第10回記者会見要旨:令和3年 会議結果

西村内閣府特命担当大臣記者会見要旨

  • 日時:令和3年7月6日(火)18:33~19:03
  • 場所:中央合同庁舎第8号館1階S101・103会見室

1.発言要旨

 本日、年央試算を公表いたしました。2021年度の見通しは元々、4.0%の成長でありましたが、今回、今年度は3.7%、そして2022年度は2.2%という実質成長率を見込んでおります。
 実は2020年度が▲5.2%のところが、実績が▲4.6%で、特に1―3月の落ち込み、緊急事態宣言がありましたが、去年の4―6月ほどの落ち込みはなかったことから、2020年度の発射台がちょっと高くなったわけです。落ち込みが小さかったということで、来年度の成長率、全体の基本的な考え方は変えておりませんので、若干発射台が高くなった分、3.7%ということになっていますが、基本的には高い成長率を見込んでおります。そして2022年度も着実に成長していく姿になっております。
 実質GDPは、コロナ前、2019年7―9月期と10―12月期、それぞれ558兆円と547兆円の水準だったわけですが、その後、昨年4月、5月、緊急事態宣言でかなり落ち込んで、500兆円程度まで落ちましたが、この時点でGDPギャップが▲10.5%、約▲59兆円ありました。
 その後、着実に経済は戻ってきておりますが、1―3月、緊急事態宣言を再発出しましたので落ち込みましたが、GDPギャップは▲4.4%の約▲25兆円と試算しております。
 そして、4―6月期以降は、4―6月期の民間の見通しは大体横ばい程度ですのでこういう絵にしておりますが、今後、着実に感染拡大を抑え、またワクチン接種が進む中で戻っていくということで、本年中にコロナ前の水準に戻り、そして過去のピークも上回っていくという絵姿を描いております。
 この戻りの部分は、輸出・生産が過去の水準にもう戻っておりますし、今日も議論がありましたが、非常に高い設備投資意欲であります。さらに、ワクチン接種が進む。また、約30兆円の預金の貯金額があり、家計にプラスアルファがありますので、ペントアップ需要、いわゆるリベンジ消費も考えられる。
 さらには、厳しい方々への下支え、防災・減災、国土強靱化、大変な災害が起こっておりますが、そういったことによって着実に戻っていくという絵姿を描いておりますが、ここから先が大事で、一つは持続的な消費喚起。つまり一時的に戻るペントアップ需要・リベンジ消費もあると思いますが、長く消費を喚起していく、持続的な消費が継続していくことが大事ですので、ここの政策をどのように打っていくかという点と、そもそもの潜在GDP、成長力、これが課題でありますので、グリーン、デジタル、人材への投資というところで、ニューディール的に政府が支出を行いながら、民間の投資や創意工夫をどう引き出していくかというところが一つのポイントになると思います。
 そして、成長と分配の好循環ということで、成長を雇用、賃上げにつなげていく、そしてそのことがまた成長につながるという、この成長と分配の好循環によってデフレ脱却を図っていくということが大きな絵姿になっていきます。
 いずれにしても、かなり確実に進んでいきますので、成長は確実に戻っていくということを想定しております。
 輸出はもうコロナ前に戻っていますし、鉱工業生産もコロナ前に戻って、半導体の不足などがあって落ちたりしていますが、基本的には戻ってきております。
 設備投資も非常に意欲があるということで、日銀短観や、今日、黒田総裁からも意欲の強さについて言及がありました。
 それから実質総雇用者所得、働いている人全ての人の所得を合わせたものも、コロナ前の水準に、3月、4月が99.5、99.7ですから、ほぼコロナ前の2月、3月の水準まで戻ってきております。
 消費支出についても家計調査が発表されましたが、5月は少し落ちていますが、コロナ前の1月、2月、3月の水準まで戻ってきております。
 もう少し詳しく見なければいけませんが、5月に少し落ちた分は交通・通信ということで、携帯電話料金が下がっていること、それから交通も緊急事態宣言の下で少し落ちていること。それから衣料、被服関係も落ちているのが要因として挙げられます。
 実収入は、特別収入が、去年の1人10万円給付のものも含めて、対前年で見ますとなくなっていますので、ただ、世帯主、それから同一労働同一賃金に中小企業も入っていますので、配偶者の収入、ここはそれぞれプラスになっております。
 所定外の給与、これは毎勤で今日発表されたもので、前々年比で見ると若干落ちておりますが、全体としては、5月は緊急事態宣言の下で少し落ちていますが、2021年前年比で見るとプラスです。
 それから、賃上げ交渉で連合の最終報告が出ました。企業全体で1.78%、中小企業も1.73%ということで、これを見ていただきますと、政権交代した2014年以降、高い水準で続いてきていますが、今年もそれ以前の低かった水準を上回る水準でそれぞれ公表されています。正にアベノミクスから始まった賃上げのモメンタムが、厳しい状況の中でも中小企業を含め維持されているものと思いますので、先ほど申し上げた成長と賃上げ、雇用の好循環を引き続き継続していくことが大事だと考えております。
 年央試算の関係ではこのような状況です。
 それから、本日の経済財政諮問会議での意見交換、マクロ経済運営に関する意見交換について、事務的にも後で説明しますが、一つは来年度にかけて政府支出が規模的に縮小していくとみられることから、景気動向を注視し、躊躇なく機動的なマクロ経済財政運営を実施すべきというご意見がありました。これは先ほど申し上げたように2022年度の成長率が少し低いように見えて、実質2.2%で着実に成長していくのですが、引き続き経済財政運営に万全を期すべきということへのご指摘がありました。
 この点については、年央試算では仮定をおいて機械的に試算しておりますので、2021年度の支出が前年度の第三次補正の繰越し分などによって、上乗せされている分があるわけですが、2022年度はそういったものが剥落する想定となっておりますので、こういった点の経済財政運営をしっかりやるべきというご指摘を頂いております。
 それから個人消費の回復に向けて、所得・雇用面からの下支えに加えて、ワクチン接種や医療提供体制の強化によって国民の安心を確保していくべきだというご意見がございました。
 さらに、グリーン、デジタル、地方、少子化対策の4分野への重点投資、規制改革を大胆に行って民間の投資計画を引き上げ、攻めの経営を後押しすべきというご意見がございました。
 さらに、事業再構築や最低賃金を含む賃上げに取り組む中小企業に対して、大胆かつ思い切った支援を行うべきといったご意見もございました。
 それから、来年度予算の全体像につきましては、骨太方針2021に基づいて、目安に沿った予算編成を行うとともに、4分野への重点的な支援配分、メリハリ付けを行うこと。
 それから、歳出全般について、やはりエビデンスに基づいて、いわゆるEBPMで、ワイズペンディングを徹底して実行していくべきというご意見がございました。
 こうしたことを踏まえて、民間議員のご提案のとおり、予算の全体像の取りまとめを行い、また、財務大臣から説明があった概算要求基準については、本日の議論を踏まえて、近日中に決定を行うということになりました。
 総理からのご発言はお聞きいただいたとおりであります。詳細は後ほど、事務方から説明させたいと思います。私からは以上です。






2.質疑応答

(問)冒頭説明もあった年央試算について伺います。年初に比べると、発射台の話もありますが、緊急事態宣言発令に伴う経済活動の抑制が個人消費を押し下げていたことなどもあって、実質、名目とも年初の政府見通しよりやや引き下がった部分もあるかと思います。
 そうした中で、日本経済がコロナ前の水準に戻る時期が2021年度中から2021年中と、ややお尻のほうが前倒しされたかと思いますが、現状、新規感染者が増加傾向にある東京都や首都圏での対応や、ワクチン接種の加速など、様々それを実現するための対応、目標実現に向けた対応について、どのような経済財政運営を行っていくのか、担当大臣として所見をお聞かせください。


(答)まず先ほど申し上げたとおり、2020年度のマイナス幅が想定よりも小さかった、低かったということで、これは1月から3月まで緊急事態宣言がありましたが、昨年の4月から6月までの第1回目の緊急事態宣言の時に比べれば、かなり焦点を絞った緊急事態でもありましたので、落ち込みが小さかったこともあって、やや発射台が高くなったということが大きな理由です。
 他方、ご指摘のように、繰り返しになりますが、輸出や生産はもうコロナ前の水準に戻ってきておりますし、設備投資も民間の意欲が非常に高いのを感じております。本日、日銀総裁からもこのコメントがございました。グリーン、デジタル、時代の大きな変化を感じて、企業側にも意欲があるものと考えています。民間議員からもデジタルトランスフォーメーションや、グリーントランスフォーメーションという言い方もされていましたが、新たな時代への投資意欲は非常に強いものがあるという認識です。
 その上で、消費がやはり一番課題になるわけですが、総雇用者所得は戻ってきておりますし、さらには昨年の特別定額給付金、1人10万円の給付金の効果もあって、例年のトレンドよりも30兆円ぐらい家計にお金が貯まっている状況になりますので、今後、これがいわゆるリベンジ消費ともいわれるペントアップ需要として顕在化していくことが期待をされますし、現に感染が下がってくると人出が増えて、消費意欲が非常に強いものを感じています。
 そうした中で、今、特に財の支出はもう非常に高いですが、サービス消費がまだ低い状況にありますので、今後ワクチン接種を着実に進めて、むしろ厳しい対策を講じて、更に感染拡大をしっかりと抑えることで、経済の回復を早くするということだと思います。正に本日も様々、関係大臣の間で議論をし、専門家あるいは東京都とも議論をしております。事業者の皆様には厳しい要請をお願いしておりますが、協力金をしっかりと、できるだけ早く支給をするということもありますので、何とか今の感染拡大を早く抑える、この対策は強化をしていかなければいけないと考えております。
 そうした中で、感染を抑え、ワクチン接種が進む中でサービスも含めた消費の回復が期待されるわけですが、ここも一気に増えてしまうと、当然、供給量、例えば旅行にしても宿泊施設の容量がありますので、お断りしなければいけないという状況になって、全部受けきれないという状況になってしまいますから、良い形でスムーズに戻っていく、持続的に消費が戻っていく、継続していく、消費拡大していく、そうした施策も必要ではないかという、こうしたご議論もありました。そうした点も頭に置きながら、経済財政運営に万全を期していきたいと考えております。
 海外経済も非常に強いですし、国内でワクチン接種が進んでいく中で感染を抑えていき、今回も皆さんに我慢をお願いしていることで、感染拡大をしっかりと抑えていければと考えています。
 いずれにしても、まず持続的に経済成長して軌道に戻していくことと、それが継続していくことが大事です。特にそうした中で、厳しい状況にある事業者や世帯、家計の皆様方に支援をしっかりと行っていくということですので、重要な視点だと思います。そういった点で二人親世帯の方の5万円の給付、あるいは30万円の厳しい家庭への給付、こうしたものを必要な方にしっかりと届けられるように、迅速に対応していければと考えております。
 もう一つ加えれば、もう既に未来への投資が始まっている、民間の高い投資意欲が感じられると申し上げましたが、既にアフターコロナ、ポストコロナ、次の時代が始まっていますので、そうしたデジタル、グリーン、そして人材をどう育てていくかというところの成長力を上げていく、そうした投資、これを引き出していく政策も重要だと思います。民間が意欲ある、それを更に引き出していく、そうした取組をしっかりと行っていきたいと思います。
 いずれにしても、予備費の活用も含めて機動的な経済運営、そして持続的な成長につながっていくように、民間主導で成長軌道に乗っていくように、経済財政に万全を期していきたいと考えております。







3.林内閣府政策統括官(経済財政運営担当)による追加説明

 先ほど西村大臣の方から御紹介がございましたとおり、経済財政諮問会議の概要を報告します。
 今回は3つの議題でした。まず、内閣府年央試算について、私の方から資料1、見通しについて御説明をし、民間議員から資料2、予算の全体像について、民間議員から資料3、令和4年度予算の概算要求基準について、麻生大臣から資料4並びに5の御説明があり、まとめて各議員から御発言がございました。
 主な御意見を御紹介いたします。
 総理のリーダーシップで職域接種が進んでいる。年央試算で示された経済の姿を実現するためには、息の長い民間消費の活性化が必要だ。中間層以下の層は、かなり貯金している。ワクチン接種を加速し、繰越需要を一過性で終わらせない仕組みが必要だ。ワクチンの有効な期間はよく分からないが、今回の接種の経験をマニュアル化した上で国民に通知し、今後の安心につなげる必要がある。オリ・パラや秋の行楽シーズンに続き継続的に消費を活性化するためには、賃上げが必要だ。社会保障改革、デフレ脱却が必要だ。海外需要の取り込みのため、ワクチンパスポートや帰国後の陰性証明の早急な仕組みづくりをお願いしたい。財政については、潜在成長率の引上げ、EBPMやワイズスペンディングが重要といった御発言がございました。
 別の民間議員です。年内のコロナ前の水準の回復に向け、ワクチン接種の加速、リモートワークの徹底が必要である。グリーン、デジタル、地方、子ども・子育ての4分野の基礎づくり、企業が投資しやすい環境づくり、臨機応変な経済財政運営をお願いしたい。こうした取組や長年の課題を解決し、潜在成長率が引き上げられるよう、デジタルトランスフォーメーションやグリーントランスフォーメーションを強力に進めるべき。こういったトランスフォーメーションという言葉は、すなわち社会変容だ。構造改革に向けて官民協力して中長期的な姿だとか目標を国民に明らかにし、それと同時に、政府が財政面を含めて継続的なコミット、それに向けたコミットを明示してほしい。その端的な例が、2兆円のグリーンイノベーション基金。これは非常に好例で画期的であり、こうした取組で企業は投資をしやすくなる。要素技術、特に電力には政府のコミットメントが不可欠。水素や、アンモニアの調達というのは、海外からの輸入に頼る必要があり、安全保障の問題がある。デジタルトランスフォーメーションにも同様の視点が必要だ。科学技術にも方針とコミットメントをお願いしたい。
 米欧を中心にグリーンディールと言われる激しい国際競争が起きている。ナウ・オア・ネバーの視点で中期的な構造変革に向け、官民一体の取組をお願いしたいといったお話がございました。
 別の民間議員です。
 ワクチン接種の加速は、経済に大きなインパクトがあり、消費拡大につながる。海外需要の取り込みとともに、消費活性化の継続が必要。
 潜在成長率引上げのためには、息の長い良い民間投資、骨太の方針での4分野など、イノベーションにつながる投資が必要だ。資料2-2の2ページにありますが、OECDのデータによると、日本の投資は他の所有国に比べて動きが小さい。伸びが伸びていかないということですが、潜在成長率引上げのため、官民で投資を行っていくべき。
 ワクチン接種の加速で、経済の再スタートがどこかで始まる。世界全体がその競争をするような形になるので、それに遅れることなく、日本もしっかりとスタートダッシュをしていくべき。
 財政については、中長期試算を次の会議で示すと思うが、これまでどうだったかということをしっかりと検証する必要がある。次回の議論であわせて示してほしいという御指摘がございました。
 別の民間議員です。
 資料2-2のページ3で、ワクチン接種率とサービスの消費支出には関係があるということが示されている。日本もワクチン接種が進めば、景気回復につながっていく。
 接種を進めていくスピードも大事だが、接種率を高めるのも大事。アメリカは50%ほどで止まっている。ワクチン接種率が高まらないと感染拡大や新たな変異が起きる可能性があるので、そこをちゃんと高めていく必要があるといった御指摘です。
 日本は戦後ワクチン接種を義務でなく自由に任せていたが、先般の新型インフルエンザを経て、ワクチンギャップをどうするか問題になってきた。丁寧な説明が必要。官邸からの発信も大事。ワクチン接種を条件に観光を刺激するといったことも考えられるのではないかというお話がございました。
 財政の話ですけれども、2021年は政府支出をしっかり行ってきたので、2020年度の経済対策で政府支出を行ったのが2021年度に巨額の繰越しが起きる。そういう意味で2022年は財政の崖が心配だが、元々、政府支出をしっかりしたからなのであって、毎年、毎年、財政の崖を懸念するのも難しいものがある。
 自律的な成長の起爆剤としていくべきであって、例えばグリーンへの投資は自律的成長に資するのではないかという御指摘がございました。
 以上が主な民間議員からの御指摘です。
 それを受けまして、日銀総裁からの御意見ですが、令和2年度の税収が伸びている。今回、決算の報告が資料4でございましたが、それを踏まえて、令和2年度の税収が伸びていることは企業収益がしっかりしているということではないか。飲食、宿泊など対面型サービスは停滞しているが、ワクチンの接種が進めば戻ってくるのではないか。
 また、設備投資がしっかりしており、内閣府の年央試算にある成長率よりもう少し高くなってもおかしくないのではないか、そういう可能性もあるのではないかという御指摘がございました。
 麻生大臣です。昨年も申し上げたが、日本経済を力強く成長させていくためには、公需で支え続ければ良いというわけではない。総理が先般おっしゃったように、ワクチンの普及は最大の経済対策であり、接種を加速し、国民の安心・安全感を確保することで、民間主導の自立的な経済回復につなげていくことが、何よりも重要だと考えているので、ワクチンは引き続きやっていかなくてはいけないという御指摘がございました。
 以上が主な議論で、最後に総理から締めくくりの御発言があったところです。
 私からは以上です。






(以上)