第13回記者会見要旨:平成30年 会議結果

茂木内閣府特命担当大臣記者会見要旨

  • 日時:平成30年11月12日(月曜日)10時57分~11時38分
  • 場所:中央合同庁舎第8号館1階S101・103会見室

1.発言要旨

本日は、最初に、「金融政策、物価等に関する集中審議」を行いました。日本経済は、雇用・所得環境の改善などファンダメンタルズはしっかりしていますが、世界経済の動向、日本経済への影響等は注視していく必要があることなどが議論されました。
次に、経済・財政一体改革の中で二つのテーマ、一つは「教育・科学技術」、もう一つは「社会資本整備・国土強靱化」について、議論を行いました。
「教育・科学技術」については、一つ目、教育の質の向上と予算の効率化を図るべき。二つ目、社会課題解決につながる研究開発プロジェクトを明確化し、多年度の取組、民間資金の受入れ拡大を促進すべき。三つ目、徹底したデータの見える化、EBPMを加速・推進すべき。こういった御意見がありました。
「社会資本整備・国土強靱化」については、一つ目、「防災・減災、国土強靱化のための緊急対策」が国民生活の安心安全と日本経済の基盤を確保する上で喫緊の課題である。二つ目、まちづくりにおける「デジタル・トランスフォーメーション」や「人材、公共インフラの広域活用」を促すべき。こういった御意見がありました。
総理からの締めくくり発言の前に議論の中で、総理から、世界に向けてこれから空港整備をどうしていくか、遠隔教育も含めた教育の在り方、キャリアアップ助成金について言及がありました。
最後に、総理からの締めくくり発言のポイントを御紹介します。
安倍内閣は、これからも経済最優先。内外の経済情勢を十分注視しながら、経済の回復基調が持続するよう、しっかりと対応していく。私には、経済運営に万全を期してほしい。
社会資本整備について、山本国土強靱化担当大臣をはじめ関係大臣には、年内に取りまとめる3か年の「緊急対策」、5年ごとの見直し時期を迎える「国土強靱化計画」において、本日の議論をしっかりと反映してほしい。
社会資本整備や科学技術政策の分野においては、取組の加速と政策目標の実現に向けて、いかに官民が分担し連携していくか、あるいは、いかに民間投資を誘発していくかが重要な鍵となる。関係大臣には、こうした視点を踏まえて、制度面での改革を進めるなど、しっかり取り組んでほしい。
教育の再生は極めて重要な課題。柴山大臣には、初等・中等教育から高等教育に至るまで、信頼性の高いエビデンスや客観的な指標に基づくメリハリのある予算配分、外部資金の活用を通じて、教育の質を抜本的に向上させるべく、積極的に取り組んでほしい。
こういった御発言・指示があったところです。
詳細については、後ほど、事務方から説明させていただきます。


2.質疑応答

(問)社会資本整備をめぐっては、予算規模が膨らみすぎると財政再建が遠のくとの指摘もありますが、こうした懸念に対してどのように答えられるか教えてください。


(答)本日の会議では、防災・減災、国土強靱化のための緊急対策が国民生活の安全安心と日本経済の基盤を確保する上で、喫緊の課題であるとの認識が共有されました。
これは、相次ぐ自然災害、こういったことを考えても当然である、国民的な関心事であるということは間違いないと思っております。
また、民間議員からは、AIやIoT等の先端技術の活用やデジタル化の飛躍的推進などによるインフラ分野の生産性向上、民間投資の誘発をもたらす効率的な強靱化対策をすべきといった提言もあったところであります。
インフラに関する共通のデータをある程度民間にも開放することによって、例えば今後、インフラの維持、管理、更新をしていく中で、それぞれの企業が持っている、例えばドローンの技術、センサーの技術、さらにはメンテナンスのシステム、こういったものの提案というのも、こういった基盤データを示すことによって出てくるという面も持っていると思っております。
本日の議論をしっかりと反映した緊急対策、そして5年ごとの見直しになります国土強靱化基本計画の見直しにしていくことが重要と考えております。
こういったことを進めるのと同時に、2025年のプライマリーバランスの黒字化など財政健全化目標と整合的な計画であるべき、整合的な施策であるべきと考えております。



(問)空港整備をどうしていくかというところでお話があったとのことなのですが、そこについて詳しくお話を伺えるでしょうか。それと御所見があればお願いします。


(答)細かくは総理も発言されておりませんでしたが、これから日本は更に国際化が進んでいきます。2020年には東京オリンピック・パラリンピックもあり、訪日外国人旅行者数は、2020年には4,000万人、更に2030年には6,000万人と拡大していくと。
こういった日本の魅力は、世界的にも今非常に評価が高まっているわけですが、実際に日本を訪れたいとなると、当然、各国の飛行機の発着枠等の様々な問題が出てくるわけであり、しっかりとそれぞれの国から、航空便が確保できるような施策も今後考えていかなければいけない。そういった空港整備をすることによって各国との結び付きをどう強めていくかといった観点も重要だと思っております。



(問)今日、会議で消費増税に伴う内需拡大策について、民間議員からも提言があったと思います。最低賃金の引上げやパートタイム労働者の就業時間の延長といったテーマなのですが、これについての大臣の受け止めをお伺いできますでしょうか。


(答)その話が出たのは消費税の引上げ対策での文脈ではございません。




3.多田内閣府政策統括官(経済財政運営担当)による追加説明

平成30年第13回経済財政諮問会議について、概要を申し上げます。
本日は、最初に「金融政策、物価等に関する集中審議」を行い、その後、「教育・科学技術」と「社会資本整備・国土強靱化」についての議論を行いました。
最初に、「金融政策、物価等に関する集中審議」において、雨宮日本銀行副総裁から資料1、伊藤議員から資料2の説明があり、その後、意見交換を行いました。主な御意見を御紹介いたします。
官房長官から、「携帯電話の競争が進んでいくと期待。」
総務大臣から、「携帯電話料金については研究会をつくって検討しているところ。答申をいただいた上で対応したい。」
民間議員から、「海外の経済動向に左右されないレジリエント(強靱)な日本経済の構築が必要。人手不足対策やサプライチェーンが重要であり、省力化投資を促進するような支援策が必要ではないか。
賃上げによる所得の底上げが重要。最低賃金の継続的な引上げには企業への支援も重要。
依然として就業調整が起こっており、キャリアアップ助成金について、制度の抜本的な拡充を行うべき。」
別の民間議員から、「来年度予算編成に向けて、予算の質の向上が重要。世界経済のリスクにも対応できる強靱な構造への転換を図るため、人を重視した取組を進めるべき。また、民需を喚起する施策が重要である。
消費税率引上げへの対応策については、効果的な実効性のある取組となるよう検討すべき。
賃上げも重要だが、特に若手の残業時間の動向をよく調査して、若手を中心とした賃上げを進めるべき。」
別の民間議員から、「賃上げの必要性については十分理解した上で、働き方の改革、環境整備が重要と考える。外国人、女性、高齢者を含めた総合的な体系の見直しが必要。」
次に、「教育・科学技術」について、伊藤議員から資料3の説明があり、その後、意見交換を行いました。主な意見を御紹介いたします。
民間議員から、「遠隔教育については、普及の全貌が明らかになっていない。実態把握を早急に進めるべき。また、取組を進めるに当たっては、全ての学校に普及させるといった野心的な目標を設定すべき。」
文部科学大臣から、「高等教育無償化に当たり、学問追究と実践的教育のバランスが取れ、経営力のある大学等を対象とする。
大学教育の質の保証や経営力強化、更なる改革促進に向け、国立大学運営費交付金や私学助成の見直しを図る。
初等・中等教育では質の高い教育実現のための遠隔教育を推進。
科学技術イノベーションの活性化としては、民間投資を誘発する施策を加速するとともに、高校での理数教育や大学での数理・データサイエンス教育等の充実を戦略的に進める。
教育政策に関する実証研究を推進し、教職員定数の中期見通しを来年3月までに策定する。
大学教育の充実に向け、各大学に教学マネジメントの指針を示す。
民間議員からの指摘があった遠隔教育の高校における目標実施校数の引上げについては、これまで教科科目充実型の充実に向け工程表を作成して取り組んできたが、今後効果の高い分野について目標実施校の拡大に努めていく。
もう一点民間議員から指摘があった、小中学校における英語等の遠隔教育の野心的目標については、これまでも実証を行ってきたが、今後、小中学校の実態を把握した上で頑張っていきたい。」
科学技術政策担当大臣から、「統合イノベーション戦略を成長戦略の中核に位置づけ、官民挙げてSociety 5.0の実現に向けた重点分野に取り組まなくてはならない。
AIの研究開発競争は始まったばかりであり、AI原則の国際的な議論を主導するとともに、教育改革や研究開発を加速させる新たなAI戦略により、AIを最大限に活用した社会・産業構造の変革を進める。
挑戦的な研究開発を後押しすべく、ムーンショット型研究開発制度により、政府一丸となった取組を進めるべき。
政府事業のイノベーション化を加速する必要があり、CSTIが中心となり、政府が率先して新たな技術を取り込むよう各省に働きかけたい。
財務大臣の代理で、うえの財務副大臣から、「教育・科学分野の課題は予算の「量」より「使い方」であり、これを改善していく必要がある。
国立大学の運営費交付金について、評価による配分を引き上げるべきとの民間議員の提案を支持する。来年度から評価による配分の対象額を10%程度まで拡充していただきたいと考えている。
初等・中等教育の実証研究については、その質を高めていくことが大事。」
民間議員から、「Society 5.0という、イノベーションを軸とした成長戦略が重要。大学に対する経済界の働きかけを抜本的に変えていく必要がある。最初から大学と民間が連携して必要な施策を実施していく体制を整えていく必要がある。これは、研究だけでなく大学院生への教育の点においても効果的である。」
別の民間議員から、「STEM人材については、育成ではなく獲得に向けた工程化が重要。
挑戦的な研究開発などに資金を多年度で活用できるよう、資金配分に基金を組成できる仕組みを早急に構築すべき。」
別の民間議員から、「データの活用を進めていく際には、時間軸が重要。米国やインドなど、海外から人材をもっと取り組んでいくことが必要。また、日本人を米国中心にPh.D.やマスタープログラムに出していく取組を進めるべき。
遠隔教育も大変重要。財源の見直しを含め検討すべき。
公立学校の英語教育の在り方を見直すべき。JETプログラムを見直し、ネイティブの方にもっと英語教育に参画してもらうことを検討すべき。」
次に、「社会資本整備・国土強靱化」について、高橋議員から資料6の説明があり、その後、意見交換を行いました。主な御意見を御紹介いたします。
国土交通大臣から、「デフレからの完全脱却を実現するため、生産性向上に直結するインフラを集中整備する。また、自然災害への対応として、3年間集中で実施する緊急対策をはじめ、防災・減災にソフト・ハードを総動員する。このためには、集中的な追加投資が不可欠。また、公共投資による消費税率引上げ後の景気下支えも重要。
首都圏空港について、羽田の経路見直しや成田第三滑走路整備等により年間発着容量100万回を目指す。
まちづくりについて、スマートシティを推進。また、ビッグデータを活用して施設配置を最適化するスマート・プランニングを推進する。
重要インフラの緊急点検を進めており、災害リスク情報の充実や電源設備等の浸水対策等の対応方策を取りまとめる予定。」
国土強靱化担当大臣から、「平成26年6月に国土強靱化基本計画が策定されており、ハード・ソフト両面からの対策の推進、官民連携、国土政策や産業政策も含めた総合的対応を進めることとされている。
これまで5年間、PDCAサイクルを回しながら概ね計画どおりに進捗してきたと評価できる。
しかしながら、依然として多大な被害が発生していることから、5年ぶりに基本計画を見直し、国土強靱化を加速・進化させていくこととしている。
重要インフラの緊急点検の結果を反映させるとともに、防災・減災、国土強靱化のための緊急対策を3年間で集中的に実施する。」
財務大臣の代理で、うえの財務副大臣から、「公共事業については、防災・減災・老朽化対策や日本の成長力を高める事業への重点化を徹底することが重要。
近年、災害が激甚化する中、国民の命を守る防災・減災、国土強靱化は重要かつ喫緊の課題。
取組を進めるに当たっては、ソフトとハードの対策の組合せや、国の個別補助による計画的・集中的な支援を活用することの検討が必要。」
民間議員から、「防災・減災、国土強靱化は重要な課題だが、財源確保の目途が必要。
財源として、公的資金・資産を有効に活用すること、民間資金をどこまで引き出せるかが重要。今後とも議論していきたい。」
別の民間議員から、「国土強靱化の重要性に疑いはないが、全ての地域を一度に進めることはできない。人口や地域への影響度などを踏まえ、重要拠点から取り組んでいくことが重要。あわせて、デジタルトランスフォーメーションを進めることが重要。上下水道、空港などでコンセッションの取組が進んでいるが、PFIのみならず、民間の新たな技術など、民間の知恵をしっかりと取り入れて、インフラの維持・更新の効率化を図っていくべき。」
別の民間議員から、「デジタルトランスフォーメーション、eガバメントは行政の合理化以上に、公共と民間のインフラの基礎データを共有、オープン化していくことが重要。これがベースにあって、計画、対策もスムーズに進むことになる。
再生エネルギーについて投資の促進が必要。現在、制度の作り直しから進んでおり、政府としてもウォッチしていく必要がある。」
最後に、安倍総理から3点ほどコメントがありました。
1点目、社会資本整備について、「国土強靱化は、もちろん財源を考える必要があるが、防災・減災を含めて国民の命を守り、将来の被害を防ぐという意味もあるから、これは前もって投資していく。生産性向上のためのインフラ整備というのも、国土交通大臣からもお話があったように、将来、富を生むものだ。これが遅れてしまうと、日本としてチャンスを失っているという面もある。」
2点目、遠隔教育について、「効果が上がっているということを示しながら進めていってほしい。一口で遠隔教育といっても、色々な幅があり、例えば小さい学校でも教え方の上手な先生の授業を遠隔で流すということをすれば、充実した教育につながることもあるので、遠隔教育についてはその幅を広げて考えてもらいたい。」
3点目、民間議員の資料の中で、なかなか就業を希望する、長く働きたいという方がたくさんいるが、キャリアアップ助成金の活用がなかなか進んでいないという指摘があったことを受け、「キャリアアップ助成金は人生複線化、働き方改革から見ても重要なので、しっかりやってほしい。」
その上で、総理から締めくくりの御発言がありました。
「本日はまず、金融政策、物価等に関する集中審議を行った。我が国の経済は、雇用・所得環境が着実に改善するなど、ファンダメンタルズはしっかりしているが、世界経済の動向など引き続き目配りすべき点があることも示された。茂木大臣におかれては、経済運営に万全を期していただきたい。安倍内閣は、これからも経済最優先。内外の経済情勢を十分注視しながら、経済の回復基調が持続するよう、しっかりと対応していく。
社会資本整備については、防災・減災、国土強靱化のための緊急対策が、国民生活の安心安全と日本経済の基盤を確保する上で、喫緊の課題であるとの認識が共有された。山本国土強靱化担当大臣をはじめ関係大臣におかれては、年内に取りまとめる3か年の緊急対策、更には5年ごとの見直し時期を迎える国土強靱化計画において、本日の議論をしっかりと反映していただきたい。
なお、もう一つの議題の科学技術政策にも言えることだが、これらの分野においては、取組の加速と政策目標の実現に向けて、いかに官民が分担し連携していくか、あるいは、いかに民間投資を誘発していくかが我が国経済の持続的な成長を実現する上で、重要な鍵となる。関係大臣には、こうした視点を踏まえて、制度面での改革を進めるなど、しっかり取り組んでいただきたい。
教育の再生は極めて重要な課題。柴山大臣におかれては、初等・中等教育から高等教育に至るまで、信頼性の高いエビデンスや客観的な指標に基づくメリハリの付いた予算配分、外部資金の活用を通じて、教育の質を抜本的に向上させるべく、積極的に取り組んでいただきたい。」



(以上)