第5回記者会見要旨:令和元年 会議結果

茂木内閣府特命担当大臣記者会見要旨

  • 日時:令和元年7月29日(月曜日)17時31分~18時01分
  • 場所:中央合同庁舎第8号館1階S101・103会見室

1.発言要旨

私の方から2点。
まず、日米貿易交渉についてですが、今週8月1日及び2日に、米国ワシントンでライトハイザー通商代表と閣僚協議を行うことになりましたので報告させていただきます。
次に、先ほど行われた経済財政諮問会議の概要について報告します。
本日の経済財政諮問会議では、最初に、今年から来年にかけての短期の経済見通し、「年央試算」について内閣府から報告を受け、それを踏まえて「来年度予算の全体像」、そして「概算要求に当たっての基本的な方針」について議論を行いました。
まず、「年央試算」では、雇用・所得環境の改善が続く中で、各種政策の効果もあって、内需を中心とした景気回復が続くと見込まれております。今年度2019年度のGDP成長率は、実質で0.9%程度、名目で1.7%程度、来年度2020年度は、実質で1.2%程度、名目で2.0%程度と見込んでいるところです。
次に、「来年度予算の全体像」については、景気は緩やかに回復しているものの、金融資本市場の動向や海外発の下方リスク等に一層注意をし、リスクが顕在化する場合には、機動的なマクロ経済政策を躊躇なく実行すべき。特に来年度予算は、需要の拡大を図りつつ、成長力の強化につながる取組を推進し、民需主導の持続的成長を確実なものとすべき。また、2025年度の財政健全化目標の達成に向けて、経済・財政一体改革を着実に推進すべきといった御意見がありました。
総理からの締めくくり発言については、お聞きいただいたとおりです。本日の議論を踏まえ、次回の会議において、経済財政諮問会議として「予算の全体像」を取りまとめる予定です。
詳細につきましては、後ほど、事務方の方から説明したいと思います。私からは以上です。


2.質疑応答

(問)内閣府の「年央試算」についてお尋ねします。今回初めて示されたのは2020年度の経済成長率の見通しですけれども、実質においても名目においても、民間の見通しに比べますとだいぶ高めの水準かと思うのですが、今年の10月に消費税率の10%への引上げというのもあるわけですけれども、実現に向けてのポイントについて、大臣どのようにお考えでいらっしゃるのかをお聞かせください。


(答)まず、民間機関の予測の前提の置き方はいろいろそれぞれによって違っているところがあると思うんですが、特にその消費税率引上げに当たっての対策は、御案内のとおり、今回、軽減税率の導入、さらには教育無償化等によって、経済への影響を2兆円に抑制した上で、予算・税制におきまして、それを上回る2.3兆円という対策も打っているところであります。
今回お示ししました「年央試算」では、こういった現在の堅調な雇用情勢や内需の底堅さを反映して、来年度にかけても引き続き、雇用・所得環境の改善が続いて内需を下支えすると見込んでおりまして、その実現に向けて、今、申し上げたような消費税率引上げに当たっての需要平準化対策を含め雇用・所得環境の改善を進める各種政策にしっかりと取り組むことが重要だと思っております。これがメインシナリオです。
その上で、先行きのリスクとしては、通商問題の動向が世界経済に与える影響、中国経済の先行き、金融資本市場の変動の影響等に留意する必要があると考えており、リスクが顕在化する場合には、今日の民間議員提出資料にも、そして総理の御発言にもありましたとおり、機動的なマクロ経済政策を躊躇なく実行することとしております。



(問)日米貿易協定交渉の閣僚級協議についてお伺いします。今月の24日から26日までワシントンで行われました事務レベル協議の進展具合と、今回の閣僚級協議で想定される議論のテーマや意気込みを教えてください。よろしくお願いいたします。


(答)先週24日から26日にかけて実務者等協議では、工業品、さらには、農産品等の物品市場アクセスについて専門的・技術的な観点から議論が深まった。また、いくつかの論点につきましては、次官級のハイレベルでの協議も行ったところでありまして、こういった協議を通じて閣僚協議に向けた論点整理等が行われたと承知しております。
8月の1日から閣僚協議ということでありますが、基本的にもう日は高くないといった思いで交渉に臨みたいと思っております。



(問)今年の10月に消費増税があるという中で、2019年度、2020年度の、例えば個人消費なども、2018年度の実績を上回る形で見通しを置いていらっしゃるんですけれども、これほど高い数字を実現できると思われる理由をもう一度改めて教えていただきたいのですが。その消費増税に伴う増税対策というのは、消費の落込みを防ぐという意味では非常に効果が一定あるかとは思うんですけれども、落ち込む分だけでなく、この数字を見ていると、昨年度の実績をかなり上回る形になっていると思いますので、その辺りをもう一度教えていただければ助かります。


(答)今、例えば有効求人倍率は1.62という数字ですから、1970年代の前半以来45年ぶりの高い水準ということになるわけであります。これは大きく改善しているわけでありまして、こういった堅調な雇用情勢や内需、これも設備投資を含め底堅いと思っております。もちろんその消費マインド等に外需の影響が出ているのも確かでありますが、基本的にこういった雇用・所得環境の改善が続いている、これが内需を下支えする。その上で、それが崩れないように、まずは消費税率引上げへの対策も、2兆円の影響に対してそれを上回る対策を取り、さらには、外需下振れリスクに対して機動的なマクロ経済政策を躊躇なく実行していくという観点から、我々としてはこういった数字を実現できると思っております。



(問)冒頭の御発言でも、成長力の強化に取り組むというお話がございましたけれども、これは具体的にどのような形で進めていかれるんでしょうか。予算でも優先枠みたいなのもありますけれども、何か予算を重点的に付けていけば成長力というものは付くものなのか、あるいは、もう少し規制緩和的なものが必要なのか、どのようにお考えかを教えてください。


(答)どちらか片方ということではないですね。それはやはり予算措置によりまして成長を加速していくという面もありますし、民間活力、こういったものを引き出していくためには、規制緩和等も必要だと思っております。資料2-1「令和2年度予算の全体像に向けて」という民間議員提出資料をご覧いただきますと、3ページ目に、令和2年度予算の重点事項といった形で、「当面の需要拡大に向けて取り組むべき取組」、そして2番目に、「生産性向上に向けて進めるべき取組」、3番目に、「歳出改革の推進」、こういった形で整理してもらってますが、概ねここに書いてあります施策は、極めて重要なものだと考えておりまして、こういったことを中心にしながら、重点的にメリハリのある予算編成を行っていきたいと思ってます。



(問)反対に、その前の2ページ目で、生産性上昇率が鈍化しているんじゃないかということを民間議員の方は御指摘されてますけれども、参院選でも総理をはじめ皆さんは街頭で、アベノミクスの成果というのをおっしゃっていたと思うんですが、その中で、なぜ鈍っているというか、その前2000年代の初めの頃ほどの生産性のデータが出てないのかというのをどういうふうに分析されてるんでしょうか。


(答)資料2-2の3ページをご覧ください。図の4で書いてあります潜在成長率の動向とその要因分解を見てみますと、どういった形で潜在成長率の伸びが1%程度に留まっているかは明らかであると思っておりまして、当然これからその能力開発も含めて人材への投資といったこともしっかり進めていかなくてはならない。さらには、今、省力化投資等は進んでおりますけれど、さらにその資本投入、この強化といったことも重要になってくると思っております。




3.多田内閣府政策統括官(経済財政運営担当)による追加説明

それでは、令和元年第5回の経済財政諮問会議について御報告いたします。
今日は3つの議題でした。「内閣府年央試算」につきましては、私から資料1、「予算の全体像」につきましては、柳川議員から資料2、そして、「令和2年度予算の概算要求基準」について、麻生大臣から資料3と4の説明があり、3つの議題について、まとめて各議員より意見が出されました。
主な意見を御紹介したいと思います。
まず、世耕大臣からです。世界経済をめぐる情勢について、米中貿易摩擦の激化など、先行きの不透明感が高まっており、海外発の下方リスクに十分目配りをすべき。消費税増税に伴う駆込み需要は、住宅や自動車の購入者に対する税や予算措置の効果があり、これまでのところ適切にコントロールされている。経済産業省としては、ポイント還元の効果をしっかりと出すことなどによって、消費マインドが低下しないよう、引き続き注意を払っていきたいといった御発言がありました。
それから、資料の2-1にも書いてありましたが、世耕大臣からも臨時・特別の措置について、令和元年度予算における措置を踏まえてしっかりした規模としていくことが必要だといった御認識、それからリスクが顕在化する場合は機動的なマクロ経済政策を躊躇なく実行すべきだといった御提言がありました。
麻生財務大臣からの御発言です。民間議員の御提案を受けて、経済再生と財政健全化の両立を図るための考え方ということで御発言がありました。
需要の減少が懸念されるのであれば、今こそ民需主導の持続的成長を確実にすべきという点は、そのとおりだと思う。Society 5.0の実現などを通じて、新たな消費や投資を掘り起こし、アベノミクスを更に前に進めていかなければならない。
その上で、骨太方針2019にもあるとおり、適切な規模の臨時・特別の措置を講ずることにより、消費税率引上げ前後の需要変動の平準化を図り、経済の回復基調に影響を及ぼさないよう万全を期す。同時に、海外発の下方リスクに対しては十分目配りし、必要な場合には機動的なマクロ経済政策を躊躇なく実行してまいりたいといった御発言がありました。
民間議員からの御発言を紹介したいと思います。
民間議員ペーパー、資料の2-1と2-2は、我々の強い危機感を反映している。再び需要不足になるおそれがあり、需要の喚起と生産性向上の相乗効果が重要だといった御発言がありました。
投資の拡大については、成長分野への投資が重要であるとともに、公的分野の産業化が必要だと。消費の喚起には、将来不安に対して社会保障改革による安心の提供や、若年層の能力開発投資といったところが重要。外需の拡大には、開放的な市場を通じた拡大が重要だといったお話。
それから、地域の活性化が重要で、これはペーパーには二地域居住といった言葉が書いてありますが、多地域居住、多地域就労ということを進めていくための制度的な手当てが重要だといった御発言がありました。
それから、別の民間議員ですが、デフレ懸念というものは内需との関連があると。設備投資が盛り上がっているけれども、消費については構造要因を背景とする問題がある。外需については米中の貿易の問題などが関わっている。ヨーロッパに出張された時にフランスの専門家とも対談を行って、その中でTPP11と日EU協定を結び付けて強化してはどうかという御提案を受け、非常にもっともだと感じた、といった御発言がありました。このTPP11と日EUが一緒になると、貿易額では世界の約4割、GDPで約3割をカバーしていくということの御紹介もありました。
これから世界での議論の中で、国の補助金というものが取り上げられることになるかもしれないけれども、WTOは別にして、TPP11や日EUという形で日本が主導的にアーキテクチャーを作ることにつながるのではないか。そういった意味でも効果があるのではないかといった御発言です。これは外需との関係で御発言があったと理解をしています。
それから、消費については、背景として、生産性の問題と、社会保障への不安の問題がある。これらは、この御発言された方によると、両者が結び付いているように思うと。生産性が低いサービス業や小売業、さらには医療といった分野でしっかりと生産性を上げていかなければいけないという話でした。
特に、骨太方針の中でも取り上げられたゲノム診断の例を勉強されたとのことで、アメリカの例でもウィスコンシン大学が徹底してトップダウンで決断をしてやってきているということであり、特にスピード感というものを日本としても見習うべきだというお話がありました。
それから、同じゲノムの話で、政府が一生懸命取り組んでいる例としてイギリスがあるけれども、この分野では予算がない中で、いかにしてコストセービングに取り組んでいる例として、当初は1人当たりに非常に高い費用が掛かってきたけれども、今では1人当たり1,000ドルぐらいでできると。やればやるほどビッグデータも貯まってきて、生産性が非常に上がっていく分野なので、日本としてもこうしたことをしっかり取り組むべきだという話がありました。
さらに、キャッシュレスの話についても御発言があり、日本の有名な企業が開発したQRコードが、せっかく技術を持っているのに、それがなかなか実社会で活用されていないということで、逆に世界を追いかけるような状況になっていると。持っている技術をしっかりと活かしていくように、政府もビジネス界もしっかりと取り組むべきだという話がありました。
生産性を上げて日本の競争力を強化し、ひいては消費者の安心につながるといったところにリソースを充てていけばいいのではないかという話です。
もう御一方の民間議員です。健康長寿によって逆説的に不安になるという問題が出てきている。また、デフレ感といったものがまたじわじわと出てきていると感じているということです。物流費が上がってきているので価格を適切に上げていけるように商習慣を含めて見直しをしていくことが必要ではないかといったお話がありました。
政府としても、このデフレマインドに陥らないような機動的な対応が必要ではないかと、御自身としては資料に出しているペーパー以上に危惧をしているというお話がありました。
幾つかその上で個別の項目について言及がありましたけれども、社会保障、これを安心材料としていくための制度設計が大事であるというのが1点。それから、パート就業者の方が11月になると就業調整を行うといった事例がよく見られるけれども、しっかり12月まで働いていただくことが重要で、これが消費拡大につながっていく。したがって、モニターをしていかなければいけないといった話。
それから、歳出改革はもちろん重要だけれども、例えば糖尿病の重症化予防を進めることで透析などを回避できれば、働く人が増えていく。そして、認知症を遅らせることもできるということで、そうしたところについては予算を単に削るだけではなくて、しっかりと予算配分をしていくべきだといった話がありました。
それから、人材の適材適所という意味でも地銀の役割が大事なので、地銀の有能な人材が地方の中小企業で活躍できるようにしていくことも大事だといった話。そして、今後のメリハリのある予算に向けて自分としてもしっかりと議論をしていきたいという話がありました。
また、別の民間議員ですが、確かに高寿命化・長寿命化というものを、本来であれば明るい未来や安心とかにつなげていくことが自然だけれども、それが必ずしもできていないというのは非常にもったいない話である。高寿命化が明るい未来につながるようにしっかりと支える社会保障を作っていくべきだ、ということが一つ。
それから2点目として、デフレというのは縮小均衡によって起きてしまうものだと。企業がしっかりと稼げるようにということで、適切な値上げで企業がきちんと稼ぎ、そして、賃上げを通じて所得を増やすということ。それが消費の拡大につながっていくという好循環を実現するための政策をしっかりやっていくべきだという話です。
3点目。外需に関連して、インバウンドの観光だけではなく、海外に打って出ていくと。農水産物などの輸出を始めとして、外に物を売っていくといったような施策も重点化すべきだという話がありました。
ここで総理から、確かに、不安材料ばかりが話として出ていくということは、良くないであろうといったお話がありました。自分たちの政策の内容についても、十分に今伝え切れていない面があるというお話と、それから、キャッシュレスに関連して、今回の話をいいきっかけにすると。ピンチをチャンスに切り替えていくといった発想が大事、こういったお話がありました。
その上で、最後に総理の御発言があったところですが、こちらにつきましては割愛して、以上で終わらせていただきます。

(以上)