第6回記者会見要旨:令和元年 会議結果
茂木内閣府特命担当大臣記者会見要旨
- 日時:令和元年7月31日(水曜日)18時06分~18時39分
- 場所:中央合同庁舎第8号館1階S101・103会見室
1.発言要旨
それでは、経済財政諮問会議の概要について、報告いたします。
本日は最初に、経済財政諮問会議で定期的に議論しております「金融政策、物価等に関する集中審議」を行い、その後、来年度予算の概算要求基準の策定に向けた議論を行ったところです。
「金融政策、物価等に関する集中審議」では、再びデフレに陥ることがないよう民需の活性化が重要であり、そのためには、新商品・サービスの開発などによって潜在需要を喚起し、将来の成長期待を高める、社会保障の持続可能性を確保して将来不安を軽減する、能力開発等を支援していくつになっても活躍できる安心感を高める、併せて、海外経済をはじめとする下方リスクの顕在化には機動的に対応すべき、といった意見がありました。
また、意見交換の中で根本厚生労働大臣から、中央最低賃金審議会において、本年度の最低賃金の引上げの目安額が、全国加重平均で27円、率にして3.09%になり、この結果、全国加重平均で901円になるとの答申が行われたとの報告がありました。
次に、概算要求基準の策定に向けた議論の中で、内閣府から中長期試算の報告がありました。
結果を簡単に御紹介しますと、経済成長率については、世界経済の減速等を背景に足下では鈍化するものの、2020年代前半には実質2%、名目3%程度の成長率に上昇していく。そして、こうした成長実現ケースにおいて、プライマリーバランスは今後の歳出改革を織り込まない試算として、2026年度に概ね収支が均衡する見込みとなっている、といった報告がありました。
総理からの締めくくり発言については、お聞きいただいたとおりです。
詳細につきましては、後ほど、事務方の方から説明をさせていただきます。
2.質疑応答
(問)中長期試算の結果なのですが、この結果を踏まえられて、政府が目標として掲げている2025年度の国・地方のプライマリーバランス黒字化の達成に向けて、どういった取組が必要になるのか、改めてお願いできますでしょうか。
(答)「中長期試算」では、御案内のとおり、来年度以降の歳出改革は織り込んでいない試算になるわけでありますが、政府としては、「経済再生なくして財政健全化なし」との基本方針の下、需要の拡大、成長力の強化、潜在成長率を上げていく。これを図りつつ、新経済・財政再生計画で定めた歳出改革を着実に実行することによって、2025年度のプライマリーバランス黒字化を目指していきたいと思っております。
(問)プライマリーバランスについて、今回、成長実現ケースでも、前回試算よりも黒字化が1年後ろずれして、26年度から27年度になっていると思うのですが、そのことについての理由を改めて教えていただきたいのと、大臣の受止めを教えてください。
(答)プライマリーバランスは、単年度ごとに見ていくわけですね。そういった中で、中長期的に成長経路がどうなるか、それから改善のペースがどうなるかという話でありますから、本年1月の試算と大きく変わってないというのが一般的な見方だと思います。
(問)氷河期世代への支援について、本日、支援推進室を設けられました。3年間で30万人の正規雇用を増やすとされている政府目標に向けて、今後、具体的にどのような取組をされていくのかということを改めて教えてください。
(答)就職氷河期世代への対応につきましては、喫緊の課題であると同時に、日本の将来に関わる重要な課題でありまして、政府一体で最優先で取り組む課題だと思っております。
今日、推進室を立ち上げ、その訓示の際に、6,600万年前の氷河期の話からアインシュタインの話までいろいろさせていただきました。必要ならばもう一度繰り返しますが、よろしいですか。
(問)先程、経済財政諮問会議の方で根本厚生労働大臣からも御報告あったということなのですが、大臣がまとめられた骨太方針の中で、「より早期に全国平均が1,000円」という方針が示されていたと思うんですけれども、この方針と比べた時に、今回の引上げ幅の評価を改めてお聞かせいただけますか。
(答)安倍政権が目指しております「成長と分配の好循環」の継続・拡大を実現するためには、最低賃金を含めた賃金の引上げを通じて、可処分所得の継続的な拡大と消費の活性化につなげていくことが極めて重要だと考えております。
こういった中で、厚生労働省の審議会において、今年度の最低賃金の改定に関して、「全国加重平均で27円」と、過去最大の引上げ額で取りまとめられたわけでありますが、政府としては、今年の骨太方針にも記載されておりますとおり、中小企業・小規模事業者に対して思い切った支援策を講じるなど、賃上げしやすい環境を整備するようにして、最低賃金が「より早期に」全国加重平均が1,000円となることを目指していきたいと思っております。
(問)プライマリーバランスの件で、2025年度のプライマリーバランス黒字化を目指したいとおっしゃっておられましたけれども、大臣として、この目標の位置付けというのは、絶対に2025年度に達成しなければいけないという絶対的な目標というお考えでよろしいのでしょうか。例えば、また目標達成できなさそうというのであれば、昨年みたいに目標達成時期を後ろにずらすということもあるかと思うのですけれども、そういう意味で2025年度というものが、もう確実にやらなければいけないという区切りなのかどうかというのを教えてください。
(答)そういう目標の下で、今、全力で取り組んでおります。
(問)目標時期をこの先、延ばすということは、基本的にないということでよろしいのでしょうか。
(答)現段階において想定はしておりません。
(問)最低賃金に関して、骨太方針では、「より早期に」という言葉を加えられまして、引上げペースを加速されていくのかという受止めがあったと思うのですけれども、今回のペースは、過去3年の水準とほぼ同じかと思います。今回の中央最低賃金審議会での審議・答申というのは、骨太に沿ったものだったと言えるのかどうか、大臣の受止めを教えてください。
(答)全国加重平均で27円というのは、過去最大の引上げ額だと考えております。さらには、地域間格差に配慮をするという観点から、御案内のとおり、四区分の中で、昨年は一番上と一番下と言いますか、この差が4円あったのが今年は2円といったことで、十分配慮されたものになっていると考えておりますが、大切なのは、中小企業・小規模事業者が賃上げできるような環境をどう整備していくか、それを実現するということが重要だと思っておりまして、引き続き、そういった取組によりまして、より早期に1,000円という数字を達成していきたいと思っております。
3.多田内閣府政策統括官(経済財政運営担当)による追加説明
それでは、令和元年第6回経済財政諮問会議について、概要を報告いたします。
今日は3つの議題でした。「金融政策、物価等に関する集中審議」においては、若田部日本銀行副総裁から資料1について、そして、柳川議員から資料2について御説明がありました。また、「中長期の経済財政に関する試算」と、「令和2年度予算の概算要求基準」について、井上政策統括官から資料3と資料4について御説明があり、概算要求基準については、麻生財務大臣から資料5の説明がありました。
まとめて意見交換をされましたけれども、その主な御意見を御紹介したいと思います。
まず、厚生労働大臣から、資料6を使いながら御発言がありました。発言の内容、詳細は省略いたしますが、1ページ目を使い、この目安額の27円が昭和53年に最低賃金の目安制度が始まって以来、最高だということ、それから、今後、地方の審議会で目安どおりに改定されれば、全国加重平均で初の900円突破だということ、東京・神奈川では1,000円突破だといったことについての言及がありました。
また、資料の右の青い四角ですが、答申で2点明記されたということで、特に、その2点目、来年度以降の審議で消費税増税の影響や政府による思い切った支援策を前提とし、それらが適切に反映される基準について、議論を行うことが必要であることも明記されたといった御紹介がありました。
それから、次のページ、諸外国と比較して日本の最低賃金が低い理由について、一つは、短時間労働者の賃金決定方法が正規雇用労働者と異なることでその賃金水準が抑えられてきたこと、それから、労働生産性が低いといったことについての言及がありました。今後、同一労働同一賃金など非正規雇用労働者の処遇改善、中小企業・小規模事業者の生産性向上のための取組、それから、賃金引上げに見合った形で取引対価が円滑に転嫁できるよう取引関係の適正化に取り組むことが必要だということで、政府一丸となって取り組んでいくといったお話があったところです。
続きまして、世耕経済産業大臣から御発言がありました。前回の会議で、巷では値下げ競争のようなものが始まっているといった話があり、それを受ける形でありますけれども、「売値マイナスコスト」が基礎である生産性については、6月に取りまとめた成長戦略実行計画にもあるとおり、日本の労働生産性の低さの原因は、売値が低いことに求められるのではないか。コストの何倍の価格で販売できているかを示すマークアップ率というのは、2010年以降、米国や欧州の企業では急速に上昇している一方で、日本の企業は低水準で推移している。
ちなみに、足元の2016年では、米国企業のマークアップ率は日本の企業の1.4倍だということで、今後新技術とデータを活用し、付加価値の高い新たな製品サービスを生み出して、日本企業のマークアップ率の向上を図ることで、生産性の向上、価格の上昇、賃金の上昇といった好循環を生み出して、日本経済が力強く成長できるようにする必要がある。
実際にマーケットの中でこういった努力をしている企業もあるということで、いくつかの個別の企業の例の紹介がありましたけれども、割愛をしたいと思います。経済産業省としても未来投資会議において、この問題の解決に向けた方針を議論していきたいという話がありました。
また、最低賃金について、厚生労働大臣からの報告を受けての話でありますが、関係省庁と連携しながら下請取引状況の改善に取り組んでいきたいといったお話がありました。以上が世耕経済産業大臣です。
次に、石田総務大臣から御発言がありました。前回の会議で、1人の民間議員から、生産性向上に向けて進めるべき取組として、地域経済の活性化が極めて重要という発言がありましたが、その趣旨に同感するという御発言がありました。この際に敢えて申し上げると、経済活動の東京圏への過度の集中によって、長い通勤時間に象徴されるように、ストレスだけではなく大きな経済的な非効率が生じていると。この東京一極集中の各種の弊害と地方の疲弊が長年にわたって指摘されているけれども、大学の定員や大企業の本社の東京集中といった状況には改善が見られず、もはや限界なのではないかといった指摘もある。ここで新たな一歩を踏み出して政府としての意気込みを表していくべきではないか。こういった御発言がありました。
以下、民間議員です。
中長期試算に関して、財政の形を成すためには、プライマリーバランスの改善や、公債等残高対GDP比の安定的な引下げが必要になるけれども、中長期試算を見ると、生産性向上が実現する成長実現ケースでなければ、そうした姿が実現できない。つまり、高い生産性向上が前提になっている。その意味で、歳出改革も大切だが、生産性向上につながるところに重点化するといったことを、財務省だけではなく各省、政府全体でしっかりと考えていく必要があるといったお話がありました。
また、2点目として、医療についても、現在、岐路に立っていて、大きく効率化に取り組まなければいけないということです。例えば、ゲノム医療については、それが上手くいけば予防的医療や早期の対応につながり、コスト削減につなげていくことができると。他方で、それを実現するためには、初期投資、出だしの費用が発生するということで、こうした初期投資に必要な財政資金をしっかりと確保することが必要。それを確保するための改革をやっていかなければいけない、こういった指摘がありました。
それから、3点目。最低賃金について言及があり、最低賃金引上げのためには生産性の向上が必要。これまで労働投入量が増える中で、いわゆる全要素生産性の上昇率が停滞しているということがある。どうしてそうなっているのかということを、親しい信頼できる労働経済学者に聞いてみたところ、OECDの調査などで日本では女性の能力、文章の読解能力ということだったかと思いますが、これが大学レベルでは男女全く同じなんだけれども、その後、社会に出てからの状況を比較すると、3割ぐらい差が出る。こういった御紹介がありました。
これは、社会進出後に女性に活躍の機会がなかなか与えられてないということの一つの裏付けにもなるということで、民間議員の御意見としては、女性の方々をはじめとして再教育の機会をしっかり提供する、正規・非正規の境を無くしていくなどといったことにしっかりと取り組むことが必要ではないか。
世耕経済産業大臣からお話のあったマークアップ率を高めていくといった話についても、女性の潜在力を活かしていくことが鍵になるのではないかといった御指摘があったところです。
もう一方の民間議員です。この中長期試算について、ベースラインではなく、成長実現ケースの成長率を高めていくことについて、覚悟を持って政策を実現していかなければならない。それをスピード感を持ってやっていくことが必要、こういったお話がありました。
その上で、これまで何度かこの民間議員はおっしゃってますが、女性、非正規、若者の実力を付けていくために、能力開発を支援していくことが重要。どこにお金を使っていくのかという点、いわゆる重点化が重要で、例えば、医療費が増えていくことは仕方がないけれども、頑張って節約すべきところは節約をして、データヘルスなどにどれだけお金を使っていけるか、そうした工夫にしっかりと取り組んでいくということが大事だろうということです。本当に大事な投資の分野にしっかり重点化することが重要。こういったお話です。
最低賃金に関連しては、中長期的にしっかりと賃金が上がっていくことが重要で、単発で終わってはいけないといった御発言がありました。そのためには、中小企業の生産性の向上といった取組と、しっかりと車の両輪で連携して取り組むことが必要だといった御発言がありました。
最後に、今日、経済財政諮問会議で決定した「予算の全体像」の資料の最後に重点事項がありますが、これらをしっかりと具体化し、それによって成長実現ケースに乗せていくことが重要だという御発言がありました。
その上で、この資料4、予算の全体像を経済財政諮問会議として取りまとめ、それから、その考え方を踏まえた、麻生大臣から御説明いただいた概算要求基準案について、経済財政諮問会議として了承ということになりました。
最後に、総理から締めくくりの御発言がありましたが、私からは割愛させていただきます。
(以上)