第15回記者会見要旨:令和3年 会議結果

山際内閣府特命担当大臣記者会見要旨

  • 日時:令和3年11月25日(木)18:05~18:34
  • 場所:中央合同庁舎第8号館1階S108会見室

1.発言要旨

 今日は3点ございます。
 経済財政諮問会議につきましてご報告します。本日は「経済・財政一体改革の重点課題(社会保障)」と、「中期的な経済財政運営の改善」について議論を行いました。
 「経済・財政一体改革(社会保障)」につきましては、主に次のような意見がございました。可処分所得の拡大のためにも、社会保障改革によって保険料等の伸びをできるだけ抑制し、国民負担を軽減すべき。同時に診療報酬改定を通じて、オンライン診療の対象期間拡大や1入院当たりの包括払いの導入など、効率的な医療提供に取り組むべき。コロナの経験や出生数の更なる減少など、環境の変化を踏まえ、改めて経済と社会保障の給付と負担の将来展望を示すべき。医療や介護におけるデジタル化やデータの活用等を進めることで、需要に見合う生産性の向上を実現すべき。データヘルスを始めとした重症化予防・健康分野に民間の力をもっと活用し、新しい市場の創出につなげていくべき。
 「中期的な経済財政運営の改善」につきましては、主に次のような意見がありました。経済財政の中長期試算や改革工程表など、複数年度の経済財政運営の枠組みを強化し、将来にわたる政策の予見性や透明性を高め、予算単年度主義の弊害是正につなげるべき。基金については、事業の進捗状況を透明化し、説明責任を強化すべき。
 総理からの締めくくり発言については、お聞きいただいたとおりでございます。詳細については後ほど、事務方から説明をさせていただきます。
 もう1点、経済対策の実施にあたっては、11月19日の臨時閣議において、総理より、現場の声や地方自治体の意見を直接聞き、執行に当たっての課題やニーズをきめ細かく把握することで、執行の改善に反映してほしい旨のご指示がございました。
 これを受けまして、本日、栗生副長官を議長とした「経済対策の地方自治体の執行体制に関する関係府省庁連絡会議」を設置し、第1回目を開催いたしました。本会議を利活用し、政府を挙げて経済対策の円滑な実施に取り組んでまいりたいと存じます。
 最後に、「月例経済報告等に関する関係閣僚会議」の概要を報告いたします。今月は、「景気は、新型コロナウイルス感染症の影響による厳しい状況が徐々に緩和されつつあるものの、引き続き持ち直しの動きに弱さがみられる。」とし、先月の判断から表現を変更しておりますが、景気の評価としては判断を維持しております。これは経済社会活動の段階的引上げに伴い、消費等を取り巻く厳しい状況が徐々に緩和される一方、自動車の生産調整の影響等から、輸出や生産の持ち直しに足踏みがみられることを踏まえたものです。
 先行きについては、経済社会活動が正常化に向かう中で、各種政策の効果や海外経済の改善もあって、景気が持ち直していくことが期待されます。ただし、供給面での制約や原材料価格の動向による下振れリスクに十分注意する必要があります。また、感染症による内外経済への影響や金融資本市場の変動等の影響を注視する必要がある、としております。
 この他、本日の会議の詳細については後ほど事務方からご説明をいたします。私からは以上です。






2.質疑応答

(問)月例経済報告に関してお伺いします。今、大臣の冒頭の発言の中にもあったところで、若干重複するところもありますが、まず足下の感染者数の減少で消費は上方修正したと思いますが、基調判断を据え置いた理由について改めてお願いします。


(答)繰り返しになりますが、自動車の減産、あるいはアジア向けの輸出の一服感などによりまして、輸出や生産については持ち直しに足踏みがみられることから下方修正としました。他方、緊急事態宣言の解除など経済社会活動の段階的引上げに伴いまして、感染症による厳しい状況が徐々に緩和される中で、個人消費につきましては、例えば外食や旅行など持ち直しの動きがみられるため、上方修正としました。
 これらを総合的に踏まえて、景気の現状評価としては、前月から基調判断を維持したということでございます。



(問)先ほどの大臣の発言にも含まれている部分ですが、供給面での制約や原材料価格の動向による下振れリスクには十分注意とありますが、政府として原油高も含めたリスクに対してはどのように対応していくお考えでしょうか。


(答)繰り返しになりますが、半導体不足等の、供給面での制約、あるいは原油価格等の原材料価格の動向、これらの下振れリスクには十分注意する必要がある。具体的には、半導体に関して、今回の経済対策の中においても、生産拠点を国内立地するための基金の造成を行い、これに対処する。また、サプライチェーンの強化にも資する政策でございます。
 また、資源価格の高騰につきましては、地方公共団体が地域の実情を踏まえて実施する支援に対する特別交付税措置を後押しすることや、燃油の卸売価格抑制のための手当、そして先般、総理から発表がございましたように、国家備蓄石油の一部を売却することを決定するなど、機動的に対応しているところです。
 まずはこれらを速やかに実施することで、景気の下振れリスクに対応してまいりたいと思います。



(問)月例と経済財政諮問会議とはちょっと離れてしまいますが、経済対策の18歳以下への10万円給付について、事務作業を今いろいろと進めていると思いますが、具体的にどんな体制でどんな作業をされているのか、16歳から18歳に関してはどうやってやるのかに関して教えてください。


(答)体制については、内閣官房に担当室を作りました。25名体制でやっております。今、地方自治体とコミュニケーションをとっておりまして、速やかにやれるように調整をしているところです。これはどうしても全市町村とやらなくてはいけないことですから、年内には最初の5万円に関して、15歳以下の子どもたちに対しては、児童手当の仕組みを活用してプッシュ型でやらせていただきたいと思っております。
 また、ご質問ございました、16歳から18歳までの高校生に当たる子どもたちに対しては、どうしても親の所得を把握しなくてはいけないことから、これは申請方式にならざるを得ないです。一方で、兄弟がいるご家庭に関しては、15歳以下の兄弟がいる場合に、その口座が把握できていますし、児童手当の仕組みを使うと、主たる生計を維持する者の所得が分かりますから、それを利活用してプッシュ型で支給するということも考えられる。そういったことを組み合わせながらやることになると思います。



(問)16歳から18歳はオンラインの仕組みを使ったり、そうした手続きはできるようになるのですか。


(答)まだそこまでできていないですが、何しろこれは全市町村が相手の話ですので、そういう工夫ができる所もあれば、そうではない、紙ベースでやらないとできないという所も、あると思います。なので、担当室の方できめ細かく、まず全市町村とコミュニケーションを取らせていただいて、鋭意準備させていただいているところです。



(問)諮問会議の方で、総理の締めくくり発言の中で、メリハリのある診療報酬改定という言葉が出てきます。資料にもありますが、これはどういうイメージなのでしょうか。


(答)まだ中身に関して全て決まっているわけではないですが、社会保障制度を改革していく上で、診療報酬改定というのは当然その中に入ってくる話になりますので、その中で今の体制の中から比べると少し出っ張るところと引っ込むところというのは出してくるというイメージだと思います。それをもってメリハリのあるという表現をしているわけです。
 中身については、これから厚生労働省の方でしっかり議論した上でお示しをすることになると思いますが、どうしても社会保障制度改革をしようとすれば、そこの部分は扱わざるを得ないということで、そういうご発言になっていると考えていただければと思います。



(問)具体的にプラスやマイナス、そういうイメージがあるわけではないのですか。


(答)今はまだ議論中ですから、当然そういうことも出てくる可能性はありますが、今、予断を持ってこうですとお答えできる状況にはないです。







3.林内閣府政策統括官(経済財政運営担当)による追加説明

 本日、令和3年第15回の経済財政諮問会議が開催されましたので、その概要を報告します。
 今回、先ほど山際大臣から御紹介がありましたように、2つの議題でした。
 まず、「経済・財政一体改革の重点課題(社会保障)」について、民間議員から資料1、後藤厚生労働大臣から資料2の説明があり、各議員より御発言がありました。
 主な御意見を紹介いたします。
 民間議員の御説明ですが、資料1-1の御説明に加えて、団塊の世代が75歳以上に入り始める中、現役世代が希望を持って仕事や生活ができる環境整備が重要だ。しかしながら、今の診療報酬の仕組みは、その分配が一部の病院・クリニックに偏り、現役世代の負担が大きい。分配の在り方を早急に見直し、現役世代の可処分所得増を実現し、消費活性化につなげていくことが大事だ。また、前回も指摘がありましたがたが、コロナ対策に投じた予算をしっかりと区分管理して、執行の状況をチェックし、公表することが重要だという御指摘がございました。
 後藤厚生労働大臣です。資料2の1ページについて、成長と分配の好循環の実現のため、社会保障・雇用を担当する立場としては2つのボトルネックがあると考えている。一つ目は、持続的な賃金上昇に向け、労働生産性と労働分配率の一層の向上が必要である。これに向けて、新しい就業構造を踏まえた能力開発やリカレント教育等の人への投資、雇用のミスマッチ解消、女性等の活用支援、デジタル化への対応のほか、賃上げしやすい環境整備などの雇用政策に注力してまいりたい。
 二つ目は、賃金上昇が消費拡大につながらない点にあり、それに対して社会保障の機能強化を図っていく必要がある。社会保障には、病気、介護等のリスクへの対応による生活の安定、社会保険の適用拡大や所得再分配機能による格差が固定化しない社会の実現、中間層の充実、デジタル化の推進や、全ての世代が安心できる持続可能な社会保障の構築を通じた将来への安心感の創出などの機能があり、これらを適切に発揮させていくことが必要だ。また、社会保障政策として、看護、介護、保育など現場で働く方々の賃上げを行っていく。このように、社会保障政策・雇用政策は、成長と分配の好循環の創出に貢献するものであり、新しい資本主義を実現する上で不可欠である。
 厚生労働省として、令和4年度予算案に向けた主要課題を列挙した。診療報酬・薬価改定、看護、介護、保育など現場で働く方々の収入の引上げ、雇用保険の財政運営の在り方、子ども・子育て政策にしっかりと取り組んでいくという御発言がありました。
 鈴木財務大臣です。成長と分配の好循環を実現し、現役世代の可処分所得を拡大させるためには、保険料負担の増加抑制が重要である。このため、薬価改定において薬剤費の適正化を進めつつ、診療報酬本体の改定について、入院・外来の機能分化を含め、メリハリのある見直しを行うことが不可欠だ。民間議員から本日説明のあった事項に沿って、取組を進める必要がある。特に、新型コロナ感染拡大後初の診療報酬改定である以上、その経験を踏まえて「医療提供体制の改革なくして診療報酬改定なし」の姿勢で臨んでまいるという御発言がありました。
 民間議員からです。岸田政権の掲げる成長と分配の好循環のポイントは、「好循環」である。そのためには将来不安を解消するために、社会保障改革が重要だ。
 第一に、適切な負担と適切な給付が重要だ。限られた財源を有効に活用することが必要だ。年齢によって助ける側、助けられる側を分けるのではなく、本当に必要な人への給付を行うべき。それには経済力の適正な把握のため、マイナンバーの活用が必須である。現役世代の賃金引上げがなされても、可処分所得が伸びないという事態は避ける必要がある。
 もう一点は、医療サービスの適正化が大事だ。高齢者への医療提供や病床の問題、提供するサービス内容を検討するべきである。コロナ禍で顕在化した真に機能する急性期病床や創薬力の発揮、オンライン診療を進めていくべきだ。薬剤の重複投与などを防ぐほか、資料にもあるようなリフィル処方も進めるべきだと。診療報酬にこうしたものを徹底的に反映していくべきではないかという御発言がございました。
 別の民間議員です。賃上げが実現しても、保険料負担が増えれば可処分所得はマイナスになり得る。診療報酬改定と併せて、資料で提案したような医療提供体制の見直しを同時並行で行っていくべきではないか。
 また、世代ごとの給付・負担等をデータで把握すること、健康予防や医療の産業化という視点も重要ではないかという御指摘がございました。加えて、アウトカムでの評価も大事だという趣旨の御発言もございました。
 別の民間議員です。医療提供体制について、欧州ではコロナが再流行している。日本にも第6波が訪れる可能性がある。医療提供体制の強化だけでは間に合わない。「医療改革なくして診療報酬改定なし」と考えるべきだ。
 データの完備が大事だ。医療保険のデータベースを急ぎ整備するべき。コロナの補助金が入ったのに、患者を受け入れられない病院も出ていた。データを整備していくことで無駄を排除することができる。
 かかりつけ医とは何かということが分からず、かかりつけ医を持たない人もいる。政策を導入するときには、例えばかかりつけ医がどういうものなのかといったことを示すべきではないかという御発言がございました。
 次に、「中期的な経済財政運営の改善」について、民間議員から資料3の御説明があり、各議員より御発言がございました。
 主な御意見を紹介します。
 資料3を説明された民間議員で、その説明に加えて、中期の経済財政フレームについては、過去の試算結果の振り返りが重要。その上でリアルな試算も検討し、過去の政権との違いを見せていくことができるのではないか。
 内閣の優先課題に対する情報開示について成長戦略を国民にリアルに認識してもらうために、象徴的なKPIの設定が重要。インプットではなくアウトカムを重視し、分かりやすいメッセージにしていく必要がある。
 多年度を推進する上で基金の透明性について基金が無駄に使われて後年の財政負担にならないようにしていくべきである、という御指摘がございました。
 鈴木財務大臣です。今回の経済対策においては、内閣の重要課題に中期的に対応できるよう基金の設置が盛り込まれている。基金事業については民間議員提出資料にもあるとおり、既存のものを含め事業所管官庁においてPDCAサイクルを徹底し、適正な執行に努めるようお願いをする。
 また、中期的な財政運営において、多年度の取組が必要な場合には本来ある財源も合わせて確保する、「ペイアズユーゴー原則」が財政規律の観点から重要であることも改めて指摘させていただきます、という発言でございました。
 民間議員からです。民間でやっていることを官でやるということ。民間では中長期的に目標を立ててどう進めるのかを考え、計画がどれくらい実行されたか、上手く行かなかったのはなぜかを踏まえて計画を改定するのは当たり前のことである。計画と実績を比べて乖離した原因を考えることが大事。優先課題について、しっかり説明していくことで国民がどう進んだかを理解し納得できるのではないか。
 あと一方で、プロセスの進捗をどう測るのかというのが難しい。目的に合致したKPIを定める必要がある。これは民間企業の場合は収益がどうかというところで測ることに対して、政府では進捗をどう測るのか難しいという御指摘だったと思います。
 EBPMについては、データを把握して、今まで分からなかったことを知り、解析して分析して進めていくことが大事。
 単年度予算については、年度末に予算を消化しようとする行動が見られる。より有意義な方法を考えてほしいといった御指摘でございました。
 別の民間議員です。世界の経済構造が大きく変わる中、一つのシナリオだけを設定していて対応できない時代になっている。海外では経済が活性化し、インフレが進んでいる国もあり、日本と状況が異なっているが、デジタル化されている現在、こうした状況がいつまで続くのかといった議論がある。
 インフレや円安についても、リスクの閾値(threshold)を見通し、現実論に沿ってレジリエントな経済を目指していくことが重要。こうしたリスク分析に基づいて、必要に応じて補正予算で対応するが、民の活性化を中心に考えていくことが重要ではないかといった御指摘がありました。
 別の民間議員です。10から20年の間、GX・DXは、日本の成長戦略の大きな柱である。GXへの大規模投資リスクとDXの我が国の遅れを考えると、政府の役割は高まっているのではないか。GX・DXは官民が中長期のビジョンを共有して、複数年の予算にコミットしていく必要がある。
 投資の最大の懸案は、見通しが立たないことである。企業が支出するわけではない社会インフラ整備について、政府の見通しがない中で計画を立てるのは難しい。一方、財政への配慮も大事。  中長期の施策について適切なKPIを設定して、進捗を管理し、PDCAを回し、EBPMを進める必要がある。単年度では予算の獲得が重視されているので、思考が短期化する。長期的にどう使うかを重視するべき。KPIの設定が財政を上手く使う仕組みになる。そういった形で民間では投資の成果を図っている。
 一方で、「経済あっての財政」なので、毎年の税収の範囲で支出を収めるだけではなく、足りない場合には国債の発行も有り得ることを理解するという御発言でした。
 最後に総理から御発言がありましたけれども、内容はお聞きになったとおりでございます。
 以上です。






(以上)