第12回記者会見要旨:平成30年 会議結果

茂木内閣府特命担当大臣記者会見要旨

  • 日時:平成30年10月5日(金曜日)18時14分~18時49分
  • 場所:中央合同庁舎第8号館1階S101・103会見室

1.発言要旨

まず、本日昼に未来投資会議をキックオフし、新しい内閣の改革の議論をスタートしました。本日は、今後の戦略について、一つ目、第四次産業革命の実現、二つ目、全世代型社会保障への改革、三つ目、地方施策の強化、の三つの柱を議論しました。
第一の柱、第四次産業革命の実現については、雇用環境が一段と改善している今こそ、技術革新を現場に積極的に取り入れ、労働生産性の向上を図るチャンスで、この3年間が勝負です。具体的には、キャッシュレスで、支払・送金・サービスを受けられる社会を実現するため、金融法制の見直し等を検討します。モビリティ分野について、地方でも高齢者が自由に外出でき、都市でも無駄な待ち時間なく移動できる社会を目指し、制度改革を推進します。公共サービスでは、子育て・住所変更・相続等の行政手続きの自動化に向けた環境整備を進めます。道路・水道といったインフラについて、AI、ロボット、ドローン、センサーを用いたメンテナンスを一気に実行していきます。
第二の柱、全世代型社会保障への改革についても、未来投資会議において、集中的に議論します。とりわけ、生涯現役社会の実現に向けて、65歳以上への継続雇用年齢の引上げに向けた検討を開始します。個人の実情に応じた多様な就業機会の提供に留意します。新卒一括採用の見直しや中途採用の拡大、労働移動の円滑化といった雇用制度の改革を進めます。健康・医療の分野では、人生100年健康年齢に向けて、糖尿病・高齢者虚弱・認知症の予防に取り組み、保険者へのインセンティブ措置を強化します。
第三の柱、地方施策の強化については、地方銀行等の地方基盤企業の統合・強化・生産性向上を図るため、独占禁止法の適用の在り方を検討します。また、人口急減地域への支援を強化します。
以上について、総理からは、この未来投資会議において集中的に議論を進め、本年末までに中間報告、来夏までに3年間の「工程表」を含む実行計画を閣議決定し、また、総理が先頭に立つので、経済再生・全世代型社会保障改革担当大臣である私をはじめ、全員野球の精神で、改革に向けた具体的な検討を進めていくよう指示がありました。
夕刻には経済財政諮問会議を開催しました。その概要について御報告いたします。
これから年末にかけては、前回の会議における総理の御指示を踏まえ、まず、一つ目、消費税率引上げに伴う機動的な対応、二つ目、歳出改革の重要課題の方向性や来年度予算編成に向けた歳出の目安の明確化・具体化、三つ目、新たな改革工程表の取りまとめ、これらに向けた議論を進めていきます。
本日は、最初に「新内閣の重点課題」について、次に、経済・財政一体改革の中で「社会保障」について議論しました。
まず、「新内閣の重点課題」については、デフレ脱却・経済再生を確実なものとすること、特に、来年の消費税率引上げを控え、経済状況を踏まえた機動的な経済財政運営に万全を期すべき、こういった意見がありました。
次に、「社会保障」については、経済・財政再生計画を着実に推進するとともに、生涯現役時代を見据えて全世代型社会保障改革の一体的取組を進めるべき、こういった意見がありました。
最後の、総理からの締めくくり発言のポイントは、私には、消費税率引上げに対応した経済財政運営について、景気の回復基調が持続できるよう、国内外の経済情勢にも十分注視しながら、経済財政諮問会議で審議し、しっかり対応を検討してほしい。また、軽減税率の実施への対応をはじめ、社会全体としての準備が十分整うよう、政府一丸となって、関係者の準備をしっかりと支援する体制を整えてもらいたい。
年末に向けて、歳出改革の方向性や歳出の目安の明確化・具体化、新たな改革工程表の取りまとめなど、持続可能な社会保障制度に向けた重点課題を議論してほしい。今後3年間で、社会保障改革を成し遂げる考え。まずは、健康長寿。高齢者等が健康で安心して生活できる環境を整備していく。新たに全世代型社会保障改革を担当する私を中心に、議論してほしい。こういった発言・指示がありました。
詳細については、後ほど、事務方から説明させていただきます。


2.質疑応答

(問)大臣は第四次安倍改造内閣で引き続き経済財政政策担当大臣として、日米などの通商協議を担われると同時に、新たに今回、全世代型社会保障改革担当大臣にも就かれました。「全世代型」というのは、もしかしたら、当然ではないかというような意見や見方もあるかもしれませんが、今の日本の状況に照らして、ここに取り組むことがいかにチャレンジであるか、正にいかに重要であるかということを含めて、どのようにお感じになっているか、この点を含めて、抱負を教えてください。


(答)まず抱負というか、責任の重さというものは痛感しています。その中で、先に話のあった通商交渉については、TPP11の早期発効に取り組むとともに、「日米物品貿易協定(TAG)」についても、国益に沿った形で、今後の交渉を進めてまいりたいと考えています。
そして先程も、概要を御説明申し上げましたが、総理から3点について議論を進めてほしい。第四次産業革命の実現、全世代型社会保障への改革、そして地方施策の強化。年内に中間報告を取りまとめ、そして、3年間工程表を含む実行計画を来年の夏までに閣議決定できるように御指示を頂いたので、しっかりと取り組んでいきたいと思っています。
「全世代型」とする意図については、昨年から人生100年時代を見据えて、これまでとは異なる制度設計、こういったものが必要であろう、個人の人生設計もそうですが、国の雇用、様々な仕組みも再設計が必要である、という認識のもとで、様々な議論をして、その中で総理から具体的な指示があったので、その方向で取組を進めていきたいと思っています。



(問)今回、未来投資会議で柱の一つとなっている労働市場に関する部分ですが、高齢者雇用や、中途採用の拡大など、いずれも労使の合意がなければ、なかなか前に進まない案件かと思います。中間取りまとめは年末までということになっていますが、労使の合意というのは、中間取りまとめまでに合意したい、了解を得たいというお考えなのか、それとも来年の夏の最終取りまとめまでに合意が得られればいいというお考えなのか、どのようなスケジュール感を持っていらっしゃいますでしょうか。


(答)冒頭も申し上げたところですが、この生涯現役社会の実現に向けては、65歳以上への継続的な雇用年齢の引上げに向けた検討を開始すると。当然、個人の実情という面には十分に留意をしていく。同時に、新卒一括採用の見直しや、中途採用の拡大、こういった制度改革、制度の在り方というのを議論するのだと思います。まず最初に、労使で合意をするという前にどういう制度が必要かという議論が必要だと思っておりますし、さらに先ほど申し上げたように、労働移動の円滑化、これは正に労働者の話です。働く人がどうしたいか、自分が働きたい職場に移動できる、こういう環境をどう整えていくかということが一番重要で、働く人、そして、自分が更に活躍したい、こう思っている人の立場に立った制度設計を進めていきたいと思っています。



(問)本日の経済財政諮問会議で、来年の消費税率引上げについても民間議員から提言がありました。増税時の景気の下支えとして、キャッシュレスの2%分のポイント還元やすまい給付金など、政府の具体的な対応策の検討状況について教えてください。
加えて、消費増税に十分な対策を準備し、乗り越えられるだけの状況を作れるのか、改めて御所見をお願いします。


(答)消費税率の引上げによって、例えば、教育費無償化など、我々が国民の皆さんに約束した政策を実現していくということであり、その引上げができるような経済財政状況を作り出すということに全力で取り組みたいと思っています。
様々な対応が必要だが、いずれにしても、政府内でしっかりと検討していきたいと思っております。



(問)2点お願いします。同じく消費増税のところで、総理から軽減税率対応について、準備が現場でしっかり進むように対策をという御指示があったということですが、一方で、先日の日本商工会議所の調査で、8割の中小企業で準備が進んでいないといった調査結果も出ています。今後必要な対策についてどのようにお考えかお聞かせくださいというのが1点目です。
経済界からは、これまで消費増税を延期してきたことで、本当に上げるのかどうかという懸念があって準備が進まないという声もありますが、この来年10月に上げるということについて、政府としてどのように呼び掛け、アピールしていくのか、そこについてもお考えをお願いします。


(答)消費税率の引上げについては、先ほどの御質問に対してお答えしたとおりですが、軽減税率の実施への対応をはじめ社会全体として準備が十分整うように、今、何割の人が準備ができて、なかなかこれを申し上げるのは難しい部分があるが、いずれにしても、様々な中小企業や、小売業者、関係者がいらっしゃるわけであって、そういった方々の準備をしっかりと支援する体制を整えていきたいと思っています。



(問)話題が変わります。アメリカの農務長官が、日本との通商交渉の関係で、日EU・EPAと同等かそれ以上の農産品の関税の引下げを求めるという考えを示されました。茂木大臣はこれまで全体としてTPPの水準が最大限だとおっしゃっており、ただ、日EU・EPAというのは、関税撤廃率で言えばTPP並みであり、一部の品目についてはTPP以上というものもあるわけだが、この農務長官の発言の受け止めと今後の対応方針についてお伺いしたいと思います。


(答)発言については承知しております。先日も、日米の首脳会談の後の共同声明については、既に会見等でも申し上げておりますが、ピン止めをしっかりとするという観点から、日本としては交渉を開始するに当たって、農林水産物について、TPPとは申し上げておりません。要件とすると、過去の経済連携協定で約束した市場アクセスの譲許内容が最大限であるとの、これまで繰り返し述べてきた立場を米側も尊重することが共同声明に明記されているところであり、この共同声明とパーデュー農務長官の発言に齟齬(そご)はないと思っています。



(問)安全保障の関係で、我々は日本を守っている。他の国にできることを、米国にはなぜできないのかという発言も後でされています。通商交渉ではあるのですが、日米の安全保障の関係を持ち出してきている、こうした姿勢について、受け止めをお願いします。


(答)海外の様々な発言というものがあります。一つ一つについてコメントというのは控えたいと思いますし、当然、政治に関わる立場からすると、例えば対象になるオーディエンスによって色々なニュアンスの発言というのはされるのだと思います。



(問)ペンス副大統領が日本とFTA交渉が間もなく始まると発言をされていると報道されています。日本政府としては、これまで包括的なFTAとは全く異なるという説明をされているわけですが、TAGというのはFTAではないという理解は変わらないということでしょうか。


(答)まず先ほど申し上げたように、海外の発言一つ一つにコメントすることは控えたいと思いますが、事実関係としてペンス副大統領はFTAという言葉は使っていません。DealとAgreementは明らかに異なると思っています。



(問)関連して通商の関係でお伺いします。農務長官、パーデュー氏ですが、先程、日EU・EPAは、大体同等かそれ以上の利益を期待するという部分は齟齬(そご)がないというお話でしたが、その会合の後で記者団に対して、「我々が目指すのは、TPPプラスだ」というふうに、TPP以上の譲歩を日本に求める考えを示唆しており、その部分については共同声明にも過去の経済連携協定に書いてありますが、改めて大臣の方からお考えを伺いたいのですが。


(答)先ほどお答えしたとおりです。




3.多田内閣府政策統括官(経済財政運営担当)による追加説明

それでは、平成30年第12回経済財政諮問会議について、概要を申し上げます。
本日は、「新内閣の重点課題」、「社会保障」について議論しました。
最初に、「新内閣の重点課題」について、中西議員から資料1について説明があり、その後、意見交換を行いました。
主な御意見を御紹介いたします。
経済産業大臣から、「全世代型社会保障については、産業構造審議会に新たな部会を設置し、議論を始めた。厚生労働大臣とも協力し、成果を政府全体の改革に反映していきたい。
SDGsの達成に向けたSociety 5.0の実現については、骨太で具体的な成長戦略を打ち出すことが不可欠。
ヘルスケアなど5つの分野で第4次産業革命の技術革新による具体的な成果を上げていく。
来年の消費税率引上げに向け、駆け込み需要と反動減への対策を確実に実施する必要がある。とりわけ軽減税率の実施について混乱が生じないよう、導入の円滑化が重要であり、経済産業省としても対応に全力で取り組む。」
続きまして、民間議員からですが、「今後のマクロ経済財政運営の鍵は、一つには世界経済の不確実性、二つ目に消費税率引上げがある中で、持続的な経済成長と財政健全化を実現することである。
キーワードは「総合的な対応」であり、駆け込み反動減の平準化、効果的な需要喚起策、潜在成長率の強化、そして規制改革などを総合的に行っていくことは効果的であるとともに、国民に対してしっかりとその姿勢を示すことが重要。
世界経済を含めて、経済状況についてのリスクを検証することが必要であり、内閣府には、次回議論の素材を出してほしい。
民間の2019年度の予測は慎重な見方である。その中で、個人消費が鍵になる。平準化だけではなくて、負担増の還元、力強い賃金の引上げ、生産性の向上などが重要である。」
「米中貿易交渉、アメリカ景気の持続性、さらには新興国からの資本流出など、世界経済において警戒感を強める事象が生じている。そうした中で消費増税を行っていくためには、あらゆる施策、特に最低賃金の引上げ、高齢者雇用へのインセンティブ付与、パートタイマーの就労調整を少なくするための正社員化の促進、企業の設備投資の促進のための減税措置に取り組むべき。」
別の民間議員から、「総合的な対応について、景気を腰折れさせない、デフレに後戻りさせない、需要を喚起する適正規模の対策、レバレッジの効いた施策が重要である。前回は投資と外需が下支えとなったけれども、今回は外需が落ちる可能性がある。消費と投資を下支えし、喚起する施策が重要である。
来年の賃金・所得環境が重要である。積極的な賃金引上げを期待したい。最低賃金の引上げができるよう、中小企業対応も必要である。
IT投資の拡大は民間だけではなく、国、地方の行政のデジタル化が重要である。」
さらに別の民間議員から、「国際関係において、危機認識を持って対応することが重要である。米中関係は少なくとも5年以上厳しい環境が続くであろう。アメリカ、中国、ASEANとの関係を含め、きめ細かな外交戦略が求められていると思う。日本企業は従来の戦略を見直し、今こそ強みを磨く攻めの戦略を採ることが重要である。今後の政策においては、こうした地政学的な状況の変化も取り入れて、今から対応していくことが重要である。」
次に、「社会保障」について、伊藤議員から資料2について御説明があり、その後、意見交換を行いました。主な御意見を御紹介いたします。
まず、厚生労働大臣から、「全ての世代が安心できる社会保障制度の構築に向けては、団塊ジュニア世代が高齢者となる2040年を見据えた検討を進める必要がある。人口構造は、2025年以降、「高齢者の急増」から、「現役世代の急減」に局面が変化する。一方、高齢者の若返りや、就業率の上昇も見られ、今後、多様な就労・社会参加、健康寿命の延伸、医療・福祉サービスの改革について取組を進めるとともに、給付と負担の見直し等による社会保障の持続可能性の確保の検討を行っていく。」
財務大臣から、「来年度は「新経済・財政再生計画」の初年度に当たる。社会保障関係費の伸びは、「高齢化による増加分」に収めることとされており、その方針で予算編成を行っていく。また、年末までに新たな改革工程表を策定することとされており、給付と負担の見直しを含め、前向きな議論が行われるべきである。
健康・予防の推進は重要な課題である。あわせて、持続性を確保するには、制度改革も不可避であり、しっかり取り組んでいく必要がある。」
以降、民間議員です。
「現在の制度が創られた1960年に比べて、寿命は20年以上伸びてきており、抜本的な骨組みの見直しが求められている。認知症、生活習慣病の予防、健康寿命の延伸、Society 5.0の活用、健保と事業主のコラボの推進が重要である。40代から50代の特定健診の受診率の低さは大きな課題であると。配偶者も含めてインセンティブの仕組みなどを検討し早急に取り組むべき。」
「これまでの延長ではなく抜本的な改革が必要である。全世代型の社会保障制度への改革に向けて計画を着実に進めていく。社会保障関係費について5,000億円を下回るよう抑えるべきところは抑えるべき。改革工程表では定量化、見える化、先進事例の横展開について、各省庁の積極的な対応を期待する。
認知症予防モデルの構築が極めて重要。諮問会議で議論していきたい。」
別の民間議員から、「データヘルスへの関心というのは非常に高いが、今の取組には取組の進度や効果の測定などにおいて、いろいろな課題を抱えている。データヘルスの促進は、産官学で一緒にやるのにとても良い課題である。工程表を作るときも健康寿命の延伸にターゲットを置いて、是非、産官学の視点を取り入れるべき。」
ここで厚生労働大臣から、「認知症対策は大変重要と思っている。民間の力を活用しながら体制整備を含め、包括的に対応していきたい。データヘルスの推進については民間議員のおっしゃるとおりであり、ビッグデータも活用して分析、対応して深掘りしていくことが大事。産官学が連携してしっかり取り組んでいきたい。」との御発言がありました。
最後に、総理から御発言がございました。
「本日は、新体制で始動した安倍内閣が年内に重点的に取り組むべき課題、さらに全世代型社会保障制度の構築に向けて、民間議員から御指摘を頂戴した。デフレ脱却・経済再生を確実なものとすること。特に、来年の消費税率引上げを控え、経済状況を見据えた機動的な経済財政運営に万全を期すべき、との指摘は、まさにそのとおり。茂木経済財政政策担当大臣におかれては、消費税率引上げに対応した経済財政運営について、景気の回復基調が持続できるよう、国内外の経済情勢にも十分注視しながら、この場で御審議いただき、しっかり対応を検討していただきたい。
また、軽減税率の実施への対応をはじめ、社会全体としての準備が十分整うよう、政府一丸となって、関係者の準備をしっかりと支援する体制を整えてもらいたい。
次に、経済・財政再生計画を着実に推進するとともに、生涯現役時代を見据えて全世代型社会保障改革の一体的取組を進めるべし、との指摘があった。年末に向けて、歳出改革の方向性や歳出の目安の明確化・具体化、新たな改革工程表の取りまとめなど、持続可能な社会保障制度に向けた重点課題を議論していただきたい。
今後3年間で、社会保障改革を成し遂げる考え。まずは、健康長寿。高齢者等が健康で安心して生活できる環境を整備していく。新たに全世代型社会保障改革を担当していただく茂木大臣を中心に議論していただきたい。」
以上でございます。



(以上)