第12回記者会見要旨:令和4年 会議結果

山際内閣府特命担当大臣記者会見要旨

  • 日時:令和4年10月5日(水)18:08~18:44
  • 場所:中央合同庁舎第8号館1階S108会見室

1.発言要旨

 経済財政諮問会議の概要について御報告いたします。
 本日は3つの議題、「総合経済対策に向けて」、「人への投資、労働移動による所得向上」、「GX投資、サステナブルファイナンス市場の拡大」について議論を行いました。
 「総合経済対策」に向けた議論については、例えば次のような御指摘がありました。
 物価上昇や世界経済の減速による下押し圧力を乗り越え、日本経済を持続可能で一段高い成長経路に乗せるため、予算、税制、規制・制度改革を大胆に進める施策とすべき。円安メリットを生かしたインバウンド需要の回復、農林水産品の輸出拡大や国内投資の拡大などを支援すべき。継続的な賃上げを実現するため、我が国雇用の7割を占める中小企業への支援や成長分野に移動するためのリスキリング支援が重要。
 「人への投資、労働移動による所得向上」及び「GX投資、サステナブルファイナンス市場の拡大」について、主に次のような意見がありました。
 誰もが教育訓練を受けられ、最終的に個人の能力が発揮できる職につけることが重要。教育訓練と就業の結び付きを明らかにするとともに、企業ニーズに合うよう訓練メニューを徹底的に見直すべき。GXの本格化にあたっては、企業・家計に行動変容を求める規制等により、将来の展望を示して民間の予見可能性を高めながら取り組むべき。GXのロードマップに従って、技術の実装・事業化を進める多年度にわたっての効果的・効率的な支出を行うべき。
 総理からの締めくくり発言については、お聞きいただいたとおりです。詳細については、後ほど事務方から御説明をさせていただきます。






2.質疑応答

(問)経済対策の件なのですが、民間議員からの資料で、今年度から来年度にかけて、実質2%~2%台半ばの成長率を目指した経済運営を行うべきで、それに向けて総合経済対策をブースターとすべきという御意見がありました。
 この2%~2%台半ばという数字をどのように評価されるか、厳しい数字なのか、簡単なのか、またこれを実現するためにどのような経済対策をつくっていかれるおつもりか教えてください。


(答)2%~2%台半ばの話は、民間議員から、今回の経済対策をブースターとして、今年度から来年度にかけて、実質2%~2%台半ばの経済成長が実現すると、結果としてマクロ的な需要不足、いわゆるGDPギャップも今年から来年にかけて相当程度縮小し、デフレ圧力が弱まって世界経済が減速する中にあっても、経済の好循環が生まれやすくなるというご提案でした。
 こうした姿の実現に向けて、我々としても日本経済を持続可能で一段高い成長経路に乗せるべく、効果的な対策を盛り込んだ総合的な政策パッケージを取りまとめたいと思います。



(問)総理からの発言の中で、今回の経済対策で物価高騰により厳しい状況にある方々の支援に万全を期すというようなお話がございましたが、この点に関して、これまでも低所得者対策などに関しては、予備費なども活用された給付金などもございますが、この点に関して、給付金も含めてどのような施策を念頭に置かれていらっしゃるのか、お伺いできればと思います。


(答)もう既に手当てをしたものとして、給付金も含めて走っている部分もございます。
 総理から切れ目なくやることが大事だというご指示がありましたので、当然、予備費を使った物価高騰対策だけではなくて、その次に切れ目なく今回の経済対策をきちんと用意するという視点で行っています。
 ですので、物価高騰対策というものもきちんと今回の経済対策のメニューの中に入れて、そこの部分はこれまでの延長でやるもの、例えばガソリンの値段を据え置くような形の施策やっています。それに加えて、今回は電気代がこれから更に高くなってくるということが分かっていますから、そこに対して手当てをするようなこと、これは経済産業省で今具体策というのは練ってもらっていますが、そういうことをやる。あるいは食料品に対しての手当てとして小麦の値段は据え置くとか、今までやってきたものもありますが、これから先も継続しなくてはいけないものに関しては予算がかかりますから、当然、経済対策の中に入ってまいりますし、またそれ以外のメニュー、地方創生臨時交付金の枠等々を使ったメニュー等々もしっかり目端を利かせて、更に物価高騰対策で必要と思われるものは、今回の経済対策にもしっかり盛り込もうと、こういうコンセプトで今、中身についてはしっかり練り込んでいるところです。
 そういうコンセプトだと、要するに切れ目なくやるためもの、盛り込まれるものだと、そう思っていただければと思います。








3.村瀬内閣府政策統括官(経済財政運営担当)による追加説明

 令和4年第12回諮問会議について、概要を報告いたします。先ほど、山際大臣から御紹介がありましたとおり、3つの議題で議論しました。
 まず、「総合経済対策に向けて」について、民間議員から資料に沿って説明があり、各議員より御発言がありました。
 主なご意見を紹介いたします。
 鈴木財務大臣です。総合経済対策の策定に当たっては、本日御指摘いただいたとおり、物価高で厳しい状況にある方々に的を絞った対応を行うことや、「新しい資本主義」の早期実現に向けた工夫として、予算・税制だけでなく規制・制度改革を含め相互に連携していくことで、日本経済を持続可能な成長経路に乗せていくことが重要であると考えている。
 また、「経済あっての財政」という方針に変わりはないが、これまでの新型コロナへの対応や累次の補正予算の編成により、足下の財政状況が過去に例を見ないほど厳しさを増していることも事実。
 こうした観点から、民需主導の自立的な成長につなげられるように、真に必要な支援に重点化するとともに、費用に対して最大の効果が発揮される施策となるよう、その内容について関係省庁とともによく検討を進めていきたいと考えているという御発言でした。
 西村経済産業大臣です。今般の対策は、物価高を乗り越えるだけではなく、長らく続くデフレから脱却し、大胆な所得の向上につながる力強い経済を取り戻す起爆剤としなければならない。
 まず、エネルギー価格高騰への対応に加え、省エネルギー対策の抜本的な強化等により、化石エネルギーの価格・量に影響を受けにくい経済社会を構築することが必要。また、価格転嫁の促進、事業環境の変化に直面する中小企業への支援の強化も重要。
 その上で持続的な賃上げのモメンタムの強化が不可欠であるが、それを実現するための我が国の国内投資は、各国と比較して低位にとどまっている。投資先としての我が国の事業環境は、円安の進展などにより大きく改善している。この絶好の機会を逃すことなく、強力な支援により国内投資を大幅に拡大することが必要。
 こうした流れをGXやDXへの大胆な投資、経済安全保障、スタートアップへの強力な支援につなげるとともに、投資拡大により創出される新たな事業を担う人材育成、特に学び直しと仕事のマッチングによるキャリアアップの支援を強力に展開することも欠かせない。こうした取組により付加価値の高い産業が連続的に生まれ、賃金が継続的に大胆に上昇する構造が生まれていくと考える。
 さらに、円安メリットを活かし、地域の中堅・中小企業の輸出拡大にも取り組むことが重要。
 「成長と分配」の好循環を作り上げるには、中長期的視点から、これらの取組が多年度にわたって継続的に展開する必要がある。今回の対策を契機に、安定的な物価上昇のもと、賃上げを伴った持続的な成長の実現につなげていきたいという御発言でした。
 民間議員です。日本経済を取り巻く環境は厳しい。持続的な成長のため、国内投資と持続的な賃上げが重要。その際、法人負担の議論を先行することで、国内投資と賃上げに対し、水を差すようなことは避けてほしい。
 別の民間議員です。まずは景気対策が重要であるが、それだけではなく、一段高い成長経路を目指して総合的なパッケージを作っていくことが大事で、資料1-1ではそこを強調している。そのためには、予算対応だけでは不十分で、規制・制度改革や税制改革も同時に行っていく必要がある。しっかりとした重点投資を増やし、総需要を増やすことが大事。インセンティブ・ディスインセンティブを喚起するような税制等によってメリハリのある企業行動を促すことが重要。
 短期的には「稼ぐ力」を増やすことが重要であり、インバウンドのみならず輸出を促進することが大事であるが、まだ現状、その点についての取組は十分ではない。大企業の輸出を増やしていくことと、地域の中小企業が直接海外とつながる仕組みや、そのための人材育成が重要。
 また、国境を越えたリモートワークも重要。リモートワークを通じて様々な知恵を借りて、国内企業の起爆剤となることも期待したい。
 別の民間議員です。財政については、鈴木財務大臣の発言は重要。物価高対応を続けることで、財政悪化や財政の信認低下となり、それが円安の加速につながるといった大きなリスクを及ぼす可能性もある。財政単独で考えるのではなく、民間投資を活性化し、乗数効果を高めるためにも、経済構造の転換が重要。
 最賃の1,000円を早期に達成し、その先を見据えた対応が必要。インバウンドについては、賃上げを目指したものとするべき。質の高いサービスをリピートにつなげ、高い賃金につなげていくことが重要であり、官公庁によるしっかりとした支援が必要。長期の滞在について、海外の富裕層を日本に招き入れるための政策や環境づくりも大事。
 経済安保については、西村経済産業大臣の発言は重要。オンショアの投資というのは大事であって、制度、金融、税制を投入し、こうした投資をしっかりと促進していくべきだという御発言でした。
 別の民間議員です。バランスの良い経済対策が求められる。優先順位を付けていくことが大事であって、競争力強化が重要であると考える。どのように競争力を強化するかという点について、2点。まず、円安を活かすこと。足下の円安のメリットを活かしていくということは正しい。現段階では観光客を増やしたり、中長期的なリモートワークを増やしたりしていくことは大事。2点目はグリーン。サステナブルファイナンスを通じて海外資金を呼び込むことが大事。日本がそれをリードしていくべき。
 一方で、経済対策というものが財政健全化を脅かすというのは避けるべきで、イギリスの例をしっかり踏まえるべき。市場から失望を受けてイギリスでは経済の混乱が生じている。信任にも影響を及ぼしている。このイギリスの失敗というものを他山の石にして取り組んでいくことが重要であり、財政健全化の視点を失ってはいけない。
 次に、「人への投資、労働移動による所得向上」について、民間議員から資料に沿って説明があり、続けて「GX投資、サステナブルファイナンス市場の拡大」について、別の民間議員から資料に沿った説明があり、2つの議題について各議員よりまとめて御発言がありました。
 主なご意見を紹介いたします。
 加藤厚生労働大臣です。人への投資の関係で、個人の多様な働き方や「構造的な賃上げ」を実現するため、人材の育成・活性化や円滑な労働移動の促進が必要。
 具体的には、本人の主体的なキャリア形成の促進、在籍型出向、副業・兼業といった新たな経験を通じたスキルアップの促進、非正規雇用の方々のステップアップの機会の提供などによる「人材の育成・活性化を通じた賃上げの促進」、より高い賃金で新たに人を雇い入れる企業の取組支援、継続的なキャリアサポートによる「賃金上昇を伴う円滑な労働移動の支援」、きめ細やかな就職支援や次なる雇用情勢の悪化に備えた雇用保険財政の早期再建など「セーフティーネットの再整備」の一体的な取組を行い、個人の多様な選択を支えるしなやかな労働市場を整備していくことが必要。
 こうした考えのもとで、総理が所信表明で示された人への投資の強化に継続的に取り組むための総合的な雇用政策パッケージを策定し、強力に推進していくという御説明でした。
 西村経済産業大臣です。大胆な所得向上を実現するには、常に教育訓練を受けられる環境を充実させることが重要。若いうちから労働者が常にキャリアアップを意識し、意欲的にリスキリングを行い、成長分野へと円滑に労働移動をしていく流れを創り出していくことが重要。このため、働く方が前向きな転職に向けて専門家に相談し、リスキリングを経てその後の転職に至るまで、一気通貫で支援を受けることができる仕組みを新たに構築したい。
 GX投資については、民間議員提出資料にあるとおり、現在、我が国の脱炭素関連技術は世界最高水準にあるとの指摘がある一方で、事業化を早期に実現していかなければ、技術で勝ってビジネスで負ける構図に陥るリスクがある。既に欧米諸国がGX関連投資の強化策を大規模に打ち出すなど、世界的な投資競争は始まっていて、政府による大胆な取組は待ったなしの状況にある。また、ロシアによるウクライナ侵攻後の化石燃料の高騰により、世界でインフレや国民負担増が引き起こされている。これは我が国にとっては構造問題でもある。こうした中で、現在のGX実行会議で議論している、成長志向型カーボンプライシング構想を早期に具体化し、官民でGX投資を大胆に実行し、エネルギー危機にも耐え得る強靱な経済社会システムの確立に全力で取り組んでいきたいという御発言でした。
 民間議員です。人への投資について、ポイントは分厚い中間層の形成である。それにより格差の解消、消費の拡大による経済成長、多様な働き方につながり、経済社会の強靱化となる。
 GXについては、再エネを最大限導入していくことが重要。また、ベースロード電源として原子力発電も積極的に活用していくべき。中長期の視点として、核心炉や核融合炉の開発を進めるべきで、将来の方からバックキャストして、国として責任を持って必要な人材と資金をアロケートしていくべき。2050年のカーボンニュートラルに向けて、産業競争力の強化・維持が必要であって、その上で公平性、公正性、客観性の3点が重要である。
 引き続いて、別の民間議員ですが、4点あり、1点目は人材の流動化について。質の高い雇用の創出が大事であり、もちろんリカレント教育や兼業の促進も重要だが、そもそも個人のモチベーションがない場合には、学べといっても学びなどというものはなかなか起きない。モチベーションをしっかり持ってもらうためにどういうチャンスがあるのかということをしっかり見せること、見せる化することが大事。質の高い雇用を可視化していくことが大事だ。教育訓練を受けて自身の能力が高まった場合、チャレンジしていった、しっかりとしたメリットがあるというモチベーションなくして成長はない。そういう視点がないままに政府の資金を使っても効果的な結果が得られない。GX、DX、ヘルスケアという分野は質の高い雇用の受皿となり得るニューフロンティアであり、こうしたニューフロンティアの民間投資を喚起して雇用創出をつくっていくといった目標を作って掲げていってほしい。
 2点目は、グリーンの関係で、洋上風力の活用などは地域活性化につながる。例えば洋上風力などは日本海側に集中していたりして、特定の県については経済が厳しいという状況にもある中で、地域活性化のチャンスとなるため、地域振興パッケージとしても位置付けて、エネルギー政策と一体的に取り組んでいくことが重要。
 3点目はヘルスケア。これはニューフロンティアとしてしっかり取り組むべき。2025年には団塊の世代が75歳以上になることが分かっている。集中的な取組を進めるということが大事。この分野はスタートアップが参入するチャンスでもある。こうした分野において規制改革などをしっかりと進めていく、いわゆるHX、ヘルスケアトランスフォーメーションとして、例えばしっかりと進めていくというようなことが大事である。財政的な措置に加えて、こうした分野で規制改革をしっかりと進めていくことが大事。
 4点目として、若年世代に不安が蓄積していることへの対応が必要。自らを傷つける自傷や、見知らぬ人への加害、自殺なども増えている。こうした社会不安がある中、これを緩和するためにNPOなどによる共助の取組が大事。分配を進めるという意味でも大事。NPOには若い起業家がいて、ある種のベンチャーである。共助のコミュニティーをしっかり作っていくことが大事。50代、60代の方々がその知見経験を持って活躍できる分野でもある。例えば、ふるさと納税をNPOに使えるようにすることや、寄附税制を見直すなども考えていくべきではないか。また投資として人材が動き、失敗しても、NPOで救ってもらえるような共助社会を作っていくことも大事であるといった御発言でした。
 別の民間議員です。他の議員の発言と重複しないようにということで2点。
 アメリカのイニシアティブはインフラ法案パッケージですが、金融市場でも評判がいい。短期的な目標と中長期の目標の両方を取り込んでいる点が、その評価が高い理由だと承知している。日本でもこうした点を踏まえて取組を進めていくことが大事。
 また、資料3-2の図にあるように日本でも、例えば脱炭素関連の特許出願件数が高い水準にあることなど、非常に高い技術を持っているはずであるが、一方で日本の研究開発効率が諸外国上で低いといった課題もある。日本に不足しているのは、こうしたことから見ると実装化が遅れたり、不足したりしているのではないか。技術があるという意味では収益の種は正にあるので、今後これをどのように実装していくかということが極めて大事であるという御発言でした。
 別の民間議員です。人への投資で別の発言があったのでグリーンについて3点補足したい。
 まずGXにはDX、デジタルが必要。しっかりとDXを進めていかないことにはGXも進んでいかないので両輪で進めていくことが大事。
 次に、企業の行動変容を促すことが大事。企業のみの取組では駄目で、企業や科研に行動を促すような、そういうインセンティブを与えるような制度を作ることが大事。そうしたことを総合対策で、経済対策で打ち出していくべきである。
 3点目で、民間の予見可能性を高めることが重要。政府が長期的にコミットすることに加えて、それに対して民間投資がどこまで誘発できるか、仕組みと枠組みをしっかりと考えることが大事。対日直接投資の推進や、PPP/PFIなどを通じた取組も、有用なのではないかという御発言でした。
 黒田日本銀行総裁です。日銀短観が出たが、短観によると、企業収益は昨年大幅に増加し、今年も増加している。設備投資も二桁増加になる見通しが示されている。そうした中にはGXやDXも含まれていて、民間議員の御指摘があったように、政策によってこれをしっかり後押ししていくことが重要である。
 また、物価高が進む中で、賃金が上がるということが非常に重要である。人への投資とか労働移動の促進により、賃金上昇がスムーズに行われるような政策対応が重要であるという御発言でした。
 最後に総理から御発言がございましたが、お聞きになった通りです。






(以上)