第10回記者会見要旨:令和4年 会議結果

山際内閣府特命担当大臣記者会見要旨

  • 日時:令和4年7月29日(金)18:20~18:45
  • 場所:中央合同庁舎第8号館1階S108会見室

1.発言要旨

 経済財政諮問会議の概要について御報告いたします。
 本日は、「中長期試算」について内閣府から報告を受けた後、それを踏まえて「中長期試算」、「来年度予算の全体像」、「概算要求基準」について議論いたしました。
 「中長期試算」については、成長実現ケースでは、潜在成長率は着実に上昇し、実質2%程度、名目3%程度の成長率が実現。この結果、名目GDPが概ね600兆円に達する時期は2025年度頃。国・地方の基礎的財政収支は、成長実現ケースでは、歳出自然体の姿で2025年度に対GDP比でマイナス0.1%程度の赤字となり、黒字化は前回試算と同様に2026年度。これまでの歳出効率化努力を継続した場合、黒字化は2025年度と、1年程度の前倒しが視野に入ります。
 ベースラインケースでは、近年の実績を踏まえ、潜在成長率を下方改定しており、国・地方の基礎的財政収支は赤字が継続、公債等残高対GDP比は、試算期間後半に上昇するとの試算結果がございました。
 次に、民間議員から、中長期試算及び予算の全体像について、主に以下の意見がございました。
 2025年度のプライマリーバランス黒字化に向けて、これまでの取組以上に経済成長力の強化、歳出・歳入面の取組の強化を進める必要がある。成長実現ケースを実現し、財政規律もしっかり守ることが重要である。成長に向けては、新しい資本主義のジャンプスタートを進めるとともに、重点分野への投資を中期的かつ計画的に実行し、潜在成長率を着実に引き上げるべき。その際、予算の単年度主義の弊害是正による予見可能性の向上や、財政・規制改革も含め各種措置を呼び水とした民間投資の活性化を図るべき。また、財政については、DX等による歳出改革を徹底強化し、ワイズスペンディングを一層推進する事が必要。骨太方針で財源が求められた事項については、その道筋を明らかにして歳出を実行すべき。
 その後、民間議員の御提案どおり、「予算の全体像」を諮問会議決定し、財務大臣から説明のあった「概算要求基準」については了承することとなりました。
 総理からの締めくくり発言については、お聞きいただいたとおりです。詳細については後ほど事務方から説明をさせていただきます。
 その後、本日の閣議におきまして、「令和4年度年次経済財政報告」、いわゆる経済財政白書を報告いたしました。
 今年の白書では、約30年ぶりの物価上昇の下でも、前向きな動きが続いていますが、継続的・安定的な賃金引き上げと需給ギャップの着実な縮小を進め、賃金と物価がともに上昇していく経済を実現する必要があると指摘しています。そのためにも、人への投資と分配を強化し、「成長と分配の好循環」を早期に実現することが必要です。また、官民連携の下で、脱炭素化やデジタル化等に計画的で大胆な重点投資を推進し、経済社会の行動を変化に対してより強靱で持続可能なものに変革していくことが重要であることなどを指摘しています。
 本報告が、現下の日本経済が直面する課題についての議論を深め、白書の副題とした「人への投資を原動力とする成長と分配の好循環」の実現に向けた政策運営に資することを期待しています。
 最後にTPPでございます。TPP11について申し上げます。7月24日日曜日から28日木曜日の5日間、英国のTPP11に加入に関する作業部会会合が高級実務者級および各専門家級で東京都内にて開催されました。
 日本からは香川剛廣内閣官房TPP等政府対策本部主席交渉官が出席し、議長を務めました。
 私自身も、25日に短時間会合の場を訪れ、今回の会合を通じて、協定のハイレベルを維持しつつ、議論の進展が図られるよう、各国の交渉官に対する期待を直接お伝えいたしました。
 今回の会合においては、様々な課題について議論を深めることができました。なお、今後の段取りについては、東京会合での議論を踏まえ、締約国の間で調整することとしています。
 いずれにしても、我が国はTPP11新規加入手続きの最初の事例である本加入手続において、加入作業部会議長として、TPP11のハイスタンダードなルールおよび市場アクセスを維持しつつ、加入プロセスが適切に進められるよう、引き続きしっかりと取り組んでいきます。
 また、我が国として、守るべきは守り、攻めるべきは攻め、我が国の国益にかなった最善の結果が得られるよう、しっかりと取り組んでいく所存です。






2.質疑応答

(問)先ほど大臣のお話にもありましたが、PB黒字化に関連してです。歳出改革すれば2025年度黒字化可能という試算が示されたのですが、そもそも高い成長を前提として、かつ年末にかけては、防衛費の歳出増なども見込まれる中で、実際その2025年度の黒字化達成が可能と大臣はお考えでしょうか。改めてお願いします。


(答)今の「成長実現ケース」ですが、これはデフレ脱却・経済再生に向け、過去の実績も踏まえたペースで成長戦略などの政策効果が発現していく、政府として目指すべき経済の姿をお示ししたものです。これは以前から、成長実現ケースという場合にはこの形で行っています。
 また中長期試算では、おっしゃったように、骨太方針2020に盛り込まれた防衛力強化などは、今後具体化される予算でございますので織り込んでおりません。
 例えば、防衛予算については、今後内容、金額、財源の3点セットで議論が行われるものと承知をしておりまして、その内容が明らかになった時点で、試算での取扱いも検討していくことになります。
 今回の試算では、成長実現ケースで示された力強い成長が実現して、これまでの歳出効率化努力を継続した場合には、前回同様、国と地方を合わせた基礎的財政収支が2025年度に黒字化する姿が示される結果となったわけですが、この姿を実現するためには、社会課題の解決を経済成長のエンジンにするという、まさに新しい資本主義、これを着実に一つ一つ進めていくということが必須になると考えております。



(問)関連しまして、骨太方針では状況に応じて黒字化目標の見直しもという趣旨の文言も入っていたのですが、見直しの必要性について現時点で大臣はどのようにお考えでしょうか。


(答)見直しは必要なときには随時行っていくという方針ですので、この感染対策に万全を期しながら、経済社会活動の回復を確かなものにしていく、そして今申し上げたように、新しい資本主義の趣旨である社会課題というものを経済成長のエンジンに変えていくということ、これを徹底していくわけなのですが、それをやる中で、必要となった場合には当然様々な検証というのは行っていくということになります。
 現時点では、この目標年度の変更を求める状況ではないということが確認されましたが、先行きがどうなるかということに関しては、柔軟に対応したいと思っています。



(問)中長期試算についてお伺いします。今回、ベースラインのケースに関しては、成長率を下方改定されているわけですが、成長実現ケースについては、引き続き名目3%ということで、高い成長率を見込んでいらっしゃるわけです。この前提については、かねてより楽観的ではないかというような指摘はあるわけですが、これについて大臣のお考えを伺いたいのと、今後成長実現ケースについても、ベースラインのケースの今回の改定同様、成長率の前提について見直していかれるようなお考えがあるかどうかお伺いできればと思います。


(答)「ベースラインケース」は、これは近年の実績、テクニカルを踏まえた上で、潜在成長率を前回試算から下方改定したり、あるいは内閣府の「年央試算」というものを使った上でお示しをしてきたものなので、それはある意味近年の実績を踏まえたものとご理解いただければと思います。
 一方で「成長実現ケース」は、これ繰り返しになりますが、デフレ脱却・経済再生に向けて、過去の実績を踏まえたペースで成長戦略などの政策効果が発現していく、政府として目指すべき経済の姿をお示ししているものなので、まさに我々が努力をして、官民共同で実現していかなくてはいけない姿というのはこういうものだということをお示ししたものです。それはまさに新しい資本主義のグランドデザインや実行計画でお示しをしていることを、みんなでやろうということをお示ししていますから、それを大きく変えたりするときには、当然それによって変わることはあるかもしれませんが、それをやっていくんだという、現段階においては、その成長実現ケースというものはその考えに基づいてお示しをしているものですから、それを変える必要はないと思っています。



(問)白書についてお伺いします。白書の中では、この25年間賃金が上がっていない状況について触れられていて、その中で、賃金上昇が生産性向上とか物価上昇に見合っていなかったという指摘がありました。それに対する大臣として所感と、白書では適正な賃上げについて、官民であり方を検討するべきだというような表記もあったと思うのですが、今後どのような対応をされていくのかというのを教えてください。


(答)白書というのは、どういう性質のものかというと、ある意味これまでやってきたことがきちんと整理されていて、現状としてこうなんですという、まさにファクトが書かれているものだと思います。ですから、そのファクトに基づいて、だから我々の意思としてそれを変えていくという政策が乗っかっていかないといけないと思うんですね。
 その中で、賃上げというものがなかなか進んでこなかったというのは事実だと思いますから、それを変えていかなくてはいけないという思いのもとに、今岸田政権の下において、新しい資本主義を回し始めているということですから、当然賃上げを上げていくための努力というのは、政府として今もう既にお示しをしているものをしっかりと進めるということをまずやらなくてはいけないと思います。



(問)成長実現コース、25年には600兆という目指すべき姿、それについて財界の方たちは、これは新しい資本主義のジャンプスタートを進めると書いておられるわけで、まさにこれは山際大臣のお仕事だと思うのですが。これは容易ならざる目指す目標ですが、やはりこの世の中の景気の気の部分を変えないといけないと思うんです。問われているのはやっぱり新しい資本主義、ジャンプスタートと書いたんですけれども、これは具体的に何を、スタートアップ大臣になられるような話も報じられていますが、どうお考えになっているのか。ジャンプスタートの部分を伺いたいです。


(答)ジャンプスタートというのが、具体的に一つ一つの政策として何を示しているかという言葉ではないというのはご理解いただいていると思うのですが。私なりに思うのは、私はコロナの対策担当大臣も当然やらせていただいているのですが、コロナ対策をしっかりやりながら経済を回し続けるという、まずその雰囲気が我々国民の間に定着するということが非常に重要だと思っています。その土台がなければ、経済を成長軌道に乗せ込んでいくというのは本当に大変なことだと思います。
 一方で、その条件というものが整ったときには、まさに新しい資本主義実行計画の中でお示しをした、スタートアップもそうです、GX・DXもそうです。あるいは人への投資というのもそうなります。科学技術イノベーションにおいても、一つ一つの分野に関して、もう投資が始まっています。こういうものを、この一つのことだけやれば良いということではなくて、それぞれの柱において、一つ一つ確実に進めるということが、積算されるとジャンプスタートだと、そう見られるようにしていくという姿があらまほしき姿だと思っております。
 ですから確実に慌てることなく、確実に一つ一つ進めていくということを、担当大臣としてもやらせていただきたいと思いますし、その一つ一つ確実にということ以外に鍵はないと思っています。











3.村瀬内閣府政策統括官(経済財政運営担当)による追加説明

 令和4年第10回の諮問会議について、概要を報告いたします。
 先ほど大臣から御紹介がありましたように、三つの議題で議論されました。
 まず、「中長期の経済財政に関する試算」について内閣府から資料1、民間議員から資料2、次に「予算の全体像」について民間議員から資料3、その後「令和5年度予算の概算要求基準」について、財務大臣から資料4の説明があり、三つの議題について各議員より御発言を頂きました。
 主な御発言を紹介いたします。
 民間議員です。予算の全体像に関連して今後の議論で重要な点を2点申し上げる。
 一点目はGX。27日にGX実行会議が行われたが、GXの実行は新しい資本主義の実現にとって重要な柱の一つ。そのための150兆円の投資では民間企業の取組が中心となるものの、リスクの大きい革新的な技術への投資については政府の役割が重要。民間の予見可能性を高め、投資の火つけ役となるよう政府の支援を期待したい。
 二点目は社会保障。全世代型社会保障はこの秋以降具体的な検討が行われると承知しているが、成長と分配の好循環に向けて現役世代の可処分所得に配慮した形での給付と負担の見直しやエビデンスに基づく子育て支援などの議論を進めるべき。分厚い中間層の形成が大事であると認識している。
 鈴木財務大臣です。今回の中長期試算では、2025年度にプライマリーバランスが黒字化し得るという姿が示された。我が国が直面している様々な課題に対応していく基盤として健全な財政が不可欠。財政は国の信頼の礎であり、引き続き責任ある経済財政運営を進めることが重要であると考える。特に、来年度予算編成は、重要課題が山積する中で難しい編成となるが、経済・財政一体改革を着実に推進し、歳出の中身を精査するとともに、必要な財源も確保するなど、しっかり対応していく。
 別の民間議員です。IMFが7月に世界経済見通しを発表したが、世界の成長は下方屈折している。日本は相対的には落ちていないように見えなくもないが、日本の経済成長が今後どうなるか注目をされている。中長期試算における成長実現ケースは本当に実現できるのかといった批判もあるが、国として希望や目標がないのは良くない。できるだけ実現を目指し、リアルに近づけていくべき。その状況の下で令和5年度予算編成が進んでいくと、予算は膨張しがちであるが、財政健全化の旗を降ろしてはいけない。2025年度のPB黒字化は長年の希望であり、実現すべき。そのためには、ワイズスペンディングが重要。
 また、サステナブルファイナンス市場の活用もポイント。GX投資として、20兆円の国の予算が出るという話があるが、金融市場をどう利用するのかが大事。5月の総理のロンドン講演で、金融市場はにぎわった。日本はグリーン投資に意欲があること、トランジションというやり方もあること、欧州だけではなく日本がリーダーシップを取って、アジアを巻き込んでいくことなど、工夫の余地がある。インデックス運用してみるとか、GX債とか、いろんな考え方がある。
 さらに、成長をするためには現実を知るべき。そのためにはデータを整備するということが大事であって、マイナンバーの活用をしっかりと進めるべき。マイナンバーを活用し、本当に必要な人にしっかりとお金が行くように、またコロナで問題が生じた病院がどこかと分かるようにするといったことも大事。そのような取組はDXにも通じ、「新しい資本主義」を牽引していくためには、それが大事。金融市場は、成長実現ケースに異議を持っている向きもあるかもしれないが、こうした取組を通じていよいよスタートを切ることが大事だという御発言でした。
 別の民間議員です。日本経済の大きな課題は、潜在成長率をどうにかして引き上げて、厳しい目標ではあるが2%に近づけていくこと。「新しい資本主義」の実行計画や骨太方針でそのための政策がまとめられているが、これらをしっかり活用し、従来の延長線上にない形で大胆に実行し、構造変化を達成していくことが大事。
 そのためには投資、特に人への投資が重要。潜在成長率の引き上げという観点からは、人への投資は、能力のある人の力を高めることだけではなく、労働人口を増やすことにもつながる。労働力人口は人口減少とともに減るのではなく、働きたい人がどれだけしっかり働けるかで違ってくる。女性で就業が難しい方、正規で働きたいのに非正規でとどまっている方、高齢者で元気で働く意欲のある方など、こうした層にしっかり投資をして、より良い労働環境を作って労働力人口を増やしていけば経済の底上げになる。
 財政面でも大事なところにお金を使うワイズスペンディングが重要。必要なところで、歳出削減や財政の確保も行いながらターゲットを絞って進めていくことが大事。そうした結果にPB黒字化も見えてくるという御発言でした。
 最後に総理から御発言がございましたが、お聞きになったとおりです。






(以上)