第4回記者会見要旨:令和元年 会議結果

茂木内閣府特命担当大臣記者会見要旨

  • 日時:令和元年6月21日(金曜日)18時19分~18時45分
  • 場所:中央合同庁舎第8号館1階S101・103会見室

1.発言要旨

まず、私から会議の概要についてです。
本日は、経済財政諮問会議と未来投資会議を合同で開催し、これまで議論を重ねてきました「骨太方針2019」と「成長戦略実行計画」を取りまとめました。その後の臨時閣議におきまして、この2つを閣議決定したところです。
今回の骨太方針については、国際経済環境の変化を強く意識するとともに、少子高齢化という日本が直面する最も高い壁にどう対応していくか、令和の時代の新しい日本の在り方、Society 5.0への挑戦を前面に据えております。副題は、「『令和』新時代:『Society 5.0』への挑戦」としました。
総理からは、経済再生最優先の基本方針を揺らぐことなく堅持し、経済の回復基調を持続させ、経済財政運営に万全を期していくとの発言がありました。
次に、「成長戦略実行計画」についてです。
AI、IoT、ビッグデータなど第4次産業革命が経済社会に急激な変化をもたらしており、我が国においても、新しい令和の時代の成長戦略を大胆かつスピード感を持って進めていく必要があります。
今回の実行計画は、デジタル市場のルール整備やモビリティにおける自家用有償制度の改正、地域の暮らしを支える乗合バスや地域銀行の独禁法の特例、人生100年時代を見据え、70歳までの就業機会の確保に向けた法整備などを盛り込んでおります。
総理からは、今回取りまとめた政策について、次期通常国会への関連法案提出も含め、政府の総力を結集して早急に実現するよう指示があったところです。
詳細は後ほど、事務方から説明いたします。


2.質疑応答

(問)今回の骨太方針ですけれども、最低賃金の引上げをめぐっては、原案段階から、「地域間格差にも配慮しながら」という文言が加えられていますけれども、この意味合いについて改めて大臣の方から御説明いただけますでしょうか。


(答)はい。最低賃金については御案内のとおり、都道府県ごとに物価、労働需給の状況に応じて決める仕組みとなっており、現在、最高額の東京都が985円、そして最低額の鹿児島県が、761円という状況であります。
これまでも最低賃金審議会において、地域間格差に配慮した審議がなされていると承知しております。そして、その結果、最近の引上げ率では、最低額の鹿児島県が最高額の東京都を上回ることとなり、地域間格差は是正される傾向にあると考えております。
今回この文言、「地域間格差にも配慮しながら」を入れることで、政府としても、現時点で地域間格差があるということや、地域ごとの経済実態を踏まえつつも、地域間格差は縮小されていくことが望ましいといった認識をしっかりと勘案しながら取り組んでいくことを示したものであります。



(問)骨太方針の63ページにあります給付と負担の見直しを、2020年の骨太方針でやりますというお話なんですけれども、もうあと1年となりますが、具体的にはどのような形で本格的な議論をされたいと思っていらっしゃるのか、現時点のお考えを教えてください。


(答)給付と負担に関する本格的な検討は、骨太方針にはありますように、これからということになるわけでありますが、給付減か負担増かという単純な議論ではなく、両者を極力抑えた上で、全世代型社会保障改革の中で、社会保障や財政の持続可能性を確保する、そういったより前向きな政策体系を探っていきたいと考えております。
具体的な検討内容につきましては、今後、経済財政諮問会議等の場で議論していきたいと思っております。



(問)1月の経済演説のときには、今年の夏から本格的に議論を始めますとおっしゃっていたと思うんですけれども、参院選が終わってすぐぐらいから始められたいというお考えと思っていてよろしいんですか。


(答)おそらく、参議院選が終わりますと、概算要求等、予算編成に向けた作業が始まると思いますので、まずはその議論をしなければいけないと思っております。その後、できるだけ速やかにこの議論をスタートしたいと思っております。



(問)この先、2年の間にどこかで衆議院選挙があると思いますが、来年までの議論の間にも選挙がある可能性というのはゼロではないと思うんですけれども、そういうものがあっても、政治的にもこの議論はきちんとされるということでよろしいですか。


(答)政治日程に関わりなくしっかりと議論は進めてまいりたいと思っております。
正確に申し上げますと、我々の任期は再来年の10月までありますので、物理的には必ずしも2年以内に解散があるとは限らない。これは付け加えさせていただきます。



(問)冒頭の御発言で、少子高齢化という最も高い壁にどう対応するかとおっしゃったんですけれども、大臣としては、この壁というのはどのぐらい高いとお考えなんでしょうか。


(答)定量的に申し上げるのは難しいですけれど、日本が今まで経験してきた様々な課題と比べても非常に大きな課題であると思っております。



(問)骨太方針の中の51ページだと思うんですが、2040年代半ばまでの中長期スパンでの展望を持って今後やっていくということを書かれていますけれども、具体的にどうなのかというのはなかなか難しいと思うんですが、これまでとは違う発想の転換が必要とお考えでしょうか。


(答)日本の少子高齢化は今後、2025年にはまず団塊の世代全てが75歳を超えることになるわけでありますし、御指摘の2040年代半ばには生産年齢人口が減少していく中で、65歳以上の人口がピークを迎えると予測をされているわけであります。
2040年代の半ばでありますから、これから四半世紀、25年後の時代ということでありまして、現在でも、先ほど申し上げたようにAI、IoTといった技術革新によって世界の成長モデルやパラダイムが大きく変化しております。
これまでもそうでありました。恐らくこれまで以上のスピードで変化してくると思うんですけれど、例えば、人類を初めて月に送ったアポロ11号、ちょうど今から50年前のことになると思いますが、あの当時、NASA全体で使っていた大型コンピュータの演算能力は、今、我々が毎日使っている1台のスマホ、この1台のスマホでその能力を上回っているわけであります。こういった変化は、今、更に加速して、多様化していくわけであります。
テレビもまだ一般的には2Kですけれど、これが8Kになりますと、2Kで200万画素ですから、8Kになりますと3,300万画素と、16倍の鮮明度になるわけであります。この変化をどう捉えるかが、新しい時代の日本を拓く鍵になると思っております。
例えば、少子高齢化によります人口の減少。これまでの常識で言いますと、人口は減少するんだから、国力は衰退すると考えるのではなくて、むしろこれは新しい技術革新を取り入れる余地が拡大しているんだ、成長する新たなチャンスと捉えることができると考えております。
このように技術革新、そしてパラダイムシフトを経済社会の構造改革に積極的に活用することによって、経済の成長力を高め、そして、効率的で質の高い社会保障制度を確立していきたいと考えているところであります。
確かに、2040年代半ばに65歳以上の人口が、ピークを迎えると予測されておりますが、平成の30年で考えましても、日本人の平均寿命は5歳以上延びているわけであります。健康寿命も延びて、元気な高齢者が増えている中で、現在でも65歳を過ぎて働いている高齢者の割合は、男性で言いますと3割以上と、女性でも2割近くおられるわけであります。
働く意欲のある高齢者、むしろこれからは高経験者と呼んだ方がいいかもしれませんが、この人たちがいくつになっても活躍できる、こういう全世代型社会保障改革を実現して、誰もがいくつになっても活躍し、安心できる社会にしていきたい。技術革新であったり人口構造の変化にしても、これまでの画一的な、そしてスタティックな発想と、これから多様性を重視した前向きでダイナミックな発想にしていくことが大切であると考えております。
10年後、20年後、日本の将来をどう見据えるか。悲観は気分、そして楽観は意志です。経済財政状況には十分留意しつつ、強い意志で政策運営を行っていきたいと思っています。




3.新原事務局長代理補(内閣官房日本経済再生総合事務局)による追加説明

最初に、未来投資会議部分、成長戦略の部分について御説明を致します。
最初に、成長戦略実行計画案について、田中内閣府副大臣の方から、修正点について説明を致しました。 修正点は、成長戦略については、党の方でも成長戦略の会議が政調会長以下でやっていたということもあって、大きな齟齬は生じておりません。
簡単に、文言の修正のところだけ御説明します。
8ページ、兼業・副業のところについて、これは強制するものではないということで、希望する者が兼業・副業可能となる環境を整備するというふうに、文言をきちっとしておるというところでございます。
18ページ、デジタル技術の社会実装を踏まえた規制の精緻化の部分ですが、冒頭3行について、未来投資会議の議員からの追加意見ですけれども、デジタル技術の急激な発達の中で、安全・安心の確保の在り方も変化しており、規制の枠組みが追い付いていないという指摘があり、規制改革推進会議と連携して、業種横断的に規制改革を進めていく必要があるということを追記しています。
それから、21ページ、一番最後のところですが、高齢運転者による事故、子供が犠牲となる交通事故が相次いで発生していることを受け、交通安全対策を取りまとめ、先日取りまとめたものですが、早急に実施することに加えということで、交通手段を確保していく対策を講じるということを、明確に追記しております。
それから、32ページから、70歳までの就業機会の確保のところであります。事前にお話をしているように、65から70歳に就業機会の確保を図るときに、多様な選択肢を用意していくような形になるわけでありますが、この新しい部分については、企業が負う責務の程度について、これからきちんと議論をするということが書いてあります。32ページ、一番下のところですね。
それから、33ページ、年金制度との関係のところで、在職老齢年金制度について、公平性に留意した上で将来的な制度の廃止も展望しつつ、速やかに制度の見直しを行うということを若干追記してございます。
それから、40ページから、地域のインフラ維持と競争政策のところでございます。若干の文言の修正がありまして、ポイントになっているのは43ページ、この法制化に当たっては、多様な地域の実情に応じて、地域住民の利便性が確保される制度とするということで、よく実態を聞いてくださいということで、そこが追記されております。
代表の民間議員の2名から、御発言を頂きました。
最初の方です。成長戦略実行計画の第1章では、まず、取りまとめの御尽力に感謝しますということで、その実行計画第1章では、この一、二年が勝負であるというふうに書いていると。これは、重たいことであって、スピード感を持って改革に取り組むことが必要であると。
特に、デジタル市場のルール整備のところ、これに関する内閣官房の専門組織の設置、それから「スーパーシティ」構想のところの法制度の早期実現については、特に急がれるので、政府として速やかに実現をお願いしたいという御意見がございました。
御二方目の代表議員の方です。今回の成長戦略では、Society 5.0の実現に向けて、理念のみならず、具体的な政府が行うべき措置について数多く掲げることができたことは極めて意義深いと思うと。自家用有償制度の改正、それから地域のインフラ維持のための独禁法、特例法の整備などであると。このような課題については、2020年の次期通常国会に間に合うように制度を具体化していただきたいと。
官民上げて更に取り組まなければならない課題も明らかになったと。我が国の企業間では消耗戦が繰り広げられて、高付加価値化に向けた取組が進展していないと、思い切った投資の実行や人件費を上げる余力がないということで、経営トップが付加価値向上に向けた投資をリードしていくようにするにはどうすればいいのか、今後の1年間、未来投資会議で取り組むべき課題であると考えるということです。
それから、日本にイノベーションを起こす優れた人材はたくさんいると思うと。残念なのは、我が国企業がそれを十分に生かし切れていないこと、彼らの力を引き出す仕組みをどのように作るかが課題であると。日本の将来を担う子供たちの教育には1人1台タブレットなどICT環境を整えることが未来の投資であり、何としても実現していただきたいと。
以上でございます。
その上で、茂木大臣の方から、これを未来投資会議の取りまとめとしてよろしいでしょうかという確認を致しまして、「異議なし」ということで未来投資会議部分を終了したということでございます。


4.多田内閣府政策統括官(経済財政運営担当)による追加説明

それでは、引き続きまして経済財政諮問会議の模様について御報告をします。
未来投資会議として「成長戦略実行計画案」の取りまとめがあった後ですが、経済財政諮問会議として「経済財政運営と改革の基本方針2019」について、田中内閣府副大臣から答申案についての御説明があり、その後意見交換を行いました。そこに際して、茂木大臣から、骨太方針の副題について、総理と御相談して「『令和』新時代:『Society 5.0』への挑戦」としたことに言及され、その上で田中内閣府副大臣から御説明がありました。
この修正点につきましては、既に御説明させていただいていると思いますので、私からはこの場では割愛したいと思います。
その後、民間議員お二人から御発言がありましたので、その点だけ御紹介をします。
1人目です。Society 5.0への挑戦について、まだ国民の理解が十分ではない。どう生活の改善をもたらしていくのか、将来への希望を持ってもらえるようにしていくべき。その前提となる構造改革について官民を挙げて実現していくべき。それから、これは各論ですが、最低賃金の引上げとそれに伴う生産性の上昇が重要であり、消費を下支えしてデフレ脱却を目指すべきだというお話。それから、米中の貿易問題など、先行きに大きなリスクがある中で、消費税率を10%に引き上げていくわけですが、景気を腰折れさせないように万全を期すと。政府として機動的に対応していくことが大切だといった御発言がありました。これが1人目です。
それから、2人目。「令和」という新時代に向けて、大きな仕組みをつくっていくことがポイント。今回の骨太方針における太い骨は、自分としては2つだと考えており、前回も申し上げたがデジタル化と人への投資。デジタル・ガバメントについては、制度だけではなく、豊かな生活の基盤、稼いで豊かになっていけるといった生活の基盤となるような仕組みづくり、そうした制度を整えていくことが重要。人への投資については、就職氷河期世代への対応を含めて、人材を育てていくといったところに力を入れ、生産性を高めていくことが重要で、いずれにしても、スピード感を持って、この骨太方針に書かれたことを確実に実行してほしい。こういった御発言がありました。
以上、お二人の御発言があり、その後、経済財政諮問会議の答申として決定となった次第です。
その後、引き続いて総理から御発言がありましたが、ここでは割愛をさせていただきたいと思います。私からは以上です。




(以上)