第3回記者会見要旨:令和4年 会議結果

山際内閣府特命担当大臣記者会見要旨

  • 日時:令和4年3月23日(水)18:29~18:56
  • 場所:中央合同庁舎第8号館1階S108会見室

1.発言要旨

 先ほどの経済財政諮問会議の概要について御報告をいたします。
 本日は、「マクロ経済運営、脱炭素社会に向けて」、「経済・財政一体改革の重点課題」について議論を行いました。
 「マクロ経済運営、脱炭素社会に向けて」については、主に次のような意見がありました。ウクライナ情勢により、マクロ経済に関する潜在的な変動要因が増えてきている。大きなマクロ経済ショックが生じた場合には、マクロ経済環境の安定化に資する政策対応を行うとともに、より本質的にはショックに強い経済をつくることが大事。そのためには総需要コントロールだけではなく、経済のキャパシティを高める政策、特に可処分所得と国内投資の同時拡大を目指すことが重要。
 労働市場のダイナミズムを活かして、賃金・所得を拡大する。また、脱炭素をはじめ、社会課題の解決に向けた国内投資を官と民で協力して進める政策運営を行うべき。
 「経済・財政一体改革の重点課題」については、主に次のようなご意見がありました。経済・財政一体改革は、社会課題の解決など政府が目指すべき経済社会の姿を示し、それを国民と共有した上で進めるべき。
 そのためには多年度にわたる計画的な投資を含めた官民のロードマップを策定し、民間の予見可能性を高めることで官民の投資を継続的に喚起すべき。
 経済、財政、社会保障を一体として議論し、65歳以上人口比率がピークを迎える2040年頃を見据えた給付と負担の議論を始めていくべき。
 総理からの締めくくり発言については、お聞きいただいたとおりです。詳細については後ほど事務方からご説明をさせていただきます。






2.質疑応答

(問)本日総理との面談の後に公明党の山口代表が記者団に対して、「経済対策についてしっかり臨んでいく必要がある」と総理がおっしゃったという旨の発言をされました。山際大臣としては経済対策の必要性や規模感について、どのようにお考えでしょうか。


(答)まだ、総理から経済対策についてのお話は頂いておりませんので、現段階において私の立場で何か新たなことをご提案したり述べたりというような状況にはないと思います。



(問)本日の諮問会議でも特に総理から経済対策に関する話や言及はなかったということですか。


(答)今、冒頭に申し上げた範囲で議論が行われましたので、新たな経済対策の議論はありませんでした。



(問)先ほど院内で、ゼレンスキーウクライナ大統領の演説がありましたが、大臣というよりはむしろ一人の政治家として、聞かれた中身に対しての感想や受け止めをお願いできればと思います。


(答)一人の政治家ではありますが大臣という立場でもありますので、そこは注意してお話をしなくてはいけないかと思いますが、あくまで一人の政治家としてお答えするならば、もちろん政治を行っていくというのは何のためにやっているんだと。それはそれぞれの国の国家、国民のために働く、そういう志を持って政治は行っているわけです。それがひいては国際社会の平和を作り、そして国際社会の秩序を維持していくという機能を果たすことになるのだと思います。
 そういう意味で、ゼレンスキー大統領が今、その責任を果たしていらっしゃるという姿、これを私としてもしっかりと見させていただきましたし、また日本としてやれることをしっかりやっていかなくてはいけないという思いを持ちました。



(問)人への投資に関連した質問ですが、自民党の茂木幹事長が20日の講演会の中で、人への投資の施策パッケージは3年間で4,000億円規模ということですが、これを5年間で1兆円ぐらいに広げても良いという趣旨の発言をされました。これに対しての山際大臣の受け止めと、このような人材育成の施策を先ほどの経済対策に盛り込まれるかどうか、施策をどのように打ち出していかれるかという、現時点のご見解を伺えますでしょうか。



(答)そのような報道があったことは承知しておりますが、直接茂木さんと話をしたわけではないので、どのような趣旨でどういうお考えをお持ちかを確認しておりませんので、そのことそのものに言及することは少し避けます。避けますが、岸田内閣として人への投資が必要であるということは再三にわたって申し上げているとおりでして、それが3年で4,000億円の施策パッケージという形で、今やらせていただいているわけです。ですから、まずはそれを効果のあるものにしていくことが大事だと思っておりますので、私たちとしては掲げている施策がきちんと行われるようにしていくことが、まず私に課された責務だと思って取り組みます。
 その上で、更に足らざる部分がある、あるいは更にやった方が良い施策等があるのであれば、それは当然柔軟に、趣旨として人に投資をすることが、すなわち未来の日本の社会や経済にプラスになっていくのだと、そのことを信じてやっているわけですが、そこに効果があるものであれば柔軟に施策は考えても良いのではないかと思います。








3.林内閣府政策統括官(経済財政運営担当)による追加説明

 令和4年第3回経済財政諮問会議について、概要を報告いたします。
 今回は、先ほど山際大臣から御紹介がありましたように、二つの議題について議論を行いました。まず、「マクロ経済運営、脱炭素社会に向けて」について、民間議員から資料1と2の説明があり、各議員より御発言がありました。
 主な御意見を紹介いたします。
 細田経産副大臣です。今回のロシアによるウクライナ侵略は、エネルギー安定供給の体制の構築の重要性を再確認する重要な契機となった。また、先週の福島県沖の地震に端を発し、昨日から電力需給が極めて厳しい状況であったが、本日11時に需給ひっ迫警報が解除されるに至った。国民の皆様の節電への御協力に深く御礼を申し上げるとともに、改めて供給力の確保の重要性を痛感している。当省としては、エネルギーの安定供給確保に向けて最大限の努力に取り組む所存。
 様々な状況に対応するため、日本としてはエネルギー源や調達先を多様化し、エネルギー自給率を向上させ、安定供給を確保していく。
 その上で、2050年カーボンニュートラルや2030年46%削減目標の実現といった国際約束の達成に向けた取組も進め、国際社会をリードしていくことが重要。
 特に、カーボンプライシングを最大限活用していくことが重要という点に同意する。カーボンニュートラルの実現は、エネルギー政策・産業政策と一体不可分であり、経済産業省として積極的に取り組んでいく。
 成長に資するという観点からは、まずは自主的かつ市場ベースでのカーボンプライシングを促進していくことが政府方針であり、野心的な炭素削減目標を掲げる企業が自主的に排出量の取引を行うGXリーグの賛同企業の募集を開始している。既に177社の企業に賛同いただいているが、多くの企業が参加する実効性の高い枠組みとするとともに、JCM等の国際的なクレジット取引も視野に、取引所の整備も進めていく。
 なお、指摘いただいている排出権取引制度については、GXリーグによる取組の進捗も踏まえつつ、今後、専門的・技術的な議論を進めていくという御発言でした。
 鈴木財務大臣です。気候変動や格差、人口減少等への対応が急務となる中で、社会的課題の解決に資する金融、サステナブルファイナンスの重要性が高まっている。特に脱炭素社会の実現に向けては、設備投資や技術開発に巨額な資金が必要であり、企業の取組を支える民間金融の機能発揮が欠かせない。
 金融庁では、脱炭素等に向けた本邦企業の取組や技術が適切に評価され、国内外の投資資金が活用されるよう、市場環境の整備などの取組を進めていく。
 具体的には、気候変動を含むサステナビリティに関する開示の充実に向けて金融審議会で議論を行い、この春を目途に報告書の取りまとめを行う。また、本年の年央までを目途に日本取引所グループと連携し、ESG投資情報を集約する情報プラットフォームを整備する。ESG評価機関の評価の透明性・公平性を確保するための行動規範の策定に向けて議論を進める。気候変動対応に関する金融機関向けガイダンスの策定など、金融機関による企業支援の促進を図るといった取組を進め、国内外の資金を成長分野へとつなぐ国際金融センターとして魅力ある市場の構築を目指していく。
 民間議員からです。脱炭素に関して、2030年に46%削減目標まで残された期間は8年。これは国際公約であり、利用可能な技術、Best Available Technologyを総動員するべき。
 2050年カーボンニュートラルを見据え、官民一体でGXが求められている。2030年46%削減目標については、GXについて国内投資に直結し、我が国の成長戦略の根幹。政策をパッケージ化した国家戦略、複数年にわたる投資計画、技術投資について時間軸を付したロードマップが必要になる。とりわけ、エネルギー安全保障の確保は急務。原発について安全性を確保して着実な再稼働、運転期間の60年への延長など既存設備を最大限活用する必要がある。
 2030年エネルギーミックスの実現には27基の再稼働が必要だが、現在は稼働しているのは7基のみ。新・増設、リプレース、SMR等を推進し、将来の核融合につなげていく必要がある。
 2050年のカーボンニュートラルのためには、イノベーションが不可欠。研究開発、実装、ブラッシュアップなどには10年から15年掛かる。今すぐ研究開発の上、着手するべき。
 経済主体の行動変容を促すカーボンプライシングについて、競争環境、国内産業への影響も踏まえ、今すぐ検討するべき。攻めの外交戦略、サステナブルファイナンスなど、多岐にわたる取組も併せて必要になる。残された時間的な猶予はなく、総理のリーダーシップの下、政府全体でGX推進が求められる。
 もう一つの資料のマクロ経済運営については、やるべきことをしっかりやることが重要。次のテーマの2にも出てくるが、GX・DXの推進、人への投資、社会保障改革による適切な給付と負担の実現など、投資と消費を促す中長期の取組を着実に推進するべきだという御指摘でした。
 別の民間議員です。マクロ経済のショックにはきちんと対処が必要だが、しっかりと頑健性のある経済をつくることが一番大事。しっかりと国内の消費や投資を増やすことで国内経済を大きく強くする。そのために、官民連携で物的・人的投資を拡大させる。物的だけではなく、人的投資が大事であり、これにより、国民の安心や消費の拡大につながる。
 エネルギー価格上昇というピンチにある今だからこそ、カーボンニュートラルを宣言した国だからこそ、国内の投資を喚起して、成長のフロンティアを広げていくことが大事。そのためには多年度にわたる計画、ロードマップが重要であり、官民連携が欠かせない。
 グリーンの分野については、外交、国際経済戦略をセットでやらないと回らない。サステナブルファイナンスは金融と一体となって大きく盛り上げていける分野であり、民間議員の提案にあることも実現してもらいたい。また省エネ住宅や蓄電池の設置など、省エネも改めて重要と認識しているという御発言でした。
 別の民間議員です。足下では円安進行やインフレ圧力が高まっている。物価は2%前後まで上がるだろう。諸外国の金融政策が正常化に向かう中、日本は大規模金融緩和を維持している。大幅な円安もあるのではないか。インフレに向かう中で賃金が上がらない、消費活動は減退する。スタグフレーションに陥るリスクがないとは言い切れない。悪いインフレへの対策を事前に準備していく必要があるのではないか。消費の回復のため、家計における貯蓄を消費に回す必要がある。そのきっかけとしてGoToキャンペーンなどが重要。前回のものを改善し、恩恵があらゆる事業者に行き渡るようにするべき。消費は気であり、消費拡大の機運をつくることが重要。
 サービス業は人手不足であり、最低賃金の上昇も含め、賃金を上げる流れをつくっていくべき。全国加重平均1,000円を必ず達成し、更に引き上げていくことが重要。人件費、資材費が高騰する中、事業者に適正な値上げを促すべき。消費活性と適正な価格転嫁により、賃金上昇の好循環をつくっていくべき。
 賃金上昇のためには、労働移動の促進が必要で、そのきっかけは兼業や副業が重要。これらは会社を移る必要がなく、労働者から見てもハードルが低い。加えて、雇用調整助成金特例措置の廃止のタイミングの検討や、失業保険の拡充、リカレント教育なども推進するべき。
 兼業、副業の民間マッチング市場は既にできているので、一層活用するとともに、新たな分野、ニューフロンティアとしてグリーン、ヘルス、健康、長寿が重要。
 また、賃金上昇には可処分所得の向上が重要であり、社会保障改革も進め、国民の理解を得て消費の活性化、賃金上昇のサイクルづくりというのが重要だというお話でした。
 以上が最初のセッションに関する議論でございます。
 次に、二つ目のセッション、「経済・財政一体改革の重点課題」について、民間議員から資料3の説明があり、各議員より御発言がありました。
 金子総務大臣です。現在、地方は新型コロナへの対応に加え、人口減少や少子高齢化、雇用や生活への不安、激甚化する自然災害など、様々な課題に直面している。地方自治体においては、このような課題にしっかりと取り組みつつ、行政サービス提供の持続可能性を確保していくことが求められている。
 総務省としては、まず、「デジタルを活用した地方の活性化」について、岸田内閣の最重要政策の一つである「デジタル田園都市国家構想」の実現に向けた取組を進めており、令和4年度の地方財政計画において、地域デジタル社会推進費を2,000億円計上するとともに、5Gや光ファイバーなどのデジタル基盤の整備や、地域課題を解決するためのローカル5Gなどのデジタル実装といった取組を推進している。
 また、「グリーン化の推進」については、地方自治体が脱炭素化の取組を計画的に実施できるよう、令和4年度より公共施設等適正管理推進事業費の対象事業に、新たに脱炭素化事業を追加するなど、取組を進めることとしている。
 更に、「広域連携」については、地方自治体が持続可能な形で行政サービスを提供するため、多様な広域連携の推進と、地方自治体間の連携の進化に取り組んでいる。
 これらの取組を始め、総務省としては、引き続き地方行政のデジタル化やグリーン化の推進などに必要な施策を講じるとともに、地方の安定的な財政運営に必要となる財源の確保に取り組んでいくという御発言でした。
 鈴木財務大臣です。経済・財政一体改革については、財政健全化の旗を掲げつつ、多年度のロードマップである「改革工程表」に基づき、着実に結果を出していくことが重要。国家的な課題については、中長期の視点から適切に予算編成を行っていくことが重要。このため、令和3年度補正予算では、事業の性質も踏まえつつ、基金やファンドを活用し、複数年度にわたる支援を行っている。また、翌年度以降の事業を約束する国庫債務負担行為も積極的に活用している。
 その上で、多年度の投資等のロードマップについて一言申し上げる。予算は、枠取りの議論から始めるのではなく、官民の役割分担を含め、中身の議論から始めることが大事。
DX等御指摘いただいている分野というのは、大変重要な分野だと考えているが、何年間で何十兆円といった議論から始めるのではなく、まずは何をすれば効果が上がるのか、丁寧に議論していく必要があると考えている。
 更に、御指摘の分野について、当初予算において重点的に措置すべきとの指摘を頂いているが、中期的に政府の支出を増加させる場合には財源とあわせて検討することとなっており、財源を含めた議論をお願いするという御指摘でした。
 民間議員からです。共助について、行政がやっては非効率できめ細かな対応ができない。一方で、民間ではビジネスにならない、こういう領域がある。孤独・孤立、生活困窮者支援、子供の貧困など様々な弱者対策の課題は共助によって対応することが大事。誰一人取り残さない社会を作るべく、共助を岸田内閣が目指す経済社会の中核として位置付けてもらいたい。
 共助の世界であるNPOには優秀な人材が集まっている。それを支援する具体的な提言として、SIB(Social Impact Bond)の活用も非常に重要。
 また、寄附が大きな役割を果たす。企業版ふるさと納税や控除枠の拡大など、政府はこれまでも取組を進めてきているが、ここで更にアクセルを踏んで、寄附が分割して定着するような環境整備をお願いしたい。
 高齢化の中で、土地、家屋などの遺贈寄附が多くなっているが、現在の制度を見直し、こうした寄附がNPOに集まるようにお願いをしたいという話でした。  別の民間議員です。ビジョンと中長期計画が重要。GX、DX、人への投資等の実現の前提には我が国をどうしていきたいかというビジョンが重要。キーワードは新しい資本主義で、経団連の掲げるサステナブルな資本主義と軌を一にするもの。市場経済による自由活発な競争、効率的な資源配分。イノベーションは成長の大前提。
 他方、格差・気候変動・危機管理など、市場原理だけで解決できない問題もあり、官民挙げて取り組む必要がある。格差については分厚い中間層の形成のため持続的な賃金上昇、経済の持続的な成長が重要。そのため、GX・DX、人への投資、個人消費の拡大も必要。
 適切な給付と負担による持続可能な社会保障制度を構築し、将来不安の解消が不可欠。気候変動について、GXの推進は国内投資であり、経済成長に直結する。新しいパンデミック、エネルギー安保などの備えも重要。
 短期思考でなく、いつどの分野にどの程度政府が財政支援するか。中長期的計画を示すべき。そのような政府のコミットは企業リスクが大きい革新的技術整備、インフラ整備を推進する上で、企業の予見可能性を高め、民間投資の火付け役となるために重要と考えるといった御発言でした。
 別の民間議員です。日本の競争力を高めるための投資について、今回の民間議員の提案の要旨は成長を確実に実現する。そのためには、人・デジタル・グリーンが重要。こうした分野に対してメリハリを持って投資をしていくことが大事である。
 中には、多年度のコミットが必要になるものあるだろう。その一方で、財務大臣の発言のとおり、多年度のロードマップは作れば良いというものではない。何年何兆円といった枠から議論するものではなく、また財源の議論を併せて行うことも大事。
 日本の信用を落としてはいけない。成長と財政健全化の二兎を追っていくということを掲げ、日本国債、日本の信用を失わないようにしていくことが大事だといった御発言でした。
 最後に、総理から御発言がございましたがお聞きになったとおりでます。






(以上)