第2回記者会見要旨:平成31年 会議結果
茂木内閣府特命担当大臣記者会見要旨
- 日時:平成31年1月30日(水曜日)17時30分~17時59分
- 場所:中央合同庁舎第8号館1階S101・103会見室
1.発言要旨
経済財政諮問会議の概要について御報告いたします。
本日は、最初に、この経済財政諮問会議で定期的に議論しております「金融政策、物価等に関する集中審議」を行い、次に、内閣府から「中長期試算」の説明をした上で、「中長期の経済財政運営」について議論を行いました。
「中長期試算」の概要を御紹介しますと、今後の経済成長率については、成長実現ケースにおいて、消費税率引上げに伴う臨時・特別の措置等の効果もあり、2021年度にかけて実質成長率は1%台半ば、2020年代前半には実質2%・名目3%を上回る成長を実現し、2020年頃には、名目GDPは600兆円程度になると試算しております。プライマリーバランスについては、来年度予算における歳出改革等を織り込んだことにより、前回試算よりも1年早く、2026年度に黒字化する試算となっております。ただし、この試算は、2020年度以降の歳出改革を織り込んでいない試算であることに御留意いただきたいと思います。
民間議員からは、実質成長率2%程度の目標の実現には、潜在成長率の引上げがカギとなるが、労働力の伸びは、人口減少下で中長期的に鈍化する懸念がある、適切な物的・人的投資を一層喚起し生産性を飛躍的に上昇させることが重要、といった御意見がありました。
なお、議論の最後に、石田総務大臣から、「基幹統計の点検及び今後の対応」について御報告がありました。
最後に、総理から締めくくり発言がありました。
我が国の経済は、雇用・所得環境の改善が続き、緩やかな回復が続くことが期待されるが、海外経済のリスクに留意する必要がある。私には、マクロ経済運営に万全を期し、成長と分配の好循環を更に拡大し、景気の回復軌道をより確かなものとすべく、力を尽くしてほしい。
中長期の経済財政運営について、物的・人的投資の喚起や、生産性引上げによる経済の成長力強化に向けて、引き続き、経済財政諮問会議で議論してほしい。安倍内閣は経済最優先。本年のラグビー・ワールドカップや来年の東京オリンピック・パラリンピックを好機として、戦後最大のGDP600兆円の実現に向け、着実に歩みを進めていく、といった発言がありました。
詳細につきましては、後ほど、事務方から説明させていただきます。
2.質疑応答
(問)見通しについてですが、成長実現ケースで見ても、目標に掲げている2025年度のPB黒字化までに、あと1.1兆円残っていますが、この達成のために必要と考えていることを教えてください。
(答)先ほども申し上げたように、これは歳出改革を織り込んでいない試算であります。同時に、潜在成長率の引上げをしっかり図っていくということが重要だと考えており、それによって、しっかりと2025年度のPB黒字化を実現していきたいと思います。
(問)中長期試算について伺います。試算の前提となっている成長率についてですが、民間のエコノミストらの予測などと比べると、随分高めなのではないかという指摘もあるかと思いますが、この点について、今回の試算で使っている前提というのは現実的なものなのかどうか、改めてお聞かせいただけますか。
(答)現実的なものだと思っております。
更に申し上げますと、昨年末に取りまとめた消費税率引上げに伴う対応策は、御案内のとおり、消費税率の引上げに関する経済への影響に対し、軽減税率や、さらには、既に決まっている教育無償化等を除きますと、ネットで2兆円となります。これに対して今回の臨時・特別の措置、プレミアム付商品券、ポイント還元、更には国土強靱化のための施策によるマクロの需要の下支え、また、税制面における自動車、さらには住宅の駆け込み需要、そして、反動減に対応するための税制措置。予算で2兆円、税制改正含めて2.3兆円ということで、経済への影響2兆円を十二分に乗り越える対策を織り込んでおります。
また、潜在成長率をしっかりと今後向上させていくことによって実質成長率、足元で言いますと0.9%ですが、これが2021年度にかけて1%台半ばに高まるという試算で計算しております。
(問)PBの目標の意味合いについて確認したいのですが、先ほど茂木大臣も、また総理も施政方針演説の中で、2025年度に黒字化を実現しますとおっしゃってますが、これは必達目標でしょうか。
つまり、安倍政権も2020年度と言っていたのを、前回後ろ倒しにしてますが、これまでの政権も過去に遡れば、黒字化を達成したことは基本的にバブルの後ではなく、近付いてから無理そうだとまた先延ばしするということを繰り返してきたと思うのですが、そういう手法は二度と取らないというような目標なのか、あるいはやはり経済状況は分からないから、また、そこは変えるかもしれないことなのか、どのようにお考えでしょうか。
(答)経済健全化をしっかり進めるという旗は下ろすことはございません。そして、その中で2025年度のプライマリーバランスの黒字化に向けて、取り得るべき政策をしっかりと取っていく。
もちろん、これは財政だけを見ても達成できるものではありませんので、しっかりと経済を成長させていく。そういった中で、同時に財政健全化を進める中で、達成をしていきたいと考えております。
(問)今の総理は、自民党の総裁任期までとおっしゃると、2025年度より前で安倍政権は終わると思うのですが、その残りの期間の中で、できることというのは、茂木大臣の中で、具体的にどのようなことでしょうか。
(答)今回の場合は、2019、20年度と、臨時・特別の措置を取る。そして、2020年度については、東京オリンピック・パラリンピックに伴う様々な需要も期待されるわけですが、その後、様々な効果が剥落をしても、しっかりと経済成長が持続するような形を取って、先ほどもあえて2021年度と申し上げましたが、1%台の半ばの成長をしていく。
これによって、2025年度のPB黒字化に向けたベクトルがしっかり固まっていくのではないかと、こういうベースを2021年度までに作る。同時に、2022年度になりますと、団塊の世代が75歳以上になり始めるわけですから、今進めている全世代型社会保障、3年間の中でこれを実現すると。つまり、2021年度までにしっかりとやっていく中で、歳出改革も同時に進めていきたいと思っております。
3.多田内閣府政策統括官(経済財政運営担当)による追加説明
それでは、第2回経済財政諮問会議について、概要を報告いたします。
先ほど、大臣から御説明がありましたように、今日は二つの議題でした。
最初に、「金融政策、物価等に関する集中審議」において、まず黒田日本銀行総裁から資料1、それから私から資料2の説明をさせていただき、本日御欠席の中西議員から提出のありました資料3について、茂木大臣から御紹介がありました。その後、意見交換を行いました。
意見交換の前に黒田議員が資料1の説明を行いました。全体としておっしゃっていたのは、基本的な指標は非常に前向き。その中で見ると2ページ(4)、消費者物価指数は、ずっと下落し続けるデフレのような状況ではないけれども、他の指標に比べるとやや弱めであるというお話がありました。
最後のページの「経済・物価見通しと金融政策運営」、これは先般の展望レポートの御説明でした。(2)経済物価のリスク要因について、景気・物価とも下振れリスクの方が大きいということで、海外経済の動向について、米中をはじめとした保護主義的な動きの問題、それから中国を含めた新興国・資源国経済の動向、ブレグジットの話。こういったことで海外経済をめぐる下振れリスクがここのところ強まっているとみられるという御紹介がありました。
日本との関係においては、国民や企業のマインドに影響が懸念されるという御紹介もあったところです。
私から御説明した資料2につきましては割愛しますが、物価と国際金融、そして中国経済について簡単に御紹介をしました。
意見交換の内容ですが、まず閣僚として、経済産業大臣から御発言がありました。本日も、国際経済の不透明性が指摘された。政府としては機動的な経済財政運営を行っていくことが必要。アメリカの金融当局の対応を注視するとともに、第二次補正予算案や、来年度予算案の早期成立を図ることが重要だ、というお話がありました。
中長期については、消費税率引上げの対応に万全を期すとともに、2020年の東京オリンピック・パラリンピック後、2025年の大阪・関西万博に向けて経済が円滑に移行していくよう、経済財政運営を図るべきだという御発言もありました。
それからブレグジットについても御発言があり、今朝方、イギリスの議会においてEUとの交渉方針について投票が行われ、離脱案の大幅修正について可決されたが、他方でEUは拒否をしており、万一、英国が何の取り決めもないままにEUから離脱した場合には、直ちにイギリスとその他EU加盟国との貿易において、通関手続、関税の支払いや、イギリス・EU双方の安全基準への対応が必要になってくる。これにより、現地進出企業にとっては、コストの増加とともに、物流の混乱に備えるため生産調整などが必要となり、影響は大きい。経済産業省として、日本企業に与える影響を最小化するため、迅速な情報提供や、イギリス・EUに対する働きかけなどが必要となっていく、といった御発言がありました。
以下、民間議員の御発言を御紹介します。
まず1人目です。資料2、最後のページの日米のイールドカーブのグラフをご覧になっての御発言でした。米国のイールドカーブが直近はほぼフラットになっているということで、これは金融政策への観測を裏付けているというお話がありました。日本については、金融機関への影響を懸念する声もあるが、自己資本がしっかりしていれば金融機関の貸出しの判断とイールドカーブが連動するわけではないので、日銀には引き続き今の金融政策の継続をしてほしいといった御発言がありました。
それから、物価について、消費の強さが効いてくるが、高齢化の影響で、そこの部分が伸び悩んでいる。今後、65歳以上への定年延長によって所得の増加が図られていけば、消費にプラスに働くだろう。いずれにしても、消費の増加がデフレ脱却の完成に向けての鍵になる、という御発言がありました。
別の民間議員です。世界経済に比べ、足元の日本経済は底堅い。現在、最も強く現れている人材不足解消のための投資の前倒しが非常に重要。
賃上げ・人材投資促進のための税制が昨年作られたが、これらが前倒しされていくように民間企業としても頑張るが、賃上げ・投資のインセンティブとして、制度を見直していくことも重要だといったお話がありました。
それから、別の民間議員です。下振れのリスクには事前に対処していくことが必要。その中で、賃金の上昇が大事だということであり、そこで本日御欠席の中西議員から提出された資料3に言及をされました。これまでの賃金引上げのモメンタムが維持・強化され、経済の好循環が力強く回る、こういった文章が中西議員のペーパーにありますが、正にそういったことをやってもらいたい。賃金の上昇によって潜在成長率を高めていき、経済の体力をつけることが下振れリスクに対応する正攻法であるという御発言です。
次に、「中長期の経済財政運営」について、麻生大臣から資料4、田和統括官から資料5、それから資料6について柳川議員から御説明があり、その後、意見交換を行いました。
まず、閣僚の方ですが、総務大臣から御発言がありました。これは、民間議員のペーパーの中に、地方行財政の「次世代型行政サービス」への改革という指摘があったことを受けての御発言です。
総務省内に「地域力強化戦略本部」を立ち上げ、今月25日に「Society 5.0時代の地方」をキーワードとして、革新的技術の実装例や導入支援策を首長の皆さんとメールで共有したという御紹介がありました。今後も優良事例や、必要な施策の提案などを頂くなど、双方向かつ持続的なやり取りを行うことで、「持続可能な地域社会の構築」を目指していくというお話がありました。
さらに続けて、来年度からの取組として、「スマート自治体への転換」を進めるため、「自治体行政スマートプロジェクト」をモデル事業として実施していくという話、それから、中期的な取組として、昨年7月から地方制度調査会において、高齢者数がピークとなる2040年頃から逆算して、広域的な地方行政体制のあり方について議論してもらっているという御紹介がありました。若者の意識の変化や革新的な技術を活かして、積極的に取り組んでいきたいというお話がありました。
続いて財務大臣からです。「新経済・財政再生計画」の初年度として、平成31年度予算は、経済再生と財政健全化の両立を実現する予算としたという御紹介がありました。先ほど、歳出を自然体とするとプライマリーバランス黒字化達成は2026年度としていたが、2025年度のプライマリーバランス黒字化目標の達成に向けて、今後とも経済再生との両立を図りながら、社会保障をはじめとして歳出改革の取組を継続することが重要だというお話がありました。
以下、民間議員の方からのお話を御紹介します。
1人目です。潜在成長率を飛躍的に高めていくことが重要。海外でそういった例もあり、そのためにもイノベーションを加速させるソフトなインフラを整備すべき。色々なことが考えられるが、地方行政において次世代型サービスを推進してくことも重要であり、単に効率化を図るだけではなく、民間ビジネスが入ってくるチャンスとして活かしていくべき。今後も、今後の検討に当たって、骨太方針につながる提案を積極的に行っていきたいというお話もありました。
2人目です。バブル以降、企業における研修費が減少している。Society 5.0にマッチした人材を育成していくことが重要であり、それを後押しする税制としてもらいたいというのが1点。
2点目として、マイナンバーカードの活用が重要。保険証や企業の社員証などへの活用も期待される。現在、所持率が12%にとどまってるが、これにKPIを設けて、引き上げてもらいたいというお話がありました。
3人目です。中長期試算のシナリオは、その努力や取組の成果をチェックするのに重要。成長率が仮に上がらない場合には、ドラスティックな対応を取らないといけない場合もある。この辺りの状況について、国民の方々にまだ十分に伝わっていない部分があるかもしれないということで、国民への周知にしっかり取り組むことが必要だという話がありました。御自身もいろんな機会に取り組みたいというお話がありましたし、それから、成長率が上がらない場合にどういう対応をしていくのかといったことについて、選択肢を示していくことも必要だというお話がありました。
最後に、「基幹統計の点検及び今後の対応」について、石田総務大臣から御報告がありました。これを受けて茂木大臣から、基幹統計をはじめとして、様々な統計は日本経済の実態を表す鏡であり、政策運営の大切な前提である。今回の問題を重く受け止め、統計の信頼性向上に向けて政府全体で取り組んでいきたい、といった御発言がありました。
この後、総理から取りまとめの御発言があり、最後に、資料8の経済財政諮問会議における2019年前半の検討課題について、茂木大臣のから言及があり、会議は終了しました。
(以上)