第9回記者会見要旨:令和3年 会議結果

西村内閣府特命担当大臣記者会見要旨

  • 日時:令和3年6月18日(金)19:04~19:57
  • 場所:中央合同庁舎第8号館1階S101・103会見室

1.発言要旨

 本日、経済財政諮問会議と成長戦略会議と合同の会議を開き、骨太方針2021と成長戦略実行計画を取りまとめました。
 骨太の方針は、副題を、「日本の未来を拓く4つの原動力~グリーン、デジタル、活力ある地方創り、少子化対策~」としました。正にこれらの分野に民間企業が重点的に投資を行って、大胆なイノベーションを引き出してもらえるように、政府としても様々な政策に取り組むということです。このコロナを機に、これまでできなかったこと、長年の宿題返しを一気にやるということです。
 そして、その中で特に私の強調しているヒューマン・ニューディール。こうした分野への投資、そして成長を支える基盤は人材ですので、その人材への投資、政府も様々な施策をやりながら、民間企業の創意工夫や投資を引き出していくということです。
 さらには、経済安全保障の確保の観点、サプライチェーンの強靱化といった点を盛り込んでおります。
 財政再建については、「経済あっての財政」という考え方で、デフレ脱却、そして足下のコロナ対策に取り組みながら経済再生を行って、財政健全化にも取り組んでいくということです。
 成長戦略につきましては、生産性を向上させ、その成果を賃金に分配をしていく。労働分配率を向上させ、それによって消費が拡大されていくという、これまで申し上げてきた経済の好循環をしっかりと実現していくこと。力強い成長を実現できればと考えております。
 14の分野のグリーン成長戦略の具体化、フリーランスの働く環境整備、経済安全保障、SPACによるスタートアップ支援、私的整理の法制面の整備などが核となっております。
 総理から締めくくりにご発言いただいた内容はお聞きになったとおりです。詳細は後ほど事務方から説明をさせていただきます。
 それから、コロナの関係でシミュレーションを行ったものについて公表したいと思います。尾身先生と一緒に相談しながら6つの研究者、研究団体などにお願いしました。基本的な前提を設定しておりまして、それぞれ工夫をされていますので多少の前提はずれますが、人流がどの程度増えるか、それからワクチンがどの程度接種されるか、デルタ株がどう増えるかということについて、前提をある意味共通化して行っていただきました。これも詳細は後ほど事務方から説明してもらいます。
 まず、日本大学の大前先生。この方の場合は、五輪で人流が一番上は10%増えてデルタ株に置き換わっていく時に、宣言解除した後に増えていくわけですが、最大でも1,500ぐらいで、宣言なしです。ここの辺りからワクチンが効いてくるということで推計がなされています。
 筑波大学の倉橋先生。この方の分析はデルタ株の影響で変わりますので、観客を入れなくとも、オリンピックを入れても差はほとんどありません。オリンピック開催によって様々動き、若干感染者の数が200人とか300人前後しますけれども、ほとんど変わりません。要はデルタ株の影響が大きいということです。宣言なしでこういう形で増えてしまいます。
 国立感染症研究所の鈴木先生。これはADBでも公表されたものだと思いますが、最もオリンピックで人流が増えると感染者の数は増えていきます。例えば1,000人の時点で緊急事態を打つという前提ですが、人流がオリンピックで10%増えても、緊急事態を打てば千数百でということです。重症者の数は最も拡散していく場合でも、東京の重症者ベッド数は350ぐらいですが、これは東京都の基準でいくと370のうち350ですからかなり厳しくなります。ただ、人流が10%増えて、オリンピックで10%増えるというこのシナリオでいけば、ステージ4を超えることはないということですので、緊急事態宣言を打てばかなり効果が出るというシナリオです。
 それから鈴木先生の緊急事態宣言なしの場合ですけれども、この場合でも人流が10%増えるというケースですと拡散しますが、オリンピックの人流が5%に収まれば1,600ぐらいに収まるということです。1,700ぐらい。重症者は緊急事態宣言なしでもステージ4にはいかないということであります。
 それから、東京大学の仲田先生、藤井先生の2つあります。一つ目、これは緊急事態宣言なしでいくと、デルタ株が8月末に8割というケースでも千数百に収まる。宣言なしでも重症者も50%のラインを超えない。
 それからもう1つの推計です。この場合、基本見通しは宣言を打ちます。別では打ちませんということで、希望的なシナリオ、これは1日にワクチン100万打つシナリオで、東京都でいうと15万ぐらいを打つことになりますが、それでいくと1,000人ぐらいで宣言なしでも収まるというデータを示されています。重症者も50%を超えないということです。
 三菱総研のケースで最も多いのは、デルタ株が増えて人流が30万人増えるというケースですが、それでも宣言なしで1,400に収まります。その場合の重症者は、今のデルタ株30万人というケースでいっても200人で宣言なしで収まります。
 ということで、若干前提の置き方や手法が違いますので幅がありますが、このとおり何人かの方は宣言がなくとも千数百人の程度の感染者の数で収まります。しかも千数百と大きく聞こえますが、ワクチンの効果が出て、重症者も一定程度に抑えられるということがあります。
 それから、デルタ株が急激に拡大していく場合、これはかなり拡散に近い状態になりますが、それでも1,000人のレベルで緊急事態宣言を発動すればかなり抑えられると。最も厳しい鈴木先生の推計でも380ぐらいに抑えられるということで、100%近くになりますが、かなりいった場合でも抑えられるということですので、いずれもかなり幅がありますが、こういったことも参考にしながら、今後、数字を見ながら私ども機動的な対応をしていきたいと考えています。
 特にデルタ株の状況を、監視体制を強めておりますが、しっかりと見ながら対応していきたい。併せて、ワクチン接種を円滑に進めていくということです。詳細は後ほど事務方から説明をしてもらいます。私からは以上です。






2.質疑応答

(問)2点伺います。1点目は骨太方針についてですが、今回の骨太方針では成長や生産性向上のための構造改革を目指すとされた一方で、コロナ禍で厳しい状況に置かれた人への支援策も盛り込まれました。今回の骨太方針をもとに、構造改革と格差縮小、これについてどのように両立させていくのか教えてください。
 もう1点が、本日、専門家による東京五輪開催の提言が出されました。提言では五輪開催での感染拡大、医療逼迫のリスクを指摘しました。無観客での開催や、観客を入れる場合でも観客は開催地の人に限る、パブリックビューイング中止などを求めています。
 政府に対しては、五輪開催での感染リスクをどう認識し、いかに軽減するのか、そして緊急事態宣言などの発令の考え方についても、早急に国民が納得できるよう説明するように求めました。提言を受けて、大臣の受け止めと今後の対応についてお願いいたします。


(答)まず骨太方針ですが、大きく2つのお話があったと思います。1つはどう成長していくのか、コロナ後の社会も見据えながら、経済社会の変革をどうしていくのか。あわせて、包摂的な社会、誰一人として取り残さない社会、格差への対応ということです。
 前者については4つの分野を中心にしながら、大事なことは2つ。1つは民間投資。その呼び水となる政府も支出をしっかりとやっていきます。それがデジタル・ニューディールやグリーン・ニューディールだと思います。規制改革実施計画も今日も決定されましたが、様々な分野で制度改革や規制改革を行いながら、民間の投資を引き出していくということが大事だと思っています。
 もう1つが賃上げです。長年デフレに苦しんだ中で、企業は売上が伸びない。そうした中でコスト削減は人件費を削減して非正規の方を増やしてきた。そうした対応をしてきたわけですが、これは悪循環になっていくわけです。所得が増えないわけですから当然、デフレで買い控えも起こるわけですし、当然、賃金も伸びない中で売上も伸びないという悪循環に、マクロで見るとなっていくわけです。これを逆回転させなければいけませんので、いわゆる経済の好循環、成長と雇用の好循環と言っても良いと思います。
 雇用を維持しながら、かつ賃金を引き上げていく、労働分配率を引き上げていく、そのための生産性向上の取組を様々、民間の投資を通じて行っていく。我々も様々な政府の支援を行っていきます。
 その中で今も、今年の労使交渉も1.79%でしたが、中小企業も厳しい中でも頑張っていただいています。賃上げのモメンタムは引き続き継続されているものと期待をしたいと思いますし、総理が述べられているように、早期に最低賃金1,000円を目指して取り組んでいく。そのために中小企業への生産性向上のための支援もしっかり行っていきたいと考えています。まず、それが前半の成長に向けての鍵の民間投資と賃上げです。
 そして、後者の鍵を3つ申し上げれば、包摂的な社会を作るために、1つはリカレント教育をどうするかということだと思います。骨太方針にかなり詳しく今回は書きました。正に若者円卓会議や選択する未来2.0の提言をしっかりと盛り込んであります。新しい時代に向けてリカレント教育をどうしていくか、これが一つの鍵。
 これまで大学でも行われてきました、私どもの職業訓練や公的訓練も様々ありますけれども、残念ながら現実に即したものになっていなかった面があります。いわば自己満足的な面に終わっていて、現実の出口を見据えて、産業が必要とする人材、例えばデジタルやグリーンや新しい分野への人材がなかなかリカレントの中で上手くプログラムが組まれていなかった。しかも長い期間やってもなかなか就職に結び付かない、キャリアアップに結び付かないというケースがあったわけですが、出口を見据えて短期間で集中的に行うことによって進めていく。大学もそうですし、公的職業訓練もそうだと思います。
 その関連で言えば、求職者支援制度や高等訓練の支援制度も、残念ながらほとんど知られていない、使われていないということです。10万円の給付を受けながら訓練を受けて、キャリアアップにつなげていけるわけです。それが一人親の方をはじめとして使われていないので、しっかりと広報しながら、さらに現実的なものに変えていく、こうした努力を重ねたいと思っています。
 そして2つ目が、働き方が多様化する中で、フリーランスや兼業、副業や、幅広くいろんな働き方、若い時から経験を積んでもらう、そうした中で、フリーランスの取引の適正化に向けて、法制面の整備を行う、法政措置を検討するということで、これは成長戦略に書き込んでありますが、そうした方向も打ち出しました。ジョブ型も含めて多様な働き方を認めていくことが大事だと思います。
 3点目が、やはり女性の活躍。しわ寄せが行ったのは非正規の方であり女性であり、このコロナで厳しい状況に置かれた、こういった方々の能力を発揮してもらう、これが大事だと思っています。
 非正規について言えば、同一労働同一賃金を中小企業も含めてしっかりと定着させていけば、正規化の動きが更に加速化していくと思います。企業も将来の人材、人手不足、これを見込んで正社員化の流れはずっと続いていると思いますので、これがしっかりと続いていくように、同一労働同一賃金の定着も大事だと思っています。
 あわせて、女性の場合は何度も申し上げていますとおり、M字カーブは解消されてきましたが、L字カーブが解消されない。正規社員になかなかなれない。このことが様々な影響、少子化にも影響を与えていますし、女性の活躍、世界でもものすごく低い水準にあるというのは本当に残念なことでありますので、意欲、能力のある女性にもっと活躍してもらう環境を作っていきたいと思います。
 その中の一つが、先般から申し上げている理系の女性。私自身も中学まで共学でしたから、中学生の時、たくさんの優秀な、特に理系に強い、数学の強い同級生がいましたが、大学進学を見てみるといつの間にか文系に進学している。15歳の時の学力は、女性の理系の分野の学力はOECDで2番目です。それが残念ながら、理系に進学する女性の割合はOECDで最低です。非常に残念なことですので、もちろん人生はご自身が決められますから、何も強制するわけにもいきません。しかし、理系に関心がある、能力がある女性がその分野に自然と進めるような環境も大事だと思いますので、様々な政策を盛り込んでおりますが。以前も申し上げました、28人のノーベル賞、文系の方もいらっしゃって自然科学だけではなく人文科学もありますが、残念ながら日本人は全員男性です。理系で女性がノーベル賞を取れるような、例えばこの10年に取れるような、そういう環境を是非作っていければと思います。
 ワクチン接種も進んでいますが、ファイザーもモデルナもmRNAを開発したハンガリーの女性のカタリン・カリコ博士、30歳頃にアメリカに行かれて、若い時からこのmRNAに取り組んでおられていると聞いていますが、こうした女性が日本からも出てきてほしいなと私自身は考えています。
 いずれにしても、そうしたことを重ねながら、厳しい状況にある一人親世帯の方々や、そうした方にも目配りをしながら、今、申し上げたリカレント教育、公的な職業訓練、しっかりと周知をし、理解をしていただきながら、包摂的な社会を作っていければと考えています。
 今日、尾身会長が来られまして提言を頂きました。日頃から尾身先生と意見交換をしておりますが、尾身先生をはじめ専門家の方、20名ぐらいの名前があり、意見をまとめられたということで頂きました。私から丸川大臣や総理を含めて、政府内に共有をしたところです。様々なご提案がありますので、これをしっかりと受け止めて対応していければと思いますし、安全安心な大会にするために様々な観点からのご指摘を頂いていますので、しっかりと受け止めて対応していければと考えております。
 いずれにしましても、橋本聖子会長の所にも行かれたと聞いておりますので、組織委員会でも、また丸川大臣の所でも様々検討がなされるものと考えています。


(問)骨太方針の財政健全化に関して改めて伺いたいのですが、2025年度の基礎的財政収支を黒字化するという目標を堅持すると明記した上で、一方でコロナ禍の影響について検証を行って、目標年度の再確認をするということですけれども、この検証について、どのようなスケジュール感で作業を行って、いつまでに結論を得るのか、スケジュール感について伺えればと思います。また、目標年度の検証・再確認に当たって、ポイントとなるようなところがあれば伺えないでしょうか。
 もう1点、今回の骨太方針で21世紀の半ばを見据えて、将来の姿について専門調査会を設置するということですが、改めて設置の狙いについて伺えないでしょうか。


(答)財政健全化目標についてでありますが、2025年度のPB黒字化を目指すということを堅持することを記載しております。財政健全化の旗は下ろさないということであります。
 冒頭に書いていますが、「経済あっての財政」との考え方の下で、経済がめちゃくちゃになってしまうと財政健全化どころではなくなるので、しっかりとコロナの状況の中で厳しい状況にある方々にも支援を行いながら、病床の確保など、必要な支出をしっかりと行っていく、国民の皆さんの命を守るために必要な支出を行っていくということでありますので、まずは今のコロナへの対応に全力を挙げる、感染拡大防止に全力を挙げるということであります。
 このことについては、財政を理由に何か躊躇することがあってはならないと考えています。国民の皆さんの命と暮らしを守るために、必要な財政支出は躊躇なく行っていくということです。
 その上で経済を再生させながら経済成長することによって税収も戻ってまいりますので、正に「経済あっての財政」ということで、中長期的に財政健全化をしっかりと図っていく。後の世代に負担を先送りしないことが大事だと思います。
 ただし、2025年の目標については、現時点ではこれを堅持して、旗を降ろすことはしませんが、今、申し上げたようにコロナの影響がどの程度続いていくのか、経済へのインパクトが、この4-6月のGDPも8月に出るわけですけれども、まだどういうかたちになるか分かりません。足下の緊急事態宣言、そしてまん延防止措置で事業者の皆さんにも大変厳しい状況、特に消費面で厳しい状況にありますので、この辺りの影響を見極めていかなければいけない。
 もちろん経済について言えば、海外経済が非常に好調で、回復してきておりますので、特にアメリカ、中国は非常に力強い経済回復をしておりますので、日本の輸出と生産はもうコロナ前に戻ってきております。そのため、全体として見れば、企業の業績も昨年から改善傾向にあると思いますし、投資についても先ほど申し上げたデジタルやグリーンといった、新しい経済・社会への意欲も感じられますので、特にソフトウエアをはじめとしてデジタルへの投資計画は非常に効果が高いものがあります。
 こうした中で、民需主導の経済成長を期待しているわけですけれども、これがどの程度戻ってくるのか、消費がどう戻ってくるのか、こういったところを見極めながら進めなきゃいけないと思いますので、ここにあるとおり、本年度内に検証を行って、その結果を踏まえて再確認できればと考えておりますので、このコロナへの影響、厳しい状況にある方々、事業者への影響。そして4-6月、7-9月、10-12月、それぞれどんなかたちの回復が見られるのか。私どもは本年度中にGDP全体はコロナ前に戻るという見通しを持っておりますし、海外のOECDやIMFも日本の経済について同様の見方をしてくれておりますので、それを維持しておりますけれども、そうした状況をしっかりと見極めていきたいと考えています。
 それから、専門調査会についてですが、ここにある将来の在るべき姿、ぼんやりとは見えてきているわけです。デジタルやグリーンとか、経済・社会が一気に変わっていく姿。それから地方では、東京一極集中を是正していく姿。子供の視点からの施策も打ちながら、少子化に対応していく姿。日本経済の方向性は今回お示しをしているわけですが、国際社会がどう変わっていくのか、国際経済がどう動くのか、正に経済安全保障の視点も非常に重要になってきています。
 半導体を取ってみても、成長戦略で記載していますが、日本にも半導体工場はたくさんありますが、残念ながら超微細な最先端のものは作れていないです。こうしたことにどう対応していくのか。
 そうした対外経済の関係も含めて、大きな方向性を国際経済、社会の中で見据えながら示していかなきゃいけないということですので、以前の例で言えば、前川リポートというのがありましたけれども、前川リポートは内需をどう増やすかということでありましたので、あれに類するものというのはちょっと言いにくいですが、国際経済・社会が一気に動いている中で、そうしたことを見据えて日本の新しい経済・社会の構造を議論していく、そういう場を是非設定したい、専門調査会で議論を深めたいと考えています。


(問)専門家の先生方でいろいろ意見があるのもよく分かりましたが、結局、東京でのリバウンドのリスクというものは共通して皆さん認めていると思うのですが、東京都は21日以降、酒類の提供は19時まで、1グループ2人以下、滞在時間90分と、いくつもの条件はあるようで解禁していくというわけですが、オリンピックを考えたら、東京都が非常事態にならないようにしないといけないと思うんですが、東京都との施策と、政府の間で、東京都がリバウンドしないような意味で、どういうやり方をしようということで、政府と東京都というのは五輪開催に向けて足並みがそろって、その辺について、東京のリバウンド対策について、専門家の意見も加えまして、共通の見解で何かやるというようなお考えがあるのかどうか、伺いたいです。


(答)東京都が21日以降について、政府が示したベースラインよりもかなり厳しい酒類の提供について方向性を出されました。正にこれは東京都の危機感の表れだと思います。足下、先週の同じ曜日と比べて少し増加傾向が見えつつある中で、そういった危機感の表れで対応されているものと思います。
 政府としてはモニタリング検査もかなり重点を絞って、ワクチン接種がかなり進んできておりますので、高齢者については重症化のリスクは徐々に減ってくるものと思います。昨日も申し上げましたが、ワクチンを1回打ったからすぐに安心ということではありませんので、高齢者の皆さんは是非、引き続き感染防止策は万全の対応を取っていただきたい。ワクチンを1回接種して1週間ぐらいで高齢者施設でクラスターも発生しています。是非2回目を打って、その2週間後から効果が出てくる。1回目でも一定の効果は出ますが、これも2週間程、経過しないといけませんので、是非これもご理解いただいて対応してほしいと思います。高齢者がかなり重症化のリスクを減らしてくれるようになれば、約半分を占める20代・30代の若い層の感染をどう抑えていくかということであります。大学や専門学校などで、モニタリング検査もかなり増やしていますが、抗原キットも配布を速やかに行いながら、できるだけワクチン接種と検査を上手く組み合わせながら、感染拡大を抑えていければと思います。
 重症化が防げるということで、先ほどのシミュレーションでもワクチン接種が進めば重症化ベッドはかなり抑えられる。これは共通して出ていますので、ワクチン接種を職域も含めて早く進めることが大事だと思いますし、あわせて、今、申し上げた検査を組み合わせながら対応していきたいと思います。専門家の皆さんから分科会で提言をいただいたQRコードも例えばライブハウスや小劇場、これまでクラスターの発生しているそういった所で少し実証的なものを早く始められればと考えていますし、下水のサーベイランスも、既に東京都もこれまで何度か行われています。国立感染症研究所も行ってきておりますので、国交省とも連携しながらそういったことも進め、早く探知をし、そのエリアで検査を行っていくということで、基本はワクチン接種の円滑化・加速化、それと検査の戦略的な拡充だと考えています。


(問)シミュレーションの件でお尋ねしたいんですが、尾身会長がいろいろ五輪のことを言われているんですけれども、このタイミングでこのシミュレーションを出してこられた理由をお尋ねしたいのですが。


(答)体制が整ったからということだけです。尾身先生とも一緒に前提を置いて、何人かの先生方が出されていた、例えば大阪の4月に向けて急激に感染者が増えたことについて、それと同等の前提を置けば、東京も、ものすごい勢いで増えていってしまうので、前提をきちんと決めて何人かの先生にやってもらおうということで、専門家の皆さんとも相談をして、一定の前提を置いて出しています。
 これは当然、政府としてオリンピックでの人流や、今後の東京でのリバウンドを考えるに当たって参考にできるものですので、それぞれの研究者の皆さんや団体、組織にお願いをして、全部揃ったので発表したということです。
 これは尾身先生をはじめ専門家の皆さんとも共有をしておりますし、幅広く共有しながら、これも参考にしながら、現実のデルタ株の推移、あるいは病床の状況、さらにはワクチン接種がどう進むか、こういったことを見ながら、機動的に様々な対策を打っていきたいと考えています。







3.林内閣府政策統括官(経済財政運営担当)による追加説明

 経済財財政諮問会議について御説明します。
 冒頭、赤澤内閣副大臣から骨太方針案の原案からの変更点等について説明を頂いた後、意見交換を行っています。
 民間議員2人から発言がございました。
 1人目の民間議員です。骨太方針の取りまとめに感謝する。特に最低賃金の全国加重平均1,000円の早期引上げ、同一労働同一賃金の実現、NPO等を活用した子供の貧困への対応、地方への分散等の取組をお願いしたい。
 感染症対応については、途上国の過度な開発等による温暖化などにより、再び新たな感染者が発生する可能性がある。日本の感染者対応を強靱化していく必要がある。国産ワクチン開発に必要な財源を投入するとともに、イノベーティブな治療薬を早期に承認できる仕組みが必要。また、ワクチンパスポートも早期に導入すべき。財政健全化については、デジタルの活用による生産性の向上やEBPMによるワイズスペンディングの取組が重要。将来のあるべき経済社会に向けた構造改革・対外経済関係については、専門調査会でしっかり議論し、基本的考え方を取りまとめていきたいとの御発言でした。
 別の民間議員です。骨太方針の取りまとめに感謝。財政健全化をまず堅持していくべき。世界の大きな構造改革に対応して潜在成長率を引き上げ、将来の安心につなげていくことが大事。そうした観点から、グリーン、デジタル、活力ある地方づくり、少子化対策の四つの柱に重点を置いて取り組むべき。その際、スピード感が重要であり、しっかり実行するべき。デジタル化を活用したEBPMのプロセスや成果の加味というのが大事。大きな枠組みの変化を捉えた政策づくりを進めてほしい。若者世代、子供の子育て、子供世代の安心づくりが大事。四つの柱を連携させていくべき。
 例えば活力ある地方づくりには、二地域就労や二地域居住、ワーケーションがポイントだが、これには保育といった問題があり、課題である。里帰り出産も同じで、安心できる子育て環境づくりが重要。人材育成も鍵となる。非正規雇用の離職者がニーズに合った能力を身につけて安心して働くことができるよう、求職者支援制度を推進していくべきだといった御発言でした。
 総理の御発言は、お聞きになったとおりです。






4.野原次長(内閣官房成長戦略会議事務局)による追加説明

 経済財政諮問会議の答申の後、成長戦略会議として成長戦略実行計画案についての審議になりました。
 まず冒頭、赤澤副大臣から、6月2日の成長戦略会議以降の主な変更点について御説明をした後、意見交換に入りました。赤澤副大臣の説明の要旨を御紹介します。
 資料3の成長戦略実行計画案を用いまして、 赤澤副大臣から変更点を説明いたしました。
 6ページ、地方自治体のデジタル化を推進するため、地方自治体間の人材の共有を図ることを追記しました。
 それから、9ページ、原子力産業について、現在のエネルギー基本計画の記載に沿って人材育成等を追記しました。エネルギー基本計画の見直しについては、現在御議論いただいているところですので、新たな記述というのは入れておりません。
 それから、12ページ、第4章の2におきまして、カーボンニュートラルに伴う電化とデジタル技術の関係について追記をしました。昨年12月に取りまとめていただいた実行計画の文章をそのまま記載しております。
 それから、13ページ、産業構造の変化に伴う労働移動の円滑化を図るためにも働き方改革を推進する旨を追記しました。
 それから、21ページ、新規株式公開における価格設定プロセスの見直しについて、趣旨をより明確にするため、我が国ではサラリーマンの年金などの資金が投資されにくい状況となっていると表現を変更いたしました。
 25ページです。公正取引委員会の唱導について、意味を分かりやすくするため、提言のことである旨を追記いたしました。
 それから、28ページでございます。ワクチンの国内での開発・生産について、財源は安定的に確保する旨を追記いたしました。
 29ページですが、予防・健康づくりに加え、重症化予防への支援を追記いたしました。さらに、医薬品産業のエコシステムを確立するため、政府の司令塔機能を確立することを明記いたしました。
 以上が赤澤副大臣からの変更点の説明でございました。
 その後、有識者委員の方が2人御発言をされました。
 最初の方の御発言です。発言を詳しく御紹介しますと、成長戦略全体として経済や医療の安全保障、大都市への人口集中、気候変動、大規模災害など、コロナ禍を契機に顕在化した社会経済課題の解決を目指しつつ、同時に成長による経済力強化のための幅広い政策が盛り込まれました。
 社会経済課題の解決と成長による経済力強化を車の両輪として同時に追い求める内容となっており、このことを高く評価いたします。是非ともスピード感を持って着実に実行していただきたいと思います。
 3点述べます。第1に、デジタルやグリーン対策を成長の原動力として強力に推進すべきです。その際、カーボンニュートラルの実現に向け、政府には民間のイノベーションへの挑戦を力強く促す積極的な支援を求めたいと思います。
 また、増大する電力需要を賄い、経済と環境の両立を図るためには、原子力の活用が不可欠であり、安全性最優先の再稼働、新増設、リプレースなどに正面から取り組むべきと考えます。
 第2に、生産性向上等に取り組む中小企業への支援、地方への人の流れの拡大、観光地の再生、農林水産業の成長産業化など、地域経済活性化のための的確な諸施策が出そろい、心強く思います。なお、中小企業の円滑な事業再生が可能となるよう、私的整理のガイドライン策定等の対応をできるだけ早期にお願いします。
 第3に、実行計画の冒頭で生産性向上の成果を賃金として分配し、需要拡大を通じた成長を図る成長と分配の好循環の道筋が明確に示されたことを高く評価します。その上で、最低賃金については、感染症の影響を受けて厳しい経営環境が続く足下の状況を踏まえれば、今年も現行水準が維持されることを強く望むものです。これから開催される中央及び地方の審議会において、客観的データに基づく慎重かつ公正な検討がなされることを期待していますという御発言でありました。
 もう一人の有識者の方の御発言です。コロナ禍における医療等の課題への対応について、政府としての取組が明示されたことを高く評価する。成長戦略に関してコメントする。とりわけ3点強調したい。
 1点目ですが、SPAC制度の導入について明示されたことを評価する。日本経済にとって新陳代謝を進めることは重要。また、IPOの値決めが低めであることへの解決策の一つにもなる。スタートアップの事業環境整備を進める上でも、投資家保護にも配慮しながら、新しいSPAC市場制度についてできるだけ早く制度化してほしい。遅くとも年度内に方向性を示す必要性がある。成長戦略会議としてもフォローアップが必要である。
 2点目でございますが、日本の企業の退出コストが高いことを受けて、その問題を解決するため、今回私的整理等の利便性の拡大のための法制面の検討が記載されたと。コロナ禍でも、他国に比べて倒産率が低いなど、これまでの経済政策は成果を上げているが、ワクチン接種が進み、イギリスやアメリカでは経済回復が急速に進んでいる。日本でもワクチン接種が急速に進んでいるので、アフターコロナは日本でも思っているよりも早く来るのではないかと。この私的整理等の利便性の拡大のための法制面の検討について、スピード感を持って取り組んでいく必要がある。私的整理の利便性向上のための法制面の検討については、来年の通常国会に法案を提出するとともに、ガイドラインの整備にも取り組んでほしい。
 3点目ですけれども、競争政策について。公正取引委員会のアドボカシー機能の強化が必要であると。公正取引委員会の体制の強化についても是非お願いしたいという御発言がありました。このお二人の御発言の後、成長戦略会議の取りまとめとして決定したということでございます。
 成長戦略関係のところは以上でございます。






(以上)