第9回記者会見要旨:令和元年 会議結果

西村内閣府特命担当大臣記者会見要旨

  • 日時:令和元年10月28日(月曜日)17時16分~17時46分
  • 場所:中央合同庁舎第8号館1階S101・103会見室

1.発言要旨

本日の経済財政諮問会議の概要について御報告いたします。
まず、冒頭に、私から、過去2回と同様、経済の足下の動向・状況について御報告をいたしました。
具体的には、まず、消費税率引上げ前後の経済動向について、政策効果により、全体的には前回に比べ、駆け込みや落ち込みは小さいということで、引上げの影響は前回ほどは大きくないのではないか、消費の回復も早いのではないかという声が多いということ。今後については、ラグビーワールドカップや即位の礼などによる消費者心理の改善が見られる一方で、消費者マインドの先行きが心配。特に低所得者や子育て世代には支援がありますが、それとは異なって支援対象ではない中間層の消費の冷え込みへの懸念を指摘する声もあること。
それから、政策の進捗状況について、一部に従業員の方の負担が軽減税率の対応などによって見られますけれども、全体としては大きな混乱はないのではないかということ。また、高齢者も含めてスマホ決済などのキャッシュレス化が進展してきている一方、ポイント還元の手続が遅れている、あるいは端末が届かない、人気の機種に需要が集中し生産が追い付いてないため、軽減税率対応のレジ機器が届かないという声があることを紹介しました。
それから、米中の貿易摩擦、中国の国内景気、欧州の政治情勢など下振れリスクが根強く、また、海外需要の落ち込みによる輸出への影響など先行きを不安視する見方も多いこと。
その他、台風被害への財政措置や、東京オリンピック・パラリンピック後を見据えた需要の下支え、賃上げが可能となる中小企業の生産性向上支援についての指摘があること。また、農業については、前向きな声として、ブランド化、海外輸出あるいは規模拡大に伴う投資への支援について要望があること声を私から紹介いたしました。
これについては、次回の経済財政諮問会議で、今週、日銀の金融政策決定会合もありますので、それを踏まえて金融・物価の状況や経済状況についていろいろ次回以降で議論しましょうと申し上げました。
その後に、本日の議題であります社会保障改革について議論を行いました。主な意見を御紹介します。
団塊の世代が、2022年から75歳に入り始め、2040年頃まで高齢者の増加が続くとの時間軸を見据えて、この2、3年のうちに改革を進めるべき。
経済成長と社会保障の良循環のためにも、意識と行動の変容を促すより賢い使い方に、限られた財源を向けることが重要。インセンティブの在り方とか、あるいは最近の経済学のナッジ理論を活用して行動を促していくこと、このような御意見がございました。来年度予算では、目安の実現への取組を続けるとともに、2022年に備え改革を加速すべき。
それから、地域医療構想の進捗は十分でなく、急性期から回復期への病床転換、過剰病床の削減、介護施設・在宅医療への転換を重点的に推進し、持続可能で安心できる地域医療・介護体制の構築を実現すべき。この点については、病床を減らして医療の提供体制が悪くなるということではなく、むしろ再編によって地域の医療・介護の提供体制が改善していくという、正に持続可能で安心できる地域医療・介護体制の構築を実現すべきということであり、これは総理も最後に御指示の中でも御発言があったところであります。
働き盛りの40歳代から50歳代の健康増進は、支え手の拡大や労働生産性の向上など、経済や保険財政面でも大きな効果が期待されるため、この世代の生活習慣病等の重症化予防の強化に重点的に取り組むべき、こういった御意見がございました。
以上を踏まえて、総理から締めくくり発言を行っていただきまして、これはお聞きになったとおりであります。
詳細については、後ほど、事務方から御説明させていただきたいと思います。
私からは以上です。




2.質疑応答

(問)経済財政諮問会議として、社会保障改革会議の議論をキックオフということだと思いますけども、一方で、政府全体の全世代型社会保障検討会議もあります。今後、その切り分け、進め方については、現時点でどのようにお考えでしょうか。


(答)繰り返しになりますけれども、全世代型社会保障検討会議は、社会保障に関係する政府内の各会議体から代表の方に集まっていただいております。その中で、全世代型社会保障改革の基本的な考え方、大きな方向性、それから、具体的な方針を取りまとめていくということを考えております。
それぞれの会議体でいろいろな議論が並行的にも行われておりますので、その代表者の方々には、そこでの議論も踏まえながら大きな方向性について全体の議論をしていただこうと思っております。
その中で、経済財政諮問会議における社会保障改革の議論は、正にマクロ政策の観点から行われております。骨太方針2019や現在の改革工程表に掲げられている検討事項について、その進捗の確認、課題の深掘りなどを図りつつ、2025年度の財政健全化目標の実現に向け着実につなげていくために進めているものでございます。
したがって、今回の議論なども踏まえながら、また全体会議でも御議論いただくということになりますが、全世代型社会保障検討会議は、現在、具体的な日程を調整中でありますけれども、年末の中間取りまとめに向けて複数回は開催したいと考えております。現在、与党においても、有識者へのヒアリング等が行われておりますので、第1回目でいただいた議論、それから与党での議論なども整理をしながら、次回、近々に是非、日程調整していただきたいと考えております。



(問)社会保障改革について、これまでのように、経済財政諮問会議などを中心とした従来の会議体ではなくて、新たに省庁横断でやらなければならないというのはスピード感の問題なのか、利害調整とかそういうところの問題があるのか、なぜ、新たな会議体でなければいけないのかというところを改めてお伺いできますか。


(答)社会保障をめぐっては様々な議論がある中で、いくつかの会議体で政府内において議論が行われてきました。経済財政諮問会議や未来投資会議もその一つでありますし、厚生労働省においても、今も議論が行われておりますけど、社会保障審議会もそうですし、それから労働政策審議会もあります。そういった様々な会議体の議論を全体として、正に新しい時代にふさわしい全世代型社会保障改革という大きな方向性を定めていく中で、そうしたそれぞれの議論を集約する形で代表者の方に来ていただいて、大きな方向性を議論していただこうということです。いわばこれまでの議論の枠を超えて幼児教育・保育の無償化がこの10月からスタートしておりますし、新たなそういう予算の使い方を行ってきているわけでありますし、高齢者の皆さんも70歳、75歳、高齢化していく中で元気な高齢者が多くなっている。そして、意欲を持っておられる高齢者も多い中で、それぞれの御自身の健康状態や意欲、様々な状況に応じて、早めに社会保障を受ける方もおられれば、より長く働きたいという方もありますので、そういった選択肢の拡大ということも含めて、新しい時代にふさわしい社会保障全体の構想を作っていこうということで、各会議体の代表の方に集まっていただいて、大きな方向性を議論していただくためのものであります。



3.多田内閣府政策統括官(経済財政運営担当)による追加説明

それでは、令和元年第9回の経済財政諮問会議について概要を報告します。
先ほど大臣から御紹介がありましたように、冒頭に大臣から御報告があった後で、社会保障改革について議論を行いました。
最初に、新浪議員から資料1の説明があり、各議員より意見が出されました。
主な御意見を御紹介します。
まず、厚生労働大臣から資料を使って御説明がありました。詳細は割愛しますが、大きく4点で、まず地域医療構想についてお話がありました。
各医療機関の対応方針の再検証を、来年9月までに要請することにしている。現在、今回の取組の目的について、地域に伺って直接丁寧に説明を行っている。そこでの御意見も踏まえながら、民間医療機関のデータ公表、重点支援区域の選定、そして、ダウンサイジングする際の財政支援などを行っていく。こうした取組で、心配する関係者の御理解も得ながら、医師偏在対策、医師の働き方改革と併せて三位一体で取り組んでいくというお話がありました。
二つ目は診療報酬改定についてです。令和2年度の診療報酬改定について、身近で安心・安全、かつ質の高い医療の実現、効率化・適正化を通じた安定性・持続可能性の確保などの四つを基本にして、次期診療報酬改定、薬価改定について年末に向けてしっかりと検討していきたいというお話がありました。
三つ目が働き盛りの40、50歳代の特定健診、がん検診の受診率向上や、介護予防の推進の話です。保険者努力支援制度の中で、保険者インセンティブのメリ張りを強化していきたい。それから、介護保険における保険者インセンティブのメリ張りを強化したい。それから、ナッジ理論などを活用した受診勧奨、負荷の低い健診を含む健診内容の見直しなどに取り組んでいくという話がありました。
四つ目、介護の生産性向上ということで、これまで取り組んできた処遇改善と併せて、先進的な取組を全国に普及して、介護ロボットの活用の推進を強力に進めるとともに、令和3年度の次期報酬改定で介護ロボットの効果実証等を踏まえて、必要な見直しをしていくといったお話がありました。
次に、高市総務大臣です。国と地方が共通認識を持って取組を進めることが重要だということ、地域医療構想についてお話がありました。
今月初めに、地方三団体、厚生労働省及び総務省によって、「地域医療確保に関する国と地方の協議の場」を開催し、その中では、地方側からも医療費の抑制は必要だという認識・意見が示されたという御紹介がありました。
今後の会議においては、地域の実情を十分把握するとともに、公費負担が行われている公立・公的病院は、効率的・効果的な経営に努める必要があることも踏まえながら、国と地方が協力して地域医療の確保に向けた取組が更に進むよう、厚生労働省とも連携しながら適切に取り組んでいきたいというお話がありました。
もう一つ、民間議員ペーパーの中に、ICTの活用というお話が入っていましたが、この介護現場の生産性向上に関して、これまでもICTを活用した入退室の管理や、AIの実装による診断支援をしてきたと。これを全国に普及していきたいといったお話がありました。
次に、梶山経済産業大臣からお話がありました。専ら保険者インセンティブの強化についてのお話であり、人生100年時代を迎えて病気や介護の予防には健康寿命の延伸、個人のQOLの向上、高齢者の活躍促進といった多面的な意義が存在すると。したがって、経済産業省としては産業構造審議会や未来投資会議の場において、このインセンティブの抜本的評価が不可欠だという主張をしてきた。年末の来年度予算編成に向けて保険者努力支援制度や介護インセンティブの交付金について関係省庁と連携しながら結論を得ていきたいといったお話がありました。
次に、麻生財務大臣です。地域医療構想についてお話があり、厚生労働省と総務省とがしっかり組んで見える化をしながら進めていくべきだと。見える化が進んでいるところ、進んでいないところを見える化・差別化して進めていくべきであり、頑張る保険者を応援すべきではないかといったお話がありました。
その後、もう一度、総務大臣が発言され、地域医療構想については2016年度に全国の全都道府県で取りまとめられたけれども、具体的な対応方針はこれから。厚生労働省や地方三団体としっかり議論していきたいというお話がありました。
以下、民間議員からの御発言です。
民間議員ペーパーでは今回しっかり書いているので、ここに書いていることを着実に進めてほしい。特にデータヘルスについて、予防にはカルテやレセプトのデータを参照することが必要で、それは既に進んでいる、もう一歩加速していくことが必要だといったお話。それから、自社の取組の御紹介があり、実際にデータ連動して成果が出ているというお話がありました。
別の民間議員です。地域医療、介護給付確保基金について7,000億円あるものをダウンサイジング等に活用することは良いことだけれども、国民の皆様に対してプラスになっていることをしっかりと伝えていくことが重要。その意味でも使途や効果に関するデータをしっかりと集めて、そのデータを検証してデータ・検証・効果といった3つの観点で国民の方々にしっかり示していくことが重要だというお話がありました。
それから、前回いらっしゃらなかった厚生労働大臣に対しての御発言として、前回取り上げた企業のキャリアアップ助成金の活用が十分に進んでいないが、この点についてもデータを集めてしっかりと検証していくことが大事だといったお話がありました。
別の民間議員です。ずっと取り組んでいることだけれども、今回のペーパーで社会保障改革について一通り書いた理由は、これが待ったなしの課題だからだ。ここ2、3年が勝負で、その中でどれだけ実行できるのか。その意味でこの地域医療制度については、3年と限って取り組むことが非常に重要だということです。
そこで、インセンティブとはお金を出すという意味というよりは、行動変容を伴っていくことが重要で、その行動変容につながるような賢い使い方をすることが重要。ナッジ理論も同じような趣旨であるということです。
それから、そうは言っても、社会保障制度は持続可能性も大切で、無駄を省くことや効率性も大事だといったお話がありました。
良循環の実現のためには、やはり地域医療構想が大切で、これは地域、あるいは地域の方々のQOLを高めるための良いメカニズムになるんだということを強調されていました。
それから、生活習慣病については、早め、早め、若いうちからの対応が大事だといったお話もありました。
別の民間議員です。データヘルスの関係で、医療健診データの多くが紙で保存されているので、それが1つ問題であり、データヘルスを行っていく際には紙で保存されたものを更にクレンジングしていく必要がある。これらをしっかり進めていけば、間違いなく予防に効果があるだろうということ。
それから、厚生労働大臣からの資料について、一言コメントがありました。特定健診、がん検診等の受診率向上という3ページの左側の図に関して、新たな血液検査の導入について、負荷が低いのであれば3年も掛からない。ベストを求めるのではなくてベターがあることが重要であり、早く進めるべきだといった御発言がありました。
9ページの薬価改定に関しても御発言がありました。下にある参考という部分について、対象品目の範囲と医療費への影響という、この試算値に着目して、対象範囲の拡大が重要であり、対象範囲をしっかり広げていくことが重要だといったお話がありました。
その後、日本銀行総裁が、御自身が三重県庁に勤務したときに4つの県立病院があり、大きな赤字を抱えていたけれども、今はこれが2つになっていると。残りは民間に移管したという御自身の経験を踏まえた御紹介がありました。
その後、厚生労働大臣から、地域医療構想は、地域がしっかり主体となって考えて、それを国がどう進めていくかといったアプローチであるということ。それから、データヘルスについても今は匿名情報になっていますが、被保険者情報をどう活用していくか。10月に有識者会議がまとめたものがあるので、それを受けてこれから検討を進めたいというお話がありました。
概ね以上であり、最後に総理から御発言があって、終わったところです。

(以上)