第11回記者会見要旨:令和2年 会議結果

西村内閣府特命担当大臣記者会見要旨

  • 日時:令和2年7月17日(金)17:36~18:28
  • 場所:中央合同庁舎第8号館1階S101・103会見室

1.発言要旨

経済財政諮問会議・未来投資会議の概要について御報告します。
本日は合同会議を開催いたしまして、「骨太方針2020」、そして「成長戦略実行計画」を取りまとめました。この会議の後の持ち回り臨時閣議におきまして、この2つは閣議決定されました。
まず、骨太方針については、「危機の克服、そして新しい未来へ」という副題を付けております。正に新型コロナウイルス感染症や、毎年のように頻発化する豪雨災害を経験し、この危機を克服していくということ、そして、その後に新しい未来、正に「新たな日常」を構築していくことが大きなテーマです。
残念ながら、今、昔の日常に戻りつつあります。コロナを経験する前の日常に戻って、同じように飲み会や会食をすれば感染が拡大します。感染拡大防止と経済社会活動の両立という、この本当に難しい課題を実現していくためには、「新たな日常」を実現しなければいけないということです。
そのために、今まで政府が行えなかった様々な手続のオンライン化やデジタル化について、デジタル・ガバメントを推進し、そしてデジタルニューディールによって社会全体・経済全体をデジタル化していくことが大きな柱です。
同時に、「新たな日常」の中に入れても良いのではないかと思いますが、頻発化・激甚化し、これからも起こるであろう豪雨被害や感染症から国民の皆さんの命を守る取組。この2つが大きな柱となっています。防災・減災、国土強靱化も、もう1つの柱となっているということです。
その上で政府として取り組んでいくことが、正にデジタル化であり、また、多核連携という言葉を出していますが、一極集中を是正・解消し、地方創生を図っていくこと。成長と分配の好循環を引き続き実現していくという視点から、人への投資、イノベーションへの投資により促進させていく。それから、誰ひとりとして取り残さない包摂的な社会を作っていくことの2つをしっかりと記載し、また、世界の中、国際社会の中で不可欠な存在になっていく。特に、新たな秩序が模索される中で、この骨太方針で新しい経済社会の姿を示すことにより、新たな秩序のルールづくりや、国際社会の中でのリーダーとして存在感を発揮していく。
これらの事柄については、半年で実行計画を作り、着実に実行していく。もちろん、デジタル化など、既に取り組まなければいけないことは直ちに着手して取り組んでいくわけですが、そういった取組も書いております。
そしてもう1つ、成長戦略については、新しい働き方と、その定着、あるいは決済インフラの見直しや手数料の引下げなども入っています。デジタル市場への対応やオープン・イノベーションの推進も柱として策定しております。
そして、総理から表明がありましたが、今月後半から新型コロナウイルス感染症の時代、さらにはその先の未来の新たな社会像・国家像を構想するための議論を開始します。「デジタル化、地方創生を推進しながら、変化への対応力があり、強靱性や持続可能性を持った長期的な視点に立った社会像を追求していく」とのお話がございました。
詳細は、後ほど事務方から説明させていただきます。
それから、本日午前にシンガポールのチャン・チュンシン貿易産業大臣と電話会談を行いました。アフターコロナにおけるTPP11の意義を中心に幅広く意見交換をして、次の5点について認識を共有しました。
一点目が、経済回復においてTPP11等を通じた自由貿易の推進が重要であること。二点目として、TPP11がサプライチェーンの強靱化やデジタル化の実装などの観点から、アフターコロナの世界経済を進化させていく上で重要な役割を担い得ること。そのため、三点目、TPP11の進化が重要であること。また、日本時間の8月6日午前になるかと思いますが、メキシコが議長の第3回TPP閣僚委員会の成功に向けて、引き続きシンガポールと日本がしっかりと連携し協力していくこと。四点目として、二国間関係ですが、ビジネス関係者の往来の早期再開を期待すること。五点目として、デジタル経済に関して、二国間での協力を強化していくこと。この5点について認識を共有しました。
日本としては、まさにTPP11の主要なパートナーでありますシンガポールとともに、ウィズコロナ・アフターコロナにおいて、ますます緊密に連携していく所存です。
私からは以上です。





2.質疑応答

(問)骨太方針と成長戦略に関してお聞きしたい。今回の骨太方針は、今後の対応方針に記載内容を絞り込むという方針で臨まれています。方針は示されている一方で、具体的にどう進めていくのかという議論は、正に今後の議論となると思いますが、この具体化について、大臣としてはどう進めていかれるお考えなのか。また、総理もおっしゃっていた今後拡大する未来投資会議について、これはどういった分野から人を加える形で拡大していくのか。大臣の現時点でのお考えがありましたら、お願いします。


(答)正にこの骨太方針に示しました5つの柱ですが、これは先ほど申し上げたとおり、デジタル化であり、多核連携の地方創生であり、それから「人」・イノベーションの投資、それから「新たな日常」を支える包摂的な社会の実現、そして、新たな世界秩序の下での活力ある日本経済の実現という5つの柱を示しております。
大きな方向性としては、コロナ、ポストコロナを経験した「新たな日常」を作っていくということですが、もう1つが、「防災・減災、国土強靱化」です。共に国民の生命をしっかり守っていくということが2つの柱ですが、その下で5つの大きな柱があります。
その主な項目について、年内に実行計画を策定していきます。もちろん、直ちに着手できるものもありますので、それは行っていくとして、いずれにしても断固たる決意で、言わば、これまでの宿題返しでもありますし、今回経験して、これを更に進化させて実行していくということです。こうした方針を踏まえて、今後、実行計画の具体的な対象や策定手順は検討していきたいと思います。
それから、先ほど申し上げたように、未来投資会議を拡大して、幅広い方の御意見を聞きながら新たな議論を開始するとようにと、総理から指示を受けております。時期については、総理とも相談しなければいけませんが、今月中にも第1回を開催したいと考えています。
総理から、「正に新しい働き方を定着させ、地方創生を推進する。デジタル化を進めるとともに、変化への対応力があり、強靱性や持続可能性を持った長期的な視点に立った社会像を追求していきたい」という方向性が示されており、この方向に沿ってメンバーを決め、また、時にゲストスピーカーも呼んだりヒアリングするような形も考えながら、幅広い議論ができればと考えています。特に大きな方向性は、今回、骨太方針でお示ししましたので、自由闊達な議論ができる場にしたいと考えております。
メンバーについては、これから総理や官房長官とも具体的に相談し、決定した段階でまたお示ししたいと思います。



(問)コロナのことで伺いたい。今日も東京都の感染者が293人でした。この後、1都3県の知事との会合もありますが、改めて感染状況の御認識と1都3県の知事に何を呼び掛けたいかを教えてください。
あわせて、Go Toキャンペーンについて、昨日の新型コロナウイルス感染症対策分科会の御説明でも、東京都内の感染が落ち着けば東京都の方たちもGo Toキャンペーンに参加できるようなことが分科会長の尾身先生の資料にあったかと思いますが、一体どういった条件になれば東京都民が参加できるようになるのか。もし御所見がありましたら教えていただきたい。


(答)まず、東京の感染状況、本日293名ということで、まだ具体的な中身は聞いていませんが、昨日も286名ということで、かなり高い水準です。引き続き感染経路不明の方の割合が一定程度ありますし、若い方が多く、まだ高齢者は少ないとはいえ、絶対数が増えていますので、高齢者への感染も見られ始めているということで危機感を強めているところです。
対策を強化していかなければいけないという中で、分科会でも御報告しました新型インフルエンザ等対策特別措置法第24条第9項に基づく様々な要請について、1都3県の知事と協議したいと思っております。あわせて、このGo Toキャンペーンについても、分科会での議論などを御紹介したいと思っています。
それから、東京都については、言わば苦渋の選択で、こういう形で感染者の数が増えている中で、当面の間、対象外とするということで、分科会でも御議論いただいて、専門家の皆さんに了解いただいたところです。今のような感染状況の中で多くの地方も懸念を示されており、こういう判断をせざるを得なかったのですが、引き続き専門家の皆さんとは日々議論してきたいと思いますし、分析していきたいと思います。分科会も、定期的に、様々な判断をしなければいけないこともこれから多々出てきますので、ある意味で定期的に開くような格好になると思いますから、その時々、その度ごとに、専門家の皆さんには感染状況についてしっかり分析いただきたいと思っています。
今の状況について、昨日、尾身先生もおっしゃったとおり、急激に減る事態はなかなか想定しにくいと思います。これが多少上下しながら、横ばいからどうなっていくのかというところをしっかりと見極めたいという専門家の皆さんの御判断ですので、今の段階で予断を持ってはなかなか難しいわけですが、落ち着いてくれば、東京都も当然再開できるようにしていきたいと考えているところです。



(問)Go Toキャンペーンに関連して、足下の経済についてお聞きしたいです。元々、大臣は「5月を底に内需主導で回復」とおっしゃってきたと思いますが、Go Toキャンペーンの縮小や感染者の数が日々多くなる中で、国民の間では外出や外食などを自粛するムードもあると思います。あと、豪雨やこの涼しい気候も経済にはマイナスだと思うのですが、感染者数が高止まりする中で、現在の経済の状況をどのように見ていらっしゃいますか。


(答)感染者の数が非常に増えてきている様子については、積極的にPCR検査を行っていることや若い方が多いことなども含めて判断しなければいけません。繰り返しになりますが、高齢者の方が少し増え始めている点には懸念があるものの、いまだ重症者の数も少なく、医療提供体制は確保されています。厚生労働省の全国の最新の医療提供体制についての発表が今日もあると思いますが、医療提供体制は今の時点でしっかりしていると認識しています。そのため、医療提供体制は心配していないものの、陽性者の数が増えていますので、対策を強化しなければならないタイミングだと思っています。
あわせて、豪雨によって多くの方が被災されて大変な思いをしていらっしゃる。そうした被災者の皆さんの心情にも寄り添いながら対応していかなければならないので、浮付いた気分で、みんなで元気出していこうよとはなかなか言いにくい状況ではあります。しかし、実態の数字を見ますと、4月・5月の緊急事態宣言で経済活動を抑制してきた時期からは、様々な数字が上向いてきています。街角の声を集める景気ウォッチャーなどの調査も上向いてきていますので、経済で言えば明るい面もあるのかと思います。
海外では中国が引き続き回復の兆しを見せていて、ヨーロッパも感染者数が落ち着く中で、EU内の移動や域外との移動も開始するということで期待もあります。しかしながら、米国での感染者の数が増えていることや、中南米・南アジア・中東・アフリカで感染が広がっているなど、予断を許さない状況だと思いますので、輸出とそれに伴う生産はまだ弱い面があると思っています。
全体としてはこのような状況ですが、我々としては、第一次補正予算・第二次補正予算で措置した予算を着実に執行していくことが重要です。最新の数字で、持続化給付金は約259万件・約3.4兆円まで給付が行われています。よく申し上げることですが、リーマンショックの時に約1.2兆円の雇用調整助成金で延べ4,000万人の雇用を守りました。繰り返し使われた方もいらっしゃるため、延べ200万件でした。今回の約259万件はその数を上回りますが、これは重複の無い数です。企業・個人事業主・フリーランスの方がその内訳ですが、その方々に約3.4兆円の給付が行われて、確実に経済を下支えしています。雇用調整助成金はまだそこまで給付されていませんが、それでも、申請38万件、2,500億を超える金額が支給されています。
それから、1人10万円の特別定額給付金も約12兆円の支給が行われています。予算総額の約90%、対象世帯数の9割を超えて支給が行われています。様々な負担を軽減し、確実に経済を下支えすることにつながっていると思います。これらの給付や助成等によって、GDP比で6.4%の押上げを下支えするという効果も我々は期待しています。何とか内需主導で4月・5月を底とし、経済回復の基調を確実にしていきたいと思っています。
その際、繰り返しになりますが、感染防止策と経済社会活動の両立を図っていくためには、「新たな日常」が必要です。テレワークも継続してほしいと思いますし、「3つの密」を避けていただきたい。マスクを必ず着用する、換気の悪い場所で大声を出さない、デジタル化・オンライン化・キャッシュレス化を推進する。そうした「新たな日常」を作らなければ、この「新たな日常」を実現することはできない。今、昔の日常に戻ってしまっていますから、当然、感染が広がってしまいます。そのため、当然、経済にも影響が出てきます。是非、「新たな日常」を作っていく。そのために第一次補正予算・第二次補正予算を執行し、そして規制改革を進める。
もう判こも要らなくなります。新たな形態の電子署名の有効性も今、最終の詰めを行っています。オンライン診療やオンライン教育も推進しています。「新たな日常」で感染防止策と経済社会活動の両立を図っていくことが一番大事ですので、皆さんにもそれぞれの立場で御協力をお願いしたいと思います。政府の立場では、正に急所であるバーやクラブなどの接待を伴う飲食業の対策、それから「新たな日常」を作っていくためのテレワークやIT化などへの支援、さらには、アクリル板やフェイスガードの導入やなどの感染防止策を講じる費用に対して、最大200万円までの持続化給付金での支援といった策を講じていきますので、昔の日常に戻らずに、「新たな日常」の中で経済活動との両立を図っていきたいと考えています。



(問)新型コロナウイルス感染症に対する今後の対応策について質問です。昨日、国会の参議院予算委員会閉会中審査において、東京大学先端科学技術研究センターの児玉龍彦名誉教授が新型コロナウイルスの感染拡大について強い危機感を示されました。「総力で対策を打たなければ来週は大変になる。来月は目を覆うようなことになる」と発言され、また、児玉教授はクラスターとエピセンターの違いを説明した上で、「第一、第二の波の時にこれを制圧して、無症状の感染者も無くすべきだった。しかし、それが行われないままに、実際に、東京の中に、今、エピセンターが形成されつつある」とも指摘されています。「責任者を明確にして、トップダウンで前向きの対応が必要。今すぐ国会を開くべきであり、今する対応は来週する対応の100倍の価値がある」と提言されました。この児玉教授の提言は非常に切迫したものであったという印象を受けますが、大臣の今後の対応に関するお考えをお聞かせください。


(答)昨日、私もそうした考えをお聞きしました。今の感染状況に対して、あるいは今後の感染がどう広がっていくかについては、昨日、尾身先生も言われたように、急激に増えていくのか、それとも横ばいで増減しながらどちらかの方向に行くのかといった様々な見方があります。昨日の新型コロナウイルス感染症対策分科会で示された見方は、昨日、尾身先生が示された見方です。
誰も今後が分からないわけですが、児玉先生がそうした見方を披露され、少なくとも私も危機感は共有しておりますし、新宿を中心としてバー・クラブなどの接待を伴う飲食業が、近距離で会話を交わす業種であるがゆえにリスクが高い業種となっていること、その対策を強化していかなければいけないことについては、認識を共有しているところです。
その上で、PCR検査をどの範囲でやっていくのかということについても、昨日、議論を行っていただきました。そして、厚生労働省から確認のための通知も示されたと承知していますが、無症状であってもリスクの高い業種・人・場所、つまりそうした感染者が出たところのそういう業態や、かつては症状がある人しかPCR検査をしていなかった濃厚接触者についても、今は無症状の人もPCR検査を受けられています。
先ほどの新宿区でも、広く呼び掛け、陽性者が出た店舗でなくても、呼び掛けに応じて自ら検査に応じている方もたくさんおり、百数十名から二百数十名の方が連日PCR検査を受けられているのではないかといった報告を受けています。
さらには、入院する時や手術を受ける前、高齢者施設で何か疑いがあるような場合には、幅広くPCR検査を受けて、無症状であっても、そういった方を検知して、そこから先の二次感染・三次感染にならないように封じ込めていくといったやり方で、今、取り組んでいるところです。
北九州市でも、感染者が出ても、こうしたやり方で幅広く濃厚接触者をPCR検査することによって落ち着いてきています。鹿児島県でも、あるお店を中心に100人を超える感染者が発生しましたが、かなり幅広くPCR検査を行って追い掛けています。
こうした取組を更に広げること。積極的に、そして戦略的にPCR検査や抗原検査を行う。また、今日新たに厚生労働省から発表されましたが、無症状でも唾液でできるという検査は、かなり有効な手段になってくると思います。検査に掛かる時間が30分程度であり、これも大いに活用して、PCR検査や抗原検査は鼻咽頭で拭う場合と唾液の場合と両方使えるようになっていますので、こういったものを組み合わせながら、とにかくリスクのあるところを見つけていって、小さな波をそこで抑え込んでいく。こうした努力を積み重ねていきたいと考えています。
引き続き危機感を持って対応したいと思いますし、そうした対策について、この後、1都3県の知事と意見交換したいと思っています。



(問)骨太方針の関連でお伺いします。今回、柱になっているデジタル化や一極集中の是正は、これまでの骨太方針でも課題として示されてきたものだと思いますし、大臣も先ほども宿題返しと言われましたが、今回記載された内容を実現するためには、やはり従来よりも進め方は変えていかなければいけないと思いますが、その辺りをどうお考えになっているかお聞かせください。


(答)2つ申し上げます。
一つは、今回の新型コロナウイルス感染症を経験して、国民の皆さんの意識が変わったということ。マイナンバーを使ってやっているのになぜこんなに上手くいかないのか。雇用調整助成金を申請しているのになぜ上手くいかないのか。テレワークをしているのになぜ判こを押しにいちいち会社に行かなければいけないのか。請求書の封を開けになぜ会社に行かなければいけないのか。こういった民間の側の意識もそうですし、政府内の意識も変わりました。マイナンバーを使って早くできると思ったら、全然そうじゃないじゃないか。あるいは、雇用調整助成金の申請もできると言ったのに、2回もダウンしたじゃないか。様々な手続がなぜこんなに上手くいかないのか。時間が掛かる。こういった批判を受けたわけです。もう待ったなしです。同じことを繰り返すわけにはいきません。
だからこそ、この半年でやれるところは今からでもやっていく。雇用調整助成金も、早く再び立ち上げたいということで、半年で実行計画を作って、それを実行すると、今、厚生労働省で必死になってやってくれています。意識が変わったこと、そしてその上で着実にやるべきことを今からやり、半年で計画を作ってそれを実行する。できなかったら、もうこの国はおしまいです。世界から取り残され、永遠にデジタル化最下位ということになるので、待ったなしだと思います。



(問)骨太方針の財政の部分について、骨太方針2018や骨太方針2019の方針を踏襲するということが書かれているのですが、プライマリーバランスの目標や具体的な数値の記載は止めているという状況だと思います。専門家の方から歯止めが利かなくなるのではないかといった懸念も出ていますが、なぜ削除しなければいけなかったのかを改めてもう少し詳しく伺えればと思います。


(答)まずは、今は、財政のことを気にしていたら、国民の生命や雇用、生活等を守れないということです。中小企業の皆さんが苦しい思いをしていて、飲食業や観光業の皆さんもそうです。おおよそ全ての事業が影響を受けて厳しい思いをしている。その方々を守り、日本の経済社会をしっかりと守るために、今は経済を守ることを最優先にしてますから、財政のことを考えている場合ではないということです。
ただし、当然、長い目で見れば財政再建、財政健全化を図っていかなければいけないわけです。ですから、その部分は骨太方針においても、7ページに「経済・財政一体改革を推進する」とか、あるいは8ページに「経済・財政一体改革を着実に推進し、次世代への責任の視点に立って質の高い持続的な成長と中長期的に持続可能な財政を実現していく」と書かせていただいています。
今申し上げたように、雇用を守り生活を守るため、今回、様々な形で第一次補正予算と第二次補正予算で経済の下支えをしています。しかし、オンライン教育やギガスクールといったものも含めて、今の子供たち、つまり将来のための予算でも当然あります。全てが全て未来時代のツケになっているわけではないと考えています。
オンライン教育によって、引きこもりだったお子さんも、1対1で先生と画面を通じてなら話ができるという子供たちも出てきていますし、少し進捗が遅れた子供たちも、個別の教育で追い付けるようになってきたり、あるいは、できる子は自分でコンピュータを使って先に学んだりといったことも可能になってきています。それぞれの能力、習熟度に応じて勉強ができ、全体として学力が上がっていく。格差が生じない個別最適化が大事だと思っており、そういった今の子供たち、そして未来に生きる予算もたくさんあります。
6兆円の出資や劣後ローンなど、厳しい状況にある中堅企業や中小企業に対する枠組みがありますが、これはベンチャー企業にも使えます。ベンチャーでロボットを活用するとか、オンラインで非接触で様々な事業を行う。あるいは、新たな創薬に挑戦するベンチャーもあるでしょう。オンラインの様々な事業を行うベンチャーもあると思います。こうしたベンチャー企業の支援にも使える予算です。未来に生きる予算であり、つまり、全てが全て次世代のツケになるわけではないと思います。しかし、やはり、骨太方針には「次世代への責任」ということもしっかりと明記して、中長期的に持続可能な財政を実現していきたいと考えています。
ありがとうございました。




3.風木次長(内閣官房日本経済再生総合事務局)による追加説明

成長戦略実行計画について御説明させていただきます。
成長戦略実行計画案について宮下副大臣から御説明いただいた後、意見交換となりました。
2名の民間議員からコメントを頂きました。
一人目から、実行計画について4点ございました。一点目、兼業・副業の自己申告制の導入や簡便な勤労時間管理など、新しい働き方の環境が整うことは有意義である。二点目、フリーランスの方が安心して働くことを保護することは、企業と労働者の双方に良い。三点目、社会人のリカレント教育やアート・デザイン・創造性の磨き直しといった付加価値を高める教育への支援、人材への投資は有効である。四点目、デジタル技術を活用した規制の精緻化は、モビリティやフィンテック、建築の分野で導入されているが、今後は全ての分野で検討を進めていくべき。その上で、人材についてのコメントがあり、2000年にITバブルが崩壊した後、2004年にGoogleが株式公開、2007年にAppleが最初のスマートフォンを発表した。通信はまだ2Gの時代であったが、これらは2名の若者がガレージからそれぞれ始めたものであり、今ではトッププレイヤーとなっている。
ウィズコロナやアフターコロナの時代では、アイデアさえあれば誰でも白地のキャンパスを拡大できる。政府は人・モノ・カネのある企業への支援ではなく、挑戦的な中小企業・スタートアップ・個人への投資に集中すべき。新しい日本社会に向けて、未来投資会議でのこれからの議論に大いに期待したいというお話がありました。
二人目から、実行計画について4点ありました。
一点目が40年変わらなかった銀行手数料の見直し、二点目が兼業・副業、三点目がフリーランスのルールづくり、四点目がスーパーシティについて、こうした大きな施策が含まれたことは重要であり、今後の実行が大切になってくる。
それから、残された課題も多い。実行計画ではKPIを達成できたものも多いが、一方で未達のものもある。一例としては、2020年に世界銀行のビジネス環境ランキングで先進国第3位になることを目指していたが、結果は18位だった。世界の成長は速い。コロナの下で、世界のデジタルトランスフォーメーションは凄まじい速さで進んでいる。第四次産業革命は更なる高みを目指すべき。その一例がブロックチェーンである。
成長戦略フォローアップには、中央銀行のデジタル通貨についての取組やブロックチェーンの国際ネットワークへの貢献も記載している。しかし、世界では人工知能は当たり前であり、ブロックチェーンの国家戦略を作って対応している。中国・米国・韓国・インドでは既に国家戦略を作っていて、ドイツも着手している。そうしたブロックチェーンの国家戦略があって、その一環として中央銀行のデジタル通貨がある。
日本においても、およそ20年前にIT戦略を作り、IT総合戦略本部やIT担当大臣を設けた時のような国家戦略が必要ではないか。日本はまだそこまでは至っていない。まず、基本的な枠組みづくりから始めるべき。そうした意味で、IT基本法の見直しも重要である。ブロックチェーンを含む高い次元のデジタルトランスフォーメーションを推進すべきであるといったお話がありました。
その後、この成長戦略実行計画について、未来投資会議の取りまとめとして決定されました。
以上です。


4.多田内閣府政策統括官(経済財政運営担当)による追加説明

経済財政諮問会議について御説明します。
こちらも宮下副大臣から、骨太方針の案について御説明いただいた後、意見交換となりました。
二人の民間議員の御発言を紹介します。
一人目からは、未来の社会を考える時は、「新たな日常」や経済の再生が重要。元の木阿弥という記事もあったが、そうなってはいけない。コロナ禍でマイナスになってしまった潜在成長率を再度戻していかなければいけない。潜在成長率がマイナスでは問題である。したがって、総理のリーダーシップでこの骨太方針を実現すべきである。さらに、コロナ禍で進んだ政策が後戻りしないようにもすべきである。骨太方針の中に書いてある一極集中の是正も重要であり、スマートシティなどを中心にして進めていってほしい。大企業の人材を中小・中堅へと移していくことにも取り組むべき。政府が肥大化した存在にならないように、民間投資の喚起にも取り組むべき。財政については、成長がなければ財政健全化もできないということが基本的な考え方であるべきであり、EBPMを通じてワイズスペンディングを徹底していくべき。経済財政諮問会議と未来投資会議がコントロールタワーとなって、真の日本経済の成長を実現したい。安倍政権発足時に、民間人を集めて産業競争力会議を開催した時のように、産官学で邁進していくことが大事とのお話がありました。
二人目からは、今回の骨太方針では、感染症の予防と経済の両立を目指した上で、新しい未来の基盤を示している。その中でデジタル化、特に行政のデジタル化をしっかり進めるべき。集中改革期間の1年間は短く、通常の意思決定では間に合わないため、しっかり進めなくてはいけない。
それから、多核連携型の国づくりについては、二地域居住などが重要。今回のコロナの経験で、働くこと、暮らすこと、そして、学ぶことが一体となって考えられるようになった。新しい働き方として注目されたフリーランスが安心して働けるようにすべき。リカレント教育や就職氷河期世代の支援も重要。
また、財政健全化も大切。そのための成長を実現する道筋を作っていく必要がある。骨太方針の実現・実行が大事であり、リーダーシップを発揮して、閣議決定された内容をしっかりと実行してほしいというお話がありました。
その後、経済財政諮問会議の答申として骨太方針を決定しました。
私からは以上です。





(以上)