第5回記者会見要旨:令和2年 会議結果

西村内閣府特命担当大臣記者会見要旨

  • 日時:令和2年4月15日(水)18:58~19:32
  • 場所:中央合同庁舎第8号館1階S101・103会見室

1.発言要旨

経済財政諮問会議の概要について御報告いたします。
本日は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の防止のため、総理大臣官邸と10か所を中継で結び、経済財政諮問会議の設置後、初めて、テレビ会議方式で会議を開催しました。
今回は、「緊急経済対策の効果」、それから、「デジタル・ニューディールの全国展開に向けて」ということで御議論いただきました。
まず、先週閣議決定しました「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策」の経済効果については、内閣府から次のような説明を行いました。
昨年、策定しました経済対策のうち、約76%分がまだ未執行であり、これから執行するということで、今後、実質GDPに換算して1.1%程度の効果が発現していきます。それから、今回の経済対策で、新たな追加分としての支出15兆円半ばをここに盛り込み、実質GDPに換算して最大2.7%程度の効果が発現することを見込んでいます。
最大のポイントは、今回の個人への30万円の給付金と、それから中小企業・個人事業主に200万円・100万円の給付金があります。これが、非常に厳しい状況に置かれている方々ですので、恐らく必要な支出に使われるのだろうと思います。全額使われた場合ということで、最大で表記しております。
最大2.7%程度ということで、これから発現する去年の対策の1.1%程度と合わせて、最大3.8%のGDPの押し上げ効果があると見込んでおります。
これ以外に、中小企業等への融資・保証、それから、税・社会保険料などの猶予などの施策については、資金繰りに影響を受けている全ての事業者を支援することになりますので、事業の継続、あるいは雇用の維持を強力に支えるセーフティーネット効果はあると思いますが、融資や猶予ですので、いずれはまた、それを返済する、あるいは支払いをするということで、直接の財政支出で渡し切りになるものではありません。そのため、ここには盛り込んでおりませんが、そういった融資が、ここに見込んでおります36.8兆円分、それから、納税の猶予・社会保険料の猶予を含めて26兆円分ありますので、これは当面の雇用維持であったり、事業の継続、あるいは生活の下支えに大きな支援、力となっていくものと思っております。
それから、民間議員からは次のような意見がございました。
感染症が一定期間程度継続する場合、あるいは世界経済の停滞が長引く場合も想定して、感染症克服後の社会が必要とする雇用の姿もイメージしながら、雇用を守り抜く方策を検討すべきだという意見でした。また、具体的には、中小企業等への新たな給付金が一刻も早く国民に届くように、事業者に届くように努めるとともに、雇用調整助成金をフルに活用して、人材の喪失を防ぐなどを行うべきという御意見もございました。
次に、「デジタル・ニューディールの全国展開」については、民間議員から次のような意見がございました。
高度医療や高等教育、研究開発等の集積・活用、スマートシティ間の広域連携、基盤となる台帳類のデジタル化、民間データとの連携といった特徴あるスマートシティ構想を、産学官連携で立案・再構築し、その取組も推進すべきという意見でした。
また、現状、東京に一極集中しているSTEAM人材育成の拡充に向けて、やる気のある地方国公立大学を中心に、世界とオンラインで結ぶなどの取組を徹底してバックアップし、地域経済の担い手となる人材を育成すべきという御意見もございました。
総理からの締めくくり発言は、お聞きいただいたとおりです。
詳細については後ほど、事務方から説明させていただきたいと思います。




2.質疑応答

(問)今回の対策で、実質GDPを最大3.8%押し上げるということで、リーマン・ショック時以来最大の経済効果が見込まれる対策となると思うのですが、一方で、IMFが日本の実質成長率はマイナス5.2%に悪化するという試算も出しております。
これも踏まえて、改めて経済対策の位置付けをどのように考えていらっしゃるか、教えていただければと思います。


(答)IMFは14日、日本時間の昨夜だと思いますが、2020年暦年の世界の実質GDP成長率について、マイナス3.0%、日本の成長率についてはマイナス5.2%になるとの見通しを公表したところです。
その見通しの中では、1929年の大恐慌以来の最悪の景気後退を経験する可能性が極めて高いとの見通しが示されております。私どもも、リーマン・ショックを超えて、大恐慌以来のそういう景気後退となることを見据えながら、しっかりと対策を打っていかなければいけないということを改めて強く認識しております。
今般の対策は、世界の各国と見比べても、対GDP比20%ということで、遜色のない非常に大きな規模の経済対策です。財政支出に加えて、先ほどの無利子融資、それから、納税・社会保険料の猶予といったことで事業の継続、雇用の維持、そして生活させていくことに全力で取り組んでいきたいと考えているところです。
まずは、短期的には経済が落ち込むことはやむを得ないことです。経済を止めないと、これは収束しないわけですから、人為的に自粛をお願いして、止めている面もあります。
まずは、この感染症拡大を何としても防いで、収束に向けて、できる限り早くその道筋をつけることが何よりの経済対策ですので、本当に不便をおかけしますけれども、国民の皆様には、あらためて80%の接触削減をお願いする。また、今日も経済界の皆様との意見交換がございましたが、多くの大企業においては、基本的にはもう在宅にしているとのことでした。製造業の現場は、なかなかテレワークというわけにはいかない部分はありますが、多くの企業で本社、あるいはオフィスはもう100%テレワークにしているという声も頂きました。中小企業は取組がなかなか難しい面もありますが、是非、封じ込めるという観点から、あらためて企業の皆様方にもそうした取組をお願いしたいと思います。



(問)先ほどの実質GDPを3.8%程度押し上げる効果があるということについてなのですけれども、改めて、こちらは年率換算でのGDPの話をしているのでしょうか、それとも、4-6月期や別の期間のGDPのことについてでしょうか。


(答)全体として我が国のGDPを押し上げる効果ということです。発現するのはこれからですので、全体としてベースを押し上げるという意味です。



(問)
経済財政諮問会議と直接は関係ないのですが、今日、お昼に公明党の山口代表が総理と会談して、1人当たり10万円の現金給付を所得制限を付けないで実施すべきだとのことでした。昨日、二階自民党幹事長も、1人当たり10万円という考えを示されています。
これについての受け止めと、与党内には、今回の来週以降に国会審議が予定されている補正予算の組みかえも求めるような意見も出ているのですが、大臣の御見解をお願いします。


(答)まず、国民に一律10万円という御提案については、以前から与党内で、公明党、自民党、それぞれから御意見も頂いておりました。こういった御提案については現在、与党において更に検討が進められていると承知しております。
私どもは、様々な御提案を頂いた上で経済対策を取りまとめました。その中で、1世帯当たり30万円の給付金について、本当に厳しい状況にある世帯の皆さんに、これをできる限り早くお届けしたいという思いです。
ですから、今から仮に、編成を急いでいる補正予算を組みかえるとなると、さらにその支給は遅れてしまうことになると思います。ですので、まずはこの30万円を本当に厳しい家庭の皆さんにできる限り早くお届けしたいという思いです。
したがいまして、細かい制度設計は様々なケースがありますので、様々な御指摘も頂いておりますから、できる限り迅速に、また、厳しい世帯にはできる限りしっかりと支援がいくようにという思いで制度設計を、今、急いでいるところですが、まずは、これも含めて、給付金を含めた補正予算を早期に提出して、国会で御審議いただいて、できる限り早期成立をお願いしたいと思っております。
ちなみに、早く届けるという意味で、申請に当たっては、1つはオンライン申請も活用したいと思っております。仮に、窓口にたくさんの方が来られると、また、感染拡大になる恐れもありますので、御自宅からの郵送など、申請窓口以外の方法を基本とできればと思っております。
コンビニをはじめ、様々なところに申請用紙を置くことも、今、検討しており、できる限り簡便に、そして、できる限り迅速にお届けしたいと思っています。
一律10万円・所得制限無しという御指摘も頂いております。それが最も早く届けられるのではないかという御指摘ですが、私どもは補正予算を提出して、国会で早期成立を目指して、その上で市町村の御協力も得て、5月中にも届くよう、できる限り迅速にお届けしたいと思っておりますので、与党の皆さんにはそうしたことも御理解いただきながら、さらに、与党内において検討が進められるものと理解しております。




3.多田内閣府政策統括官(経済財政運営担当)による追加説明

(多田統括官)経済財政諮問会議の御報告の前に、先ほどの大臣会見について、一部、私の方から補足をさせていただきます。
GDPのグラフの説明の中で、支出が15兆円台半ばというお話があったかと思いますが、これは、財政支出を基に事業規模といいますか、裏負担、民間の事業者負担も含めた数字が15兆円台半ばということです。
それでは、本年第5回の経済財政諮問会議の御報告に移りたいと思います。先ほど大臣から御紹介ありましたように、2つの議題について議論を行いました。
一つ目の議題、「緊急経済対策の効果」については、私の方から御説明させていただき、その後、民間議員ペーパーの説明、そして、各議員の御発言がありました。
まず、閣僚からの御発言を紹介させていただきます。
閣僚は高市大臣のみです。民間議員からのペーパーの中に、国・地方の公務員を臨時的に別枠で採用という御提言がありましたが、その点に関連して、今回の新型コロナウイルス感染症の影響によって企業の内定を取り消された方や離職された方を、会計年度任用職員や任期付職員として採用するなどの取組は、既に神戸市や神奈川県をはじめとして先駆的に開始され、各地で急速に広まっています。総務省としても、必要な助言・支援を進めていきたいというお話がありました。
民間議員からの御発言を御紹介します。
まず、一人目、今後のシナリオは大きく2つあるのではないかとのことで、一つは、予定どおり緊急事態宣言も終わっていって、アフターコロナの世界が早々に訪れるというシナリオの一つ。それから、もう一つのシナリオというのは、ある意味、感染症の影響が少し長引いてしまうというウィズコロナのシナリオということで、このウィズコロナのシナリオになった場合には、様々な広範な行動変容というのが起こってくるのではないかということです。
もちろん、シナリオの一つ目を実現していくべきで、その可能性もあるのだけれども、ウィズコロナのシナリオ、つまり、二つ目のシナリオを中心に考えておく必要があるということでした。
まずは、今回の緊急経済対策というのは、救命措置として実行されるものなので、雇用調整助成金などや給付金など、国民に早期に届けるべきである。今後は、マイナンバーを活用した早期の支払というのも検討していくべき。
それから、今は足下を見ると、サービス業や飲食業などは非常に厳しい状況になっているため、テナントの賃料、あるいはその家主からの立ち退き要求の回避といったような問題への対応など、これまで以上に踏み込んだことを考えていくべきではないかというお話がありました。
一方で、新しい需要も生まれてきて、新しい成長産業分野も出てくる。そうした分野への雇用、人材の移行を促すためにも、今から在宅での兼業や副業などを進めていくべき。
この方は、新しい需要や産業として、eコマースや物流、そして、デジタルの医療や農業の分野があるとおっしゃっていました。
今後、経済財政諮問会議でも、本日、報告のあった経済対策の進捗をしっかりとフォローして、必要があれば、更なる対応を取るべきだというお話がありました。
二人目です。今の一人目の方の発言を受けて、シナリオの二番目、ウィズコロナについて、企業経営者の立場からすると、それに怯えるのではなくて、前向きに捉えていくことが必要であり、そういう発想が必要。我が国は、Society 5.0や働き方改革という2つの取組をしっかりと考えた上で、企業の経営に取り組むべきだと思うというお話がありました。
三人目です。危機が長引くかどうかは、医療問題がいつ解決されるかに懸かっている。ワクチンの開発までそれなりの時間が掛かるとすれば、それまでの不安定な状況の中で、その影響をどう緩和していくかが重要。PCR検査は始まっているが、それに加えて、抗体検査や、接触者を追跡するようなアプリの開発なども重要。この問題の中では、今後、こうした医療の問題と経済の問題が直結しているため、この経済財政諮問会議の場でも、医療の進捗の話をしっかり聞きながら議論していくべきだという話がありました。
四人目です。従来から今回の経済対策については、素早く、国民に分かりやすくということを強調してきており、それは引き続きポイントである。事態は時々刻々変わっているので、それを見ながら柔軟に対応していくべき。雇用を守る、事業を守るということは、将来の経済の活性化につながるものである。他方で、守る、守るというだけではなくて、新しい雇用を創っていくということも重要であり、その意味では、今までは違う稼ぎ方や働き方といった経済の仕組みを考える必要がある。その意味で、デジタル・ニューディールが重要だというお話がありました。
コロナの世界がすっきり終わってV字回復に進んでいければ良いが、そうすっきりとなかなか終わらないかもしれないということで、感染防止ということと同時に公的に経済の活性化を進めていくことが大事だというお話がありました。
ここで、西村大臣から、雇用を守るという民間議員ペーパーにおいて御指摘のあった雇用の維持・拡大あるいは働き方については、御指摘を踏まえて厚生労働大臣をはじめ関係大臣と密接に連携しながら対応していくという御発言がありました。以上が一つ目の議題の議論です。
二つ目の議題、「デジタル・ニューディールの全国展開に向けて」ということで、民間議員から資料の説明があり、各議員から御発言がありました。
同様に、閣僚の発言から御紹介します。
北村大臣からは資料4について御説明がありました。詳細は割愛しますが、その中で、「スーパーシティ構想」の早期実現というお話、それから、地域における若者の起業・就業促進のために「地方大学・地域産業創生交付金」を活用してSTEAM人材を含む専門人材を重点的に支援していくというお話がありました。
次に、萩生田文部科学大臣です。御自身の資料に基づいて、「地方大学の活性化に向けて」というお話がありました。詳細は割愛しますが、今後の取組として、地方大学の活性化に向け、オンラインの教育の拡充や、産学官の緊密な連携を推進していくというお話がありました。それから、オンラインを活用した海外大学との双方向授業や、今回の感染症対策として大部分の大学がオンライン授業を実施又は検討中だというお話の紹介。それから、単独では開設が困難な授業科目を共同で開設することなどに、国立・公立・私立の枠組みを超えて取り組めるように、大学等連携推進法人を年内には制度化する予定であるという御紹介がありました。
次に、高市総務大臣です。提出資料はございませんでしたが、データ利活用型スマートシティ推進事業ということで地方を応援しているというお話、それから、情報インフラの整備に対しては、今年度から地域のニーズを踏まえたローカル5Gの実証によるモデル構築に取り組んでいくというお話がありました。
麻生財務大臣です。提出資料はございませんでしたが、今回の新型コロナウイルスの感染拡大に対してのG7・G20各国と協調は上手くいっているとのことであり、まずは、感染の収束に最大限注力すべき。そして、それに伴う経済の収縮に対しても、今のうちからしっかり対応することが重要であるというお話でした。また、デジタル技術を活用して、医療・教育のみならず、企業活動・地方創生・まちづくりなど、あらゆる分野において感染収束を見据えて生産性を向上させることでこれまで無かった新しい経済社会を創っていく必要があるというお話がありました。
閣僚は以上です。次に、民間議員からの御発言を御紹介します。
まず、一人目の民間議員です。東京一極集中は日本の弱さである。分散化を進めることは、これまではどちらかと言えば、地域振興や地方を何とかするという発想から行われていたが、日本全体の危機対応能力、レジリエンスを高める観点からも重要なテーマであるというお話がありました。
スマートシティについては、これまでともすると、コンセプトが明確でない場合もあったが、大きな固まりとして、地方の強みを生かして展開していくべきだというお話がありました。
もう一つ、大学との産学連携として産学協議会というところで取り組んできており、地方における大学の重要性が現実味を帯びてきている。大学は、地方との関係を重視して関心を持って取り組むべき。そして、その中でSTEAM人材の育成は、理系に限らず、アート・デザインの分野が重要であり、地域をどのように設計していくかという観点から取り組んでいくべきだというお話がありました。
二人目の民間議員です。海外でソーシャルディスタンスということが言われている中で、成功の鍵はインターネットのコネクティビティだという指摘がなされている。その中で日本では、ブロードバンドの普及が遅れているという意味でこのコネクティビティが死活問題となる中で、ブロードバンド化を前倒しで実施していくべきだというお話がありました。
それから、地方に産業の拠点を移すということについて、必ずしも今この瞬間は、感染の問題もあって地方自治体が必ずしも積極的ではない場合がある。感染をしっかり把握して管理していくということが重要だというお話がありました。
それから、大学改革の関係では、京都大学の取組について言及があって、そのオープンイノベーションをしっかり取り組んでいるというお話、それから、民間企業が主導する大学がプライベートのイニシアティブで進められており、そうした中で大学の強みが高められていくという話ができている。国としても、そういった成功例を上手くピックアップして、サポートしたら良いのではないかというお話がありました。
三人目の民間議員です。この方も一極集中の問題について御発言があり、日本経済が長らく抱えてきた課題である。リスクマネジメントあるいは国の発展ということを考える観点から、しっかりと一極集中の是正に取り組まなければいけない。その際に、スマートシティの発展が大事だが、なかなか国民の方々の理解が進んでいないので、もっと広報をしっかり取り組んでやっていくべき。
在宅勤務も重要になってきており、その中でハードとかソフトの支援も大事だが、書類文化・ハンコ文化といったところも障害になっているため、そういった弊害も取り除いていくことが必要。
それから、データの提供・活用として、住民の合意を取っていくという中では、オプトインの仕組みが重要であり、便利なサービスが得られれば、多くの住民が賛同するはずである。実際、会津若松市では非常に上手くいっている例があり、会津大学のSTEAM人材が中核的な役割を担っているという御紹介がありました。今後の地方大学の支援としては、若手を含む民間人教員の別枠化などに取り組んでいくべき。
それから、高等教育だけではなくて、初等・中等教育から取り組むべきであって、GIGAスクール構想をソフト・ハード両面で推進していくべき。
企業として採用したくてもなかなか採用しにくいような人材が集まっている地方の大学が出来てくることを望んでいるし、そういう大学支援を一緒にやっていくべき。
スマートシティについては、地方大学の支援と一緒に取り組むべきだというお話がありました。
西村大臣からは、自分も会津若松市の取組を見てきたが、地域住民もデータ提供などに協力的で、企業も参加し学生のベンチャーも参加している地方における良いモデル都市になり得ると思ったというお話がありました。
最後、総理から御発言があって、会議は終了したところです。
私からは以上です。




(以上)