第5回記者会見要旨:令和4年 会議結果

山際内閣府特命担当大臣記者会見要旨

  • 日時:令和4年4月27日(水)18:31~19:11
  • 場所:中央合同庁舎第8号館1階S108会見室

1.発言要旨

 経済財政諮問会議の概要について御報告します。
 本日は、「グローバル経済の活力取り込み」と「人への投資、官民連携による無形・有形資本の価値向上」について議論を行いました。
 「グローバル経済の活力取り込み」について、主に次のような意見がありました。経済のダイナミズムを取り戻すためにも、国際的な人流を早期に正常化すべき。予見性を高める形での水際対策の緩和、更には、外国人観光客に向けたプロモーションを強化すべき。インバウンドの大幅減、医薬品の輸入増、エネルギー輸入による資金の海外流出といった経常収支悪化・所得の海外流出を改善していくべき。対日直接投資を推進し、我が国のイノベーション創出やサプライチェーンを強靭化し、成長力を高めるべき。
 「人への投資、官民連携による無形・有形資本の価値向上」について、主に次のような御意見がありました。人への投資や文化・芸術などの無形資本を成長の源泉とすべき。DXを通じた教育機会の格差是正、理数系教育の強化、若手研究者の支援、文化・芸術の成長産業化を目指すべき。社会資本整備については、港湾のハブ化など物流機能の集約、デジタル技術の活用等による運用改善を官民連携で推進し、インフラの質の向上を目指すべき。PPP/PFIは、官民連携で社会課題を解決する重要手段。対象分野を一層拡大し、新たな官民連携モデルを先導すべき。そのための新たなアクションプランを策定し、自治体も巻き込んで推進すべき。
 総理からの締めくくり発言についてはお聞きいただいたとおりです。詳細については、後ほど事務方から御説明をさせていただきます。






2.質疑応答

(問)最新のGDPギャップについてお伺いさせてください。
 コロナ禍の後、累次の経済対策を行い、景気の下支えを行ってきたとは思いますが、依然としてGDPギャップは最新で3.1%、17兆円ぐらい、解消に至っていない状況にあります。経済財政諮問会議でも、成長力の強化とか、骨太方針の取りまとめに向けて経済の問題点とか、その解決に向けた具体策を議論されると思いますが、コロナ禍でのGDPギャップの落ち込みからの回復は、欧米先進国などに比べてまだ遅れている要因について、大臣の現状の見解をお聞かせください。


(答)この要因について一言でこうですと言えるほど簡単なものではないということは御理解いただいた上で、それでも敢えて申し上げるならば、コロナウイルス感染症が拡大した時期が欧米と日本では少しずれているというのは大きな理由の一つだろうと思っております。欧米に遅れて日本ではコロナの感染拡大という波が来ましたので、それに伴って個人消費が落ち込んだということ。さらには、アジアにおける感染拡大も欧米に遅れて起きました。それに従って、労働力が不足することによって部品供給が遅れることもございました。こういう供給制約が、個人消費、あるいは輸出、設備投資などに対して下押しになったことは事実としてあると思っております。そういう状況があるからこそ、緊急対策を今般お示しいたしましたし、また累次にわたって様々な経済対策を打ってきたということでございまして、一日も早く成長軌道に乗せ込んでいくことが必要だという思いで今オペレーションをやっております。



(問)2点お願いいたします。1点目ですが、今日の諮問会議の関係について、民間議員提出資料の中に、早期の原発再稼働や、脱炭素を契機とした新エネ投資、省エネ投資などによる輸出増を求めるような内容がございますが、これに関して、今後、原発の再稼働は、昨日、岸田総理も民放のテレビ番組の中で、原子力規制委員会の体制強化も含めて進めていくと、再稼働を進めていかれるお考えを示していらっしゃいますが、エネルギーの問題、原発の再稼働も含めて、今後、骨太の方針などでどのような打ち出し方を考えていらっしゃるか、大臣のお考えをお伺いします。


(答)今のエネルギーの話は、もちろん新しい資本主義実現会議に、最終的にクリーンエネルギー戦略として乗せ込んでいただくものの中に、きちんと盛り込まれるものと認識しております。そして、昨日の総理のご発言もありましたように、もちろん原子力発電のみならず、再生可能エネルギーも含めまして、カーボンニュートラルに向けてあらゆる使えるものをしっかり使っていかなくてはいけないという分脈の中でおっしゃったことだと思っており、総理の思いも当然反映されたものとして、我が国として使えるものをしっかり使っていくと。時間軸もしっかりお示しをした上で、どのような形でカーボンニュートラルを実現していくかということが、新しい資本主義の実行計画の中に盛り込まれるものとご理解いただければと思います。



(問)もう一点、昨日の緊急対策の関係でお伺いしますが、足元は円安がかなり進行していることによって、輸入品の価格上昇に拍車を掛けているような状況ですが、この円安の背景として、内外での金利差が指摘されているわけですが、政府としては物価高対策を行う一方で日銀は緩和策を続けているような状況ですが、この両者の政策の整合性についてのお考えと、これだけ円安が続く中で、日銀とは政府は政策協定なども結ばれていらっしゃるわけですが、こういった緩和策の継続についてどういったお考えがあるか、大臣のご意見をお伺いできればと思います。


(答)まず、為替のことについて私の立場で言及はしないというのは大原則なので、それは守らなくてはいけないと思っております。その上で、金融政策と為替についての施策は、日銀の中でも恐らく分けて行われているものだと思いますが、それも含めて日銀のやられることですから、私から言及をすることは避けます。
 一方で、我々が今行っている緊急対策は、まさに緊急という名前が付いているとおりに、足下非常に大きく、しかも短期間で物価が上がったりという、いろんな変化が起きている、その激変に対して緩和をしなくてはいけないという視点から緊急対策を打っておりますので、短期で行うべきものと、日銀がオペレーションするような話というのは、政府と日銀との間で、言ってみれば合意をして進めている中長期にやっていかなくてはいけないことと、これは整合性が取れるものだと思っておりますので、短期的なものと中長期的なものとは分けて考えるべきだと思います。



(問)先ほどの諮問会議で、民間議員から水際の緩和に対して提言があったと思いますが、手続きを改善すべきだとか、観光目的も含めて再開すべきという提言でしたが、これに対してどのようにお答えになったのかということと、どのように取り組んでいかれるかということについてお聞かせいただけますでしょうか。


(答)そういう議論があったというのは、総理からの発言の中からも読み取れると思いますが、具体的にどんな話があったかということは、この場では申し上げませんが、政府としてどう考えているかということは、これも皆さま方に累次にわたってお示しをしているように、水際対策、やらなくてはけないことはしっかりやります。最悪の事態を想定して、G7の中でも最も厳しい水際対策を最初やる。徐々にそれを緩和していくことをやり続けて現在に至っております。このコンセプトは別に変える必要はないと思っておりますので、徐々に開いていく、まさに正常化させる方向に向かって徐々に進んでいくと、見極めながらになりますが。それが民間議員の皆さんからお話のあった観光客も含めて、いずれ開いていくという方向性は合致しているものと思います。
 あとは、どのような時間軸で行っていくかについては、まさに相手がコロナウイルス感染症という、どういう形になるかが予見できないものだけに、それは柔軟に見ながら適切なタイミングで緩めていくというオペレーションをするしかないだろうと思いますので、方向性は合致していると理解してもらえればと思います。



(問)今の話ですが、具体的に入国の手続きがとても煩雑だとか、時間が掛かるみたいな、そういう話もあると思いますが、何かその辺、改善の余地みたいなのがあるのではないかということに関してはいかがでしょうか。


(答)もちろん、改善の余地というのは、あらゆる場合においてあると思います。ですから、その努力はこれまでもしてまいりましたし、これからも続けたいと思いますが、それがある意味、安全性を確保するという水際対策をしている趣旨と整合的であるかということを確認しながら改善は進めなくてはいけません。何でもなくしてしまってノーチェックにするということでは安全性が確保されませんから、そこのバランスを見ながら私たちとしてはやらなくてはいけない。その上、水際の対策というか検疫をする場所は出入り口が限られています。空の港であれ、海の港であれ、限りのある場所において、そのリソースを最大限使いながらやっていかなくてはいけないということですから、自ずとその量には限界があるというのも我々は分かっております。ですから、そういう中で工夫できるものは最大限工夫するという改善と、その方法論も含めて、より階段を1つ上がるような形で、不連続にさらに改善ができるようなことがあるならば、それも取り入れる。それも含めて柔軟にやっていかなくてはいけないと思っています。
 ですから、目的に適うものであれば、柔軟にどんどん改善を進めていくことは間違いないですが、今すぐに何か劇的に改善ができるものがあるかと言われれば、少しずつ改善できるところを改善していくというステージにあるということは、これもご理解いただかなくてはいけないと思います。








3.林内閣府政策統括官(経済財政運営担当)による追加説明

 令和4年第5回の経済財政諮問会議について、概要を報告いたします。
 今回は、先ほど山際大臣から御紹介がありましたように、二つの議題について議論を行いました。
 まず、「グローバル経済の活力取り込み」について、民間議員から資料1の説明があり、各議員より御発言がありました。
 主なご意見を紹介いたします。
 萩生田経産大臣です。資源の乏しい我が国において、資源価格が高騰する中で、経常収支の黒字を安定的に確保する観点からも、エネルギー自給率の向上に向けたエネルギー需給構造の転換は待ったなしの課題。そのため、徹底した省エネ、再エネの最大限導入、安全最優先の原発再稼働に取り組んでまいる。
 また、成長目覚ましい世界のダイナミズムを取り込み、我が国経済の成長を加速させるため、国際的なビジネス往来の円滑化につながる合理的な水際措置とすることが重要。世界では、コロナ前とほぼ変わらず活発にビジネスが行われている中、日本だけが取り残されることがないよう、引き続き制度所管省庁とよく連携してまいる。
 加えて、2030年に対日投資の残高を80兆円とする目標達成に向け、先端半導体や洋上風力の製造・研究開発拠点に関する海外からの投資拡大、海外スタートアップの誘致や内外企業の協業支援を強化する。さらに、経済安全保障に留意しながら、外国資本による日本企業の経営参画を円滑に進める方策について検討するとともに、外国企業との協業等に不慣れな企業へのJETROによる伴走支援を進める。
 サプライチェーンの再構築も重要な課題。戦略物資等の供給の脆弱性解消などを目的に、本年3月、私が本部長を務める、「戦略物資エネルギーサプライチェーン対策本部」を立ち上げ、ウクライナ情勢を踏まえた緊急対策を取りまとめた。これを速やかに実行に移すとともに、中長期的な視点からのサプライチェーン分析・対策も推進していく、という御発言でした。
 民間議員です。今回の物価対策は国民生活の支えになる。これをきっかけとして、恒常的に経済の活性化を図る必要がある。20兆円以上あると言われる家計の強制貯蓄の開放が重要であり、その呼び水として国のお金を使うべき。最低限の感染対策やワクチン接種などを進めながら消費の活性化を図ってもらいたい。
 水際対策は、早期に緩和し、外から入ってくる人を増やしていくべき。水際でのチェックは、もう一歩迅速化が図れるのではないか。また、外国人の入国は、ビジネス客がすぐにでも入れるようにするべき。将来の日本との架け橋となる留学生も同様。観光客も段階的に緩和していくべき。
 経常収支の悪化は、海外でも心配されている。その改善のためにも、化石燃料依存からの脱却に向けて、水素や原子力の正しい技術を得ることが重要。そのために、産官でのR&D投資を計画的に考えるべき。
 若い人が内向き志向なのは間違いない。幼少期からオンラインで対外学習を重ねるなど、海外でも活躍できる、意欲的な日本人をつくっていくことが重要ではないかという御発言でした。
 別の民間議員です。鎖国状態の解消や経済社会活動の再開は重要だが、同時に医療体制の整備も大切。さもなくば、感染の波が新たに始まった際に対応できない。
 エネルギー政策について、現下のウクライナ情勢により、脱炭素の動きが逆戻りしかねない情勢となっている。しかし、政府の努力によって脱炭素技術の強化を進めこのような逆戻りを起こさないためのロードマップが必要。
 経常収支について、現在、所得収支の黒字が大半であるが、これは悪いことではなく、日本人が海外に保有する資産を育て還流させる視点というのが重要。他方、貿易赤字が望ましいわけでもなく、輸出を伸ばしていく必要があり、特に脱炭素技術を競争力の源泉としていくべき。
 こうした観点から、サステナブルファイナンス市場を拡大することが重要。市場整備には政府の支援が必要であり、排出権取引市場の整備が不十分。二国間取引が主流になってしまえば、日本市場はガラパゴス化してしまう。中国はサステナブルファイナンス市場のアジアマネーを積極的に取りにきており日本も負けないように努力していくべきではないかという御指摘でした。
 別の民間議員です。日本の若者が海外への関心を失っているという発言があったが、海外の人たちも日本への関心を失いつつあり、それはもったいない。これを払拭するために、実体的な取組と広報宣伝活動の双方に取り組む必要がある。実体的な取組とは、水際対策をできるだけ緩和し、人が交流できるようにすること。観光客が入ってくるなら国内に相当の経済効果をもたらす。段階的であっても、できるだけ早期に緩和が実現することがプラスとなる。また、対外直接投資やサプライチェーン構築についても、これらはオンラインだけではなくて、人と人との交流があり、信頼関係があって進んでいくもの。そういう意味でも、海外から人が入ってこられるようにすることが大事。
 輸出競争力について。現在のような状況だからこそ、各地域業の企業に輸出を増やす大きなチャンスがある。特に農林水産業、食品産業については、マーケットを何倍、何十倍に広げられる可能性がある。こうした取組に対する支援が重要ではないかという御指摘でした。
 次に、「人への投資、官民連携による無形・有形資本の価値向上」について、民間議員から資料2の説明があり、各議員から御発言がありました。
 主な御意見を紹介いたします。
 まず、末松文科大臣です。資料3に基づき、成長と分配の好循環の実現のため、未来を支える人への投資や科学技術・イノベーションの充実について説明する。
 未来の成長を牽引する大学、高専等の機能強化を図るため、複数年度にわたり大学等が予見可能性を持ってデジタル等の成長分野への再編に取り組めるよう支援する。また、「出世払い」を含め、教育費等への支援の充実に取り組むとともに、成長分野のニーズに応じた学び直しを、産学官の対話等を通じて促進する。誰一人取り残さず、個々の可能性を最大限に引き出す学びを実現する。GIGAスクール構想の推進など、DXを活用した「リアル」と「デジタル」の最適な組み合わせによる教育機会の保障、地域や企業を巻き込んだ学校運営や「リアルな体験」機会の充実、教職員定数の改善や学校における働き方改革などを進める。
 科学技術・イノベーションは成長のエンジン。起業家教育の充実、大学発スタートアップ創出環境の整備、若手研究者が研究に専念し、世界で活躍できる研究環境の実現に向けた支援を強化する。イノベーション創出の拠点として、国際卓越研究大学制度の構築や地域の中核大学等の強化を図るとともに、先端科学技術の研究開発等を推進する。
 併せて、スポーツ基本計画の着実な推進、スタジアム・アリーナ改革の成果を踏まえたコンセッションの導入の促進、グローバル展開、アート市場活性化等を盛り込んだ文化芸術推進基本計画策定を進めるといった御発言でした。
 斉藤国交大臣です。国民の命と暮らしを守るために、5か年加速化対策も活用し、防災・減災対策に取り組むとともに、その後も継続的・安定的に災害に屈しない国土づくりを進めます。
 これは資料4に関する御説明です。インフラ老朽化対策についても、予防保全型インフラメンテナンスへの本格転換や集約・再編をしっかり進める。港湾について、デジタル技術も活用しながら、国際戦略港湾の整備によるハブ機能の強化を進めるとともに、カーボンニュートラルポートの形成などを進める。また、港湾以外の道路・鉄道・空港などの整備もしっかり進める。幅広い分野を所管する国土交通省の総力を挙げて、2050年カーボンニュートラルの実現に向けた取組も進める。インフラ整備における新技術の活用に向け、建設機械施工の自動化・自律化や、データプラットフォームの構築など、官民一体となり必要な規制の見直しも行いながら取り組む。
 防災・減災対策についても、デジタル技術を活用し、高度化する。地域交通を持続可能なものとする「リ・デザイン」や物流DXを進める。
 コロナ禍で、都会から地方への人の流れの萌芽が見えた。この機を逃すことなく、サテライトオフィスやテレワーク拠点の形成、空き家等の活用等により地方への人の流れを発展させ、地方都市を活性化させる。
 近年、自然災害が激甚化・頻発化している。例えば水害の被害額について、令和元年には統計開始史上最高となる2.2兆円を記録した。また、港湾や道路を始めとしたインフラの水準については、アジアでも他国に先行を許している状況。
 こうした中、本日説明した取組は、国民の安全・安心や経済成長、地域社会の基盤となるものであり、戦略的・計画的に進めていくためには、安定的・持続的な公共投資が必要不可欠。加えて、今回の総合緊急対策を踏まえ、適切な価格転嫁を進めていく中で、今後も必要な事業量が確保されることがますます重要となると考えている。また、公共事業の前倒し執行も着実に進めていくといった御指摘でした。
 牧島大臣です。資料5についてです。人的資本の強化、イノベーションの促進は、我が国の持続的経済成長に必要不可欠です。デジタル・規制改革・行政改革を担当する大臣として、全力で取り組んでいく。
 民間の創意工夫を活用するコンセッションを含めたPPP/PFIについて、新しい資本主義の中核となる「新たな官民連携」の取組として一層推進する。現行の事業規模目標21兆円は、3年前倒しで達成した。来月にも新たな「アクションプラン」を策定し、次の10年間の目標を定める。あわせて、当初5年間を「重点実行期間」として、PFI推進機構の機能も活用しながら、取組を抜本的に強化していく。その際、例えば、水道や下水道等の先行事例の横展開を強化するとともに、スタジアム・アリーナや文化芸術施設など、今後の普及が期待されるフロンティア拡大を強力に進める。
 また、デジタル田園都市国家構想の推進力として活用し、公園、公民館などの身近な施設をはじめ、新たな活用モデルの形成を進める。さらに、優先的検討規程、民間提案制度等の導入、実効性のある形での活用を進めていく。
 新しい目標達成にはスタートダッシュが重要であり、重点実行期間において、関係省庁の連携の下、関連施策を集中的に投入し、強力に推進していくという御指摘でした。
 萩生田経産大臣です。経済産業省としては昨年末から「未来人材会議」を開催して、人材に係る幅広い課題に関する検討を行い、先週22日に「未来人材ビジョン」を取りまとめた。
 このビジョンでは、「好きなことに夢中になれる教育への転換」に向けて、教育課程編成の一層の弾力化や多様な人材・社会人が学校教育に参画できる仕組みを整備すべき。公教育の外で才能育成・異能発掘を行うとする民間プログラムの全国ネットワークを創設すべき。企業の研修教材や大学講義資料等は、デジタルプラットフォーム上で開放を進め、誰でもアクセスできる形で体系化していくべきなどの提言をお示ししている。
 こうした取組は、教育機関だけに押し付けてはならない。人的資本投資を積極的にすべき産業界も教育に主体的に参画し、現場と二人三脚で取り組んでいく必要があり、経済産業省としても変革を主導していく。
 また、量子技術・AI等の重要技術については、実装段階まで視野に入れた「勝ち筋」を見定め、海外企業等とも連携を進めながら、いち早く社会実装を進めていくことが重要。大胆な研究開発支援を通じて民間投資を喚起し、社会実装に至るところまでを官民連携で取り組んでいく。
 PPP/PFIに関しては、地域のフィットネスクラブ、学習塾、習い事の教室などのサービス事業者から、学校施設の官民連携を活用できないかとの声を頂いている。学校施設が起業支援施設なども入る複合的な地域中核施設として生まれ変わる可能性について、関係省と協力して検討していくというお話でした。
 鈴木財務大臣です。成長の基盤となる教育・科学技術の重要性は全く同感である。ただし、現状、政府が経常的な支出のための財源を税収で賄うことができておらず、既に多額の借金に依存している状況にあることも踏まえれば、経常的な支出の見直しなども含め、財源確保も念頭に置きながら施策を検討していくことが重要。
 例えば、教育・科学技術について民間議員の提案にあるような、補助金のメリハリ付けの強化といった財政面での工夫に加え、大学設置基準の規制緩和など、効率的・効果的な政策ツールを組み合わせていくべきという御指摘でした。
 一人目の民間議員です。企業の間でも人への投資は重要になっている。人への投資を見る価値観が変わってきているが、企業のバランスシート上は人への投資は人件費として扱われる。岸田政権は人への投資を掲げており、そのまま改革を継続してほしい。
 加えて、3点述べる。平等は平等でも、結果平等ではなく機会平等が重要。格差是正の努力が結果不平等によっており、高い能力がある人の意欲を損なわせてしまっているのではないか。働きに合った報酬が競争力の源泉であり、稼ぐ力を弱体化させないよう機会平等の視点が重要。
 2点目です。教育改革のKPIについて、学校の先生の待遇よりも教育が学生の役に立っているか、学校教育が競争力につながるかが重要。また、大学ファンドについてもただ資金を渡すのではなく、正しい競争の結果資金配分がなされるべき。
 3点目、PPP/PFIの充実について。田舎の使われない綺麗な道路が必要なわけではなく、本当に必要な活用対象を精査し、民間の力を活用しつつ実行してほしい、ということでした。
 別の民間議員です。博士という意味のPhDをもっと作り、ポスドクをより積極的に活用すべき。ノーベル賞を獲った日本人は、研究の最後はアメリカに行っている。日本にいたままで、それだけの研究ができるのか。人材育成を急ぐには、まずはアメリカで研究してもらうことも重要。そのために、スカラーシップを用意して、数年後に日本に戻るなら給付するといった仕組みもあっていい。そして、戻ってきた方々に企業で活躍していただく。また、大学院を運営してもらうことで研究環境を整えていくということではないか。
 あと沖縄科学技術大学院大学(OIST)には批判もあるが、研究実績を出しているのは事実。このような大学院を作り、特にエネルギー、環境、ライフサイエンス分野で質の高い研究者を増やしていくことが重要。
 さらに、実装のためにはベンチャーキャピタルを作り、官民挙げてリスクマネーの供給を図ることが大事。JICにも多いに期待している、ということでした。
 また、人的投資は投資なのになぜP/L(損益計算書)で扱われて、バランスシートに載らないのか。日本から新たな会計ルールを生み出してはどうか。人の投資はバランスシートで表すことを考えていくべきではないかという御指摘でした。
 別の民間議員です。2点述べる。まず科学技術の振興について議論が進んでおり、AI、環境、バイオ等が重要分野として挙げられているが、これに加えて、若手の創発・若手の活用という視点が重要。
 2点目は初等中等教育について、科学技術の基礎はあくまで初等中等教育であり、若者が内向き志向とならないよう海外留学を促進していくべき。また、STEM/STEAM教育といった理数系教育も含む総合的な教育が重要。論理的思考力、批判的思考力をベースとする総合知、すなわちリベラルアーツが重要。この観点で、高校や大学入試の段階で文系・理系を区別することには意味がないのではないか。また、アーツそのもの、すなわち文化、芸術、エンターテイメントへの投資も重要。芸術は費用ではなく資産であり、国力を高めるためにもしっかりと投資を行うべきという御指摘でした。
 最後に、総理から御発言がございましたが、お聞きになったとおりです。






(以上)