第6回記者会見要旨:令和3年 会議結果

西村内閣府特命担当大臣記者会見要旨

  • 日時:令和3年5月14日(金)21:09~22:38
  • 場所:中央合同庁舎第8号館1階S101・103会見室

1.発言要旨

 冒頭、経済財政諮問会議のご説明を申し上げて、その後に尾身先生にも入っていただいて、コロナの対策本部、朝の分科会のお話などをさせていただきたいと思います。
 経済財政諮問会議につきましては最後に菅総理が話されていますので、ポイントのみを申し上げます。また後ほど、事務方からも説明をさせていただきます。
 本日は、「金融政策、物価等に関する集中審議」、それから、「経済・財政一体改革」について議論をいたしました。その中で文教・科学技術についても議論をしております。
 まず、黒田日銀総裁からご説明があり、内閣府から経済政策の進捗報告などを報告させていただきました。
 経済・財政一体改革、そして日本経済の底上げについて次のような意見がございました。まず、国民の所得水準の底上げのためにも最低賃金を最低でも3%引き上げるべき。中小企業の生産性向上に向けた支援などの対応政策を行いつつ、コロナで繰り越された需要、いわゆるペントアップ需要がこれから出てくることを考えれば、3%の引上げは可能ではないか。また、賃上げした企業には積極的に支援するなど、企業が賃上げする魅力となるインセンティブを与えるべき。経済再生には改革のプランとともに実行する人、動いてくれる人を確保することが必要。外部人材を活用して日本再生人材を増やしていくべき。また、デジタル化、グリーン化といった取組を通じて、付加価値を高め、経済あっての財政の考え方の下、強い経済を構築することが財政健全化に不可欠。その上で、プライマリーバランス黒字化などの財政健全化目標を堅持すべき。そのため、社会保障費を高齢化による増加分に抑えるなどの歳出抑制の目安を堅持すべき。
 続いて、科学技術・文教については次のようなご意見がありました。オンライン教育を活用し、生徒一人一人の個別最適な学びを実現すべき。同時にWi-Fi環境が整っていない家庭への支援や受験料の免除など、教育の機会の格差を生まないようにすべき。10兆円規模の大学ファンド創設を梃子に、イノベーション創出と大学改革を同時に推進すべき。こうして博士号取得者の増加や活躍の機会を生み出すとともに、大学研究者での若者、女性、外国人の登用などを通じて研究の多様化を進めるべき。このような意見がございました。
 最低賃金についてこうした前向きな議論がございました。また、昨日ご紹介いたしました、私どもの最低賃金に関する調査の結果もお配りしております。具体的に細かくは説明しませんでしたが、よくご理解いただいていると思います。その上で、前向きに取り組む中小企業も、最低賃金を含む賃上げがあったとしても、3割、4割が非常に前向きに取り組むという姿勢ですので、そういった企業を後押ししながら、他方、厳しい対応を取る企業も一定数はありますので、そういった企業を支えていく政策を講じていきたいと考えております。
 いずれにしても、様々な支援策がありますので、生産性向上と併せて支援をしていきたいと考えております。





2.林内閣府政策統括官(経済財政運営担当)による追加説明

 令和3年第6回経済財政諮問会議について、概要を御報告します。
 今回は先ほど西村大臣から御紹介がありましたように、3つの議題で議論しました。まず、「金融政策、物価等に関する集中審議」について黒田日銀総裁から資料1、私からは資料2について説明しました。その後、経済・財政一体改革の総論及び日本経済の底上げについて、民間議員からの御説明もありました。
 民間議員からの説明については、コロナからの回復に向けた動きの中で国際競争が進展していて、デジタル化・グリーン化に加えて、長年言われてきた日本問題への取組について、経済財政諮問会議の場において有識者の参加を得て検討するべきである。
 経済財政運営においては、マーケットに安心感を与えることが必要であり、コロナ禍で脆弱性が明らかとなった戦略物資やサプライチェーンの構築を推進するとともに、中堅・中小企業がその受皿になるようにJETROを通じた調査改革、そしてプッシュ型の支援をお願いしたい。積極的な産業政策が必要で、例えば沖縄ではOISTに立派な科学者がいるので、産官学の優秀な人材を集めるべきである。
 日本経済の底上げについて、可処分所得の向上が消費の活性化につながるため、経済の好循環を通じた経済成長、社会保障制度の維持などに必要不可欠である。
 日本では平均賃金の水準は国際的に大変低く、諸外国はコロナ禍でも最低賃金を引き上げている。日本では一般労働者との賃金格差も拡大し、都道府県によっては生活保護水準ぎりぎりとなっている。最低賃金の上昇は価格格差の是正にもつながるため、大変重要な政策ツールである。早期に全国加重平均1,000円を目指し、今年は最低でも3%の引上げを行うべき。
 今後、ワクチン接種の進展に伴うペントアップ需要や中小企業の生産性向上に向けた対応政策を併せて、最低賃金の問題に取り組み、最低賃金を含む賃上げにより、現役世代の可処分所得を増やすことが重要。社会保障制度改革を引き続き推進する必要がある。格差是正の観点から、キャピタルゲインへの課税や、資産課税など、いろいろな分配策を考えることも重要だといった御説明がありました。
 それを受けまして、経済産業大臣からのご発言です。
 まず、マクロ経済運営の重点課題のうち、中小企業の海外展開支援については、JETROを事務局とする商社OB等の外部専門家を活用した販路開拓の支援や、海外の主要なECサイトへの日本産品の販売支援などを行っているが、引き続き中小企業が海外需要を取り込めるように支援していく。
 また、対日直接投資の拡大については、今後、半導体などデジタルやグリーンといった成長分野において、経済安全保障上の観点にも留意しながら、海外からの投資や高度人材を集中的に呼び込み、我が国経営資源との融合を促すことで、イノベーションの創出や強靭なサプライチェーンの構築につなげていく。
 賃上げモメンタムの強化については、経済産業省としては中小企業を始めとする生産性向上の支援や下請け取引の改善、雇用増や所得の拡大を促す税制措置等を講じていき、最低賃金を引き上げることができる環境づくりにもしっかり取り組んでいくといった御説明がありました。
 麻生財務大臣のご発言です。
 各国ともコロナ下において財政出動を行う中で、戦後1回も財政出動を行わなかったドイツですら財政出動しており、その財源を賄う措置を講じようとしていることも踏まえ、日本も財政健全化の旗を降ろさず、応能負担の強化を図りつつ、着実に歳出歳入両面の改革を引き続き実行することが重要。
 資料3にも記載されているとおり、コロナ対応に万全を期しているところではあるが、同時に社会保障、非社会保障、地方に関する歳出改革の目安は、コロナ下でも財政規律としてしっかりと機能してきた。来年度から団塊の世代が後期高齢者になり始めることも踏まえれば、今後もこうした取組を継続していかねばならない。
 最低賃金の引上げについては、これまでの経済財政諮問会議で申し上げており、コロナで大変な状況もあるが、民需主導の自律的な経済の好循環を実現するために、コロナ前に引き続き積極的な賃金アップを継続していただくことが重要ではないかと、基本的に考えているという御説明がありました。
 関連の民間議員からのご発言です。
 まず、財政健全化の関係ですが、足下と先を見据えた改革を両方今からやる必要がある。その意味で、財政健全化は今から取り組むべきである。歳入面での応能原則強化、全世代型社会保障改革、エビデンスに基づいた歳出改革が必要。経済の構造を変えていくことも必要。改革プランを書く人に加え、市町村などの現場で動く人材を確保する必要があるというお話がありました。
 あわせて、賃上げについて、日本は貧困化の方向に進んでおり、全体として賃上げをし、豊かさを実現する必要がある。改革に加えて個人の能力アップ、取引価格の適正化などの転嫁が必要だというようなお話がありました。
 別の民間議員です。
 世界経済、日本経済は夏を境に大きく変わる。米国の回復や経済対策により日本の輸出がブームになり、輸出型の経済へシフトし、対日投資を増やしていくようにビジネスモデルを変えることが重要。
 最低賃金は、雇用情勢が悪い時に変えないのは理解できるが、人手不足の時は変えるものである。そのためにも人材育成、キャリアアップの支援が必要。正規、非正規の差をなくすために、最低賃金の引上げが必要。ただし、経済は過渡期にあり、米国の大規模な支援策は経済学者からも評価されている。
 今は政府が国民を助けることが大事。賃金が上げられるように、企業を政府が支えることも必要。中小企業への支援の強化、賃上げ税制の活用など、賃上げのインセンティブにより国民を助けることが必要だといった御説明がありました。
 次に、文教・科学技術について、民間議員から資料4の御説明がございました。
 説明の内容の大きな問題は2つある。オンライン教育と研究開発・大学改革。オンライン教育については、GIGAスクール構想に代表されるが、一人一台の端末を配備している。ただ、そのソフト面の整備計画が遅れている。例えば、デジタル教科書ができるのは2025年になり、オンライン教育ができる人材の不足といった問題が出ている。
 一方で、進めていく中で問題を発見していくことも重要。実際、リモート教育が進む中で問題点が洗い出されてきている。教育免許取得者以外にも多様な人材を使えるようにすることが重要。デジタル教科書については、著作権の援助や、そういったものは家計ではなく政府が負担するべき。
 研究開発や大学改革について、以前は企業の中央研究所があって、教育も社内で行い、終身雇用を目指したが、今は企業が中央研究所を持っておらず、先端技術において短いサイクルでイノベーションを起こすことができる組織が必要。人材も高度な知識を持った人材が必要で、そうした場として大学が重要になる。
 10兆円ファンドを立ち上げたわけだが、運用益は優れた研究者個人に直接給付するべき。将来的には大学自体が投資対象になれるようになるべき。つまり、研究によって収益を生み出すような実績を作っていくべきではないかという御説明がありました。
 萩生田文科大臣から資料5に関する御意見です。1ページに関連してSociety 5.0時代を生きていく子供たちに必要な能力を育むため、教育の無償化、一人一台端末の整備や、小学校35人学級の計画的整備を進めており、今後、こうした政策の効果を検証しつつ、多様な子供たちを誰一人取り残すことなく育成する個別最適な学びと、多様な個性を最大限に活かす協働的な学びを一体的に充実し、質の高い学びを実現することが重要。
 2ページについて具体的には紙の教科書の良さを踏まえた上で、デジタル教科書や学習履歴などの教育データを活かした、子供の発達段階に応じたデジタルならではの学び、自分の感覚や行為を通して理解するリアルな体験を通じた学びを推進するべき。また、全ての子供が質の高い学びへ接続する観点では、教育開始年齢の早期化は世界の潮流であり、好奇心や粘り強さなどの非認知能力を幼児期に身に付ける機会の提供など、全5歳児の生活・学習基盤を保障する保幼小の架け橋プログラムの推進などの幼児期からの学びの基盤づくりを進める。加えて、質の高い教育の基盤として、教師などの指導体制の充実・質向上、専門人材の活用、学校施設の計画的・効率的整備を進める。
 3ページ、今後の価値創造の源泉となる科学技術・イノベーションを担うのも人であり、博士課程学生への支援や大学ファンドの創設、研究のデジタル・トランスフォーメーションなどにより、若手を始めとする多様な研究者が一層自由に研究に打ち込み、活躍できる環境を整備する。また、今後の感染症蔓延に備えるべく、医療人材の資質向上、養成の在り方の見直しや、ワクチン開発に関する研究開発を検討するという御説明がありました。
 続いて、資料6、井上大臣からの御説明です。
 科学技術・イノベーションについて3点申し上げる。1ページについて安全・安心に関わる新興技術の育成。先月、日米首脳会談においても重要技術の育成・保護のための協力が合意される中、世界では迅速かつ機動的に重要技術を育てる仕組みづくりが始まっており、政府としては、経済と安全保障を横断する取組を強化する観点から、重要技術に重点投資するための新たな仕組みづくりに尽力する。
 2ページについて大学ファンドの関係のご発言がありました。。我が国の大学は博士課程に進学する学生が減少するとともに、諸外国の研究大学と比して事業規模が低迷している。若手研究者の育成を始め、将来の研究基盤への長期的・安定的な投資を実行するため、令和4年度予算要求を視野に、早期に10兆円規模の実現を図りたいと考えている。支援に当たっては、大学改革を要件とし、CSTI(科学技術・イノベーション会議)での議論を踏まえて、新たな法的枠組みを検討し、次期通常国会への法案提出を目指す。
 3ページ、ムーンショット型研究開発制度の充実について、環境などの重点分野において、諸外国との連携強化を含めて、研究開発プロジェクトの充実を図る。さらに、未来社会の担い手となる若手研究者のアイデアを取り入れて、本年秋頃に目標を設定するなど、制度全体の充実を図る。これらを始め、第6期科学技術・イノベーション基本計画を着実に実行し、総合知による社会変革と、知と人への投資の好循環によりSociety 5.0の実現を目指すというような御説明がありました。
 次に経産大臣からご発言があり、オンライン教育の日常的な活用については、経済産業省では1人1台と学習用ソフトウエアEdTechの活用など、学校におけるデジタル装備を通じて子供の学習環境の抜本的改善を進める「未来の教室」実証事業を全体の小中高校の現場で行ってきた。この成果を全国の教育現場に届けるべく、EdTech導入補助金によるEdTechの学校への導入支援や、オンラインの探究学習コンテンツを集めたSTEAMライブラリーの提供などを通じて進めていくという御説明でした。
 財務大臣からは、オンライン教育については、1人1台整備した端末が文鎮にならないよう、活躍、活用を進めるべき。その際、教育委員会や各学校による教育の指導力の改善や外部人材の活用などが不可欠であり、国、地方一体で取り組む必要があるということでした。
 また、大学ファンドの創設を契機に、抜本改革を進める必要があり、ファンドの参画大学には、大学の経営者としてふさわしい人材を内外から確保するとともに、卒業生からの寄附金や企業との共同研究などにより、外部資金を大幅に増やすなどの改革にコミットいただくことが不可欠。国立大学運営費交付金については、教育研究の成果に基づく配分のメリハリが十分ではなく、メリハリを強化していく必要があるという御指摘がありました。
 民間議員からは、まず、教育の関係で、全てを国や自治体がやるのではなく、民間企業を活用していくことが重要。例えば、社会に役立つ教育の分野では、寄附税制なども活用してやりやすくすることが重要。科学技術に関しては、OIST(沖縄科学技術大学院大学)のようなイノベーションに優れた大学を創るには、ダイバーシティの担保は重要。10兆円基金も今あるものを上手く活用していくという視点で必要だというような御説明でした。
 別の民間議員ですが、教育には外部人材が必要。教員は今忙しくて新しいICTやオンライン技術を覚えるにも疲労している。改革は必要であり、外部人材を厚くしないと、現場になかなかノウハウが落ちていかないのではないか。一人一台端末を活かすには、ソフト面や教え方の作り込みが大事。現場の教育と外部人材とで新しいタイプの教える仕組みをオンラインで実現し、教育の高度化を実現するべき。イノベーション創出に向け、教育、研究、大学改革はいずれも大事。成果にコミットして自由度の高い運営の仕組みを構築することが必要であり、今はプロセスの審査で時間が掛かるが、プロセスより結果に比重を置くべき。高度人材については、AIに加えてサイバーセキュリティー人材が大事で、海外でも増えているが、国内で確保することが重要。きちんとやることが求められる点で日本人にも向いており、人材育成が重要だという御指摘がありました。
 最後に、総理から御発言がありましたが、現場でお聞きになったとおりです。






(以上)