第1回記者会見要旨:令和2年 会議結果

西村内閣府特命担当大臣記者会見要旨

  • 日時:令和2年1月17日(金)13:35~14:27
  • 場所:中央合同庁舎第8号館1階S101・103会見室

1.発言要旨

お疲れさまです。
本日1月17日、私の地元は、阪神・淡路大震災から25年を迎えました。
当日私は東京にいましたが、朝早くからあちこちから電話が入り、また、私もあちこちに電話をし、大変な状況になっている中で、途中から電話が全然通じ無くなりました。両親もおり、大変心配をしていましたが、無事を確認して、翌日、たまたま大阪で講演する予定があって、もちろん講演は無くなりましたが、大阪まで行きました。けれども、全く物資が無く、地元や、私の両親や、知り合いからも、もう水や物が無いという状況を聞いて、かき集めて大阪から車で、六甲山の裏の方をずっと回って、できる限り車に物を積んで運んだことを思い出します。
神戸の両親の住んでいる自宅はもう中がぐちゃぐちゃになっていて、幸い全壊はしませんでしたが、たしか半壊扱いになったと思います。当時、ぐちゃぐちゃになっていた状況で、阪神高速道路が倒れた横も通りましたけれども、瓦礫でなかなか通れない状況でした。
その後25年経ったわけですが、その時にボランティアの方々が数多く来てくれて助けてくれたこと、その後、私は経済産業省から石川県庁に商工課長として出向しましたが、その時も、ナホトカ号の重油の流出事故があって、ボランティアの方々がたくさん来てくれたこともあって、ボランティア元年と言われた頃だと思いますが、大変助けていただいて、その後25年を経て、ハード面、インフラ面で大いに復興を遂げたと思います。
一方、私の地元・淡路島も御多分に漏れず人口減少で過疎化が進んでおり、神戸も港がダメージを受けて、私は小さい頃から、「神戸は世界一の港だ」と言われて育ちましたが、今やもう何十番目ですね。その時以来、釜山に座を取られ、その後は中国の港が大きくなっていますが、そういう中で、元々、重厚長大型の産業構造から今、転換を図ろうとしていると思いますし、残念ながら、人口も福岡や川崎に抜かれてしまいましたが、これから新しい産業構造に変えていく、正に私自身が取り組んでいる、スマート化・グリーン化あるいはSociety 5.0を実現していく国際都市でもありますし、神戸はモデルになってほしいと思います。私の地元も、地方が活力を維持し発展していく、そのモデルになってほしいと思います。淡路島は「国生みの島」とも言われており、新しい時代の新たな国づくりをスタートしてほしいと思っております。私自身もしっかり地元のことも、地元の皆さんと一緒になってやっていきたいと思っております。
当時の阪神・淡路大震災の後に、国が、まだ現在の中小企業基盤整備機構になっていなかったと思いますが、当時中小企業総合事業団を通じて賃貸工場を造るということで、その後の東日本大震災などのモデルになった新しい取組も、私が経済産業省で担当しておりました。そういったことに取り組んできたことを懐かしく思いますけれども、風化させることなく、いつ何時、大きな災害が起こるかもしれない中で、その教訓を活かしながら、また新しい時代に向かって進んでいくという決意を新たにしたところであります。
経済財政諮問会議につきましては、本日、議題が2つありまして、「経済財政諮問会議の今年の検討課題」と「中長期の経済財政に関する試算」の2つの議論を行いました。
まず、「今年の検討課題」につきましては、「成長と安心の未来」の実現に向けた重点課題として、主に次のような御意見を民間議員から頂きました。
まず、質の高い経済成長を実現することについて、そのためには、デジタル・ニューディールを通じたSociety 5.0の実現に向けた重点的投資を促進し、IT人材・AI人材・STEAM人材など新たな産業構造を念頭に置いた人材投資・人材育成を進めるべき。我が国がグローバル・ハブとなって海外需要を取り込むべき。スマート化・グリーン化のための投資を促進すべき。
国民生活の安心の実現について、少子化対策・女性活躍、自由度と再チャレンジを強化する働き方改革2.0を、一体的・継続的に推進すべき。
また、地域活力の再起動に向けて、若者の地方志向の後押しなどを通じて、人生100年時代に安心して就業・子育て・生活できる地域社会を創るべき。
財政の構造改革として、ワイズ・スペンディングの徹底を通じて、未来に生きる投資へ重点化をすべきといった御意見を頂きました。
私からも、地域活力の再起動に関連して発言をしました。学校ICT化の取組について、経済対策に基づいて補正予算で4,000億円を超える複数年度にわたって学校に一人一台のパソコン配置の整備を実現していくことになっていますが、端末を単に配って終わりということではなくて、これを一つの大きな「うねり」、契機にして地方大学等の教育機関あるいは地域の経済界も巻き込みながら創り上げていくことが重要と考えていることを申し上げました。
先般、東京大学の先端科学技術研究センターは、不登校の子供たちを毎年30人程度預かってプログラムを組んでいますが、そこでは、一人一人パソコンを与え、専門の教育を受けたわけではないけれども、インターネット上でいろいろな技術を習得していって、今、ユニクロのGUの映像を創るという生徒も出てきていて、一人一人の能力を、子供たちの能力を開花させるプログラム、やり方を、大学や地域経済も巻き込んで、関心ある項目にはのめり込んでいく子もいると思いますので、それを経済界と大学が一体となって後押しをしてほしいと思いますし、もちろん教える人、東京からも若い人あるいは経験のある人を送り、関係省庁と連携してやっていきたいと思っております。この点については、今後、未来投資会議の場などを活用し、議論を深めていきたいと考えております。
また、資料にも記載がありました賃金・所得の底上げに関連して、複数の民間議員から、産業界の賃上げ努力に期待する旨の発言がございました。政府としても、先般の経済対策に基づき、様々な環境整備に取り組むことにしております。人材への投資拡大の一環として、今年の春闘においても賃上げの流れが継続され、更に一層力強いものになることを、是非、期待したいと思います。
また、会議に提出されました「中長期の経済財政に関する試算」の概要についてですが、もう資料もお配りしていると思います。
経済成長率は、足元に海外発の下方リスクが見られる中で、総合経済対策により、民需主導の持続的な経済成長が確実なものとなり、2020年代前半には実質2%程度、名目3%程度を上回る成長率を実現していくとあります。
ちょっと参考までに、皆さんも見ておられると思いますけれども、実質GDPは、経済対策がなければ、残念ながら2019年・2020年は、海外経済のリスクもありますので、普通の対応ではそれほど伸びない。それで、26兆円の事業規模の経済対策を組んだわけでして、それにより大半が2020年度に発現するということで、2020年度はその押上げ効果、1.1%分ぐらいが出るということですけれども、1.4%成長を見込んでおります。もちろん、下にずっと長いですから、530兆円、540兆円になっておりますので、上の部分だけですけれども、2020年度に大半が発現するということで、押上げ効果になるということで1.4%を見込んでおります。
2021年度は、その押上げ効果が0.2%分しか残りませんので、ここは発射台が高くなることもあって、2021年度の成長力はやや低目となりますが、後ほどまた御説明申し上げますけれども、いわゆる生産性の伸び、これはこれまで我々が取り組んできた成長戦略の様々な面が発現してくること、それから経済対策の盛り込んだ分の、いわゆるデジタル・ニューディールでICT化を進めていくといったことを含めて、それが発現していく、生産性が上がっていくとことも含めて2022年度は2%に近い1.9%の実質成長を見込んでいます。
そして、この成長実現ケースにおいて、プライマリーバランスは前回の試算と同様に、2021年度以降の歳出改革を盛り込まない自然体の姿で黒字化は2027年度となりますけれども、着実な歳出改革を進めることによって、2025年度のプライマリーバランス黒字化目標の実現が視野に入ってまいります。こういう絵姿について御説明したところです。
総理からの締めくくり発言については、お聞きいただいたとおりですので、私からは省略し、議論の詳細につきましては、後ほど、事務方から説明させていただきます。
私からは以上です。




2.質疑応答

(問)今御説明いただきました中長期試算についてお伺いします。政府の黒字達成の2025年の目標は変えないということだと思いますが、今回2025年時点の赤字が膨らんだわけです。今後どういった取組が必要とお考えか、歳入面では想定の成長率が随分足元の倍近くになると、生産性の改善も袖が高過ぎるとの指摘もあったり、歳出の方でも、社会保障費の削減ももっと踏み込むべきだという指摘もあるわけですが、その辺りの歳入・歳出両面へのお考えをお聞かせいただければと思います。


(答)まず、先ほど申し上げましたとおり、2025年度のプライマリーバランス黒字化目標、この実現が視野に入るという試算結果ですので、このために全力を挙げていきたいと思っております。そのためには、今も御説明申し上げましたけれども、「経済再生なくして財政健全化なし」という大きな基本方針・考え方がございます。しっかりと経済成長することによって税収を上げていくということです。
海外発の下方リスクが見られる中で、総合経済対策を取りまとめましたので、これを円滑に、かつ着実に実施をしていくことが第一です。それによって民需主導の持続的な経済成長の実現が確実なものとなることによって、生産性の上昇などを通じてPB対GDPも着実に改善していくということです。
同時に、歳出改革については盛り込んでおりませんので、昨年末に改定しました改革工程表、これを海図に、これを全体像としながら新経済・財政再生計画に沿って歳出改革等の取組をしっかりと進めるということです。
2025年度の国・地方を合せたプライマリーバランスの黒字化、債務残高対GDPの安定的な引下げを目指して、しっかりと取り組んでいきたいと思っております。
ちなみに、2025年度ですけれども、基礎的財政収支(プライマリーバランス)がマイナス3.6兆円程度あります。成長で上振れするか、歳出改革をやることによってこれをゼロにしたいということですけれども、過去、2016年・2017年・2018年、3か年で、例えば社会保障費を高齢化の伸びに抑えるなど、3か年で3.9兆円程度の歳出効率化の努力が実現しておりますから、この3.6兆円という数字が決して無茶苦茶に難しい数字じゃないということも併せて申し上げたいと思います。しっかりと歳出改革の努力を実行していきたいと思います。




(問)今年の骨太方針には、今おっしゃっていた財政健全化目標の達成と同時に、もう一つ、2020年頃の名目GDP600兆円経済を目指すと書かれてます。しかし、今回の試算では、成長実現ケースでも2020年度の名目GDPは約570兆円に留まり、大台の600兆円超えは2023年度の見通しです。第二次安倍内閣以降の経済政策に長らく関わった当事者として、このことについての受け止めと、達成時期が年々後にずれてきたんですが、ここら辺の原因はどのように分析されているのかについてお尋ねします。


(答)はい。御指摘のように、2020年頃の600兆円を一つの目標として、今、経済運営をやっているところですが、7年にわたるアベノミクスの推進を経て、御案内のとおり、我が国経済は大きく改善をしているところです。デフレでない状況もつくり出しておりますし、GDPは名目・実質共に過去最大規模に達しております。また、生産年齢人口は減少する中であっても、就業者数も多く増加して過去最大となっております。
今回の試算では、先ほど申し上げたとおり経済対策の効果なども盛り込んで、民需主導の持続的な経済成長の実現が確実なものとなることによって、名目GDPは、2022年度の平均で595兆円、同年度2022年度の第4四半期には600兆円に達する姿となっております。
引き続き、あらゆる政策を総動員して、潜在成長率をしっかりと押し上げながら、いわゆる2020年頃のGDP600兆円経済の実現をしっかりと目指していきたいと考えております。




(問)今日、中国のGDPが発表されて、去年プラス6.1%と、29年ぶりに低い水準になったということですけれども、この数字の受け止めと、世界経済や日本経済の影響というのをどのようにお考えか伺わせてください。


(答)日本にとっては、最大の貿易相手国でもありますし、中国経済の動向というのは、日本経済に大きな影響があります。海外経済の下方リスクと考える中においても、中国経済の動向は一つの大きな要素であると考えております。
そうした中で、本日公表されました中国の10-12月期の実質GDP成長率が前年比6.0%、また19年通年では6.1%で、中国政府の目標である6.0%から6.5%は達成したと承知しております。
中国経済は緩やかな減速傾向にありますけれども、この背景には構造改革にも取り組んでいること、つまり過剰債務の削減といった取組が内需の抑制につながっている面もございます。先般の何立峰国家発展改革委員会主任との意見交換の中でも、私からもこの点、日本経済もそうだが、足元の経済対策、景気回復の刺激策と、中長期的な構造改革と、日本の場合は新しいSociety 5.0という時代を迎える新しい経済社会構造をつくっていこうということで、この両立が大きな課題であるという議論したところですけれども、こうした構造問題への取組と併せて、それに加えて、アメリカとの通商問題、こういった影響があると考えております。
その通商問題については、15日、米中間で第一段階の合意文書への署名が行われたと承知しておりますので、今回の合意が今後、世界経済や日本経済に好影響を与えることを期待したいと思いますし、心理的には、マーケットが反応していますように、プラスの評価になっていると思いますので、今後、第二段階の合意も含め、協議の進捗状況についてはしっかりと目配りをしていきたいと思いますし、私はTPPを担当する大臣でもありますので、この自由で公正なルールに基づく自由貿易の体制を維持・発展させていくことが何より大事であり、今、内向きになりがちな世界経済、世界的な情勢がありますけれども、しっかりと自由貿易の秩序を維持・発展させていきたいと考えております。
多くの重要な国々の経済閣僚との間の対話も今年はやっていきたいと考えておりますので、いずれにしても、中国経済、海外経済の動向については、しっかりと注視をしながら、そのリスクにしっかりと備えていきたいです。




(問)今回、2025年度の赤字幅が前回の試算よりも拡大しているわけですけれども、そういった中で、歳出改革を進めることにより、2025年度のプライマリーバランスの黒字化の実現が視野に入るということで、力強くここに書かれています。この前提となっている成長率ですけれども、民間エコノミストの予測よりも随分と高い設定になっています。この前提が現実的なものだと大臣は思っていらっしゃるか、改めてお考えをお聞かせいただきたいというのが1点。あと、確認ですけれども、しっかりと着実に進めるという歳出改革というのは、基本的には社会保障費の削減ということで理解してよろしいでしょうか。


(答)まず、歳出改革は、この改革工程表に沿ってしっかりとやっていきたいと思っていますが、新経済・財政再生計画、この中に様々な歳出改革の項目があります。社会保障もありますし、地方財政もありますし、こうした一つひとつの項目をしっかりと実行して積み上げて歳出改革をやっていきたい。
先ほどは、一例として、3.6兆円というのは、そんなに無茶苦茶できない数字ではない、不可能な数字でないということの一例を申し上げただけです。
それで、成長率についてですけれども、まず、もちろん設備投資、いわゆる資本と労働とTFP、生産性の上昇ということで成長率は見ていくわけですけれども、設備投資、資本についてもこれは、民間企業においても国においても、しっかりと進めていきたいと思います。それから労働については、生産年齢人口は減りますけれども、これまでのように女性・高齢者が労働参加する割合や伸びは鈍化しますけれども、引き続き伸びることを期待したいと思いますし、あわせて、女性の活躍、これを更に力を入れてやらなければいけないと思っております。今日も民間議員ペーパーに書かれていましたけれども、いわゆる女性の就業調整を全面的に解消しようということもしっかり取り組んでいきたいと思っています。
そうしたことに合わせて、いわゆる生産性、TFPの上昇率ですけれども、足元は0.4%ですが、これが1.3%ぐらいまで上昇すると見込んでいます。これについては、実は2018年に見直す以前は、2.2%程度に上昇するとしていたことが高過ぎると言われていました。ここも現実的になるよう見直しをして、0.9%ぐらい上昇して、0.4足す0.9で上昇率が1.3%程度になると見込んでいます。この1.3%程度の上昇というのは、1981年から2010年、つまりバブル期からバブル崩壊、あるいはリーマンショック、それから成熟した経済になってきたということも含めて、この30年間の平均の上昇率は、生産性の上昇率、TFPの上昇率は1.3%ですので、そのぐらいの生産性の成長は、我々が、正にデジタル・ニューディールをはじめ、ICT化、効率良く生産性を上げていくことを重点的にやっていますので、このぐらいは成長するということも自信を持って示せると思っています。そういった意味で様々な御指摘も頂いておりますけれども、着実に生産性が上昇することによって、成長率を確保していきたいと思っています。




(問)少し話が変わって申し訳ないんですけれども、小泉大臣に第一子が誕生されたことへの受け止めと、経済財政諮問会議で民間議員の検討課題の中に男性育休促進と少子化対策、女性活躍などが書いていますけれども、現時点で男性の育休制度や女性活躍について今後どう検討していきたいか、お願いします。


(答)まずは、お子様の誕生、心からお祝い申し上げたいと思います。
小泉大臣は公務優先の中で、危機管理にも備えながら、その条件の下で育児のための時間を確保したいとおっしゃっていると伺っています。
この育児休暇は、象徴的だと思います。是非、可能な範囲で取ってもらえればと思いますし、それを見て、多くの男性が育児休暇を取るようになってくれれば、嬉しいことです。
2018年で育児休暇の取得率は男性約6%。実は成長戦略の目標は2020年に13%ということですから、まだ半分ということです。今年1年でここまでやるという目標ですけれども、やっぱり男性の意識改革、これが何より大事だと思います。やはり育児を夫婦で分担しながらやっていく。
私も3人の娘がおりますけれども、なかなかそんな偉そうなことを言える立場ではありません。けれども、第一子が生まれた時は先ほど申し上げたように、経済産業省から石川県庁に課長で出向していた時であり、宿舎まで10分か15分で帰れますので、ほぼ毎日昼休みは家に帰って、第一子をお風呂に入れて、お昼を家で食べ、また県庁に戻るという生活をしていました。そのぐらいしかやっていなかったのかもしれませんけれども、でも子育てでいろんなストレスもたまる母親に対して、お風呂を入れるぐらいは自分でやろうと思って育児に参加したわけですが、とにかく男性中心の社会で今まで来ていることは事実だと思いますので、これを変えないと、日本社会全体は変わらないと強く思っています。
今日の経済財政諮問会議でも議論があり、紙が出されましたけれども、やっぱりこの86万人のショックを踏まえて全力を挙げようということだと思います。
先ほど申し上げましたけれども、やっぱり女性の就業率が非常に高まっておりますが、まだ非正規の方も多いし、就業調整をされる方も多いわけです。御本人が希望して自分は一定の時間しか働けないから、あるいはその時間だけ働きたいという方もおられるでしょうから、正規社員になりたいけれどもなれない不本意非正規を何とか解消するということ、そして、女性の就業調整も解消できるように、今年しっかり考えていきたいと思います。




(問)先ほど2016年から2018年の歳出改革の削減額について言及があり、黒字化の達成実現も視野に入っているということでしたが、このベースラインの場合では、8.2兆円の赤字になることが試算されているんですけれども、この場合も黒字化の達成の実現も視野に入っているとお考えになっているんでしょうか。


(答)我々はこの経済対策も打っていますし、2020年度の実質1.4%成長を確実なものにしていきたいと思っていますし、成長ケースをしっかりと実現したいと思っています。




3.多田内閣府政策統括官(経済財政運営担当)による追加説明

それでは、本日の経済財政諮問会議の概要を御報告いたします。
2つの議題でした。
まず、「経済財政諮問会議の今年の検討課題」について、中西議員から資料1、それから、「中長期の経済財政に関する試算」について、麻生大臣から資料2、そして、井上統括官から資料3の説明があった上で、まとめて各議員から御意見を頂戴しました。
主な御意見を御紹介いたします。
まず、総務大臣です。「成長と安心の未来」に向けては、技術革新を大きなチャンスと捉えて、5G・IoT・AIなどの恩恵を享受できる社会を実現することが重要だとおっしゃった上で、まず、質の高い経済成長に関して、5Gの速やかな全国整備、そして、セキュリティ対策を着実に進めていくこと、合わせて、Beyond5Gの時代を見据えた新たな技術開発などに戦略的に取り組んでいくといった御発言がありました。
さらに、AI原則、そして、信頼性ある自由なデータ流通の国際的な推進に取り組むこと、それから、海外展開も更に進めることで、それらのために、春までに新しい行動計画を策定するといった御発言がありました。
それから、分散型エネルギーインフラプロジェクト、これを拡充して、地域経済循環の拡大とともに、災害時の自立エネルギー供給を可能とするシステムの構築を推進していくといった御発言がありました。
以上が質の高い経済成長に関してです。次に、地域活力の再起動に関して、若者の地方志向を後押しするために、地域おこし協力隊の拡充や、関係人口の創出拡大を行っていくこと、それから、広域連携の推進ということで、将来の人口減少・少子高齢社会を見通した広域連携の更なる推進を検討していくこと、それから、地方のデジタル・ガバメントの整備を推進するために、地方のシステムの標準化・クラウド化・AI・IoT・RPAなど新技術の活用によって、行政事務の効率化を促進していくこと、さらに、防災・減災対策として、地方団体の技術職員の充実、あるいは河川の浚渫の推進など一層の防災・減災対策を推進していくことの御紹介がありました。
次に、経済産業大臣です。中小企業の生産性向上について、複数年にわたる継続的な設備投資・IT導入支援をはじめとした支援策を行う。マークアップ率については、足元でアメリカの企業のマークアップ率が日本の企業の1.4倍となるなど、高付加価値・高価格の米国・欧州企業に差をつけられている。
企業の現預金を活用した投資を引き出すため、オープンイノベーション税制に留まらず、あらゆる政策を検討していくといった御発言がありました。
麻生大臣です。こちらは中長期試算についての御発言でした。2025年度のプライマリーバランスの黒字化は、財政への信認及び持続可能性を保つために極めて重要な目標であって、堅持していく必要がある。
目標達成のために、経済再生と財政再建を両立していくことが不可欠であり、財務省としても、社会保障をはじめとした歳出改革にしっかりと取り組んでいくが、関係大臣におかれても、引き続きの協力をお願いしたいといった御発言がありました。
これから民間議員の御発言を紹介します。通常、お名前は伏せて紹介していますけれども、次の方は、もう分かるので、あらかじめ御本人にも御了解をいただいて、お名前を出しますが、例外的な措置ということで御了解いただければと思います。
経労委報告についての言及で、御賢察いただくとおり、中西議員からの御発言です。経労委報告は、元々、春闘に向けた経営側の意思統一が目的であったけれども、今回はトーンを大きく変えている。
賃金引上げのモメンタムの継続が大前提で、昨今低迷している動きを盛り上げていくことは当然だけれども、お金を使うことだけではなく、あわせて、働き方についての視点も大事で、キーワードは3つということで御紹介がありました。
先にキーワードだけ申し上げますと、一つ目は、働き方改革2.0、二つ目がエンゲージメント、三つ目が日本型雇用システムの見直しです。
それぞれについて簡単にコメントがありましたけれども、一つ目の働き方改革2.0については、民間議員ペーパーの中に反映されているということで、詳しくは御説明がありませんでした。
二つ目のエンゲージメントについては、働き手にとってやる気の出る職場環境を作ること、特に若い方々は、自分の仕事が社会に貢献できているという意識を持てることが非常に大事で、ESG投資も含めて推進していくべきだといったお話がありました。
三つ目、日本型雇用システムの見直しの話ですけれども、いわゆる新卒一括採用、それから、終身雇用、そして、年功型の賃金、この3つが大きな項目ですけれども、これは今後なかなか上手くいかないだろうと。これらを全て総替えするということではないけれども、企業の対応も含めて、労使が協力して見直しをしていくことが重要だということです。
このように、今回の経労委報告の3つのキーワードは、これまでの経営側の意思統一ということとはトーンが変わってきているけれども、先ほどの民間議員ペーパーの重点項目とも整合するものであって、政府と共に実施していきたいといったお話があり、最後に、これは資料の中にも書いてありましたが、裁量労働制についてもよろしくお願いしたいといったお話がありました。
以下の方々は、通常どおり民間議員の方ということで、氏名を伏せて御紹介をしたいと思います。
お二人目ですけれども、経済政策は、長期を見据えることが重要で、その典型的なものが少子化対策。子供の数が増えても、それが経済に対して影響を与えてくるのは20年なり、25年掛かってくる。そうした視点も見据えておくことが重要。
今回の経済対策の中の補正予算でも、長期を見据える点が、例えば、中小企業の支援といったところで表れているけれども、そうしたことが重要だということでした。
それから、民間議員ペーパーの中で出てきたデジタル・ニューディール、それからグローバル・ハブ、それから環境エネルギーの投資といったところについてお話があり、これまでは、デジタル・ニューディールみたいなところも、従来型、中国製造2025のように、従来であれば、どの産業を強化していくといったことが、産業ビジョンという形で作っていくことかもしれないけれども、今や、日本ではそうしたことができる状況でもないだろうと。
むしろ、グローバル・ハブで国際的なルールを作っていくとか、あるいは、環境投資として、自動車でEVを進めていくとか、そうしたところで、ルールを作っていくといったところの中で、どういった産業が伸びていくのか、生まれていくのかが決まっていくといった視点。その際に、人材が全ての基礎になるので、人材育成にしっかり力を入れなければいけない。
ここで、これはたまたまだと思いますが、高市総務大臣がかつて2007年に作られたイノベーション2025というプログラムのことを引かれまして、正に、2007年、2025年を見通してプランを作るといったことが長期的な視点として非常に大事だといった御紹介がありました。
そういった既に過去に出されているものを着実にやっていくことも非常に重要だということを強調しておられました。
それから、個別の話としては、外国人材の活用が重要で、留学生の質も最近非常に上がってきている。これらの方々を企業で活用・採用していくためには、今の給与体系ではなかなか対応し難く、こういった給与体系の見直しもあわせてやっていかなければいけないといった御指摘がありました。
そして、もう一つ、同じ方がもう一言おっしゃいまして、中小企業についても、生産性支援をしていくことで、資本の設備投資なども含めて生産性が伸びていくけれども、その生産性が伸びた結果が、企業だけに帰属して、従業員に還元されていかないのはおかしいのではないか。効果は長期的に出てくる面もあるけれども、できるだけ早く還元していくことが必要ではないかといった御発言がありました。
別の民間議員です。いくつかの項目をおっしゃっておられますが、持続的発展のためにデフレマインドを払拭していくためにも、安心できる生活をしっかり整えていくことが重要で、そのために、賃上げが不可欠で、最低賃金も取り組むべきであると。これがモメンタムとなっていくということです。
それを実現するためにも、生産性、TFPを引き上げていくことが重要で、企業も一生懸命取り組んでいるが、投資の後押しをすることが重要だという話がありました。
そういった観点から、改善の余地は中小企業に大きく、地方には潜在力のある企業もたくさんある。日本では、99.5%が中小企業であって、国全体としての大きな資産であるので、それを有効に活用していくことが重要であって、アジアに出ていくことも可能な時代になっている。ここをしっかり後押ししていくことが重要だというお話がありました。
それから、同時に働き方を柔軟にして改革を進めていくことも重要であり、その意味で、人生100年時代の中では、大企業の人材の活用が非常に大事である。大企業の人材の中途採用についても、今、開示に向けて法律の準備なども進めているようだけれども、どれだけの方が役員になったのかといった成果なども着目する必要があるのではないかといったお話がありました。
それから、中途採用ももちろん大事だけれども、従業員に対する人材投資というものが大切であり、自分としては、企業の社会的責任であると考えている。
リカレント教育なども含めて、第二の人生にも明るい見通しにつなげていくことは結果として、労働分配率も上がっていくことになって、喜びを持って変わっていけること、そうしたことが安心感につながるといったお話がありました。
それから、ちょっとテーマが変わりますが、もう一つおっしゃっていたことは、介護の関係です。
介護制度の改正の議論が進んでいるけれども、その中では、是非、アウトカムベースの考え方で取り組んでほしいと。西村大臣と一緒に現場を見たけれども、テクノロジーの活用でQOLが高まっている面がある。そうしたところにベンチャーの横展開といったようなことでしっかり取り組んでいく。これは、アジアにも輸出していけるモデルになるのではないかといったお話がありました。
それから、もう一つ、プライマリーバランスの黒字化は明確に維持・推進していくべきで、歳出改革は厳守しながら、重点化によって、未来の投資は行っていくべきということです。使うべきものは使っていく。ただし、それをしっかり、適切に使われていくことをしっかり見ていかなければいけないという意味で、新しい経済・財政一体改革委員会などにおいて検討していきたいというお話がありました。
最後に、GDPだけでは、なかなか社会の安心や豊かさといったものを見ていくのは難しいという観点からだと思いますが、GDPだけではない新しい指標も必要ではないかといったことも検討していくべきではないかといったお話がありました。
この方の御発言を受けて、先ほどの大臣会見では御紹介されませんでしたけれども、西村大臣が最先端の介護施設を見てきて、そこではセンサーを使った見守り、個人情報もそこで働かれる方が皆さんスマホを使って管理していくことで職員の負担が軽くなる一方で、入っていらっしゃる方々の自分たちの生活のペースを邪魔されることが無いことになっていて、ITを活用したこうした仕組みを進めていきたいという発言がありました。
もう一人、別の民間議員です。
国民が持続可能性を感じるためには成長と安心の好循環というのが重要であって、その意味で、中長期試算の財政の部分にも問題意識を持つことが必要。財政の持続可能性を持てるようにしていくことが必要で、その意味で財政の構造改革はしっかりと進めていくべき。
成長の面からは、地域の活性化が大事であって、チャンスにもなる。グローバル・ハブは、東京、都会だけではなくて、地域のチャンスになるんだという話で、テクノロジーと人材と海外リソースという3点の取組が重要。
一つ目のテクノロジーについて、スマートシティ・学校ICT化・次世代型行政サービスに取り組むことが必要で、ともすると、それは、大都市の話・大企業の話と思われがちだけれども、このメリットは地域の方が高いという御発言がありました。
二つ目の人材について、地域にはいろいろな課題がある一方で、その課題を解決するためのアイデアというのもたくさんあって、ベンチャーも生まれ始めていると。
ただ、重要なことは、ベンチャーの経営者に対することだと思いますが、指導してくれるメンターがなかなか十分にはいらっしゃらない。それをどう地方に呼び込むのかが重要で、その視点からは副業、あるいは多地域居住など、柔軟な働き方とともに対応していくことが必要ではないか。女性もライフスタイルに合った働き方ができるようになるべき。
人材投資については、教育という言葉を使うと、いわゆる学校教育ということに、発想が縮まってしまうかもしれないけども、企業を通じた人材投資も非常に重要であり、推進していかなければいけない。賃金の引上げのモメンタムを作っていくべきだという御発言がありました。
三点目の海外リソースの取込みについて、高度な人材を地域に呼び込むだけではなくて、需要面でもアジアを中心に例えばインバウンド、あるいは対日直接投資、さらには輸出促進といったことでいわゆるグローバル・ハブを軸に推進していくべきだという御発言がありました。
その上で、西村大臣から御発言がありましたが、先ほど御紹介のあった学校ICT化と賃上げに関するご発言であり、先ほど大臣御自身から御紹介がありましたので、私の方からは割愛させていただきます。
その後、安倍総理の御発言がございましたけれども、そこも併せて割愛させていただきます。
私からは以上です。



(以上)