第8回記者会見要旨:令和4年 会議結果

山際内閣府特命担当大臣記者会見要旨

  • 日時:令和4年6月7日(火)18:36~19:17
  • 場所:中央合同庁舎第8号館1階S108会見室

1.発言要旨

 経済財政諮問会議・新しい資本主義実現会議の概要について御報告します。
 本日は、経済財政諮問会議と新しい資本主義実現会議を合同開催いたしました。「骨太方針2022」と「新しい資本主義のグランドデザイン・実行計画」を取りまとめました。その後、持ち回りの臨時閣議において、この二つを閣議決定いたしました。
 まず、「新しい資本主義のグランドデザイン・実行計画」につきまして、市場では解決できない外部性の大きな社会的課題について、この課題をエネルギー源と捉え、新たな成長を図る。スタートアップやグリーントランスフォーメーション、資産所得倍増について、複数年度にわたる具体的なプランを本年中に策定し、実行する。
 次に、骨太方針について。我が国を取り巻く環境が大きく変化する中、外交・安全保障などの戦略的な対応を強化しつつ、「新しい資本主義」の実現に向けた計画的で重点的な投資や規制・制度改革を行い、経済社会をより強靱で持続可能なものに変革していく。
 新しい資本主義の起動に向けた岸田内閣の経済財政運営と改革の全体像をお示しするべく、副題は「新しい資本主義へ~課題解決を成長のエンジンに変え、持続可能な経済を実現~」といたしました。
 また、「経済あっての財政」の考え方で、経済をしっかり立て直すために必要な政策対応を行い、そして財政健全化に向けて取り組んでまいります。
 総理からの締めくくり発言については、お聞きいただいたとおりです。詳細については、後ほど事務方から説明させていただきます。
 続いて、明日6月8日から6月11日にかけて、フランスのパリに出張し、OECD閣僚理事会に出席いたします。今回の閣僚理事会では、ロシアによるウクライナ侵略の影響や、若者への人的投資、持続可能な社会への移行等について、各国の閣僚レベルでの議論が行われます。このため、私も出席し、岸田内閣が目指す新しい資本主義の実現に向けた取組等を説明する予定です。
 また、TPPを所掌する大臣として、この機会にOECD閣僚理事会に出席する関係各国の貿易大臣等と、TPPに関する会談を行う予定です。詳細は事務方にお問い合わせをいただければと思います。






2.質疑応答

(問)骨太方針について2点お伺いします。まず、令和5年度の予算編成に向けた考え方について、最後に、「本方針及び骨太方針2021に基づき、経済・財政一体改革を着実に推進する。ただし、重要な政策の選択肢はせばめることがあってはならない」との記述があります。
 今回新たに加わった防衛関係の政策などが含まれるとは思いますが、その他にはどんな政策が当てはまるか、具体例をお聞かせください。これが1点目です。
 2点目は、先ほどの文言について、両論併記と言いますか、一見すると相反する印象を受けます。原案の公表時には、プライマリーバランスの黒字化についてはあえて書かなくても良いという説明も事務方などからありましたが、逆に言うと、あえて削る必要もなかったかと思います。
 今回も骨太方針の中に財政健全化の旗を下ろさずと記述はありますが、その理由として、一部与党内のバランスに配慮したという報道もある中で、岸田内閣として、これから緊縮財政と積極財政、一体どちらの方針で行くのか、もしよろしければ大臣のお考えをお聞かせください。


(答)まず1点目の質問については、まさに今日、新しい資本主義の実現計画もお示しをいたしましたので、そこに各論が散りばめられておりますので、それを私の方からあれこれと説明しませんが、そちらを見ていただければ、必要だと思われる各論は入っていると理解していただければと思います。
 2点目について、様々な議論があるのは当たり前ですが、岸田内閣の方針は一貫しておりまして、これは財政健全化の旗を下ろさない。しかし、必要な時には躊躇なく財政出動はしていくというのが、これまでの一貫した姿勢です。それをこれからも行うということが明快に書かれていると、私たちはそう理解しております。



(問)ここまで取りまとめお疲れさまでした。この骨太の目安の部分、こちらにただし書きが入っていて、これは重要な政策の選択肢をせばめることがあってはならないということで、これは目安に沿った予算編成に対する例外規定のように読めます。幹事社さんのこれは何が適用されるのかという質問と関連しますが、足下の防衛費の増額であるとか、グリーンやデジタルとか、財政需要を非常に拡大していると思いますが、この例外規定を緩く利用してしまうと、財政支出は非常に膨張していくおそれがあると思いますが、この例外規定、もう一度どのように運用していくべきものなのか伺えないでしょうか。


(答)これも繰り返しのお答えになりますが、財政健全化の目標というもの、あるいは姿勢は、その旗を下ろすことはしないと明快に申し上げていますし、またそういう記述になっていると私は理解しております。
 一方で、新しい資本主義を実現していくというのが、これは総理の強い思いでありまして、岸田内閣としても、言ってみればやらなくてはいけないと私たちが共有している問題意識です。
 当然、その新しい資本主義を実現していく中において、予算措置が必要なものは、それにしっかりと予算をつけていかなくていけないことですから、何も防衛費に限らず、我々が政権としてやらなくてはいけないものを、きちんと優先順位をつけつつ、規模感も考えながら、しかし全体としては、中長期的に財政健全化が実現できる方向性で進めていきたいということが書かれているわけです。
 具体的な話は、これから予算編成が夏以降にあるので、そこで明らかにしていくもの、それぞれ個別のものについて明らかにしていかなくてはいけないものだと思いますが、現段階においては、まさに骨太の方針として、このような形で行うということをお示ししたということが重要だと思っています。



(問)例えばその目安であれば、昨年の確認した目安では、非社会保障費については、これまでの歳出改革の取組を継続するということを確認しています。
 これは金額でいうと、330億円の増額に抑えるということを理解していますが、この330億円の増額に抑えられない、そこの枠に外へ出てくる予算はかなり出てくるということでしょうか。


(答)具体的な中身が、まだ全部決まっているわけではないので、今おっしゃった個別具体の話に関して、そうだともそうでないとも申し上げられるような状況に今ありませんが、繰り返しになりますが、どのような方針で、これから予算編成も含めて岸田内閣としては、マクロの経済財政運営を行っていくのかという姿勢が今回の骨太でしっかり確認していただくのが大事だと思います。
 その上で、それから一つ一つの個別具体のことを練り上げていく時に、その方針に沿ってそれが練り上げられているものがどうかというのは、当然一つ一つご下問もあろうかと思います。ですからそれは、そういう一つ一つのものが出てきた時に、また具体的にお答えしなくてはいけないタイミングになりましたら、お答えすることになると思います。



(問)ドル円ですが、今日133円台まで下落して、約20年ぶりの円安水準となっています。新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画や、骨太方針には、円安が日本経済に与える影響についての記述は少ないような印象があります。政府は、円安を輸出促進やインバウンド以外でどのように経済成長につなげていくお考えでしょうか。


(答)これは、いつものお答えで大変恐縮ですが、私の立場、あるいは政府の立場で、この為替について言及するのは、これまでも控えさせていただきましたし、今回も控えたいと思います。
 一方で、もちろん我々としても、為替に限らず様々な要因が経済に与え得る影響については注視しております。
 だからこそ、これから我々の日本という国は、どのような分野に政府として重点を置こうとしているのかを、明快にお示しをすることは必要なわけです。それが今回の骨太方針ならびに新しい資本主義のグランドデザインです。ですから、そこの分野に対して特に注力をすることで、経済全体を強化していく。成長軌道にしっかり載せ込んでいくということを我々は目指してこれまでも進んできたので、これからも進みますので、そういう経済が強くなる中で、当然為替に関係するビジネスもありましょうし、そうでないものもあると。一つ一つを我々としては言及することはしないというのは、従来からのお答えになります。



(問)1点目ですが、まず骨太方針などに関してお伺いします。GX移行債をはじめとして、かなり今財源の手当が必要な施策が多く見受けられるわけですが、また防衛費のように、財源に関する記載が全くない項目もあるわけですが、こういった今回の施策に関して、財源の確保をどのように対応していかれるお考えなのかお伺いできればと思います。


(答)財源の確保に関しては、今日まさにこういう方針で政府としては進みますということをお示ししたわけです。ですから、これから個別に中身一つ一つを実現していくのに当たって、どのようなお金が必要なのかということが、一つ一つ個別具体に出てまいります。それの集合体が財源ということになると思います。  ですから、今の段階で何をどの財源を充ててという、具体的なことをお答えできる状況にないのはご理解いただければと思います。



(問)もう1点お願いします。本日発表の家計調査報告で、名目では1.2%の増加になりましたが、実質では1.7%の減少ということで、消費者の節約志向が高まっているようにも見受けられるわけですが、こういった状況について、大臣は消費者が値上げを許容しているという状況にあるとお考えかどうか、お伺いできればと思います。


(答)ダイレクトに質問に対してお答えしているかどうか分かりませんが、政府として、事実として発表させていただいていることは、やはりこれはウクライナの情勢等々があって物価が上昇していると。そのことによって消費は弱含んでいるというのが、我々が正式に発表している、今私たちが考えている景気に対する感覚です。
 ですから、当然今おっしゃったようなことも、我々が認識しているものと照らして考えれば、これからも注視をしていかなくてはいけない問題だと思っています。



(問)骨太と新しい資本主義両方に関してですが、今回貯蓄から投資ということを、分配と成長の好循環という流れの中でも重視されていますが、ただ貯蓄が投資に回り過ぎると言いますか、投資が増えて貯蓄が大幅に減ってしまうと、現在の我が国の財政状況を踏まえると、貯蓄がなくなることで、積極的な財政出動ができなくなるのではないかという懸念の声もあります。
 貯蓄が多いところが、この国の財政を支えているところもあると思いますが、それが無くなればというところもあると思いますが、そうした懸念の声に対して、大臣はどのようにお考えになりますでしょうか。


(答)これも正面からお答えすることになるか分かりませんが、国の信任、国の信用という意味においては、金融資産と言われる、国民が持っている資産そのものが、安定的にあるかないかということは大変重要だと思いますが、その中身が、貯蓄の割合がどれぐらいで、それからそれを投資の割合がどれぐらいでというので、その信用に大きな差が出てくるという感覚は少なくとも私は持っていません。
 これは、どこかと比べるのはおかしな話かもしれませんが、しかしこれだけ金利が低く、貯蓄をしていても資産がなかなか増えないという状況にあって、我々この新しい資本主義の目標の中に、いわゆるwell-being、一人一人がより良い生き方ができるようにしていきたいというのが我々の目標でありますので、そうなりますと、ご自身の力で稼ぎ出した資産を、少しでも増やしていただく。そのことが教育であったり、老後であったり、様々な生活に好循環として回っていくという姿が、まさにwell-beingを実現していく上において大変重要であると、このような認識に基づいて資産を倍増という言葉で総理はおっしゃいましたが、まさにおっしゃるように、貯蓄から投資への流れをもう少し促そうということを言っているわけなので、その流れの中で政策は進めてまいりたいと思っております。
 しかし、最初の話は、投資の方にポーションが少し増えたからといって、それで国の信任が少し落ちるという感覚はありません。



(問)いわゆるスポーツベッティングの件で、実現に向けて今検討が進められている状況と聞いていますが、依存症だとか、八百長だとか、デメリットの部分もかなり指摘されていると思いますが、大臣はそれの是非についてどうお考えでしょうか。


(答)所掌は私ではないので、コメントは控えたいと思います。



(問)先ほどの質問と多少重なる部分もございますが、歳出改革の枠組みについてお聞きしたいですが、これは安倍政権時代の2015年から一貫して表明されてきた指針であり、岸田総理も同じ指針にのっとってやりますとおっしゃっていますが、今回、ただし重要な政策の選択肢を狭めることがあってはならないという一文が追加されたことで、これは大臣の御認識として、つまり重要な政策に該当した場合は、歳出改革の例外になるのか、その辺りの御認識を伺いたいと思っております。


(答)これはまさに、政権として優先順位を高くしてやらなくてはいけない、これは新しい資本主義のグランドデザインの中に項目が出ています。それらを実現せしめるために、必要な予算がこれぐらいだと出てきた場合には、それはもちろん予算を確保しなくてはいけないと思っています。
 それが全体として見た時に、これまでの財政健全化の旗は下ろさずに進みますが、今この足下に何をやるかは、それは柔軟に考えなくてはいけないと思っていますので、それが例外か例外でないかというような見方で見るというよりは、どれぐらい必要性があると政権として考えるかということによって、予算が決まってくると理解してもらった方が良いのではないかと思います。



(問)どうしても今回、防衛費の増額に焦点が当たりましたが、見る人が見れば、今回この一文が入ったことによって、度重なる財政出動のある意味言い訳に使われるのではないかというように懸念する向きもあるかと思いますが、その辺りはどうお考えでしょうか。


(答)そういうように懸念される向きがあるということも含めて、説明責任をきちんと果たしていかなくてはいけないと思いますが、岸田政権として何をやろうとしているかということは、まさに今日、皆様方にお示ししたとおりです。
 ですから、私たちがお示しをした文脈の中で、きちんと予算付けがされているかどうかということを、皆さんに確認していただいて、それに対しての説明責任は果たしていかなくてはいけないと思います。



(問)そうしますと、その防衛に限らず、骨太、それから今回の新たな資本主義、この二つに入っているものに関しては、先ほど各論については云々しないとおっしゃっていましたが、全てがその対象になり得るというお考えでしょうか。


(答)何かを排除する必要はないと思います。











3.三浦次長(内閣官房新しい資本主義実現本部事務局)による追加説明

 「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」(案)について、冒頭、黄川田副大臣から、5月31日の会議以降の主な変更点を説明しました。8ページ、NISAについて「抜本的な拡充を図る」旨を明確にするため表現を変更。9ページ、出世払い型奨学金の本格導入について、基本的な考え方をより具体化。15ページ、スタートアップ育成について、まずは「実行のための司令塔機能を明確化」する旨を分かるようにするため、表現を変更。22ページ、自動車のGX(グリーントランスフォーメーション)について、電動車の定義を明確化するため追記。34ページ、「文化芸術・スポーツの振興」は重要であり、その項目を新たに追記したとの御説明がありました。
 続いて、エコノミストの委員から、新しい資本主義のグランドデザイン・実行計画の案に賛同。「人への投資」や科学技術、スタートアップ、GX、DX(デジタルトランスフォーメーション)などへの投資は、いずれも重要な取組。多様な人々が活躍するインクルーシブな社会の実現に貢献することを期待。実行計画がしっかりと取り組まれるよう期待。行動経済学的視点も入れながら検討し、分かりやすい説明をお願いしたい。これからの数年間、スピード感を持って進めてほしいとの御発言がありました。
 続いて、企業経営者の委員から、与党内での審議を経て内容が強化され、より多くの人に適応される内容となっており、賛同。企業家が集うイベントに参加したが、実行計画にスタートアップ関連施策が重点的に盛り込まれていることを紹介し、初めて認識を持った人も多く、大変盛り上がった。スタートアップ施策について、優先順位を高めて実施していただきたい。民間が主体的になっていきたい。よろしくお願いしたいとの御発言がありました。
 続いて、経済団体の長である委員から、計画は、策定よりも実行が重要。実行・実現には国民の共感と熱量が必須。官民双方が変革へのコミットを持って国民に訴えていくべき。これまでの実行計画には、詳細な工程表などが附属されていたが、一般国民から見ると、細か過ぎて進捗や成果が見えてこなかった。今回の実行計画では、重視するアジェンダについて進捗を会議に報告するなど分かりやすく透明度の高いシンプルなPDCAサイクルを構築するべき。誰もがわくわくする新しい資本主義の実現に期待。私も一企業の経営者として実行・実現に取り組んでまいりたいとの御発言がありました。
 続いて、企業経営者の委員から、今回のグランドデザインと実行計画は、中長期的視点に立ったマルチステークホルダー重視経営を誘導することで、「人への投資と分配」、社会全体の成長をもたらそうとする重要な方向性が盛り込まれており、心より支持。広範囲かつ網羅的な内容で優先順位付けを行い、着実に実行し、定着させていくことが重要。中でも、経済安全保障の確立、安定的なサプライチェーンの確立、イノベーションから成長を促すエコシステムの確立、企業に中長期的視点での経営を促す施策が重要。関西においても、今回まとめたものを受けて周知を図るとともに、継続的に議論をしていきたい。研究開発の強化や賃金の引上げ、取引適正化に向けて進めてまいりたいとの御発言がありました。
 続いて、金融関係の委員から、これまでの政府の総合的な経済政策の文書になかった新しい表現がいくつか掲載されている。「インパクト」はその一つである。社会的課題を解決しながら経済的利益も獲得するということだが、正に新しい資本主義を表している。新しい資本主義が新しい時代に取り残さない包摂性のある資本主義。世界をリードするという意気を世界の舞台で総理から示していただきたい。また、その際の政府の役割は、民間への資金の流れを創ること。別途配付された資料に掲載させていただいたので、これからの検討をよろしくお願いしたいとの御発言がありました。
 続いて、中小企業経営者の委員から、新しい資本主義について意見交換の機会を頂いたことに感謝。中小企業の経営者として、自身も賃上げなど待遇改善を行いつつ、会議の場では、社員が生き生き働けるための取引適正化や、DXの促進、経営者保証の在り方などについて意見を述べてきたが、こうした点が盛り込まれていることに感謝。英知を結集して作成されたこの計画が実行され、大きな成果が上がることを期待したいとの御発言がありました。
 続いて、経済団体の長の委員から、経団連が掲げる「サステイナブルな資本主義」と岸田内閣の「新しい資本主義」と軌を一にする。資本主義は優れた制度であり、我が国の経済社会の大前提。しかしながら、行き過ぎた資本主義は大きな社会課題をもたらす。総理は市場だけでは解決できない外部性の大きい社会課題について、この課題をエネルギー源として捉え、新たな成長を図るとおっしゃった。資本主義を振り切れるのは資本主義だけであり、これこそ「新しい資本主義」と考える。同時に、総理は「成長と分配の好循環」ともおっしゃっている。成長と分配のどちらも重要。成長については「人への投資」など、分配については分厚い中間層の形成を目指すべき。税や社会保障について、今後議論していくことが求められるとの御発言がありました。
 続いて、コンサルタントの委員から、政策の背骨がまとまった。公設性がキーワードである。違う話題だが、あのソニーの出井さん(元・社長・会長・CEO)が亡くなった。デジタル社会の到来を25年前に唱えて、ソニーを変えた方である。スタートアップについても取り組んでいた。最後にやるのは民間人であり、自分も頑張りたいとの御発言がありました。
 続いて、ベンチャー企業の経営者の委員から、「はじめに」にあるように、「資本主義を超える制度は資本主義でしかあり得ない」ということに歴史的な意義があるのではないか。今後、特に2つの使命があると感じている。一つ目が、短期的には実行計画を進捗させ、しっかり管理していくこと。二つ目として、中長期的には必ずしもGDPでは表し切れない指標について、検討を深めていくということではないか。それができれば未来から見て、今の資本主義を超えるシステムを導入することができたと称賛されることになるのではないか。今後の検討に期待したいとの御発言がありました。
 続いて、大学教授の委員から、大学での研究・教育・スタートアップ育成を通じ痛感することは、若い人は、新しい技術に活躍の機会を与えれば必ず成長するということ。彼らが成長しないのは、我々大人や社会がその成長を阻んでいるから。若い人には素晴らしい才能が、新しい技術には大きな可能性がある。それを期待し、信頼すれば必ず経済は成長する。今回の実行計画では、人・技術・スタートアップへの投資が柱になっており、この内容が実行性をもって実現することを期待したいとの御発言がありました。
 続いて、経済団体関係の委員から、資本主義のバージョンアップを掲げ、社会課題の解決と成長の両立により、我が国経済の長期停滞の克服を目指すパッケージがまとめられたことを高く評価。2000年に世界2位だった我が国の1人当たりGDPは、昨年28位まで後退。危機感を持ち、現在の苦境を変革のチャンスにすべき。そのための道筋が示された。後は、実行あるのみ。特に、新しい官民連携を通じて、経済の停滞からの早期脱却を期待。主要テーマである産業のDXについて、挑戦的で粘り強い取組と現実的で柔軟な取組が不可欠。また、原子力発電については、安全最優先での早期再稼働に向けた取組をお願いしたい。最後に、貴重な財産である過去の成長戦略について、今回の計画にもしっかりと位置付けていただき、総合的なフォローを継続してほしいとの御発言がありました。
 続いて、ファンド関係の委員から、新しい資本主義の新しさ・違いは、これまでの日本社会、社会経済のオペレーティングシステムを根本的にアップデートするという点にあるのではないか。以前からの課題についてもこれまでと異なったアプローチで対応していくということ。アップデートされた価値観として、例えば、「人への投資」や多様性の重視、イノベーションの恩恵を社会的に享受することへの理解といった点が挙げられる。こうした新しい資本主義が何かということを分かりやすく説明し、その実現に向けて希望を持ってもらうことが重要。自分もベンチャーキャピタリストとして日々、スタートアップの経営者と接しているが、彼らの熱意を後押しすべく頑張っていかなければいけないと思っているとの御発言がありました。
 続いて、ベンチャー企業経営者の委員から、感想として、今回新しいと思う点についてということで、一点目が融資者のメンバーの半数が女性というスタイルであるという点。
 二点目として、岸田総理のリーダーシップ。壮大なビジョンを抱えながら目標を達成するトップダウン式なリーダーシップではなく、価値観や人選など、ビジョンが多様化している中で、それらを大事にするということ、方法で達成するという人の持つ想像力や夢を大切にするというスタイル。岸田総理が、私たちそれぞれのビジョンを聞き、成長させるという話をされていたが、正に新しい資本主義のリーダーだと思う。
 三点目として、社会起業家との車座でホームレス支援や、地方の過疎化など、経済から置き去りになりそうな方々に向き合う若者の声を真剣に聞き、その課題解決を今回の中心に据えたという点。新しい資本主義のインクルーシブな経済は、総理が社会経済の細部にまで目を届かせたという行為を大切にする姿勢から実現されたものと感じたとの御発言がありました。
 続いて、大学教授の委員からグランドデザイン及び実行計画を取りまとめられ、関係者に感謝。「人への投資」が重要と申し上げてきたが、しっかりと柱になっているのが大変ありがたい。社会課題が様々出ていく中で、解決できる人を育てていく。民間がリードして社会課題を解決する社会を構築するというのが柱になっているのがとても重要なポイント。すぐに実現できるわけではなく、プロセスを詰めていかなければならない。ある程度時間がかかる面も覚悟した上で実行していくことが大事。実現させていくことを決意している文書だとの御発言がありました。
 続いて、労働団体関係の委員から、適正な賃金の引上げの在り方について検討すると書いてあるため、一言申し上げたい。「成長と分配の好循環」のためには「人への投資」と継続した賃上げの取組が不可欠。こうした物価上昇の局面で実質賃金を向上させていく努力が必要。この認識を共有した上で、規制労使それぞれの役割を果たすことが必要。政府には賃上げのしやすい環境の整備にこれまで以上に尽力すべき。労使は生産性の向上を努力し、生産性三原則に基づいた交渉で労働条件を決定していくべきとの御発言がありました。






4.林内閣府政策統括官(経済財政運営担当)による追加説明

 経済財政諮問会議部分の概要を報告いたします。
 「経済財政運営と改革の基本方針2022」、骨太方針の案について、まず、黄川田副大臣から具体的な変更点を中心に答申案を御説明していただき、その後、意見交換を行いました。主な御意見を紹介いたします。
 民間議員からです。日本経済の安定成長の基盤は国債の信認、そのためには、経常収支がマイナスになってはならず、今の状況を反転させる必要がある。今の円安基調を踏まえれば、リスクが高まっていると言える。経常収支を改善させるにはFDI(Foreign Direct Investment)、対日投資にもっと真面目に取り組む必要がある。そのためには、スタートアップ、中堅・中小企業への投資に力を入れてほしい。その結果、これらの主体が輸出の拡大ができるようになれば良い。7割の労働力が中堅・中小にあり、賃上げにもつながるのではないか。
 また、エネルギーの輸入で資金が海外に流出している。政府も原発を中心にエネルギー自給率の向上に取り組んでいるが、この分野でもスタートアップの芽が出てきている。そうした企業の技術を早期に実装することで、省エネを実現する必要がある。
 食料についても、世界で争奪戦が激化している。こうした中、国内農業の発展が重要。民間参入やDXの活用などを進め、自給率が上がるように取り組む必要があるという御指摘でした。
 別の民間議員です。本骨太方針を実行していくにあたっては、まずデータの整備が重要。EBPMやPDCA、コロナ対策の検証にあたっては、データ整備が不可欠である。
 次に、成長の源泉としてサステナブルファイナンスが重要。骨太方針も金融市場で関心が高まっている。例えば、GX経済移行債や将来の財源など、今後つめないといけないことは多いが、遅滞なく実行することが重要。
 さらに、2025年度のPB黒字化目標、財政健全化は今こそ重要になっている。日本国債の信用が重要であり、財政健全化の旗を下ろしてはいけないという御発言でした。
 別の民間議員です。今回の骨太方針は予算の単年度主義の弊害是正や、GX・DXに計画的に取り組む点などが素晴らしい。財政健全化の旗を下ろさずに、経済あっての財政の下、官民が連携して計画的に重点投資を進めていくことが大事。
 それから、分厚い中間層の形成が課題。持続的な賃上げの下で所得が個人消費に回るようにしていく必要がある。税や社会保険料の議論には、現役世代の可処分所得への配慮や年齢を問わず、負担能力に応じた拠出を行うことが大事。
経済力の正確な把握や、効率的な給付に向けて、マイナンバーの活用を進める必要がある。そのための迅速な対応が求められる、という御発言でした。
 別の民間議員です。今後重要なものとして、まずは人への投資が重要。人への投資は企業収益の向上だけでなく、国民の生活や安全を確保するいわば希望の種である。また、経常収支を黒字にしていくことが重要。そのためには、輸出や対内投資が重要になる。輸出という点では食品産業の成長は食料自給率を高める観点から重要。
 さらに、今後も財政政策は必要だが、大事なところにしっかりと対応することが重要。EBPMやアウトカムベースでの政策評価、ワイズスペンディングといった視点に加え、短期にとらわれず中長期的な目線で取り組むべきである。
 最後に、財政の健全化も大事。財政が健全化しない場合、国民の安心の基盤が揺らぎ、更には将来の政策の選択肢がせばまってしまう。これからの未来のためにも財政健全化が必要だという御発言でした。
 以上が、意見交換で、その後に総理の御発言がございましたが、お聞きになったとおりです。






(以上)