第2回記者会見要旨:令和4年 会議結果

山際内閣府特命担当大臣記者会見要旨

  • 日時:令和4年3月3日(木)18:29~18:54
  • 場所:中央合同庁舎第8号館1階S108会見室

1.発言要旨

 経済財政諮問会議の概要についてご報告いたします。
 本日は「マクロ経済運営(金融政策、物価等に関する集中審議)」と「所得向上と人的資本の強化」について議論を行いました。
 「マクロ経済運営」については、主に次のような意見がございました。世界の流れから取り残されないよう危機感を持つべき。経済を回し、守りから攻めへ経済のダイナミズムを回復するべき。エネルギー価格上昇について、今こそ脱化石燃料、脱炭素社会に向けた取組を加速し、ピンチをチャンスに変えていくべき。そのための大胆な官民連携の投資計画を策定して実行すべき。コロナ対策についても、より的を絞った対応を行うことで経済を回し、労働移動の回復、世界的な人の往来の回復に取り組むべきといったご意見でした。
 また、「所得向上と人的資本の強化」につきましては、主に次のようなご意見がありました。正規・非正規の処遇格差や男女の賃金格差を是正し、106万円・130万円の壁の是正に取り組むべき。
 年齢階層別の所得・就業構造を念頭に、デジタルを活用して個々人の置かれた状況に応じた支援が可能となる仕組みを構築すべき。孤独、孤立対策、生活困難者支援、子どもの貧困対策にあたっては、官民連携によるきめ細やかなアウトリーチが必要。ソーシャルセクターの育成や企業との連携強化に向けて包括的に政策を取りまとめるべき。
 総理からの締めくくり御発言についてはお聞きいただいたとおりです。詳細については後ほど、事務方から御説明をさせていただきます。
 冒頭は以上です。





2.質疑応答

(問)今、行われた経済財政諮問会議ですが、足下のウクライナ情勢については何か議論されましたでしょうか。


(答)外交的な意味でのウクライナの情勢についての議論はありませんでしたが、ウクライナ情勢を受けて、今、申し上げましたようにエネルギーの価格が相当上がっているということがございますので、それに関して、ガソリン価格の上昇を抑制する激変緩和措置といった緊急避難的な措置と共に、国民の購買意欲を確保する賃金の引上げ、またサプライチェーン全体で負担をシェアする適切な価格転嫁、何より今申し上げましたが、カーボンニュートラルに向けて今こそギアを引き上げることが重要といった議論がなされました。



(問)コロナ関係でお伺いします。
 3月6日で31都道府県に適用されているまん延防止等重点措置が期限を迎えます。18都道府県で延長、13県が解除で調整という報道が既に出ていますが、最新の政府の対応状況をお聞かせください。


(答)3月6日にまん延防止等重点措置の期限を迎える31都道府県につきまして、本日までに延長の要請があったところを申し上げます。北海道、青森、茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉、東京、神奈川、石川、岐阜、静岡、愛知、京都、大阪、兵庫、香川、熊本、この18県が延長の要請がございました。また13県で終了の要請が出ておりますが、福島、新潟、長野、三重、和歌山、岡山、広島、高知、福岡、佐賀、長崎、宮崎、鹿児島の13県です。
 この情報を関係閣僚会議で共有いたしまして、明日、専門家の意見を聞きながら決めていくということになろうと思います。詳しくはこの後、総理が記者会見をされると聞いておりますので、総理からの御発言を聞いていただければと思います。



(問)経済財政諮問会議についてお伺いします。今回、年齢階層別の所得状況を詳細に分析されていると思います。それをした狙いについてと、新しい資本主義でも分配のところでテーマになってくると思いますが、経済財政諮問会議と新しい資本主義実現会議とをどのように役割分担というか、議論を進めていく考えでしょうか。


(答)所得産業別等々のお話が今日出ました。また詳しくは資料を見ていただければと思いますが、その中で1994年と2019年の所得・就業構造についての分析をご説明させていただきました。それにより、全体として高齢者世帯や単身世帯の増加に伴って低所得階級の割合が上昇しているということ。また、働き盛りの世帯の所得が100万円以上減少しているということ。更には、非正規雇用の若年単身世帯の割合が大きく上昇していることなどをお示しいたしました。
 この25年間で我が国の所得・就業構造が大きく変化しており、民間議員からも、一人一人の付加価値、生産性を高めるような人への投資を拡大すること、あるいはワークライフバランスを重視した多様な働き方を支援する働き方改革を推進すること。また、成長の果実を幅広い世帯が享受できる制度上の工夫、これを各世帯の置かれた状況に合わせて実施するなど、所得、人的資本の強化に向けた取組の推進が必要との提言がなされました。詳しくは後ほど事務方から更に説明をさせます。
 そして、経済財政諮問会議と新しい資本主義実現会議のデマケについてご質問がありましたが、経済財政諮問会議というのは、正にマクロ経済と、それから財政の運営というものを担っている機関です。ですから、当然マクロ経済がどうなっているかということや、中長期的に見て、そのバランスがしっかり取れていくかを議論していく場所になります。更には、その進捗もしっかり見ていかなくてはいけませんし、それを実現するための予算の裏付けもここで議論をすることになります。毎年、骨太の方針を示しておりますが、これも経済財政諮問会議で示すということになります。
 そして新しい資本主義の会議体では、これは正にそういったマクロ経済を上向かせていくために、成長と分配の好循環が必要であるという観点から、新しい資本主義をグランドデザインも含めてお示ししていく、そしてその中身をしっかり詰めていくという作業をしなくてはいけません。言ってみれば、岸田内閣の一番やらなくてはいけない、あるいは一番やりたいと思っている政策を議論する場が新しい資本主義実現会議になっており、そこで政策の中身を詰めていくということになります。
 それらを結局、マクロの経済運営という視点から見た時、あるいは中長期的に見た時の財政運営との整合性がどうあるかということは、やはり経済財政諮問会議とある意味コラボをしながら整合性を取っていく必要があるわけでして、その両者でしっかりキャッチボールをしながら、最終的に岸田内閣としてどのような経済運営をしていくかが決まっていくということでして、そういう理解をしていただければと思います。



(問)まん延防止等重点措置の関係で伺います。解除を要請した和歌山県の仁坂知事が、今日の会見で政府に延長を打診したが断られたというような趣旨の発言をされていますが、この事実関係と大臣としての受け止めをお願いします。


(答)まず前提としては、仁坂知事に限りませんが、各県知事も含めた各県の皆様とはいつもコミュニケーションを密に取らせていただいております。どういう発言があって、どうだったかということは私からコメントすることは避けますが、そういうコミュニケーションをしっかり取る中で、お互いに今こういう状況ですということを確認しながら、我々としては総合的に判断しているということですから、知事がどのような発言をされたかということについて、私からあえて何か申し上げるということは差し控えたいと思います。








3.林内閣府政策統括官(経済財政運営担当)による追加説明

 令和4年第2回経済財政諮問会議について、概要を報告いたします。
 今回、先ほど山際大臣から御紹介がありましたように、二つの議題について議論を行いました。
 まず、「マクロ経済運営」について黒田日銀総裁から資料1、事務方から資料2、民間議員から資料3についての説明があり、各議員より御発言がありました。
 主な御意見を御紹介いたします。
 民間議員からですが、コロナ感染者数が増加した状態が続くが、政府の対策が上手くいっていないわけではない。感染そのものは個人の責任でもあることに鑑みれば、国境の閉鎖やまん延防止等重点措置の延長を今後も続けることは如何なものなのか。次の波には万全の備えをしつつ、コロナとの関係が長引くことを覚悟して、そろそろ経済の活動の引上げにウエイトを置く時期に来ていると考える。
 ウクライナの問題を受け、エネルギー価格の高騰、サプライチェーン再構築という課題が台頭している。日本も影響を受けるだろう。ロシアが生産するパラジウムの供給が滞れば、半導体不足の状態が続くと懸念される。また、このまま株価が冴えない状況で3月末を迎えると、邦銀の決算にも影響が及ぶ可能性がある。
 また、ルーブルの価値や信用力が悪化している。元々、信用の低いルーブルと日本の円は違うということではなく、これを他山の石として、通貨価値の維持の重要性を再確認するべき。そのためには、財政再建と経済成長の二兎を追うことが大事。
 欧州では、ウクライナの問題を受け、電源としての原子力が必要だという考え方がかなり出てきている。日本では、震災後、原子力に関する議論を封印してきたが、議論を始める時期が来ているのではないかという御指摘でした。
 別の民間議員です。マクロ経済運営に関して2点申し上げる。1点目はビジョンの重要性、2点目は中長期計画の重要性である。
 1点目についてですが、6月の骨太方針は、岸田内閣になってから初めての骨太方針であり、何よりも重要なのは、新しい資本主義である。賃上げ、コロナ対策などは言うまでもなく重要だが、その前提として、我が国をどのようにしていきたいかを考えることが重要。経団連は、サステナブルな資本主義として格差是正、気候変動、危機管理の問題などに官民挙げて取り組むべきと考えており、これらは新しい資本主義と軌を一にしていると考えている。そのため、次の骨太方針を通じて格差是正、気候変動、危機管理といった課題に正面から取り組むべき。
 2点目は、5年から10年のスパンで中長期の計画を考えるべきであり、毎年、どの分野に財政支援を行っていくかロードマップを示していくべき。今後、公需から民需への移行に関し、民間投資の火付け役になることが重要。その上では、欧米のように複数年度に渡る財政支出は世界の常識ではないか。財源なければ政策もなしという考え方に基づいてやっていかなければ、我が国経済のダイナミズムを削いでしまう。なお、今後カーボンニュートラルやゼロエミッションに取り組んでいくためには、原発の再稼働も欠かせないといった発言でした。
 別の民間議員です。現在は、社会の大きな変動期にある。我々はモードを大きく切り替える必要がある。これまでコロナの危機の中でデジタル化が進んだ。また、ウクライナの問題で今後はGXが進むと思う。何かの問題が起こったときに支援や保護は必要だが、そこに留まっては世界のダイナミズムに取り残されてしまう。
 今回の民間議員の提案にあるとおり、ダイナミズムを回復していくことが大事。雇用維持も重要だが、労働移動を伴ってみんながより良く稼げるように支援していくことが必要。企業側では、成長分野に投資ができるようにしていくことが大事。
 また、短期的には世界がウィズコロナの中で経済活動を再開している中で、我が国も人流を元に戻すことが大事。経済活動を引き上げる中で経済を活性化させ、財政を健全化させ、そして新しい資本主義の大きな方向性が見えてくるといった議論でした。
次に、二つ目の議題、「所得向上と人的資本の強化」について、事務方から資料4、民間議員から資料5の説明があり、各議員から御発言がありました。主な御意見を紹介します。
 野田大臣からですが、最近有事という言葉が常態化している。コロナ、最近はロシア、本日はあえて皆様に日本の静かな有事についてお伝えする。
 昨年、出生数が84.2万人と最少になった。その反面、児童虐待は統計史上最多になった。なぜこういうことが起きているのか議論されてきたが、この国の将来の柱になるであろう子供が真ん中の施策をしてこなかった。綺麗事でなく、国家戦略として今後はしっかりと位置付けていくべき。
 岸田内閣は新しい資本主義に向けて、まずは人への投資を最重要の課題として位置付けて取り組む。その中核は、これまでは大人が中心だったところを、今後は子供たちへの投資を明確にしていく。NPO等による支援も含め、子供への投資は、消費や中長期の生産性拡大や我が国の魅力向上の効果も考えられる。子供を第一に考え、子供政策を社会の真ん中に据える「こどもまんなか」社会実現に向け、司令塔となるこども家庭庁創設を目指す。先月の総理指示を受け、「発足を待たずに、中身をしっかりとやれ」という積極的な御指示をいただいた。このため、役所創設を待たずに新年度から政策をしっかり充実する。
 子育てを担う大人だけでなく、子供自身への政策をしっかりと国家戦略として位置付けて、これまでとは違う子供と家庭をしっかりと支える、思い切った子供政策の充実を目指していきたいという御指摘でした。
 萩生田大臣です。企業が価格転嫁できる環境の整備も重要であり、「転嫁円滑化政策パッケージ」を着実に実行するほか、昨年9月に続き、今月を「価格交渉促進月間」に位置付け、一層取組を強化する。同時に賃上げ税制の抜本強化に加え、賃上げ原資を確保するための生産性向上への支援に取り組む。
 物価上昇の中でも、成長と分配の好循環を実現していくための強力な後押しが必要。グリーン、デジタルなどの重要課題の解決のため、政府と企業が共に前に出て投資を拡大するとともに、中小企業の事業再構築を大胆に後押しする。106万円の壁や130万円の壁については働きたい人が働ける環境を整えるため、働き方に中立的な社会保障の整備を進めていく必要がある。
 また、人への投資は成長と分配の両面で重要であり、人材を資本として捉え、その価値を最大限に引き出す人的資本経営の推進に取り組む。
 さらに経済産業省では、日本型雇用システムから教育制度に至るまで議論を重ねており、4月頃を目途に「未来人材ビジョン」として、その成果を示したい。
 最後にウクライナへの侵略などによる燃料油の急激な価格高騰から、国民生活や日本経済を守るため、足下では激変緩和事業による支援の深掘りを含め、関係省庁と連携して追加的な措置を速やかに講じていく。国会ではCOP26違反と御批判あるが、国民生活・経済を守るためであり、政策を変えるわけではないと堂々とやっていっていく。
 一方、IEAに出席した際、世界はこれまでと風向きが違うことを感じている。LNGが今後取り合いになる中で国民の生活を守っていけるよう、エネルギー基本計画に沿ってしっかり取り組んでいくといった御発言でした。
 民間議員からです。人への投資が重要。女性、生活困窮者、年齢階層別のきめ細かな対応が求められる。これを進めるためには、前提としてどういう社会を作るかを示すビジョンが必要。分厚い中間層の形成というビジョンを掲げるべきではないか。そのためには、賃上げが重要。企業収益を働き手に還元するのは、企業の責務であり、サステナブルな成長には欠かせない。
 また、DX・GXの進展による産業構造の転換、成長分野への円滑な労働移動、そのためのリカレント教育やリスキリング、雇用のセーフティネットも必要。
 さらに、個人消費の拡大も必要。そのための税制の見直しや、適切な給付と負担による社会保障制度の構築によって、将来不安を取り除いていくことが大事だという御発言でした。
 別の民間議員です。階層別に必要な対策を講じるべき。成長分野への労働の移動が重要だが、新しい成長分野をいかに作り出していくかが重要。そのためにも、新しいフロンティアを積極的に作っていく。
 日本社会では、健康について取り組んでいくことが重要で、日本が強い分野でもある。健康な社会を作っていくには、AI・IoT・DX、また量子コンピュータ・ゲノムなど、色々な分野が重要だが、これら全てができる必要はなく、いずれの分野に関心を持てば良いかを考える際にDXを活用できる。
 このようにDXを活用すれば、社会課題も解決できるが、こうした社会課題を解決するビジョンを示すには、前提としてアニマルスピリッツが大事。イノベーションの源泉は、アニマルスピリッツであるというお話でした。
 別の民間議員です。力強い成長のためには、賃金の上昇と成長分野への配分が不可欠。賃金について、ある年に数%上がるというのではなく、例えば5%ずつ毎年上がるようになれば、将来の見通しが立つようになるのではないか。
 人的投資については、子供に投資するという野田大臣の意見に賛成であると。子供にフォーカスを当てることがこれまでになかったと思う。どんどんやってほしい。
 また、経済産業大臣の御発言のとおり、日本のエネルギーミックスは評価される。このため、サステナブルファイナンスは欧州のものとさせずに、日本もリードしていくことが大事だという御発言でした。
 最後に、総理からの御発言がありましたが、お聞きになったとおりです。






(以上)