第10回記者会見要旨:令和元年 会議結果

西村内閣府特命担当大臣記者会見要旨

  • 日時:令和元年11月7日(木曜日)18時52分~19時19分
  • 場所:中央合同庁舎第8号館1階S101・103会見室

1.発言要旨

本日の経済財政諮問会議の概要について御説明いたします。
最初に、この会議で定期的に議論している「金融政策、物価等に関する集中審議」を行い、その後に、「社会資本整備」について議論を行いました。
まず、前半ですけれども、日本銀行と内閣府それぞれが経済の状況について説明した後に、「今後の経済財政政策運営」について議論を行い、次のような意見がございました。主な意見を御紹介します。
日本経済は、雇用・所得環境の改善等を背景に緩やかに回復しているものの、世界経済の見通しが年初より累次にわたって引き下げられる中、外需の弱さが継続し、企業や家計のマインドにも慎重さが見られるなど、日本経済を取り巻く環境はこの1年間で大きく変化をしてきている。海外経済のリスクに加え、来年のオリンピック・パラリンピック後の状況を勘案すると、先行きについても、より一層の注意が必要。
したがって、日本経済を悪化させないための機動的なマクロ経済運営が重要であり、政府は、政策効果の発現時期を念頭に置きながら、需要面で万全の下支えを行うべき。その際、自然災害からの復旧のほか、所得・雇用の好循環に向けた短期的な需要の下支えを行うことに加え、中長期的な視点に立ち、Society 5.0やSDGsの促進など民需主導で持続的経済成長につながるような政策など、ワイズ・スペンディングで将来の成長につながる民間投資や消費を喚起すべき。このような御意見がございました。
次に、社会資本整備については、次のような意見でございます。主立ったものを紹介します。
国民生活の安心・安全、生活の質や企業活動の生産性向上に重点を置き、ワイズ・スペンディングを高めつつ、世界経済が減速する中で内需の下支えに万全の準備を行うべき。
「防災・減災、国土強靱化のための3か年緊急対策」を着実に実行し、対策を確実に完成させるとともに、今回の台風被害で明らかになった課題を踏まえ、必要となる防災・減災対策にもしっかり対応すべき。
それから、スマートシティを強力に推進するに当たり、国レベル、自治行政レベル、現場レベルの三層一体となった取組を進めるべき。このような御意見がございました。
以上を踏まえて、安倍総理から締めくくりの発言を行ってもらいましたが、これはお聞きいただいたとおりであります。
それからもう一点、明日17時15分から1時間、第2回全世代型社会保障検討会議を開催いたします。
内容は、医療関係者、それから若者、女性の代表の方々に対するヒアリングを予定しております。
私からは以上です。




2.質疑応答

(問)本日の民間議員からのペーパーでは、これまでの「海外リスクが顕在化する兆しが見えた場合には」といったスタンスから一歩進んだ、より危機感を強調するような表現になっているわけですけれども、今回のペーパーを踏まえて、西村大臣として、経済対策の実施の必要性については、どのようにお考えでしょうか。また、メニューや規模感についても教えてください。


(答)まず申し上げたいと思いますが、現時点で、何か経済対策を決定したということはございません。ただ、本日も海外経済のリスクを含めて、民間議員から様々な状況の分析と御提案を頂きました。私を含めて内閣府の方でも、日々、データの分析、ヒアリング、現場の視察などを行ってきておりますので、こういったこれまでの集積をしっかりと分析して、いざという時にしっかりとマクロ経済運営に万全を期していきたいと考えております。



(問)総理の発言の中で、「本日の議論を踏まえて、今、何をすべきか判断したい」ということをおっしゃられていましたけれども、具体的にいつまでに判断されるのかといったところを、どのように受け止めていらっしゃるのか教えてください。


(答)総理からは、どう解釈していいのか、非常に意味深な言葉でもありますけども、「今、何をすべきか判断したい」ということですので、私からも、これまでも随時、経済状況についての御報告をしておりますし、今日も民間議員から御提案や分析の披露もありました。総理もいろいろとお考えになると思いますし、いずれにしても、時機を逸することなく、日本経済がしっかりと成長軌道を続けていくために、必要であれば躊躇なくマクロ経済政策を発動したいと思いますし、万全を期していきたいと考えています。



(問)最後に全世代型のお話があったので、そのことで1点お聞きしたいんですけれども、明日ヒアリングがあるということで、計7人の方というお話は聞いているんですけれども、全体としてどのような方たちに、何人くらいヒアリングをしようというふうに現時点でお考えなんでしょうか。今日見せていただいた方たちだと、若干、経営者に偏っているのかなとかという印象があるんですけども、どのくらい全世代というのに対応したヒアリングをしたいと考えていらっしゃるのか教えてください。


(答)1回目のヒアリングだと思っておりますので、幅広くいろんな意見をお伺いしたいと思っておりまして、現在、今後の会議の開催も含めて、そしてヒアリングをさせていただく方も含めて調整をしているところです。



(問)ごめんなさい。その全体像というのは、いつぐらいに私たちには見えてくるイメージなんですか。


(答)これは相手もある話でありますし、日程の調整もございますし、いずれにしても、年内にしっかりと中間報告を取りまとめたいと思っておりますので、それまでの時期にあと複数回会議を開催してしっかりと取りまとめたいと思っております。その中でヒアリングも実施したいというふうに思っております。



3.多田内閣府政策統括官(経済財政運営担当)による追加説明

それでは、令和元年第10回経済財政諮問会議について概要を報告します。
二つの議題であり、最初に「金融政策、物価等に関する集中審議」におきまして、黒田日銀総裁から資料1、そして、資料2について私から御説明し、竹森議員から資料3の説明があり、各議員より発言を頂きました。
主な意見を紹介したいと思います。
まず、民間議員ですが、需要と供給両方の面からの対応を考えることが必要であるということで、世界的に成長が下がっているとマインドも下がってくる。そうならないようにしっかりとしたモメンタムをキープすることが重要で、財政政策・金融政策・規制改革が重要であるといったお話がありました。
また、民間企業がその社会変化の中でインタンジブルなものへの投資、R&Dや技術開発に変わってきているので、公共の方もそういったトレンドを勘案していくことが必要なんじゃないかという御指摘がありました。
これは例だと思いますけれども、建設国債について、建設国債の対象にならないものについても、例えば人材投資はどうなるのだろうかという問題指摘がありました。
それから、閣僚からのお話として高市大臣と麻生大臣のお二人からお話がありました。
高市大臣からは、総務省としても短期的な需要の下支えや将来の成長につながる民需の喚起に向けた政策を導入して、持続的成長に貢献していくということで、まず5Gや光ファイバーなどのICTインフラについては、地域への整備に向けた投資を促進して、早期の全国展開を強力に推進していきたいという話、それから、次世代型行政サービスについて、自治体の住民記録システムの標準化、基本プロセスの標準化などに取り組んでいく。それから、オリンピック・パラリンピック後を見据えて、将来の成長に必須な量子技術やAI技術の研究開発を推進していくこと、さらには、統一のQRコードの普及を8月から実施しているけども、これを通じてキャッシュレス化の裾野を広げていくとともに、今後も地方への専門家派遣などをして、切れ目のない消費活性化策に貢献していくという話がありました。
最後に、地方公務員の中途採用の拡大についても御発言がありまして、地方公共団体における中途採用試験において、就職氷河期世代の応募期間の拡大などが図られるように、10月11日に通知を発出したことの御紹介もありました。
麻生財務大臣からは、月例経済報告でも示されているとおり、内需を支えるファンダメンタルズはしっかりとしていて、景気も緩やかに回復していて基調は変わっていない。過度に悲観的となり、市場センチメントや景気マインドをかえって冷やしては、アベノミクスによる好循環の実現に支障を来す。
一方で、台風の災害による被災にはしっかりと対応していく必要がある。また、海外発の下方リスクについても万全の備えが必要で、その際には過去最高の水準にある企業の内部留保、高い水準にある人手不足感を踏まえて、安易な需要の積み増しではなく、民間企業による投資と賃上げを実現して、民需主導の持続的な成長を確実にするような施策を講じていく必要があるというお話がありました。
民間議員ですが、現状についての認識として、海外からは確かにリスクを感じるけれども、会社の個別の業績がひっくり返るような感覚は持っていない。むしろ産業構造の変化に感度を持って対応していくことが重要だと思っている。
減収になっても利益は出ているという企業もあれば、そうではない企業もあり、凸凹があるということで、例えば自動車などではインドや中国で台数が減っているので、そこに依存しているところは影響が出ている。小売と流通業界においては今の手当て、恐らくポイント還元のことじゃないかと思いますが、そうした手当ては聞いているのでオリンピック・パラリンピックの間、不連続となることに不安があるといった声がある。
それから、タンジブルからインタンジブルに変わっていくことも含めて次々と中長期の視点で今から手を打っていくことが必要。天災への対応についても復旧だけではなくて、次の備えへの展開も含めて、その意味では環境・エネルギーへの投資を相当に深刻にやっていくべき。これは、恐らく、災害の原因にそうした環境・エネルギー問題があるんじゃないかという問題認識ではないかと思います。
いずれにしても、次の成長戦略につながるようなお金の使い方を考えていくべきだという御指摘がありました。
別の民間議員ですけれども、消費税に原因があるわけではないけれども、デフレマインドが心配。今、デフレに戻っては駄目であるという話がありました。成長を第一に考えて税収を維持して、乗数の高い分野に財政を支出していくべきといったお話がありました。赤字国債も出したらいいのではないかという御発言もあったかと思います。SDGsを投資の重点にしていくべきであるというお話もありました。SDGsの分野は需要を作っていく効果があるため、官民で施策を実施していくことがいいのではないかというお話がありました。具体的な分野として、インフラ輸出の分野だとか、電池の開発、あるいはEVの研究開発、あるいは脱プラスチックへの取扱い、そうした例示がなされていたように思います。それから、ポイント還元について、オリンピック・パラリンピック中もやってはどうかといった御発言もあったかのように思います。
いずれにしてもキャッシュレスの加速をしていくことが必要だというお話がありました。
さらに、就業調整を避ける効果もマクロ経済としては非常に高い。人手不足の解消にも必要であり、就業調整は何とか避けるべきだというお話がありました。
別の民間議員です。海外が不安定なリスクを抱えていて、機動的なマクロ経済運営を考える時期に来ている。経済対策を行うならば、日本の生産性の向上とデジタルトランスフォーメーションにつながる革新的な投資を促していくことが重要で、いわゆるワイズ・スペンディングが重要だというお話がありました。
さっきからインタンジブルという言葉が出ていますが、日本語で言うと無形資産ということですが、無形資産・ソフト・人的投資を促進するとともに、世界的な傾向になっているSDGsには将来の需要を生み出すものなので重要である。一気呵成にやるという意味では、集中的にかつ少額ではなく大きな金額で税制なども含めて考えていくべきである。人的投資で言えば、就職氷河期対策における出口一体型のリカレント教育も新たな一歩として取り組むべきである。地方公務員の中途採用拡大も重要だけれども、経営人材の中途採用についても企業が目標を掲げて取り組むことを促すべきである。R&D、いわゆる研究開発投資についても定義を広げて金融機関がチャレンジングな融資に取り組めるような工夫もあってもいいのではないかといったお話がありました。
次の議題に入りまして、社会資本整備でございますが、柳川議員から資料4の説明があって、各議員から発言がありました。
国土交通大臣から資料5について説明がありました。基本的に資料の御説明でしたので、詳細は割愛したいと思います。
次に、武田国土強靱化担当大臣から御発言がありまして、令和2年度までの「3か年緊急対策」の取組をしっかり進めることが重要。そのために必要な予算を確保して、引き続き「3か年緊急対策」を着実に実施するとともに、その進捗状況や達成度合いなどをしっかりとフォローアップしていく。その上で、台風19号等の今年発生した災害の教訓も踏まえながら、「3か年緊急対策」後についても必要な予算を確保した上で、オールジャパンで国土強靱化を強力に進め、国家百年の大計として、災害に屈しない「強さとしなやかさ」を備えた国土を創り上げていきたいというお話がありました。
竹本大臣からも資料に基づいて御説明がございました。基本的に資料に基づく御説明でしたので、詳細は省略したいと思います。
続いて、高市大臣から御発言がありました。「3か年緊急対策」について、防災行政無線の戸別受信機やラジオの活用をはじめとした災害時の情報伝達手段の強化、災害時における自治体の通信手段の確保、消防機関の装備の充実といった取組を推進していくというお話がありました。
また、地方が単独事業として実施する防災インフラ整備や防災・減災対策について、地方財政措置を拡充してきている。特に、今回は災害の経験をして、特に河川の氾濫を見ると、普段の管理の重要性を感じているというお話がありました。
スマートシティについては、分野横断的にデータを利活用して、地域課題解決に取り組む自治体などを支援しているということ、それから、竹本大臣から説明のあった官民連携プラットフォームの枠組みを活用して、関係府省と緊密に協力して取り組んでいく。また、データの取得・活用を円滑にする方策については、総務省としても、来年度の事業から導入する方向で検討している。また、海外における調査研究・実証事業を実施して、日本モデルの他国への展開を推進していきたい、というお話がありました。
麻生財務大臣です。防災・減災について、昨年改定した国土強靱化の基本計画に基づいて、着実に対策を進めていくことが重要。それから人口減少等の社会構造の変化を踏まえて、ハード整備だけではなく、避難行動の確保や、土地利用の在り方に踏み込んだ対応も必要。
それから、長寿命化も重要であるが、人口減少が進む中では、既存のストックの再編を進め、維持・更新コストを効率化した上で、集中的に更新させるべきものは交付金を個別補助化し、逆に小規模な修繕等は地方単独事業として、地域で自主的に行うといった役割分担も必要だというお話がありました。
なお、赤羽大臣の説明資料の中にあった高速道路の四車線化や、空港等とのアクセスとなる都市鉄道の整備については、現下の低金利状況を活用する観点から重要で、財政投融資のことだと思うけれども、財務省としてもしっかり検討していきたいというお話がありました。
以下、民間議員です。一つ目の議題で発言し損ねたということで補足的な御発言でありました。2019年度の予算で臨時・特別の措置で2兆円、補正予算で4兆円の予算を編成した。現下の経済環境で仮にこうした公需が落ちることは望ましくなく、何か考える必要がある。公共投資だけでなくてほかの分野もしっかり伸ばしていくべきだという御発言がありました。
別の民間議員です。スマートシティの議論が具体的なものに発展してきたことに多いに期待していて、特に最近、3つの国際会議が東京と横浜で開かれているが、データ駆動型の取組が現実に合わせて進んできていて、コンパクトシティを実現していく機会になってきている。政府一体として、産業界としても大いに推進していきたいというお話がありました。
別の民間議員です。国土強靱化については、メリハリをつけて、中心部分から手をつけていくべきであるというお話がありました。
それから、これは前にも言ったけれどもということで、総務大臣に対して、ベンダーロックインは早期に回避していくべきだというお話がありました。
赤羽国交大臣から発言がありまして、民間議員の1人から御指摘のありましたMaaSの実証実験については、今、交通政策審議会での議論を踏まえて、これは縦割りだという御指摘が民間議員のペーパーにも書いてあるが、必要な規制緩和について検討してまいりたいというお話がありまして、最後に総理の締めくくりの御発言がございました。
私からは以上です。

(以上)