第4回記者会見要旨:平成31年 会議結果
茂木内閣府特命担当大臣記者会見要旨
- 日時:平成31年3月27日(水曜日)19時07分~19時50分
- 場所:中央合同庁舎第8号館1階S101・103会見室
1.発言要旨
経済財政諮問会議の概要について御報告いたします。
今日は二つのテーマ。一つが「Society 5.0時代にふさわしい仕組みづくり」、もう一つが「国際経済の変動に強い経済構造の構築」、この二つについて議論を行いました。
まず、「Society 5.0時代にふさわしい仕組みづくり」については、技術革新が進んでいく中で、一人ひとりの生産性を高めていくには、より充実した働き場所と、より高い能力を発揮できるようにするための人的資本投資が重要であり、一つ目、ジョブ型雇用への転換を図りながら、人的資本の形成・蓄積を促すべき。二つ目、大学・研究機関等における人的資本を活用していくべき。三つ目、総理も強調しておられましたが、就職氷河期世代などの所得格差が固定化しないよう、出口一体型、つまり教育がきちんと仕事に結び付くリカレント教育、能力開発等の促進策を拡充すべき。四つ目、教育システムを複線型に転換し、多様性を追求できる仕組みとすべき。こういった御意見がありました。
次に、「国際経済の変動に強い経済構造の構築」については、海外リスクの動向にしっかり目を配り、経済の回復基調が持続するよう経済運営に万全を期すべき。グローバル・インバランスについてしっかりと監視し、今年大阪で開かれますG20でもこの問題を議論すべき。ミドルパワーの形成を通じて、経済紛争を起点にしたショックが生まれにくい国際システムの構築に貢献すべき。こういった御意見がありました。
総理からの締めくくり発言につきましては、お聞きいただいたとおりです。
詳細につきましては、後ほど、事務方から説明させていただきます。
2.質疑応答
(問)グローバル・インバランスの問題について、アメリカのトランプ大統領は二国間交渉を非常に重視していて、今日の方は国際的な枠組みの形成ということで、結構課題が大きいかと思いますが、そこら辺の二国間交渉を御担当の大臣から、この課題認識について改めて受け止めをお願いします。
(答)これは民間議員からも今日、議論が出ていたのですが、G20では、世界経済の持続的成長に向けた力強いコミットメントを確認することが重要であり、特にグローバル・インバランスの問題は、貯蓄投資バランスの問題もありますが、その国の設備の状況、生産状況がデマンドに対してどうなっているかといった問題もあるわけでありまして、各国の収支について、多国間の問題としてG20で議論していくことが重要であるという観点からの議論を深められたということであります。
3.多田内閣府政策統括官(経済財政運営担当)による追加説明
それでは、平成31年第4回経済財政諮問会議について、概要を報告いたします。
先ほど、大臣からもありましたように、今日は2つの議題、まず、「Society 5.0時代にふさわしい仕組みづくり」については、柳川議員から資料1の説明があり、各議員より意見が出されました。主な御意見を御紹介いたします。
まずは、民間議員からです。1つ目が技術革新。これが進展する中で、低所得者が仕事を失わないように、人材の底上げが重要。未来投資会議でも検討はされているが、諮問会議でもしっかりと見ていくべき。
ホワイトカラーや公的分野の生産性が低いので、これを高めると同時に、低所得者層や就職氷河期世代の格差が固定化しないように、出口一体型のリカレント教育、これをして底上げを図っていくべきだというのが1つ目。
それから、労働移動や賃上げ、生産性向上に対するインセンティブの仕組みが機能するようにしなければいけないということが2点目。
3点目として、学校教育においても、大きな枠組みを働き方改革と連動して変えていく必要があるということで、特に、リカレント教育と働き方改革、そして大学教育を三位一体で議論していくべきだと、こういった御指摘がありました。
それから、4点目、飽くまで私見だということでお断りがありましたが、多くの学生が就職した後に、大学時代にこうしたことをもっと学んでおけばよかったということを、就職してから気付くということが多いだろうと。
何のために勉強しているかということが分からない時ではなくて、その必要性が分かった時に学びに行ける。例えば、10年間の学びたい時に単位を取れるようにするとか、そういったことが真のリカレント教育になると思うし、大学教育の高度化にもつながるのではないかと、こういったお話でした。
その後、柴山文部科学大臣から資料2に沿って、初等中等教育の在り方、先端技術の活用、高等学校改革、大学・大学院における学位取得の弾力化と、4点について説明がありました。
初等中等教育の在り方について、遠隔教育・先端技術の活用や学校指導体制の強化等学校の働き方改革の推進、教育課程や教員免許等の見直し等に取り組む。
先端技術の活用については、昨年11月に「柴山・学びの革新プラン」を公表し、具体的な施策の検討を進めている。
高等学校改革についても、普通科改革やSTEAM教育の充実、地域や大学等との連携強化等を進める。
大学・大学院における学位取得の弾力化については、これまでも色々やってきたけれども、今後さらに、多様な履修の方法から学位の取得へとつながるような仕組みを実現するため、履修証明プログラムそのものへの単位の付与を可能とし、学位を授与する課程への円滑な接続を図る。
続きまして、石田総務大臣からです。
地域でそれぞれの希望や能力に見合った教育を受け、地元で就職できる環境を整えることが重要。そのために、初等・中等教育からICTの活用による個々の生徒の成熟度に応じた最適な教育を提供するなど、教育環境を整備することが必要。既に予備校では、インターネット配信により、遠隔地でも、時間や場所を選ばず、効率的に授業を行っている。
さらに、地方の高等教育の充実も重要。今、人口の流動化、一極集中がある。これを解消するためには、地域の産業と連携した地方大学独自の学部設置や教育を展開し、地域産業の活性化と卒業生の地元への就職を実現することが大事。
総務省としての取組、制度の言及ありました。
世耕経済産業大臣からのお話です。資料3で、世界的に、中スキルの仕事が減少し、高スキルと低スキルの仕事が増加する「労働市場の両極化」が進行。日本でもそれが確実に起こっていると、1ページの図を使って御紹介がありました。この結果、日本の男性勤労者の年収分布を見ると、中所得の層が減少し、低所得と高所得の層が増加している。それから、2ページ、学歴で大学卒と大学院卒の差による賃金プレミアムが、アメリカだけではなく、日本でも少しずつ拡大している。こうした構造変化が今後も加速していく。今後、大学院教育やSTEAM教育等の充実が急務。
経済産業省としても、リカレント教育の認定制度をやっていると御紹介がありました。
民間議員からです。
人材の底上げは産業競争力そのものだと。働き方改革、ジョブ型への移行など、産業界としても真摯に取り組んでいる。
企業内の処遇と教育訓練の在り方のみならず、産業界から見て大学側に期待することも大きく変わってきている。例えば、文系と理系が明確に分かれているような状況に課題があって、企業と大学とで一緒にキャリアメイクしていくような仕組みを作っていく必要があるのだということです。
今必要なのは、生産性向上につながる働き方改革フェーズⅡだという御発言もありました。先般の働き方改革の中で、最終段階で見直しがされた裁量労働制の枠の拡大をもう一度進めてもらいたいと、こういった御発言がありました。
それから、実際に言うだけではなくて、大学と企業との間で連絡協議会を立ち上げて、インテンシブに議論をしていると、こういった御紹介もあったところです。
それから、別の民間議員の方です。ペーパーにもありますジョブ型雇用制度への転換ということに関連して、流動化をサポートすべきだが、労働移動支援助成金というせっかく作った制度が十分活用されておらず、予算の金額としても最近減額をされていると。これをもう少し使い勝手を良くし、適材適所を進める仕組みが必要だろうといったようなお話がありました。
企業の中にとどまるということではなくて、ステイから移動へという掛け声で、競争力会議などで議論して作ったものであるにもかかわらず、今は使われていないというところについての御指摘です。
ジョブ型というのを進めていくと、一人ひとりに一定のスキルが求められるので、その意味でリカレント教育、能力開発を厚労省、文科省、それに産業界も加わって、しっかりと議論をしていくべきだという話がありました。
それから、リカレント教育、人材投資、健康投資をした企業に対して、法人税の減額などの支援を行ってもらえると、生産性向上が図れる、といった指摘がありました。
別の民間議員からです。OJTや年功序列のシステムから、専門職を中心とする別のシステムに移行していくことが重要であると。大学だけが変わっても意味がないため、ジョブ型雇用という提言が産業界を含めてなされたことに意義があるだろうと、こういった話がありました。
ここについては、茂木大臣から、大学だけやっても駄目だから企業でというのではなく、大学側と産業側のお互いがコミュニケーションをすることで、双方が変わっていくことが重要というコメントがありました。
黒田日本銀行総裁の御発言です。日銀総裁としての立場ではなく、かつて大学院の教授をしていた経験に基づいてのお話でしたが、理系は企業が修士を修士として処遇してくれていたが、文系の修士や博士課程を出ても企業がそれを評価した採用をしてくれていなかった。企業だけを責めるわけではないが、企業が評価してくれないと、大学院に良い人材が集まらない。
オックスフォード大学は学部生と大学院生が1万数千人同士でほぼ同数である。研究者も留学生を惹き付け、レベルが上がっている。日本の大学院も人を増やすためにも、定員を増やすだけではなく、企業がそこをしっかり評価することが必要だという話がありました。
また別の民間議員です。地方大学の医学部に進学される学生が最近多い。それがどうしてかと考えると、安定とかそういった志向なのかもしれない。それが進むと、他の理工系や普通の学部に進む人が少なくなってしまうという問題意識です。企業もある意味では海外の企業が初任給で2,000万円、3,000万円とか払っている例もあるということも見極め認識しながら、優秀な人材を採用するために賃金体系を変えていかなければいけないと、こういった話がありました。
安倍総理から、大学院について議論になっているが、院卒の人について、企業にとって役に立たないと思われれば、企業側も評価はしないので、大学院での教育が企業の求めるものとマッチングしているか、産学一体となって検討してもらうことが必要だろうというコメントがありました。
民間議員の御発言です。先ほど、文系、理系の話がありましたが、文系と理系を行ったり来たりできるよう垣根を下げることが大変重要だと。海外では文系から次に理系に進むとか、理系から文系に行く、こういったことが頻繁に行われている。最近では、早ければ中学生の頃から、「自分は文系」「自分は理系」といったように分かれている現状で、数学ができなくて法学部に進むとか、そういったことは非常に問題があるように感じるという御発言がありました。
また別の民間議員ですが、アメリカではロースクールやビジネススクールなどは、学部で一回学んだ後の、日本でいうと大学院ですけれども、そこが正にリカレント教育の仕組みとして成り立っていて、いわゆる職業訓練学校になっていると、こういった話がありました。
もう1人、民間議員からですが、文系の人は、学生で学んでいる時、経済学や法律学が社会に出て実際どう役に立つのかが分からないと。やはり社会と大学を行ったり来たりすることでニーズが分かるので、そういった動きを作ることが大事だというお話がありました。
財務大臣から、アメリカの大学に留学して経営学を学んでいる時、周りに軍人が多かった。なぜ経営学を学んでいるのかと聞くと、軍服の買付け、戦車の買付けには経営学の知識が必要だ。だから学んでいるといったお話の紹介がありました。
以上が、1つ目の議題の生産性強化と人的資本投資に向けての意見交換の模様です。
この後、国際経済の変動に強い経済構造の構築について、これは、資料4につきまして竹森議員の方から御説明があって、その後、意見交換をしました。
主な御意見を御紹介したいと思います。
1人目の民間議員ですが、今は非常に難しい局面だが、日本として伸び代があると考える。アジアに向けて、ソフトパワーというものを活かして打って出ることが必要だという話がありました。
そもそも今の対立というのが、ある意味で政策的な対応から生じている面もあるので、そうしたところの対立が更に深まっていかないように歯止めを作っていくことが必要だと、こういった御発言がありました。資料の中に出てきますが、ショックについては、それを認識した上で緊急的な対応を取っていくが、その際は、前向きな目標と両立するような対策を打っていければいいのではないか。現在は本当の危機が起きているわけではないが、間違った対応を避けることができるという意味でG20が開催される。それも日本の議長国の下で開催されるのは非常にいいタイミングであり、こういった所でメッセージを出して、G20として世界経済の成長が続くということをしっかり考えることが必要だろうといったお話でした。
それから、資料4-2の2ページ目の図2について御説明がありました。詳細は割愛しますが、ご覧いただくと、資金の貸手と借り手で、通常であれば資金の貸手が黒字国、高所得のところからになり、資金の借り手が低所得の国ということになる。リッチとプアという言葉を使われていましたが、それがアジア金融危機前は、普通に高所得の方から低所得の方に流れていたけれども、アジア金融危機が起こってそこは逆転してしまったということで、今はリーマンショック後、それがまた正常化する過程にあるといったお話がありました。
それからもう1つ、右下の図3ですが、このリッチな国が借り過ぎるという場合、特にリーマンショックの時ですが、その時に起きていたこととして、住宅価格とのバランス、関係では、資金が住宅の方に流れてしまう。結果として住宅価格が上がっていくという、そういった関係が出てきている。こういったところをしっかり冷静に分析していくということが重要だということです。
その方の御意見からすると、資金が住宅価格の方に入って、それがある意味、爆発してしまったのがリーマンショックだったと、そういう御認識の紹介です。
今後どうするかについては、IMFなどの分析を基にG20でしっかり議論すれば、ある意味、政治主導で何かが起こってしまうということを冷静に避けられると、こういった御指摘です。
図1についても、簡単に御紹介がありました。
ショックが起こらない構造にするためには、技術的に中立的に解釈するようなパネルが必要で、TPP11などで実績を積み、広げていくことが重要だという御紹介です。
その後、経産大臣から御発言がありました。
1点目、WTO改革。経済産業省では、日米欧三極貿易大臣会合等を通じて、市場歪曲的な産業補助金等の通商課題に対処するための国際ルール作りを進めている。
2点目、国際的なデータ流通の枠組みの構築。総理がダボスで発言された「データ・フリーフロー・ウィズ・トラスト」をコンセプトとして国際的な枠組の形成を目指す。第一歩として、デジタル貿易のルール作りに向けたWTOでの交渉を開始したい。G20の機会に交渉開始を宣言したいと考えている。
麻生財務大臣から、民間議員から御指摘のあったグローバル・インバランスについては、財務省としても、「米中」二国間における「貿易収支」に視点が偏った議論がなされている現状には、懸念を有している。日本議長下で行われるG20の場で、グローバル・インバランスの問題を「多国間の問題」として「所得やサービス収支を含めた対外バランス全般」を取り上げ、根底にある「貯蓄投資バランス」も考慮し、冷静に議論する機会を設定する意義は大きいと考えている。
既に、福岡のG20財務大臣・中央銀行総裁会議に向けて、優先課題として作業部会での議論を開始している。
G20は政策対話のフォーラムという特質を持っているので、その特質を活かし、国際機関の専門的知見も活用しつつ、各国の政策判断に有意義な貢献ができるよう活発な議論を行いたい。
民間議員のペーパーには「経済のデジタル化に対応した国際租税ルール」という表現もあり、この課税上の課題は、各国バラバラの対応が望ましくないのは御指摘のとおりで、日本としても、これまで積み上げてきて、当初、6年前に日本が提案をした時には、ドイツから同意を得られたが、ドイツだけだった。それが今や約120か国に広がった。2020年までにOECDを中心として、解決策を取りまとめるべく国際的に議論を進めている。今年は日本がG20議長国なので、しっかりと議論を進めたいという御紹介がありました。
それから、民間議員からです。
3月14、15日にB20を開催した。WTO改革や、データ・フリー・フローなど、センシティブな問題もテーマに取り上げた。最初は1か国対19か国という状態であったが、最終的にその1か国も、言葉の修正、文言の修正などはあったが、ジョイント・リコメンデーションという中では全て受け入れられ、成果があったと考えている、という御紹介がありました。
この1か国というのは中国のことですが、中国がアメリカから様々な攻勢を受ける中で、中国1か国では対抗できないという状況になっていて、様々な政策課題について、中国としても受け入れる体制になってきているといったことを実感していると。
ただ、もちろん中国も、自分から進んでやっているという立場は取りたいだろうということで、仮にこれをG20でまとめれば、そこは、中国の顔も立てながら、ほかの国々は、それが日本の貢献・成果だということは理解してくれるだろうといった御紹介がありました。
別の民間議員からです。クールジャパンは東南アジアで大変評価されていると。民間がしっかりやっていくけれども、JETROにおいても、企業の障害となるような事例を集め、それを政府につないで、政策的な対応につなげてもらいたいといったお話がありました。日本のソフトパワーというところを忘れないようにというお話がありました。
茂木大臣から、世耕大臣よろしくとの御発言をされて、世耕大臣は全くそのとおりですと発言されました。
別の民間議員からです。G20は、日本が世界のルールづくりをリードする大きなチャンスだと。ヨーロッパを味方につけた上で、国内でもデジタル化などをしっかりと進め、世界に打って出るべきだと。
それから、もう1点は、リスクが顕在化する場合に、機動的なマクロ経済政策を躊躇することなく、実行することは重要だと。中身としては、これまで諮問会議でも議論してきている、人材投資だとかデジタル化への投資、次世代型行政サービスなど。これは需要喚起にもつながる。民間議員ペーパーには、総需要喚起の面でも重要という記載がありますが、この点への言及がありました。
最後に、総理から御発言がありました。必要であれば御紹介したいと思いますが、もう既に御案内であれば、私からは割愛して、以上で終わりたいと思います。
(以上)