第15回記者会見要旨:令和4年 会議結果
後藤内閣府特命担当大臣記者会見要旨
- 日時:令和4年12月1日(木)19:50~20:32
- 場所:中央合同庁舎第8号館1階S108会見室
1.発言要旨
経済財政諮問会議の概要について、ご報告を申し上げます。
本日は「令和5年度予算編成の基本方針」、「経済・財政一体改革(社会保障)、「成長と分配の好循環」について議論を行いました。
「令和5年度予算編成の基本方針」につきましては、経済財政諮問会議において総理から諮問があり、答申案を決定いただきました。明日、閣議決定をする予定です。
「経済・財政一体改革」に関する議論では、主に次のような御意見がありました。
家計の可処分所得を拡大するため、現役世代の社会保険料上昇を抑制すべき。医療・介護費の地域差縮減と増加の抑制を徹底するとともに、全世代型社会保障の考え方のもとで、現役世代への給付の拡充と応能負担の着実な強化を進めるべき。ヘルスケア・医療産業の成長力強化や、予防・健康づくりの強化を進めるための規制・制度整備に取り組むべき。医療・介護資源の最適配分を実現するために、かかりつけ医機能の強化、地域医療構想の実現、地域包括ケアシステムの深化を図るべき。
「成長と分配の好循環」の議論では、主に次のような御意見がありました。継続的な賃上げ、正規化の促進により雇用者報酬を拡大していくべき。また資産所得倍増等の取り組みを通じて、可処分所得の拡大にもつなげるべき。希望する女性が、多様かつ柔軟な形で正規職に従事して働きながら、安心して子供を育てられる社会を構築すべき。雇用者報酬や可処分所得といった所得関係の指標についての計算を拡充させ、家計の将来の姿の見える化を行うべき。
総理からの締めくくり発言については、お聞きいただいたとおりです。詳細については、後ほど事務方から説明させていただきます。
2.質疑応答
(問)予算編成の基本方針について伺います。防衛力強化や新しい資本主義、それからこども政策など、歳出圧力が強まりそうな項目が並んだ一方で、歳出改革については財政健全化に向けて取り組むと記されました。今後どのような具体的方策で財政健全化に向けて取り組まれるのか、ご意見を教えてください。
(答)「令和5年度予算編成の基本方針」では、経済あっての財政であり、順番を間違えてはならない。必要な政策対応に取り組み、経済をしっかり立て直す、そして、財政健全化に向けて取り組む。骨太方針2022で示された「本方針及び骨太方針2021に基づき、経済・財政一体改革を着実に推進する。ただし、重要な政策の選択肢をせばめることがあってはならない」との方針を踏まえると明記しています。そういう意味で、こうした方針に従って編成を行うということになります。
また、市場や国際社会における中長期的な財政の持続可能性への信認が失われないようにしていくことが重要だと思いますし、同時に、現下の経済にしっかり対応して経済の再生を図りつつ、責任ある経済財政運営を進めていく必要があると考えています。
(問)防衛費の関係でお伺いします。今日、自民党の安倍派の会合で塩谷会長代理が、安定財源について、年内決着は難しいという御発言をされました。大臣は、一昨日の会見でも、規模と財源はセットにすることで財政規律は保たれるというお考えでしたが、自民党の税調の幹部から財源議論の先送りをするような趣旨の発言が出始めているということについて、大臣としてどのようにお考えか伺いできればと思います。
(答)規模と内容と財源という話は、従来から申し上げていたとおりでありますから、私の考えでもあり、それはまた総理のご指示の考えでもあったと思っています。
11月28日月曜日に防衛大臣、財務大臣に対して総理の指示があったわけで、そのことについては既に皆さんもご承知のとおりです。その全文をもう一度読むことはいたしませんが、その中では、年末に緊急的に整備すべき5年間の中期防衛力強化の規模、将来にわたり強化された防衛力を安定的に維持するための令和9年度に向けての歳出、歳入両面での財源確保の措置を一体的に決定するとされているわけです。
いずれにしても、今後政府部内において、こうした総理の指示のもとで防衛大臣、財務大臣を中心として、こうした議論をしっかり進めていくということになります。
(問)大臣から医療機関の経営状況の見える化についての御発言がありませんでしたが、民間議員から、事実上の官民問わず、病院経営のバブルというか、異常に潤ってしまった現状があると指摘されています。前厚生労働大臣で、今はコロナ担当の総合調整で、元々は財務省出身の大臣ですが、この問題というのは大臣として何かしら取り組むお考えがあるのか。何かアンバランスなものを感じるのですが、いかがでしょう。これは大臣のところでしっかり検証していただきたい問題だということを申し上げたわけです。
(答)例えば医療機構系の独立行政法人は、補助金による積立金の発生によって財務規律が緩むことのないよう、引き続き経営改善強化に取り組むとともに、法令に基づき余剰資金は国庫納付すべきとか、それから民間病院については、政府からの補助と経営状況の見える化はセットであるべきといった指摘が、もちろん民間議員の提出資料でなされており、そのような御指摘があったということは、主な御指摘ということだったので申し上げなかったですが、もちろん資料に書かれ、そして説明もあった点であります。
国庫納付については、今後政府の部内で協議をしていくことになると思っていますし、民間病院、見える化を進めていくこと自体は医療として重要なことだと思っていますので、そうした方向で今後検討をしていくことになると思います。
3.村瀬内閣府政策統括官(経済財政運営担当)による追加説明
令和4年第15回諮問会議について、概要を報告いたします。今回は、先ほど後藤大臣からご紹介がありましたとおり、三つの議題について議論しました。
一つ目の議題、「令和5年度予算編成の基本方針」について、私から内容について説明を行った後、お一方から御発言を頂きました。
DXは日本を変える成長戦略だと考えている。これは大事なので、是非短期で実効性を上げていくべきだという御発言でした。その他の方から御発言はありませんでした。
それから、二つ目の議題、「経済・財政一体改革における重点課題(社会保障)」について、民間議員から御説明をいただき、各議員より御発言がありました。
主な御意見を紹介いたします。
加藤厚生労働大臣です。2025年までに後期高齢者割合が急激に高まるといったことを踏まえて、現役世代の負担上昇の抑制を図りながら、負担能力に応じ、全ての世代で増加する医療費を公平に支え合う仕組みを強化する必要がある。例えば出産育児一時金などの課題について、全世代型社会保障会議の議論を踏まえて検討する。また、医療費の地域差縮減については、地域ごとに関係者が集まって分析などを進めるといったような取組を推進していく。
予防・健康づくりについては、自治体のインセンティブを強化し、医療費適正化にもつながるよう、保険者努力支援制度についてメリ張りの強化、それから、成果指標の見直しなどを実施していきたい。
それから、今後の人口動態等の変化等を踏まえると、医療の機能分化、連携などの医療提供体制や介護制度の改革を進めることが重要。医療提供体制については、かかりつけ医機能が発揮される制度整備、地域医療構想の推進等について取組を進める。
介護制度については、地域包括ケアシステムの更なる深化・推進、介護人材の確保、生産性向上の推進を行い、制度の持続可能性の確保等の課題について、検討を進めていく。
医療サービスの効率化を図り、国民により質の高い医療を提供するためには、医療DXの取組を進めることが重要であって、現在、総理を本部長とする医療DX推進本部の下、全国医療情報プラットフォームの創設等の議論を進めており、来年春を目途に工程表を作成する予定であるといった御発言でした。
続いて、鈴木財務大臣です。
全世代型社会保障の構築に向けた改革については、年齢に関わらず負担能力に応じた負担をお願いし、併せて負担とバランスの取れた給付を行っていくという考え方で議論を進めている。その中では、将来世代に負担を先送ることがないよう、公費の追加投入を行わないことが重要であると考える。あわせて、来年度に向けた薬価改定も予定されているので、改定を通じて国民負担の抑制を実現していきたい。
医療提供体制については、かかりつけ医に関する制度化が予定されているが、今後増加する高齢者を中心とした患者が大病院に集中することを避けるために、個々の医療機関が幅広い診療や在宅医療を行うことができるよう、必要な制度整備を進める必要があると考えているといった御発言でした。
次に、西村経済産業大臣です。医療・介護のDXとして、健康医療情報、いわゆるPHRを活用することによって、ミクロの視点では個人の健康状態や嗜好に合わせたメニューの推薦、個別化したサービスの実現ができるとともに、マクロの視点ではビッグデータとして活用して、新たな創薬や治療法の開発が進むことなどが期待される。
経済産業省では、国民が自らのニーズに応じて、安全安心にPHRを活用できる環境整備に向けて三つ。まず、1点目、民間事業者と連携し、PHRを使って健康増進等を促す実証事業を行うことで新たなサービスを創設する。2点目として、こうしたサービスが異業種連携や医療現場で円滑に導入されるための環境整備として、共通のデータ様式などの標準化やセキュリティーの仕組みなどの整備を行う。3点目、これらの検討を民間主体で迅速に進めるため、業種横断的なPHR団体の設立を支援していく。
こうしたことに加えて、介護需要の増加と人材の不足を踏まえて、現場の生産性向上を図るためのロボット技術を活用した介護機器の開発支援や、新薬創出の鍵を握る創薬ベンチャーに必要な資金や人材が集まるよう、エコシステムの抜本的な強化にも取り組む。こうした取組により、国民がより質が高く効果的な「医療」、また、「ヘルスケアサービス」を利用できる環境を整備し、国民の健康寿命の延伸に貢献するといった御発言でした。
続いて、民間議員です。まず、最初の方は、成長と分配の好循環の実現のために、分厚い中間層の形成が必要で、現役世代の可処分所得の拡大、全世代型社会保障の構築が重要。現役世代の負担割合が高いことを踏まえて、医療保険を含めた社会保険料の負担軽減を進めていくべき。また、真に必要な人への給付を行うなど、世代内、世代間のバランスの取れた給付を行っていくべき。その際に、マイナンバーの活用が重要。所得・資産の情報連携をしっかり行っていくべき。
少子化については、危機的状況で、支援の拡充は必要だという認識がある。その財源については、社会全体で負担していくというのが原理原則だと考えるといった御発言でした。
それから、別の民間議員です。社会保障の効率化は、その規模から必要性は高く、財政健全化の観点からも期待できる。団塊世代が後期高齢者になる2025年が近づく中で、しっかりと進めるべき。そのうえで2点申し上げたい。
1点目は、保健関連の支出はOECD各国も重視しているが統計改革が必要。日本のデータは精緻さ、即効性に欠けている。現在の国民医療費には、予防接種費用や保健所の運営費用が入っていない。医療機関の経営の見える化というのが大事。分析がなかなかできないのが実態。公的保険の恩恵も受けていることも踏まえると、財務諸表の報告を義務化するなど、競争力を持った制度が必要ではないか。
2点目、財政規律をしっかり守っていくことが大事だと改めて言いたい。余剰資金を国庫返納するなど、財務負担の軽減が必要という御発言でした。
別の民間議員です。可処分所得を上げていくことが重要。企業は賃上げを行っているが、社会保障の負担で相殺されている面がある。こうしたことを踏まえると、社会保障改革は重要。医療費の地域差の縮減など、なかなか進んでいないので、こうしたことをしっかりと進めていく必要。
こうした改革を進めていくためにも、データを更に出すということ、そして見える化を進めるといったことが大事で、効果につなげていくことが大事。この問題を先送りしてはいけないとメッセージを出していかなければいけない。したがって、ロードマップを作って、成果を上げるべくしっかりと進めていくべき。
急性病床については、多くの資金が投入されているが、更に見える化を進めるとか、普通調整交付金といったようなものでインセンティブをしっかり付けるなど、危機意識を持ってこうした問題を解決していくべき。応能負担ということが進められるよう、マイナンバーの活用を早期に進めていくべき。
また、このデータ活用というのは、ヘルスケアトランスフォーメーション、HXにもつながるから非常に重要であると。また、DXの一層の活用にもつながっていく。HXが進めば、ヘルスケアトランスフォーメーションが進めば、高齢者が健康になり、労働人口も増え、クオリティ・オブ・ライフ(QOL)も上がっていく。HXのための必要な規制緩和もしっかりと進めていくべきだという御発言がありました。
続いて三つ目の議題「成長と分配の好循環」について、民間議員から資料5に沿って御説明をいただき、各議員から御発言がありました。
主な御意見を紹介いたします。
小倉男女共同参画大臣からは資料6に基づいて説明がありました。
我が国の女性の就業状況を見ると、M字カーブは解消に向かいつつあるものの、L字カーブに象徴されるように、女性がその能力を十分に発揮できていない状況。全ての働く意欲と能力のある女性を、希望する就業へとつなげるといったことで、女性が日本経済の中核を担う環境を整え、力強い経済成長を実現していきたい。
その鍵となるのが、成長分野への労働移動を促すリスキリング。資料1ページにあるように、デジタル分野において、例えばIT技術者の女性割合が19%と、女性参画が道半ば。このため、本年4月に策定した女性デジタル人材育成プランを着実に実行する。あわせて、女性起業家の育成も進める。
また、男女を問わず、仕事と子育てを両立できる環境整備が重要。資料2ページにあるとおり、家事、育児等の無償労働時間を男女で比較すると、諸外国では女性が男性の1.3倍から1.8倍なのに対して、我が国は5.5倍と、負担が女性に偏っている。こうした構造的な課題を解決するため、男女問わず家事・育児に参加しやすい環境づくりに向けて、男性の育児休業取得の推進や長時間労働慣行の是正などに取り組む。
さらに、女性を含め多様性の確保は、企業の持続的成長、日本経済の成長に資するもの。3ページにあるように、女性登用を始め、女性が企業内で活躍できる環境整備についても、更なる検討を進めているといった御発言でした。
引き続いて、西村経済産業大臣です。現下の物価高に打ち勝ち、デフレを脱却し、日本経済を再生するためには、大胆に国内投資を拡大させた上で円滑な労働移動を促進していくことによって、投資とイノベーションと所得向上の三つの好循環を実現させていくことが必要。
賃上げについては、資料7にあるように、短時間労働者や非正規の賃金は、人手不足の下で労働移動があるため上昇基調にある。一方で、正社員については基本的に年に1回の賃金改定に依拠していて、閉じられた世界、言わば市場がない状況と言える。このため、長期にわたり低い伸びにとどまってしまっている。これを打破し所得の向上につなげるために、労働移動の円滑化が不可欠。そのため、経済産業省としては、人的承継の展開の後押しなどにより、社内での人への投資の強化の促進を行うとともに、今回の総合経済対策で、リスキリングから転職まで一気通貫で支援を受けられる仕組みの整備に750億円の予算を盛り込んだ。社内、転職問わずキャリアアップしていけるように後押ししていく。こうした施策によって、今動いていない正規労働者の新たな市場をつくり出し、賃金が上昇に向かう環境を実現させ、その結果、非正規労働者の方もキャリアアップを通じて所得がより高い正社員になれる環境も併せて実現していくといった御発言でした。
続いて民間議員です。分厚い中間層を形成することが最重要課題であって、三つが大事。
一つ目は全世代型社会保障の実現。分厚い中間層形成のためには、賃金上昇を通じて現役世代の可処分所得を増やす必要がある。消費を増やすためには、人々が安心できる社会保障制度が必要であり、そうした意味でも、この全世代型社会保障を実行していくことが必要。
二つ目はマクロ経済政策。消費のみならず、投資の増加が持続的な成長に必要で、特にGXは大事。これは、GX投資は目標のために必要であると同時に、国内投資の絶好の機会である。こうしたことをダイナミックな経済財政運営により政府が促し、民間の予見可能性を高めて、官民連携して投資を進めていく必要がある。
三つ目は労働政策で、GXやDXへの投資が増えれば産業構造は転換し、新しく創出される産業に円滑に労働移動を進めていくことが大事。そのために、リスキリングによって人の移動を促していく。また、円滑な労働移動は賃金上昇をもたらし、構造的な賃上げにも寄与していく。
こうした三つの政策が相互に連関していくことが大事で、これはマクロ経済政策運営の肝である。今後も経済財政諮問会議でこうした議論をしっかり進める必要があるといった御発言でした。
次の民間議員です。今までは物価が上がらないという中で賃金を考えていたが、現状は物価高が進んでおり、パラダイムシフトが起きている。こうしたパラダイムシフトが起きていることを議論のベースとして、大中小の全ての企業がこういう認識を共有して対応していくことが大事。特に雇用の7割を持つ中小企業が賃上げを行っていくことが大事。最賃を速やかに上げていく政策も大事である。
GXやDXといったニューフロンティアで質の高い雇用を創出し、持続可能な賃上げを通じて分厚い中間層を形成していくことが大事。
また、世帯所得の向上が大事であって、そのために女性が働きやすい環境づくりが大事。
また、女性の経営者が少ないという実態がある。こうした状況を改善すべく、その理由をしっかりと考え対応していく必要がある。
最後に、共助の推進が大事。セーフティーネットがあることによって、こうした取組が進んでいく。公助のみではカバーし切れないので、共助という仕組みが必要である。企業が資金を提供できるように、寄附税制の見直しや、ふるさと納税の活用も検討していくべきではないかという御発言でした。
それから、次の民間議員の方です。1点目として、女性活躍の推進が重要。資料にもあるように、日本の女性は世界的に見ても基礎能力が高い。一方で、非正規で働く人も多く、賃金が低い。女性活躍の推進が分厚い中間層の形成や労働人口の減少への対応などの問題の解決にも寄与する。
ただ、少し前までは、子育てを捨てて仕事に就くというイメージが強かったと思うが、仕事と子育てを両立させていく環境を整えるというのが大事。それぞれの人の意向を踏まえて、その意向が実現できるような、また多様な働き方が可能となるような取組を推進していくことが大事。男女が共に子育てができる環境を作っていくことが重要である。
2点目は、今回、資料にあるシミュレーションのように、ミクロの政策がマクロにどのようなインパクトを与えるのかを示していくことが極めて重要。これは世界的にも経済学者の中でこういうことが大事だと認識されている。これまでの経済分析においては、財政政策がマクロに与える影響については進んでいたけれども、ミクロの政策がマクロにどのような影響を与えるかについては、なかなかできてこなかった。しかし、今回のように、財政支出の規模ならず、ミクロの政策としてどこに重点的に支出するかがマクロ経済にどのようなインパクトを与えるかについて分析することができるようになってきた。こうした取組を進めていくことが極めて重要であるという御発言でした。
最後に、総理からの御発言がございましたが、お聞きになったとおりです。
(以上)