第1回記者会見要旨:令和元年 会議結果
茂木内閣府特命担当大臣記者会見要旨
- 日時:令和元年5月14日(火曜日)18時08分~18時50分
- 場所:中央合同庁舎第8号館1階S101・103会見室
1.発言要旨
経済財政諮問会議の概要について報告します。
本日は、最初に、夏の骨太方針の策定に向けて地方行財政について議論を行い、次に、この会議で定期的に議論しております「金融政策、物価等に関する集中審議」を行いました。
地方行財政については、Society 5.0時代の到来や人口減少を見据え、地方へのヒト・モノ・カネの流れを促進し、地域経済を再生することや、持続可能な地方財政制度を次世代に引き継ぐことが重要である。業務改革とAI・ICTの徹底活用や、歳出改革の推進や地域再生などに成果を出す自治体への後押しの強化に向けて、地方自治体のデジタル・ガバメント化をはじめ地方行財政改革の取組を促進すべき、こういった御意見がありました。
また、「金融政策、物価等に関する集中審議」においては、足元の景気動向や先行きには十分に留意する必要がある中、賃金・可処分所得の拡大などを通じた内需の下支えの確保により、成長と分配の好循環を持続・拡大させていくことが重要。景気や物価動向を見つつ、最低賃金については、産業界が賃上げをしやすい環境を整備する政府の取組とあいまって、より早期に全国加重平均が1,000円になることを目指すべき。政府の取組としては、生産性の抜本的向上につながる企業支援策や負担の抑制策を講じ、また、雇用に影響がないよう教育訓練や能力開発を拡充すべき、こういった御意見がありました。
総理からの締めくくり発言につきましては、お聞きいただいたとおりです。
詳細については後ほど、事務方から説明させていただきます。
2.質疑応答
(問)閣議後会見も兼ねているということですが、昨日、公表されました3月の景気動向指数の速報値は基調判断が悪化ということで、景気後退の可能性が高いという定義になっていますけれども、先月の月例経済報告で示されていた景気について、回復基調がされている、緩やかな回復が続いているという認識に変わりはないかどうかを含めて、認識をお尋ねします。
(答)政府としての景気認識、景気判断につきましては、月例経済報告において、今、御指摘のありました景気動向指数だけではなく、様々な経済指標の動向、さらに、その動きの背景にある経済環境や企業の景況感などを総合的に勘案して景気の基調を判断しているところであります。
我が国の経済については、中国経済の減速などから輸出の伸びが鈍化し、一部の業種の生産活動や、これに関連する出荷に弱さが続いております。ただし、世界への輸出全体で見ても、日本のGDPの18%程度でありまして、輸入とのネットではほぼゼロであります。また、生産活動の中でも影響を受ける可能性のある製造業の生産、これは全体の2割程度、非製造業が8割となっているところであります。
今日、日本銀行の黒田総裁から提出をしていただいた資料の1ページ、「経済・物価情勢」についての(2)右上にあるように、輸出・生産は、ここのところ弱さが続いている。一方で左下を見ていただきますと、国内需要は設備投資、それから消費はしっかりしているということが、数字の上でも表されているのではないかと思っておりますし、また、雇用・所得環境の改善、そして高水準の企業収益など、こういった国内需要を支えるファンダメンタルズはしっかりしていると考えております。
こういった景気動向の分析を進め、今月の月例経済報告で景気判断をお示ししたいと思っております。
(問)先程の質問に続いて景気動向指数についてですが、総合的な判断は月例経済報告で示されるということですが、景気動向指数を受けて、消費税についての考え方はお変わりないでしょうか。
(答)今、申し上げたように、今月の月例経済報告で景気判断についてはお示しをしたいと思っております。その上で、消費税率10%への引上げ、これは財政の健全化のみならず社会保障の充実・安定化、さらには、教育無償化をはじめとする人づくり革命の実現に不可欠なものだと考えております。法律で定められたとおり、2019年つまり今年の10月に、現行の8%から10%に引き上げる予定であります。
これに向けて、2兆円の臨時・特別の措置を含む今年度の予算を着実に執行するとともに、海外経済、確かにリスク要因が拡大しているわけでありまして、通商問題や世界経済の動向を注視しつつ、今後とも経済運営に万全を期してまいりたいと考えております。
(問)先週金曜日の会見と今日の間に、米中関係の回復が難しかったように見受けますが、大臣としての受け止めと、9月と言われている米中首脳会談に向けて、今後、経済へのリスクというか、どういう点を御心配されているかお願いいたします。
(答)米中間の通商問題については、追加関税のエスカレーション、これは米中当該国だけではなくて世界経済全体にとっても決して望ましいことではなくて、米中間での協議の進展を期待しているところです。
今後の貿易協議の動向、これを注視するとともに、その結果というか経過を受けたマーケットの動向や世界経済の影響をしっかり見極め、今後とも我が国の経済運営に万全を期していきたいと思っております。
(問)日米通商交渉についてお尋ねします。来週にも事務レベル協議が米ワシントンで行われるとの報道がありましたが、どういった内容を話し合うのでしょうか、交渉になるのでしょうか。
(答)交渉ということではありません。ライトハイザー通商代表と電話も含めてよくコミュニケートしており、今後、交渉を進める上で、事実関係や論点の整理などを事務レベルで行うことは有用であるという認識で一致しております。具体的な日程等につきましては、決まりましたらお知らせしたいと思います。
(問)今日の経済財政諮問会議で、民間議員から、最低賃金について、より早期に全国平均が1,000円になることを目指すべきというお話があったと思いますが、大臣としては、最低賃金の引上げの必要性について、今まで以上の早期に目指すという目標の必要性について、どのようにお考えでしょうか。
(答)本日の民間議員からの提案のポイントは、最低賃金に限らず、賃金の引上げが経済の好循環の実現の観点から重要であり、そのために、政府として企業が賃上げしやすい環境を整備すべきだという点にあると思っております。
最低賃金の引上げは、需要の拡大の面から重要でもありますし、さらには、生産性の向上を促すという観点からも重要であり、正しいと思っております。
一方で、今の景気動向や中小・小規模事業者の経営環境にも十分考慮した対応も必要であるとの論点も、正しい。この2つの論点をどう調整していくかという問題だと思っております。
3.多田内閣府政策統括官(経済財政運営担当)による追加説明
令和元年第1回の経済財政諮問会議の概要を報告します。
今日は2つの議題でした。地方行財政については柳川議員から資料1の説明があり、その後、意見がありました。
主な意見を御紹介します。
まず、石田総務大臣から、資料2の提出があり、この説明が大半でしたので、詳細は割愛をしますが、民間議員からの指摘について、4ページ以降、資料をまとめていたので、そこについての補足を紹介します。
「次世代行政サービスの実現」については、同様の方向感で、御説明したような内容の取組を進めたい。それから、「人口減少下での持続可能な地方行財政」については、地域経済の活性化や行政の効率化の観点からも、Society 5.0の技術の活用が必要。
それから、過疎自治体を含む広域連携については、議員立法である過疎法の期限を2年後に控え、今後の過疎対策の在り方の議論の本格化を踏まえて、広域連携の推進の在り方も含めて検討していくといった御発言がありました。
以下、民間議員からの発言を順に御紹介します。
情報システムやデータの集約化・標準化・共同化の方策について、是非、進めるべきだけれども、その時に地方自治体の人材不足というものが存在する。チームを作って一つひとつ問題解決をしていくべき。
マイナンバーカードの活用については、総務大臣のリーダーシップもあって前進すると思うが、守秘義務などで手足を縛られている状況がある。そうしたところを含めて、積極的に進めてほしいとい。これが1人目の民間議員のお話です。
次に別の民間議員ですが、地方自治体のデジタル化を進めていくには、国と地方の役割分担が必要。プラットフォームを作って進め、地方の独自性や付加価値には補助金を提供する。使い勝手の良いようにすべき。
この御発言の背景について、私の理解では、地方自治体が全てを独自に行うということではなくて、共通の部分は共通して行い、その上で独自性や付加価値を発揮する部分には補助金をといったお話かと思います。
マイナンバーカードについても御発言がありました。ポイント付与や、保険証としての活用などが進められているけれども、一気に大量に申請があった場合に、カードの発行などのオペレーションがしっかり対応できるのか。そうした点についても、ピーク時対応という意味で、しっかりと対応できるように求めたい。
別の民間議員ですが、システムの集約・標準化・共同化は大きな一歩だと。補助金の自由度を高める取組も、多年度化や用途を広げるなど、難しいことだと思うが、一歩踏み込むことが重要。
それから、自治体にとってのインセンティブ付与が重要ということで、頑張るところにお金が回ることが大事だと。過疎債について、ペーパーで言及しているけれども、地方債全体についても同様に導入していくべき。
それから、地方単独事業の見える化について、デジタル化を進めると情報の透明性が高まるということで、簡単に把握することができるので、是非そうしたことも進めてほしい。
総務大臣から、今の民間議員の一連の御発言を受けて、過疎法というのは議員立法なので、既に議員側で議論が開始されており、総務省でも有識者会議を設けて、両者連携して議論をしていくといった御発言がありました。
そして、マイナンバーカードのオペレーションについて、十分その問題は認識しているので、頑張っていきたい。保険証機能などについては、官房長官を中心に検討が進められており、厚生労働省とも連携して進めていく。
そこで別の民間議員から、この問題は普通にやっていては時間が掛かる。いかに早く実行するかが重要で、総務大臣にはリーダーシップを発揮していただいており、実行という意味でのリーダーシップも期待する。それから、過疎債との関連もあるかと思いますが、重要インフラの広域利用について、資料の中でも示しているので、そうしたところにも自治体がインセンティブをもって取り組めるように後押しすることが大事。
以上で1つ目の議題が終わりました。
次に、2つ目の議題として、「金融政策、物価等に関する集中審議」ということで、先ほど、大臣からも御紹介がありましたけども、黒田日本銀行総裁から資料3についての御説明、私のから資料4の説明、そして、新浪議員から資料5の説明があり、その後、意見交換となりました。
まず、民間議員です。資料の説明者は新浪議員でしたが、その説明の中でペーパーのクレジットが3人になっていることについて言及がありました。最低賃金を決定する審議会のメンバーに、経団連の関係者が加わっており、中西議員はその関係者であるため、今回の有識者議員資料の名前からは外させてもらったという御紹介がありました。
それから、民間議員の発言として御紹介をしますが、最低賃金の引上げは消費に大きな影響がある。内需を支える効果があり、できるだけ早期に1,000円にしていくことを目指すべき。
それから、中小企業の経営に大きな影響をもたらすけども、最低賃金の引上げを契機にして、生産性向上にいかにつなげていくかが重要で、ここが今後の政策運営の鍵になる。
それから、サービス産業への対応について、とりわけその生産性が低く留まっているのがサービス産業なので、そこへの対応が必要。これは、いろいろ取り組んでも、成果が出るまでに1年から3年は掛かるので、その間は異次元の支援策を講じるべき。
それから、中小企業のIT化などのサポートには伴走型の支援が重要で、支援体制を整備すべき。
また、企業が使い勝手の良い支援策というものをしっかりと考えるということが重要なので、いわゆる現場の生の声を聞くようなヒアリングの場を考えたらどうかといった言及がありました。
ここで、官房長官から御発言がありました。地方での消費を増やしていくことが必要で、その必要な対策をもちろん講じた上で、地方での最低賃金の引上げというのは重要ではないかといった御発言がありました。
また、世耕大臣からの御発言がありました。「成長と分配の好循環」を着実に回して経済を拡大していくために、賃金の引上げは重要。最低賃金もできる限り引き上げていくことを目指すべきだけども、他方で中小企業・小規模事業者の現場では、現行の引上げペースの中でぎりぎりの努力を行っている。最低賃金を決定する時には、春闘での民間の賃上げ率や、名目GDP成長率、さらには消費者物価の動向をしっかりと把握した上で検討していくことになっている。現在の政府方針では、最低賃金について年率3%程度を目途として、名目GDPの成長率にも配慮しつつ引き上げていくということになっている。これらを踏まえながら引上げペースを検討していくべき。サービス業の生産性向上には経済産業省としても取り組んでおり、IT導入補助金のかさ上げを行って、これを100万社に広げるべくコンソーシアムも作って水平展開を図っているといった御発言もありました。
民間議員の御発言ですが、地方の声には厳しいものがある。設備投資をすれば生産性が上がるというものでは、必ずしもない。付加価値を上げていく経営戦略が必要。各業界でブレークダウンして対応していく。中小企業とも連携して付加価値が上がるように取り組んでいきたい。最低賃金だけの問題だけではなくて、日本全体の方向性を決める課題だという御発言がありました。
別の民間議員ですが、今回の議論をするに当たって、マクロ経済や労働経済の有識者、12人に話を聞いた。それぞれ専門分野において、いろいろな意見があるが、今回の有識者議員からの提案というのは、そういった意味ではバランスを取った提案になっていると思うといった発言がありました。
最低賃金について、これまで3%の引上げをやってきているので、既に期待に織り込まれているという面もあるということ、それから、もしかしたら景気というものについての見方、それから、その中で今までの水準を超えるような引上げになるかもしれないといった見方が出てきているかもしれない。もし仮に景気が下がるような時に行うと、経営者にとっては負担になることもあるので、対策をしっかりと講ずることが重要。その時には、ペーパーにあるように、生産性の向上というものをまず第一に考えるべきだといった御発言がありました。
また、賃上げの影響については、マクロ経済的なところだけではなく、ミクロデータを使って地域別にしっかりとチェックしていくことが必要。それからペーパーの中に、中卒・高校中退者が50万人くらいいるといった話が書いてありますが、そうしたところに対してもしっかりと対応することが必要だという話がありました。
それから、別の民間議員ですが、最低賃金を梃子に生産性を上げていくことが重要。もちろん、企業が賃金を上げられるようにしていくために、中小企業を中心としてIT化やデジタル化を進めていくことが必要。
あわせて、人材についても能力を高め、より活躍できるようにしていくことが必要で、今の50万人という話の関係も、就職氷河期世代への対応と合わせて対策をとっていくべき。
それから、ここ数日の米中の政策の動向というものを踏まえてかと思いますが、日本にとって貿易構造が変わっていく面もあって、日本経済への影響もあるかもしれないが、リーダーシップを発揮するチャンスでもあり、大きな可能性があると思うといった御発言がありました。
それから、別の民間議員から、このペーパーの中に入っている話ですが、中途採用支援助成金について大胆な要件緩和をするべきだと。キャリアアップ助成金についても短時間労働者の更なる就業促進が進むよう、是非、緩和を進めてほしい。賃上げ促進税制についても大幅な要件見直しを行うべきだといった御発言がありました。
ここで、厚生労働大臣から御発言があり、民間議員ペーパーにあった人的資源の効果的活用、人材確保に向けた支援には、しっかりと取り組んでいく。マクロ的に最低賃金を梃子に好循環させていくというのはそのとおりだけれども、地域別・業種別の影響というミクロの視点も大事で、政策を丁寧に講じていくことが必要。
付加価値を上げながら、価格転嫁していくということが大事だけれども、その価格に転嫁できるための雰囲気づくりが大事だと。デフレ脱却ということかと思うといった御発言がありました。
総理から、先ほどから何度か紹介している10年で50万人という高校中退者について、そこについては細かく見ていく必要があるといったお話がありました。
財務大臣からは、連休中の話として、外国のレストランでは、飲食サービス業のサービスレベルも日本とはちょっと違う部分もあるといった御発言がありました。
以上で意見交換が終わり、最後に総理から締めくくりの御発言があって、会議が終わったところです。
(以上)