第3回記者会見要旨:令和元年 会議結果

茂木内閣府特命担当大臣記者会見要旨

  • 日時:令和元年6月11日(火曜日)18時07分~18時38分
  • 場所:中央合同庁舎第8号館1階S101・103会見室

1.発言要旨

経済財政諮問会議の概要の前に1点御報告です。日米貿易交渉につきまして、米国時間の6月13日午後に米国のワシントンで、ライトハイザー通商代表と閣僚協議を行うことが正式に決まりましたので、お知らせいたします。
それでは、経済財政諮問会議の概要について報告いたします。
本日は最初に、「就職氷河期世代支援プログラム」について、その後、「骨太方針の原案」について議論を行いました。
まず、「就職氷河期世代支援プログラム」については、私から、このプログラムは政府を挙げて取り組む初めての本格的な支援プログラムであり、この分野に知見のある民間ノウハウを最大限活用する点に特徴があると申し上げました。
今回の支援プログラムにおいては、非正規の職に就いている方々の中で正規を希望する現段階で少なくとも50万人の人たちに対しては、初年度から思い切った支援を行い、3年間で30万人の正規雇用増という、これまでの実績の2倍のペースの目標を設定し、その実現に向けて取り組んでいきます。
その一方で、ひきこもりの方々を含め長期無業者については、早急な取組の開始と同時に、丁寧に息の長い継続的な支援をアウトリーチで取り組んでいきたいと思います。
次に、骨太方針の原案についてです。原案は、グローバルな環境変化を強く意識をした上で、Society 5.0の実現の加速を前面に据えながら、今、申し上げた「就職氷河期世代支援プログラム」に加え、最低賃金の引上げを内容とする所得向上策、人口減少下での地域の活性化策、地域施策の強化などを盛り込んだことに特徴があります。
財政についても、デジタル・ガバメントをはじめとする次世代型行政サービスを通じた効率と質の高い行財政改革を中心に位置付けています。
当面の経済財政運営としては、来年度予算編成において適切な規模の臨時・特別の措置を講ずること、リスクが顕在化する場合には、機動的なマクロ経済政策を躊躇なく実行することなどを明記しております。
骨太方針については、本日の議論と今後の与党との調整を踏まえ、次回の経済財政諮問会議で取りまとめたいと思います。
総理からの締めくくり発言につきましては、お聞きいただいたとおりです。
詳細につきましては、後ほど、事務方から説明させていただきます。


2.質疑応答

(問)「就職氷河期世代支援プログラム」について、先ほど、大臣からも御説明あったとおり、民間プログラムを積極的に活用していくということに特徴があるというお話ですけれども、これを含め、骨太方針の今回のポイントについて、原案を示された時点ということもあり、改めて御説明をお願いします。


(答)今回の骨太方針、一つは、国際経済環境の変化を強く意識しております。同時に、少子高齢化という日本が直面する最も高い壁にどう対応していくか、令和の時代の新しい日本の在り方を記載しているところであります。
特に、3点がポイントになると思っておりますが、一つが、デジタル化にどう対応していくかということであります。今、デジタライゼーション、まさに第2フェーズに入ろうとしている。つまり、これまでの単純な購買情報であったりとか、また検索情報といったデジタル化から、実際に現場で起こっていることといったものをデータとして集めてどう活用していくか、こういったリアルデータを使ったデジタル化の社会において、それを成長戦略に活かすと同時に、日本として、この分野はまだ国際的なルールも整備をされておりませんので、こういったルール整備でも、日本がイニシアチブを取っていく。同時に、これは民間に留まる問題ではありませんので、先ほど申し上げたような形のデジタル・ガバメントと、効率的で質の高いデジタル・ガバメント、これを作っていくということも特記をしているところであります。
そして二つ目でありますが、人への投資。まさに人口減少の時代を迎えるわけでありますが、人口減少の時代であるからこそ、一人ひとりの能力といったものを高めていくことが必要になってくる。同時に、人生100年時代を迎える中で、いわゆる教育、就業、そして老後という三つのフェーズを皆が一斉に送るといった形の単線型の人生設計から、複線型であったりとか、リカレントするような人生、このために必要な教育の無償化であったり、様々なプログラムといったものも盛り込んでいるところであります。
3点目、制度改革についても大きく踏み込んでおります。人口減少下で地域の基本的なインフラを維持するために必要な独占禁止法の適用除外であったり、そういった踏み込んだ政策展開といったものも進めていきたいと思っております。


(問)最低賃金の引上げの記述に関して、これまで3年間、安倍政権の下では年間3%程度ということで書き込まれてこられて、実際に実現されてもきたんですけれども、今回、「より早期に」という言葉が加わっていますが、一方で、3%上げるための環境づくりといったところを前の段落に持ってきて、強調されているように読めるんですけれども、これはこれまで以上に強化して最低賃金を上げていくといったお考えだということでよろしいでしょうか。


(答)今年の骨太方針では、今おっしゃっていることは、半分正しくて、半分は必ずしも正しくありません。政府が中小企業・小規模事業者に対してきめ細かな伴走型の支援を粘り強く行っていくなど、思い切った支援策を講じ、中小企業・小規模事業者が賃上げしやすい環境整備などを行うことを前面に打ち出しております。ですから、そこの部分から始まっております。
その上で、後半の質問の部分というのは、この骨太方針よりも今後の話ということになってくるわけでありまして、まさに具体的な今年の賃上げの水準につきましては、御案内のとおり、公労使からなります中央最低賃金審議会におきまして今後、丁寧に検討されるものだと考えております。



(問)昨日、1-3月期GDPの2次速報が発表されました。小幅な上方修正ということになったんですけれども、一方で、個人消費はまだ力強いとはちょっと言い切れないような状況であったり、公共投資が引き下がったりしています。また、外需のところも、これは数字は変わっていないということで、やはり1次速報に引き続いて、輸出・輸入の弱さがGDPを引き上げているというように取られるかと思うんですけれども、今回の2次速報も踏まえ、今の足下の景気の状況をどのように受け止めていらっしゃるのか教えてください。


(答)おそらく、この2次速報を見る前に、皆さんというか専門家の方が注目した一つの指標というのは、設備投資がどうなるかということだったと思います。設備投資が減っているんじゃないかということを一番気にされていたんだと思います。
結果はどうだったかということでありますが、設備投資については、前期比プラス0.3%、堅調な伸びとなっているところです。全体についても2次QE、御案内のとおり、GDPの成長率、この1-3月期、実質プラス0.6%、年率に換算しますと、実質でプラス2.2%、名目ではプラス3.4%となっているところでありまして、もちろん経済の指標、たくさんありますけど、基本的に、この成長率がどうなっているかと。そこの中で今回注目された設備投資については、良い数字が出ているということは間違いないんではないかなと思っております。
もちろん中国経済の先行きであったりとか、米中摩擦など海外経済のリスクには細心の注意を払っていく必要があるわけでありますが、経済と言いますかGDP、御案内のとおり、これは生産された付加価値の積上げということになっていくわけですから、厳密に申し上げれば減価償却の部分はありますけれど、減価償却を除きますと、これは雇用者報酬か企業利益になるわけですよ。つまり、個人所得、それから企業収益から見てみると、雇用・所得環境の改善であったり、高い水準にある企業収益など、日本の内需を支えるファンダメンタルズはしっかりしていて、緩やかな景気回復の基調は変わっていないと考えております。



(問)ライトハイザー通商代表との会談なんですけれども、毎月のように閣僚級でも会われていて、また月末には首脳会談もあると思うんですけれども、改めて、もう少し詰めておきたいところ、前進させたいところで、今時点で考えているお考えがあれば教えてください。


(答)4月、5月と閣僚協議を進めてまいりましたが、現段階はどうかと申し上げると、昨日、今日と実務者の協議を行いまして、農産品、工業品について日米の現状であったりとか、お互いの立場を確認しまして、専門的、技術的な観点から議論を行っているところであります。
1日目が今終わったというところでありますが、その後に行う閣僚協議、目標ということですから、そうなるわけでありまして、これは実務者協議で確認、整理された論点について更に議論を深めるということになると思います。
5月の協議段階では、発表しましたとおり、日米両国の立場にはまだ開きがありますが、それを埋める努力をしていくことでライトハイザー通商代表との間で一致を致しておりまして、それによりまして、日米双方に利益となる形の合意を目指していきたいと思っております。



(問)骨太方針について、一番最後に来年度の予算編成の考え方というのが書かれております。来年度も臨時・特別の措置を適切な規模でとりますと書いてありますが、現時点で、具体的なところは年末の議論だと思いますが、その適切な規模の大臣のイメージというのが、もしあれば、教えてください。


(答)その「適切な規模」の前の文章を読んでいただいたとおりです。



(問)日米通商交渉についてお伺いしたいんですけれども、一部報道で、アメリカが、以前、自動車や自動車部品への追加関税について検討しているという時期があったと思いますけれども、今交渉中は課されないということになっていると思います。そういった中で、自動車部品の対象範囲を拡大することで自国産業の保護を狙っていくというような報道が出ていたんですけれども、アメリカ側から自動車部品の対象品目を拡大するという要求が来ているのか、あるいは今週行われる会合でそういった要求があった場合に、どう対応される予定なのか、お考えをお聞かせください。


(答)これまでも何度も申し上げておりますとおり、今、協議の途中であります。様々な議論を行っておりますが、協議の内容につきましては、交渉の相手方もあります。また、今後の協議の進め方にも関わってくる問題でありますから、コメントは控えさせていただくと、これが一貫した立場であります。


(問)最低賃金に関して、今回、より早期に1,000円という表現になりまして、従来、1,000円の達成時期は示されていなかったわけですけど、今回、この「より」というのは、何より早期にという、その何に比べてという意味になるんでしょうか。


(答)詳細の解説につきましては、この後、事務方で説明させていただきます。




3.多田内閣府政策統括官(経済財政運営担当)による追加説明

それでは、令和元年第3回経済財政諮問会議について概要を報告させていただきます。
今日は2つの議題でした。最初の議題、「就職氷河期世代支援プログラム」については、私から資料1について説明を行い、各議員から意見が出されました。主な意見を御紹介していきます。
まず、世耕経済産業大臣です。経済産業省としても就職氷河期世代の方々への就職支援に協力していきたい。関係省庁と連携し、幅広い分野でリカレント教育プログラムの開発を検討していく。特に、求められるスキルが、ある程度、明確であり、人手不足が見込まれているIT分野を中心に具体的な取組を進めたい。さらに、中小企業については、中小企業の好事例を横展開していくとともに、中小企業者とのマッチング支援を実施していくといった話です。
続いて、民間議員です。本日は、民間議員はお二人でした。
1人目の民間議員です。重要なプログラムを作ってもらった。人づくり革命の実行の柱であり、スピード感を持って着実に実行していくことが大事。その際、出口一体型のリカレントプログラムということ、2点目として、実態を把握してきめ細かな支援をしていくということ、そして3番目に、民間の知恵を使っていく、引き出していく、こういったことが大事だという御発言がありました。
また、就職氷河期世代の支援から始めるが、全ての世代へのプログラムにしていくことが重要で、一度失敗しても再チャレンジでき、そして活躍できる。こういったことを社会として示していくことが大事だといった御発言でした。
もう一方の民間議員です。労働経済学者にいろいろ聞いたが、いわゆるひきこもりの方々の社会復帰というのは、非常に難しい問題だと聞いている。40万人の無業者の方々にはきめ細かなケアが重要で、辛抱強く、根気よく取り組んでほしい。今後、社会保障の議論なども経済財政諮問会議ですることになると思うが、国民が政府に対してトラスト、信頼していることが大事。その意味でも、国民の方々がしっかりと政府からケアをされてことを分かってもらうことが重要。就職氷河期世代の問題は、たまたま厳しい時期に就職期を迎えた方々にとってもレガシー問題である。日本の場合、いろいろな所でいろいろなレガシーの問題がある。この就職氷河期世代の問題は、レガシー問題にしっかりと日本として対応する意味でも大事、こういった御発言がありました。
なお、途中で茂木大臣から御発言がありました。今回の支援プログラムにおいては、現在非正規の職に就いている方々の中で正規を希望する現段階で少なくとも50万人の方々に対して初年度から思い切って支援を行い、3年間で30万人の正規雇用者増というこれまでの実績の2倍のペースの目標の実現に全力で取り組んでいく。その一方で、ひきこもりの方々を含め、長期無業者の方々については早急な取組の開始と同時に、丁寧に息の長い継続的な支援をアウトリーチで取り組んでいく、こういった御発言があったところです。
2つ目の議題です。骨太方針の原案について、私から資料2-1に基づいて説明を行い、各議員から意見が出されました。主な意見を御紹介いたします。
まず、石田総務大臣から御発言がありました。6月10日に提出された地方財政審議会の意見について資料を配付した上で御説明がありました。主な内容として、地方団体が地方創生や人づくり革命等にしっかり取り組めるよう一般財源総額を確保すべきだということ。スマート自治体の推進により、効果的・効率的な行政サービスを提供していくべきこと。Society 5.0の革新的技術を積極的に活用し、地域産業の高度化や生活基盤の充実を図るべきことなどが主な内容だという御紹介です。総務大臣として、こうした意見を十分に踏まえた上で基本方針の策定を行っていただきたいという御発言があった次第です。
次に、経済産業大臣からです。第4次産業革命への対応策は、この1、2年が勝負。次期通常国会において基本的なルール整備を完了するようにすべき。デジタル市場のルール整備、金融、モビリティといったSociety 5.0の実現、高齢者の就業機会確保や疾病・介護の予防、地域のインフラ維持といった実行計画の取組に全力を挙げていく。消費税率引上げへの対応については、中小・小規模事業者の軽減税率・キャッシュレス対応を全国津々浦々に広げていく。今月、世耕経済産業大臣御自身は東京で、それから副大臣、あるいは政務官は全国7か所に出向かれて、いわゆる総決起大会と事業者向け展示フェアを開催しているという御紹介がありました。加えて、ポイント還元事業については、全国1,500の商店街を対象とした説明会を実施しているところで、きめ細かな、かつ大規模な周知活動を引き続き行っていくといったお話がありました。
閣僚からは最後ですが、麻生財務大臣からです。政権交代以降、骨太方針に沿って経済再生と財政健全化に一体的に取り組み、着実に成果を上げてきている。今後ともこの路線の下、2025年度の財政健全化目標の実現に向けて、新経済・財政再生計画に沿って経済・財政一体改革を推進することが重要。本日説明のあった原案においては、こうした基本方針や前回麻生大臣から御説明があった財政制度等審議会の議論がしっかり反映されており、尽力に感謝するという話がありました。
民間議員からです。今回の骨太方針では長期的な視野を盛り込めたことが良かった。世界経済の動向に日本が合わせていくのではなく、逆に日本から前向きに主体的に動いていくという姿勢が打ち出せた。現在反グローバル化の動きが進む中で、TPPが11か国から始まったが、これをどう発展させ世界のルールづくりに日本がどう参画していくかなど、むしろTPP11になったことでプラスの契機になったと考えている。今後のことを考えると、直面している高齢化やデジタル化の遅れ、あるいは財政の悪化、こういったところがあるが、人手不足でデジタル化が必要となり、地方財政の健全化にもつながるなどプラスに働くような考え方もあるといった話がありました。国際的にも米中それぞれが意見を述べていくということで、ある意味で米中で物事を決めていくといった動きがあるが、世の中的には反発もあり、日本は欧州やアジアと手を組んで進めていく、こういったことも考えられるのではないか。研究開発投資について、必要なところには、いろいろと苦労するかもしれないが、そこに資金をつぎ込むことが必要だとといった御発言がありました。
もう一方の民間議員です。これは皆さんももうお気付きだと思いますが、骨太方針の原案は今で72ページほどあり、分量が多くなっているが、どこが本当の太い骨なのかをしっかりと国民に周知広報することが重要といった御指摘がありました。御自身として考える太い骨というのはデジタル化と、人への投資。この2つで生産性、潜在成長率を上げていくことがポイント。今日議論した就職氷河期世代への対応、あるいは骨太方針の中に書いてありますが、高卒中退者への対応、こういったことも人への投資ということの1つであって、大変重要。生産性を上げるということになると、効率性を上げるとか、汗水流して一生懸命頑張るといったことに目が行きがちだが、しっかりと稼げる、利益を出せる形にしていくことも併せて重要だといった御指摘がありました。
さらに、教育から働くことまでの出口一体型のリカレント教育について言及はされているが、これも含めて教育、研究開発、技術開発など、こうしたことはとかく縦割りに陥りがちなので、省庁横断的に取り組むことが重要だといったお話がありました。
さらに、デジタル・ガバメントについて、今回の骨太方針の中で次世代型行政サービス、これは地方自治体のことですが、財源を含めて国主導で進めていく、あるいはAI、クラウド化を2019年末までに工程を明らかにしていくといったことが盛り込まれたことは大変良かった。是非、実行してほしい。社会保障の給付と負担についても、これから実行に移していくために是非、検討が必要。いずれにしても全てのことについてスピード感が大事で、声掛けだけではなく、実行のための仕掛けが必要。骨太方針でも随所に盛り込まれているが、しっかりと実行に移してもらいたい、こういったお話がありました。
議論は以上であり、総理から御発言がありました。
最後に、茂木大臣から終わるに当たりまして、この今日議論をした骨太方針については、今日の御議論と今後の与党との調整を踏まえて、次回の経済財政諮問会議において取りまとめたい。引き続き皆さんの協力をお願いするという御発言があって、本日の会議を終えたところです。私からは以上です。



(以上)