第17回記者会見要旨:令和3年 会議結果
山際内閣府特命担当大臣記者会見要旨
- 日時:令和3年12月23日(木)18:48~19:13
- 場所:中央合同庁舎第8号館1階S108会見室
1.発言要旨
経済財政諮問会議の概要について御報告をいたします。
本日は「令和4年度の経済見通し」と「新経済・財政再生計画改革工程表」について議論を行いました。
「政府経済見通し」については、ポイントは既に今朝の閣議後に私の談話を配布しているとおりですが、2021年度については実質成長率は2.6%程度となり、GDPは2021年度中にコロナ前の水準を回復することが見込まれております。
2022年度については、経済対策を迅速かつ着実に実施すること等により、公的支出による下支えの下、民需中心の回復が実現し、実質成長率は3.2%程度となり、GDPは過去最高となることが見込まれております。
民需主導の自律的な成長と、「成長と分配の好循環」の実現に向けて、着実に前進するという経済の姿であり、これをしっかりと実現していくべく、経済対策をスピード感を持って実施していくことをはじめ、今後の経済財政運営に万全を期してまいります。
「改革工程表」については、経済・財政一体改革推進委員会でこれまで御議論いただいたものを本日、経済財政諮問会議として決定をいたしました。
この工程表は、骨太方針等で示した各施策が単に掲げただけで終わらないよう、中期的な観点からその進捗を管理し、成果に結び付けていくための大事なツールです。
今後、この工程表について、エビデンスに基づいてフォローアップすることで、適切かつ効果的な支出を徹底し、しっかりとした成果につなげてまいります。
総理からの締めくくり発言については、お聞きいただいたとおりです。詳細については後ほど事務方から御説明いたします。
そしてもう一つ、オミクロン株への対応のための無料検査の拡充について御報告をいたします。
本日、総理からも既にご発言があったとおりですが、既に感染が確認されている大阪府、京都府、沖縄県等、オミクロン株の封じ込め対策が必要な地域については、不安のある全ての方を対象に無料検査を実施できることといたしました。
具体的には、オミクロン株の感染が確認される状況においては当面、都道府県の感染状況がレベル2相当に達しない場合であっても、特措法第24条第9項等による都道府県知事の要請に基づき、感染拡大傾向時の一般検査事業を実施できることといたしたところです。
先ほど、事務連絡を発出いたしまして、都道府県に通知をしたところです。本事務連絡を受け大阪府からは、明日より府内全域において一般検査を実施することについて、公表があったものと承知しております。
引き続き大阪府、京都府および沖縄県と緊密に連携し、感染拡大防止に努めてまいります。
以上です。
2.質疑応答
(問)経済財政諮問会議についてお聞きします。
今回の経済見通しは、大規模な感染拡大が無い環境下で、経済活動と感染対策の両立がベースとしてあると思うのですが、下振れリスクについてどのように考えていらっしゃるかお聞かせ下さい。
(答)下振れリスクはこれまでも申し上げてきたところですが、一つはコロナ感染症、今はオミクロン株が増えるかもしれないということがありますが、これがどのような形になるかというのは、オミクロン株に限らず、新しい感染症が急に拡大するという可能性はゼロではないと思いますから、それは見ておかなくてはいけないと思っております。
また、半導体の話はこれまでも都度申し上げましたが、半導体不足をはじめとして、サプライチェーンのリスクというものが、下振れリスクとしてはあろうかと思います。
さらにエネルギー価格、資源価格が高騰しておりますから、それに伴って部品の価格等々も上がっているということがありますので、こういった下振れリスクというのはこれまでも注視してまいりましたが、これからも注視してまいらなければならないと思っています。
(問)関連でもう1点、オミクロン株の対応についてお聞きします。先ほど大臣からお話がありましたように、通知を出したということで確認ですが、これはコロナ室の方から通知が出されたということでよろしかったでしょうか。
(答)そのとおりです。
(問)政府経済見通しについて伺います。
7月の年央試算では、GDPをコロナ前の数字に、年内に回復すると見込んでいましたが、今回、年明け以降にずれ込むということになりましたが、この件についての大臣のご所見を伺いたい。特に夏場にコロナ感染の爆発的な拡大を防げずに、ワクチン接種の遅れもあったと思うのですが、それで7月-9月にマイナス成長になった。これが大きく響いたと思いますが、結果的に米欧に比べて、経済回復が遅れてしまっていることについてお願いします。
(答)それはある意味おっしゃるとおりだと思っておりまして。やはり7月、夏にデルタ株が猛威を振るったというのは、大きな下振れ要因になったと我々もそう思っております。
また、加えて今、下振れリスクというところでお答え申しましたように、エネルギー価格の高騰、あるいは半導体不足によるものづくり、製造業の製造量が増えないという問題等々もあって、今回、年内ではなく、年度内に回復するという形にずれ込んだと我々も思っています。
米欧と比べて日本の経済回復が遅れているとの御指摘については、様々な要因があると思うのですが、だからこそ我々としては、今回の経済対策は、スピード感を持って実施していかなくてはいけないと思っています。
そしてその経済対策の中身を見ていただいたら分かりますように、今回、人づくり、人への投資というものに相当力を入れるというメニューになっております。
これは予算だけではなくて、制度も使っていかなくてはいけないということになると思いますが、それがある意味、景気の気は気持ちの気ですから、我々一人一人の気持ちを、経済を上向かせる方向に進められるものにしていかなくてはいけないと思っておりまして、もちろん予算も大事ですが、スピード感を持ってそれをやるということが、そういう機運を醸成していくのに非常に重要なのではないかと思っています。
(問)無料検査拡充について教えてください。対象地域については、大阪府、京都府、沖縄県以外では、具体的にどのような都道府県が無料検査としての対象になるのでしょうか。オミクロン株の市中感染が確認された地域でしょうか。もう1点、追加で、予算は補正で計上された3,200億円を使われると思うのですが、今回オミクロン株が全国で広がる中で、予算が足りなくなるという懸念というのはないでしょうか。
(答)対象地域に関しては、先ほど冒頭の私からの発言の中でもお話をさせていただいたように、既に感染が確認されている大阪府、京都府、沖縄県、この3つの県を今のところ対象にしております。
これはご案内のように、各都道府県の知事への要請によって物事がスタートする仕組みになっております。大阪府はもう既に明日からと表明しておりますが、沖縄県もそのような意向を示していると聞いております。京都府は今日、1名感染者が 出たということですので、京都府知事と今ちょうど連絡調整をしているところです。
当然これからもオミクロン株の感染が確認された都道府県からは、同じような形になっていくだろうと思いますので、そこはタイミングが遅れることなく、政府としては対応してまいりたいと思っております。
その上で3,200億円の補正予算の中での話ですが、当面その3,200億円の中で、しっかり進められるものと承知しておりますが、これも柔軟に対応しなくてはいけない時には、躊躇なく柔軟に対応するような、そういう方向で進めたいと思っています。ありがとうございました。
3.林内閣府政策統括官(経済財政運営担当)による追加説明
令和3年第17回の経済財政諮問会議についてですが、先ほど山際大臣から御紹介がありましたとおり二つの議題で、「経済見通し」についてと「改革工程表」の改定について、それぞれ事務方より説明をした上で、二つの議題についてまとめて各議員から御発言がございました。
最初に、鈴木財務大臣です。「改革工程表」では、社会保障分野をはじめ日本経済・財政が抱える構造的な課題の改革スケジュールが明記されている。今後この工程表に沿って着実に改革を進めることが、経済成長と財政健全化への道筋であり、関係省庁の早急な取組と確実な成果を期待したい。諮問会議においても、関係省庁の取組の進捗をしっかり検証していく必要があるといった御発言でした。
民間議員からです。「経済見通し」について、民間の見通しと違う点として、公需に頼るのではなく、民需が伸びていくという姿になっている。この見通しのとおりに民需が増えていくことが大事。
消費については、賃金が増えるとともに、将来の安心感を得ることが重要。また、民間の投資を増やしていく必要がある。「改革工程表」に示された施策を進めることで投資を増やしていくことが求められる。ここに示された施策は、企業に新しいチャンスを与えて成長のチャンスをつくるもの。
また、賃金が増えるということについては、新しい雇用が満たされることが重要。新しい雇用が生まれることは、希望が生まれ、明るさが芽生える。今はまず、数として人を雇用していくということが中心で、新しいビジネスを創り出して雇用をどう創り出していくかという観点も重要ではないか。例えば新規雇用創出の目標を設定するということも一案。そのためにも新規参入企業が出てくる必要がある。既存の企業も新しいビジネスを進められるような必要な制度改革、規制改革が行われる必要があるのではないか。
民間活力を引き出すだけでなく、賢い支出によって行政側の非効率性を排し、効率的な政府サービスの高度化を図ることも重要。企業は効率化の観点から自然に進められる側面があるが、行政にはそういうメカニズムが働かないので、そのための実効性を確保してほしいといった御発言でした。
別の民間議員からです。今後の経済運営について3点ということです。1点目、国内投資について、これまで消費や投資が上向かないというのは残念。今後はGXやDXを進めて、研究開発や社会インフラへの投資など国内で投資を推進することが重要。民間企業も投資を積極的に行っていくので、政府もハイリスクな民間投資の火付け役として、研究開発投資やインフラ投資をお願いしたい。同時に、企業が安心して投資できる予見可能性を高めるために、複数年の財政措置をお願いしたい。
2点目として、賃金引上げを個人消費の喚起に結び付けるため、サステナブルな社会保障制度に向けた見直しが重要。適切な負担・給付の実現のため、年齢を問わず負担能力のある人の負担や、本当に必要な人への給付を目指すべきである。そのため、マイナンバー制度の活用が必須。給付の前提となる経済力の正確な把握、給付との連携、そのための基盤整備を速やかに実現するべき。
3点目として、中長期の成長戦略の予算措置と補正予算の位置付けについて。今回の緊急経済対策の内容は、特に成長戦略の関連だと思うが、緊急・短期的なものか、中長期的な課題のためのものなのか、曖昧な印象がある。成長のための予算が補正予算頼みになってしまっており、中長期的に地に足の付いた成長戦略の具体化が困難になっているのではないか。
カーボンニュートラル、ハイリスクな設備投資、社会インフラ投資などについて、ロードマップを作成し計画的に推進するべきである。
当初予算における財政規律を維持しつつ、補正予算でない形で成長戦略を具体化する予算の在り方を検討していくべきではないかというような御指摘でございました。
別の民間議員です。12月15日の新聞記事に、経済財政諮問会議で伝えてきたことと非常に似ている記事があった。
そこには、ケインズ経済学において、公的投資は経済の活力を削ぐ。活力を生むのはやはりアニマルスピリッツ。不況でないときの財政拡大は潜在成長率を高めるものではない。経済成長をもたらすアニマルスピリッツによって民間がチャレンジすることが必要だが、これがこの30年間で失われてきたのではないかといった記載があった。
本日の資料2、一番最後の図表8を見ると、製造業の経常利益や企業の現預金がコロナ前を上回るという状況となっていて、投資に回っていないということが分かる。これでは潜在成長率が上がらない。不況でないときに公的支出を繰り返せば、民間のアニマルスピリッツが失われると考えている。
あわせて、その前の図表4で、財政中心ではなく、民間投資を中心とした潜在成長を高めることを目指すべき。2018年の民需の割合も、2013年と比べて民需と公需の割合は変わっていない。これは公需が民需を引き上げていないということを示している。
また、回復をする機会を一気呵成に、構造的に民需主導になるように変えていく必要がある。そのために三つのことを言いたい。
感染対策の強化とともに、健康予防対策を行うこと、いわゆるヘルス・レジリエンスを上げる必要がある。パンデミックが来ても予防対策ができていれば、経済活動ができると考える。特に、生活習慣病、基礎疾患を持つ方が重症化すること、コロナのときに重症化するということが分かったことを受けて、食事など健康予防に強く意識を持ち、政策をつくっていく必要がある。
これにはデジタルトランスフォーメーション、デジタル技術も使いながら、雇用と投資も更に増えるような共助の力も得て、総合的に進めていくことができると考えている。
加えて、サステナビリティの観点も重要。思い切った社会規制も進めながら、民間資金がこうした分野に入れるような設計が重要ではないか。リアリティーのある2030年のエネルギー政策を示すことやアジアのエネルギー政策にマッチしたルールメイキング、タクソノミーのリーダーシップを日本が取っていくべきではないかというお話でした。
また、人材の流動化も重要。そのためには、副業を強力に進めるべき。リモートワークなどが普及したことを受けて、進められると考える。企業もスキルの利用やインターンシップの一部として考え、積極的に活用することができる。副業は実質的に人材の流動化につながっていくことから、こうした動きを進めるためにも、経済・財政一体改革はしっかりと進め、フォローをしていくことが重要だという御指摘でした。
別の民間議員です。改革工程表で優先順位が明らかになってよかった。今後も目標と現状にずれがないか不断に見直し、KPIを精緻なものにしていく必要がある。
経済見通しについては、数字に違和感はなかったが2点申し上げたいということで、1点目は、内需依存度が増加する。これを達成するには、官民連携が重要。あと見通しでは、外部要因が一部しか含まれていない。海外も各種選挙を迎えるため、財政出動がなされる見込みではないか。国内の金融市場、株価、為替に影響することを前提にするべきだという御指摘でした。
今後の成長戦略について、サプライズと具体性の二つが重要。サプライズとは、金融市場に日本はトーンが変わった、成長するのだと確信させることである。例えば、バイデン政権は、最低賃金を15ドルまで引き上げるということを政権発足当初以来言っていて、いまだに全て達成できていないが、追随する企業も多くて、ダイナミックな動きを生み出した。実現可能性を気にしつつも、大きなサプライズを考えていくべきではないか。
具体性とは、サプライズだけではなくて、成長戦略をどう実行するか、具体的に示すこと。総理の記者会見での質疑応答でもあったが、市場機能に任せるのではなく、外部不経済を克服することや無形資産の投資が必要だということになっていく。アジアの資金をそういったところで集めてくることが成長につながるのではないかという御指摘でした。
デジタル化について言葉だけでなく、スマホ・パソコンで手続が全てできることを目指すべき。岸田政権のうちにマイナンバーの取得率を100%にして、進捗を可視化できれば達成度も分かりやすくなるのではないか。
「骨太方針2022」に、日本はこれまでと違う、大きく前進するという確信、期待を成長戦略として盛り込んでいきたい。
補正予算の位置付けについては、先ほど別の民間議員から御議論がありましたが、その意見に同意をするというお話でした。
最後に総理から御発言がありましたが、お聞きになったとおりです。
(以上)