第9回記者会見要旨:令和4年 会議結果

山際内閣府特命担当大臣記者会見要旨

  • 日時:令和4年7月25日(月)18:04~18:36
  • 場所:中央合同庁舎第8号館1階S108会見室

1.発言要旨

 経済財政諮問会議の概要について御報告します。
 本日は、「金融政策、物価等に関する集中審議」を行うとともに、「年央試算」をもとに、今後のマクロ経済運営の在り方について議論をいたしました。
 「金融政策、物価等に関する集中審議」では、まず黒田総裁から御説明いただいた後、内閣府から「原油価格・物価高騰等総合緊急対策」の進捗状況について報告がありました。
 年央試算についてポイントだけ申し上げますと、2022年度は海外経済の減速等によって外需が下押し要因となる一方、コロナ禍からのサービス消費の回復が見込まれること等により、GDP成長率は実質2.0%程度、名目2.1%程度と見込まれます。2023年度は、マクロ経済運営の議論のための参考として、一定の想定の下に試算をいたしますと、GDP成長率は実質1.1%程度、名目2.2%程度と見込まれます。
 年央試算を受けたマクロ経済運営に関する意見交換では、主に次のような意見がありました。
 現下の物価上昇について、その影響をセグメント別に丁寧に分析し、低所得者や中小企業など厳しい状況にある方々に物価上昇のしわ寄せがいかないよう、適切かつ効果的な対策を講じるべき。
 今後の賃上げについて、今年度を更に上回る賃金モメンタムが可能となるよう、人への投資を抜本的に強化し、生産性の向上と賃金上昇の継続、物価上昇を上回る賃金上昇の実現への環境整備に万全を期すべき。
 民間企業の投資がコロナ下で大幅に下方シフトする中、成長力強化に向けた人的・物的投資の拡大が不可欠。社会課題の解決に向けた重点投資分野を起爆剤として、官民協力して計画的で大幅な投資を迅速に実行すべき。一段高い成長経路に日本経済を乗せていくべき、等でございました。
 総理からの締めくくり発言については、お聞きいただいたとおりです。詳細については、後ほど事務方から御説明をさせていただきます。






2.質疑応答

(問)今、大臣のお話にもありました、今日の諮問会議で示された年央試算の成長率ですが、下方修正となりました。この点について大臣の受け止めをお願いします。


(答)まず、事実をもう一回申し上げますと、2022年度につきましては、本年1月に公表いたしました政府経済見通しでは実質3.2%程度の成長を見込んでおりましたが、今回の内閣府年央試算では、2.0%程度とマイナス1.2%ポイントの引き下げとなりました。
 需要項目別に見ますと、外需と設備投資の引き下げ幅が大きく、その背景といたしましては、1月の政府経済見通し策定以降に生じましたロシアによるウクライナ侵攻、また春先の中国のロックダウン、また各国における物価高対応のための金利引き上げ等によりまして世界経済の成長のペースが大きく下振れし、外需を下方修正したこと。また、年初来のオミクロン株の感染拡大等による半導体をはじめとする世界的な供給制約によって設備投資の増加のペースが想定よりも緩やかであったこと等が挙げられます。
 他方、足下では、個人消費をはじめとして、かなり持ち直しの動きが見えてきておりまして、また供給制約も緩和に向かい、企業の設備投資計画も日銀短観では2桁増となるなど、投資マインドも非常に旺盛であるということから、今後の回復が期待されるところにあります。こうした回復の動きを持続的なものとして、民需主導の自律的な成長につなげられるように、経済財政運営に万全を期してまいりたいと思います。



(問)2点伺えればと思います。
 まず1点目についてなんですけれども、今回の民間議員の方が提出されたペーパーの最後のほうで、年央試算について、2023年度は示された成長見通しを上回る一段高い成長経路に日本経済を乗せていくべきという指摘がありましたが、これについて大臣としては具体的にどんな総合的な方策を取ることで、この軌道に乗せていけるとお考えでしょうか。


(答)これは以前からお示しをしておりますように、今、世界経済全体が抱える課題もありますが、日本としても、課題として考えているものというのは幾つもあります。その課題を成長のエンジンに変えていくというのが新しい資本主義のコンセプトですので、そのコンセプトに従って、もう既にお示しをしております人に対する大胆な投資、あるいはスタートアップ、あるいはGX・DX、そして科学技術・イノベーションといった4つの柱の分野の取組を確実に具体的に一つ一つ進めていくということ。しかも、ここで私たちは注意しなくてはいけないと思っておりますのは、今まではそれは民間の皆さんにお願いをします、政府はお金を付けますということで終始していたわけなのですが、そうではなくて官も民も共に進んでいかないといけない。これを確実に、すなわち新しい資本主義実行計画に基づいて、そのメニューを確実にこなすということで、一段高い成長軌道に日本経済を乗せ込んでいく。これを目指したいと思っております。



(問)もう一点、同じく民間議員の方の提出資料の1ページ目の後半に、コロナについて、感染症法上における位置付けも含めて検討を進めるべきだというご指摘があると思います。また、昨日大臣も「日曜討論」の発言の中で、2類、5類という定型だけではなくて、オミクロンの性状に合わせて対策を変えていく議論をしていくべきだとご発言されたと思います。今回、感染状況が広がって、病床が逼迫されている自治体も出てくる中で、議論というだけではなくて、実際に変えていかないと間に合わないのかなとも感じるのですが、この議論を具体的にどのように進めて、どのようなスケジュール感で変えていくべきと考えていらっしゃるでしょうか。


(答)後半のほうのご質問にありました病床の取り扱いについて、これと今の感染症法上の分類をどうするかということは、私は分けてきちんと整理して対応すべきだと思っております。
 現在起きていることに対するオペレーションは、法律が変わる、変わらない別にして、これまでも相当柔軟に、その時その時のコロナウイルスの性状が変わりますので、その変わった性状に合わせて柔軟に対応してきたと思っておりますし、また今回も相当柔軟に対応していると思います。タイムラグの部分というのはどうしてもありますから、まだその目詰まりの部分が残っている、そういうご批判はしっかりと受けなくてはいけないと思いますし、その対応も急がなくてはいけないとは思っているのですが、今起きていることに対しての対応はしっかりやります。
 しかし、先般、コロナ分科会でご議論があったのは、今のオペレーションが終わってから議論をするべきなのか、それとも今のオペレーションとは分けて考えるのであれば、そもそも論として、これから先、何をすべきかということを同時並行で議論するべきではないかという議論でした。ですから、同時に議論をしましょうというご提言になっています。それを我々政府として受けましたから、当然、その提言に基づいて、同時に議論するべきことは議論しなくてはいけないということで、内々には様々なところで議論が始まっているものと伺っております。
 ですから、その作業は作業で着実に適切にやっていかなくてはいけないと思いますが、その中身はどういうものになるかということは、今この段階においては予断を持って申し上げる状況にはないと思います。



(問)成長率の関係なのですが、今回2.0%、今年度実質成長率、下方修正ということで、コロナ禍から一定の回復をしているとはいえ、輸出やロックダウンを受けた民間投資の減少など、世界経済の影響を大きく受けるという日本の姿が描かれていると思います。今回の試算では、ある程度、国際機関の経済見通しというのが反映されていると思いますが、改めて今後の世界経済全体の景気に関する大臣の見方や日本経済にマイナスのインパクトを与えかねないという点で、どういったところを特に注視されているのか、その辺りをお願いできますでしょうか。


(答)年央試算に関しては、ご指摘いただいたように、国際機関の国際経済の見通しというものをきちんと踏まえた上で行っております。なので先ほど申し上げたように、ウクライナの話や、もちろんコロナウイルス感染症等々も含めてですけれども、様々な要因で今このような状況になっているという説明をさせていただきました。
 そして、後段のほうの質問については、これは総理からも申し上げているだけではなくて、G7の首脳会談の中でもG7の首脳の間でコンセンサスが得られたように、今般のエネルギー価格をはじめとする物価高騰というのは、ロシアによるウクライナ侵略というものがその大元の原因として挙げられます。このように言ってみればコンセンサスが得られたわけです。ですから、最大、私たちが注視して解決に向かってみんなで協力をしなくてはいけない問題は、このウクライナの問題であると思います。ですから、そのことについて予断を持ってどのようになるということが分かる人間は誰もいないと思いますから、今起きていることを我々としてもしっかりと注視しながら、国際協調の中でわが国としてやれることを躊躇なく行っていくということをしなくてはいけないと思います。これは本当に私の部分だけでなく、政府全体で当たらなくてはいけないものですが、そういう形で世界経済の、言ってみればファンダメンタルズを整えていくということをしなくてはいけないのだろうと思っております。
 その他、もちろんコロナウイルス感染症等々をはじめとして新興感染症がどのような状況になるかというようなことは、これはもちろん乗り越えていかなくてはいけない課題ですけれども、そういった不確実なものが、さらに今年、来年で起きないとは限らないわけです。ですから、そういうそれぞれのリスク要因というものがありますので、それらには即応できるように柔軟に対応し続けるということが肝要かと思います。



(問)年央試算についてお伺いします。当初、1月の時点では、22年度は過去最高のGDPを想定されていたわけですけれども、今回の下方修正によって548兆円ということで、コロナ前の19年度の水準が550兆円でしたので、そこにも届かないような見通しとなっています。この理由などについてどのように受け止めていらっしゃるか、改めてお伺いできればと思います。


(答)なぜ年央試算のほうが年初の試算に比べて低くなってきたかということは今ご説明したことですから繰り返しません。そういう理由によって下方修正、見通しとして年央試算というものをお出しさせていただきましたので、それに従って経済というものが推移していくのだろうと。我々としてはその試算というものをベースにしてGDPをさらに、先ほど申し上げたように、一段経済成長が高い段階になるように努力をしていかなくてはいけないと思っております。











3.村瀬内閣府政策統括官(経済財政運営担当)による追加説明

 令和4年第9回の経済財政諮問会議について、概要を報告いたします。
 先ほど大臣から御紹介ありましたように、二つの議題で議論されました。
 まず、「金融政策、物価等に関する集中審議」においては、黒田総裁から資料1、私から資料2を説明させていただきました。次に、「年央試算」については、私から資料3、柳川議員から資料4の説明があり、二つの議題について各議員より御発言を頂きました。
 主な御発言を紹介いたします。
 萩生田大臣です。今後の経済財政政策運営では、物価高やエネルギーの安定供給への短期的な対応と、中長期的視点に立った産業構造の転換を一体的に転換することが必要である。短期的には、物価高の影響を受ける事業者や個人に的確に対応するため、激変緩和措置を着実に実施していくとともに、倍増した下請Gメンによる取引状況の調査や下請振興法に基づく指導、助言などによって、しっかりと川下に価格転嫁できるような環境づくりを徹底することに加え、中小企業の生産性向上を図るための事業再構築への支援等を通じて、賃上げできる環境を整備していく。
 また、足下の電力需給逼迫や資源エネルギー供給の緊迫化などに対応するため、電力供給力の確保や燃料供給体制の強化なども実施する必要がある。その中で、需要側の効率主要インセンティブとなる新たな枠組みを8月中に開始する予定。
 加えて、円安メリットを最大限活用する観点から、感染症対策の徹底を前提としたインバウンドの拡大や、高成長分野における国内生産、提供拠点の拡張を支援する。
 また、中長期的視点から、グリーンやデジタルなどの社会課題について、長期的なビジョンを官民で共有して、政府も大胆に投資を拡大し、民間投資の呼び水とする。さらに、人への投資やスタートアップ支援の強化を図ることなどにより、産業の構造転換を促す。
 このように、短期と中長期の課題を一体的に捉えながら、今年度後半以降のマクロ経済情勢に機動的に対応することが必要だと、こういう御発言でした。
 民間議員です。マクロ経済運営について、足下の物価高に対し、弱い立場の家計や事業者を財政政策で支援することは短期的に必要。また、金融政策も持続的な成長や安定した物価上昇に向けて、当面現状を維持すべき。物価に注意しながら適切な運営が求められる。
 GXについては、エネルギー安全保障の問題は足下のエネルギー価格の高騰や電力需給の逼迫にとどまらず、エネルギーの国産化、2050年のカーボンニュートラルに向けた取組が求められる。つまり、GXの強化が非常に重要。
 原発の活用ということもあるが、同時に核融合、それから次世代の革新炉としての高速炉、それからSMRの開発も重要である。
 それから、GXの実行に向けたロードマップの策定、カーボンプライシングの活用などに向けて、GX実行会議で議論を深めていくことが大事。
 成長と分配の好循環については、成長も分配も両方が大事であり、成長面ではGXの推進や人への投資、これを通じた着実な成長を実現していくことが大事。分配面では、もちろん企業は物価上昇や業績を踏まえながら、持続的な賃上げを着実に目指していく。同時に、それが消費に回るためには税制や社会保障の改革を通じた給付と負担の見直しも必要。賃上げ、税、社会保障、人への投資を通じた労働生産性の上昇など、多岐にわたる論点を総合的に実行することで分厚い中間層の形成につなげていくべきだという御指摘がありました。
 別の民間議員です。先日の会議から色々なことが世界的に起きている。様々なリスクがマーケットには顕在化しているように感じている。そうしたグローバルリスクの中で、日本が安定した経済環境を作ることが重要である。
 何よりも重要なのは人への投資。特に、今回示された成長の見通しが実現するような対策が重要であり、3点指摘させていただきたい。
 1点目はエネルギーの問題。国民に対して、原発や再エネなど、どういった電源にどういうメリットがあるのか、メニューを示しながらしっかりとした議論を行っていく必要がある。
 2点目、財政健全化について。防衛費も含めて財政の健全化が一方で防衛力を高めるといった意味でも意味をもってくる。ヘッジファンドが国債に売りをかけたようなこともあったが、日本の財政が万全であり、そういったことが起きないようにしているという視点も大事。
 3点目はワイズスペンディング。この文脈においてグリーンイノベーションの実行が肝である。GX実行会議には期待をしている。いかに日本にサステナブルファイナンスの資金を持ってくるのか。また、地方においてこういった資金を循環させるのかということが非常に重要である。アジアの各国がサステナブルファイナンスのグリーン市場においてリーダーシップをとるという動きをする中で、日本としてもリーダーシップをしっかりとれるような対応が必要である。こうしたことを通じて貿易黒字の状況を作り出すということが重要であるといった御指摘でした。
 別の民間議員です。何よりもまず物価高騰対策の速やかな実施が重要。その上で持続可能な経済社会の実現に向けて取組が重要だが、自分としては三つの軸を提示したい。一つ目が中小企業の賃上げ、それから二つ目が人材の流動化による賃上げ、三つ目がワイズスペンディングによる効果的な財政支出である。
 1点目だが、雇用の7割を支える中小企業の賃上げに向けて最低賃金の引上げにしっかり取り組んでいくべき。早期に全国加重平均1,000円を達成するべきだが、全体底上げのための更に目線の高いロードマップの策定も重要ではないか。それから、円安環境の下で、中小企業の輸出促進をしっかり進めるべき。今はチャンスという捉え方もある。JETROも活用し、また企業の人材もしっかり活用して戦略的に対応していくべき。DXについては、生産性向上や人材確保支援も行って、意欲のある企業に対する強力な経営支援を行っていくべき。DX人材の確保が重要である。
 第2に、人材の流動化による賃上げに向けて、ニューフロンティアへの民間投資促進による質の高い雇用創出を行うべき。ニューフロンティアとしては、DX、GX、ヘルスケアなどは、より質の高い雇用を増やせる分野である。こうした分野において、産業を育成し、雇用を生み出していくことが大事。これにより、円滑な労働移動を実現し、賃上げへとつなげるべき。そのためには税制改革も含めてスタートアップ支援などを通じ、人材移動促進を進めていく必要がある。また、グリーンについては、民間投資を進めるに当たって、イノベーションを生み出すための一定の社会規制、これは是とする考え方を持って対応していくべき。かつての高度成長期においても一定の環境規制があったからこそ、日本は強い競争力のある産業を生み出して、それが将来の利益を生み出すといったことがあったので、そうした観点も必要ではないか。
 第3に、ワイズスペンディングについて、効果的財政支出が大事で、その上でマイナンバーの活用というのが極めて重要。社会保障を考える上でもこうしたことが大事。これをこの諮問会議の下にある経済・財政一体改革推進委員会において議論する場を設けて、国民の安心・信頼を得ていけるような、しっかりとした議論を進めていくべき。
 また社会保障を考える上では公助だけでは足りなくて、共助も必要である。寄付税制の見直しや、ふるさと納税の活用など、また、NPOや社会企業家を中心とした共助による社会保障の強化といったことも検討していくべきではないかといった御指摘がありました。
 最後に、総理の御発言は、お聞きになったとおりです。






(以上)