者への分配力がまだ弱いので、この点について対応手段を考えていく必要がある。政府としては、インフラの整備や人的資本投資への積極的な対応はしていくべき。
 五人目の有識者です。成長の阻害要因は、企業の異常な貯蓄超過と低い労働分配率にある。政府も賃上げを進めているが、海外では給料は自然に上がるものではなく、転職等を促進して上げるものという意識が強い。生産性の高い企業への労働者の移動の円滑化や、転職者支援により労働市場の流動化を進めるべき。また、働き方の柔軟性を求めると、女性の正規化のため、週休4日制などといった対応をしていくのが、働き方の柔軟性にしっかり応えられるのではないか。生産拠点の国内回帰、対内直接投資の促進というものを、しっかりと粘り強く進めていくことが重要。
 六人目の有識者です。新しい資本主義は、財政政策により潜在成長率を上げる試みだということと理解しているが、同時に、社会として望ましい価値観を促進するものでもある。こういった点でMSSEとは違いがある。一方で、新しい資本主義とモダン・サプライサイド・エコノミクスは、人的投資により労働生産性を高め、格差を縮小することを特徴とする点など、共通点がある。また、政府の投資が民間の投資よりもリターンが低いという批判があるという点においては共通である。新しい資本主義の社会的インパクトを最大化するためには、具体的な施策にどのような効果があるか迅速な検証を行うとともに、検証結果によって政策を臨機応変に調整することが重要。
 7人目の有識者です。新しい資本主義は、持続的な資本主義、サステナブル・キャピタリズムと言える。持続的な成長と分配のためには、教育と技能の蓄積が重要。全ての子供への良質な基礎教育、企業において終身雇用を前提としない新たな技能蓄積システムを模索していくべき。分配の要点は弱者保護である。幼児への良質な医療・教育提供は、少子高齢化対策としても有効。今後、開放経済のメリットを生かして、ヒト、モノ、アイデアが国内外を行き来することが重要。自然思想の維持は地球規模の問題であり、バイデン流の公共投資や補助金政策は、相対的に経済規模の小さい日本では非効率な面がある。基礎研究助成、炭素税の導入が効果的という御発言でした。
 続いて、柳川議員から資料1に基づいて御発言があり、論点が示されましたが、それに続けて、閣僚ほか、その他民間議員から御発言がありました。
 まず、西村経済産業大臣です。賃上げの機運が高まってきている。投資の意欲も高く、物価の潮目が明らかに変わってきている。物価のインフレ傾向も当面は続くのではないかと考えられるが、そうした中、人口減少もあって人手不足が続くことになる。日本の総労働時間は2019年にピークアウトし、既に現役世代の男性も女性も、そして高齢者も、労働参加率は世界最高水準である。
 ローマクラブの「成長の限界」というのは、資源制約に焦点が当たっていたが、令和版の成長の限界というのは、人手不足が焦点になるのではないか。米国も、人手不足と賃金上昇による供給制約からモダン・サプライサイド・エコノミクスに取り組んでいる。日本は今後、人手不足に耐えられる経済構造を早急に作り上げなければならない。新陳代謝をするチャンスとも言える。そのためには、労働の「質」と「量」の両方を同時に上げていく必要がある。
 まず、労働の質については、投資で対応していくことが重要。多様な働き方を推進し、リスキリング等の人への投資も増やしていくとともに、ChatGPTといった新しい技術も取り入れた省人化投資を進めていく必要がある。さらには、イノベーション、輸出、インバウンドで収益を高める設備投資や、事業承継、M&Aといった前向きな新陳代謝も重要。
 そして、労働の「量」については、就業の壁の解消、男性も含めた育休といった働き方改革、高齢者の活躍促進、労働移動の円滑化等により、ワークライフバランスも確保しながら、必要な人材を確保していく努力が求められる。
 新しい経済構造への円滑な移行を、3年~5年で集中的に政府を挙げて取り組む必要がある。経済を再び成長軌道に乗せるため、国内投資や賃上げといった未来への投資を、経済産業政策の「新機軸」として大胆に進めていく、こういった御発言でありました。
 民間議員です。3点申し上げたい。一つ目は、市場の失敗について、我が国のみならず世界における喫緊の課題は生態系の崩壊と格差の固定化、再生産への対応である。こうした課題に対して、行き過ぎた市場主義から新しい資本主義へシフトしていくことが大事。成長と分配の好循環を実現して、持続可能な成長と社会課題の克服、それによって経済のダイナミズムを生み出していく必要。
 2点目は、社会共通資本について、これは東京大学の宇沢先生が示した考え方だが、市場に任せきりではなく、政府が一定の役割を果たすことが重要。この宇沢先生の言う社会的共通資本という概念が重要であり、これは三つの資本があるが、その構築に向けて社会課題の解決と持続的な成長が必要。
 MSSEについては、社会課題の解決には、ターゲットを絞って、政府だけではなく、官民連携で、人への投資、DX、GX、科学技術・イノベーションに取り組んでいくことが大事であり、今後G7が開催されるが、このG7という機会を捉えて、新しい資本主義について、しっかりと発信していくことが大事。この社会課題の解決にあたってのコンセプトは、グローバル・サウスに対しても非常に重要なメッセージになる。
 次の民間議員です。成長と分配の好循環自体は、非常に重要。賃金水準が大きく上昇している今こそ、国民が実感や期待感を持てるような形で実現・拡大させていく必要。このため、進捗状況を客観的なデータで継続的にしっかりチェックしていくなど、PDCAサイクルによって政策の実行性を高めていくことが重要。
 人への投資の重点投資を進めてきたが、これまでの施策の評価を行い、費用対効果が高い取組とそうではない取組に分けて、効果の高いものによりシフトをしていく、集中していくということが大事。あわせて、労働市場改革などの構造改革が大事。さらに、好循環をサステナブルなものにしていくため、総理のリーダーシップの下で経済社会構造の強化というのに本腰を入れて取り組んでいただきたい。
 別の民間議員です。西村大臣が発言したように、賃上げの機運が高まっている中で、若手労働者の転職が活発化していくなど、明らかに潮目が変わってきている面がある。
 一方で、一部の世代にまだ活性化していないところがあるので、こうしたところをしっかり活性化していくことが大事。
 潮目が変わったという意味においては、この長いデフレから脱却する大きなターニングポイントが近づいているのではないか。賃金と物価が継続的に上がっていくようなこのターニングポイントにおいて、しっかりと対応を進めていくことが大事。
 国内投資を増やして、そうした中で質の高い雇用を生み出し、特に女性の正規雇用も増やしていくことで、好循環をしっかり回していくことが大事。
 そうした中で、中高年のリスキリングといったものも大事。例えば、退職金制度の見直しなど制度を改革して、こうした古い仕組みを変えていく必要があるのではないか。
 課題先進国としてスタートアップの活性化も大事だが、ヘルスケアなどの分野は非常に大事な分野であって、少子高齢化という意味でも成長市場という意味でも非常に重要なので、日本がリードできるよう構造改革なども含めてしっかりと進めていくことが大事。
 発言は以上で、その後、黒田総裁から御挨拶がありました。退任に当たり、10年間本会議に出席させていただいた。様々なことがあったけれど、日本経済が直面する様々な課題の解決に向けて非常に充実した議論が行われ、各種の取組が着実に進められてきたと感じている、と謝意を述べていらっしゃいました。
 最後に、総理から御発言がございましたが、お聞きになったとおりです。
 





(以上)