第9回記者会見要旨:平成30年 会議結果
茂木内閣府特命担当大臣記者会見要旨
- 日時:平成30年6月15日(金曜日)18時32分~18時59分
- 場所:中央合同庁舎第8号館1階S101・103会見室
1.発言要旨
本日は経済財政諮問会議と未来投資会議の合同会議を開催いたしましたので、その報告をいたします。
「経済財政運営と改革の基本方針2018」、いわゆる「骨太方針2018」と「未来投資戦略2018」の取りまとめを合同会議において行いました。その後、臨時閣議において、この2つを閣議決定したところであります。
「骨太方針2018」においては、少子高齢化による成長制約の壁を打ち破るため、人づくり革命と生産性革命の具体策を示すと共に、働き方改革の実行・実現、さらには、一定の専門性・技能を有し、即戦力となる外国人材に関する新たな在留資格の創設などの方針を示しました。また、財政健全化目標については、2025年度のプライマリーバランスの黒字化を目指すことなどを示しました。
副題については、「少子高齢化の克服による持続的な成長経路の実現」としております。
また、未来投資戦略では、「Society 5.0」によって人々の生活や産業、そして地域や人材がどう変わっていくか、具体的な姿を示すと共に、「Society 5.0」を実現する牽引力となる「フラッグシップ・プロジェクト」や、こうした革新への基盤づくり、データ基盤や人材育成、大胆な規制改革を進めていくこととしております。
合同会議において、総理からは、実行が大切であり、私を始めとする関係大臣には、この実行に向けてよろしくお願いしたい。実行については、生産性革命の重点分野で「産官協議会」を設け、新たな若い世代の民間の叡智を取り込みつつ、政策形成を進める。そして、経済・財政一体改革については、新たな改革工程表を年末までにお示しする、こういった発言がありました。
詳細については、事務方から説明させていただきます。
2.質疑応答
(問)今年の骨太の方針と成長戦略がまとまりましたが、社会保障、それから外国人に踏み込んだ施策も盛り込まれる中で、大臣が発言されたように、実効性に課題があるということで毎年指摘があります。実効性をどのように高めていかれるか御所見をお願いします。また、タイトルに「少子高齢化の克服」とうたわれましたが、この背景について改めてお願いします。
(答)先程申し上げたように、迅速かつ着実にこれらの施策を実行していくことが重要だと、これは総理の指示でもありますし、そのように考えているところであります。
どう実行していくか。まず、生産性革命については、先程も申し上げたように、重点分野で「産官協議会」を新たに設置いたします。そして、新たな世代の民間の叡智を取り込みつつ、政策形成を進めていきたいと思っております。
先程、フラッグシップ・プロジェクトという話もしましたが、見たことないものは欲しがれないというのがマーケットです。具体的にどう変わっていくのか、「Society 5.0」によって生活や産業や、そして人材がどう変わっていくのか、そういった姿を一つ一つ具体的に示していく、これが改革を進める、そして実行を進める、こういったモメンタムにもつながっていくと考えております。
そして、経済・財政一体改革については、新たな改革工程表を年末までにお示しすることになっておりまして、そこに詳細な部分を書き込みたいと思っておりますが、サブタイトルでも「持続的な成長経路の実現」といった言葉を使っておりまして、しっかりそのフォローアップもしていきたい。いずれにしても、全力を挙げて取り組んでいきたいと考えております。
(問)今回、外国人材の活用に踏み込まれたところが大きな特徴だと思うのですが、導入の背景には人手不足があるということでしたが、勤労目的の留学生の増加や、技能実習生がルールを逸脱した過酷な労働を強いられている現実もあります。新たな在留資格の創設は、そういった問題の是正にもつながると期待はありますでしょうか。改めて大臣から、外国人材活用の背景と意義、期待についてお願いいたします。
(答)先程も冒頭の発言の中で、今回の新たな制度は、一定の専門性・技能を有し即戦力となる外国人材を受け入れていく仕組みであり、移民政策とは違いますが、積極的に受け入れていくという仕組みを示したわけであり、この外国人材の受入れに関しては、2月の経済財政諮問会議において、総理から、深刻な人手不足状況が生じており、専門的・技術的分野における外国人受入れの制度の在り方について制度改正の具体的な検討を早急に開始するように、官房長官と法務大臣に対して指示があったところであります。これを受けた検討結果が、今月の初め、6月5日の経済財政諮問会議において、法務大臣から報告され、本日閣議決定された骨太方針に盛り込んだもの、という形であり、決して安価な労働力の受入れを目的としたものではありません。一定の専門性・技能を有しており、実際にそこにニーズがある、そういったところに即戦力となるような外国人をしっかりと受け入れていきたいと考えております。
(問)まず、一体改革の新たな工程表ですが、これはあくまでも2025年度のPB黒字化に向けた、スパンとしては2025年度までを見据えたものなのか、あるいはもっと先を見据えたものになるのかという点が1点。もう1点は、5日の経済財政諮問会議で民間議員の方から、これは骨太がまだ原案だった段階ではありますが、政府が厳しい改革に臨む姿勢は明確だという認識を示される一方で、メディアによっては、あたかも後退感があり、手ぬるいという報道や解説がなされているということで、その新計画が示す本当の意図を国民に伝える工夫というのを求める声が上がりました。大臣からも、しっかりした対応が必要だと、重要であるというふうに報じられていますが、この点に関する大臣の問題意識をお聞かせください。
(答)まず1点目、どれくらいのスパンで考えるかということですが、2025年度のPBの黒字化、そして債務残高対GDP比の安定的な引き下げ、こういったものをターゲット、視野に入れているわけであって、今後、年末に改革工程表を示す段階で決めていきますが、基本的な視野としては、2025年度という視野で考えるべきだと思っております。
ただ、政策の分野によってはもう少し早いスパンで具体的に成果を達成するものもあります。同時に、もう少し長いスパンで考える必要があるものも当然出てくるわけですが、基本的なスパンは今申し上げたようなところであります。
また、広報はしっかりしていかなければいけないと考えており、先般の経済財政諮問会議においても、民間議員からお話があったのは、新計画の目指す意図がどういう意図なのか、こういったことを国民各層にしっかり伝えてほしいという趣旨の発言であったと思っており、今回作った骨太方針や未来投資戦略を国民がどういう意義を持って、そして日本の経済財政がどう変わっていくのか、またそれをやっていくためにはどんな改革が必要なのか、具体的に実感してもらえるような丁寧な、そして分かりやすい広報に努めていきたい。
今回、例えば未来投資戦略でも、かなり分かりやすく、どう我々の生活が変わっていくのか、さらには、経済の形がどう変わっていくのか、また、新しい時代に求められる人材像というのはどういうものなのか、できるだけ具体的に書き下ろしたつもりであって、こういった努力をこれからも続けていきたいと思っております。
(問)改めて財政健全化について、今回の2025年度のPB黒字化、あるいは、それに至る中間指標に関してはいろいろな意見が世の中にはあるかと思うのですが、改めて今回の決まった目標の意義付けをお聞かせください。一方で、骨太方針なので、来年度の予算もまた今後プロセスに入ってくるかと思うのですが、そこについても、もし今後どうしていくべきかということがあったら教えてください。
(答)「経済再生なくして財政健全化なし」、この基本方針の下、財政健全化を進める上で、デフレ脱却・経済再生を実現することは極めて重要だと考えております。新計画でも、サプライサイドを強化する取組等を通じて、実質2%程度、名目3%程度を上回る経済成長の実現を目指して経済再生に取り組むということであります。
その上で、2025年度のPB黒字化の達成については、より現実的な中長期試算の下、今年の初めにお示しをしたわけでありますが、景気回復の鈍化等によってPB黒字化が遅れるリスク等も勘案しながら、着実に、確実に財政健全化の取組を進めていく観点から設定したものであります。
また、財政健全化目標達成に向けた進捗をチェックするために、進捗をチェックする、管理する、こういう観点から、中間指標、メルクマールとして、PB赤字対GDP比、債務残高対GDP比を設定し、さらに債務残高対GDP比の安定的な引下げのため、フローとストックをつなぐ財政赤字対GDP比を設けたところであります。
いずれにしても、達成すべきは日本経済の再生と、その先のPB黒字化、債務残高対GDP比の安定的な引下げといった経済財政の将来像であると考えております。
そして、来年度の予算については、来年は10月に消費税の引上げが予定されているわけであって、これを確実に実施できるような経済状況をつくるためには、当初予算にしっかりとした対策を盛り込むことが必要だということも、今回書き込みをさせていただきました。
そして、歳出削減についても、しっかりと目安を設けるわけであって、この数字についても、年末にはしっかり固めたい。当然、高齢化による増がどうなっていくか、具体的な数字が出てくる中で、目安を達成できるような改革を進めていきたいと思っております。そして、それを来年度の予算編成に反映していきたいと思っております。
(問)自由貿易に関する記述があったかと思うのですが、改めまして、現在の貿易摩擦が加熱しつつある、こういう懸念が広がっている状況について、どのようにお考えか、御理解されているか、お聞かせ願えますでしょうか。
(答)自由で公正な貿易体制は、国際経済発展の基礎になるものだと考えており、日本として、そういった観点から、自由で公正な新しいルールづくりを、TPPもそうですが、日EU・EPAも含めて、しっかりとリードしていく、こういった役割を果たしていきたいと思っております。
世界経済全体は間違いなく順調な動きをしているわけですが、各国の通商政策、さらには、それに伴う各国からの様々な協議について、それが世界経済全体にマイナスにならないように、どのようなことが起こっていくのかしっかり日本としても注視をしていきたいと思っています。
(問)2点お願いします。自民党の総務会の方で、骨太の方針の消費増税の書きぶりについて、もう少しはっきり増税すると書いた方が良いのではないかという話が出たということなのですが、この骨太の方針に書かれている消費増税の書きぶりというのは、大臣が考えているところは、必ず増税するというふうに読んでもいいのかというのが1点目の質問で、2点目は、新たな改革工程表の現時点でのイメージについてですが、具体的な歳出抑制策のようなものをしっかり組み込んでいくというイメージなのか、その辺りを教えてください。
(答)まず、前者については、党として様々な議論がある中で、この内容で与党手続は終わっており、閣議決定もしているという意味で文書どおりであります。ここには、教育の無償化を始めとして、安定財源が必要な、重要な政策を盛り込んでいるわけであって、その安定財源をしっかり確保する必要がある。それができるような経済状況を必ず作っていくという思いで取組をしていきたいと思っているところであります。2点目については、恐らくそのようになると思います。まだ具体的な項目というか、年末までにまとめるということですが、当然、それは具体的な施策がそこの中に入ってくると御理解いただいて結構です。
(問)そうすると、歳入サイドの改革というのも、25年度だと5年間ぐらいスパンがあるので、何らかの税目の増税というのも1つの選択肢になると思うのですが、その辺りも入ってくる可能性があるということですか。
(答)税制改正は毎年度行っているわけであり、長いスパンで必要なものもありますが、党の税調等でかなり中心的に議論を行っていただくということになります。まだ積残しになっている課題もあると思っておりますが、少なくとも、消費税について申し上げると、来年の10月に消費増税が予定されているわけであって、それをしっかり実現するということが最優先であると思っております。
3.黒田内閣府参事官(政策統括官(経済財政運営担当)付)による追加説明
平成30年第9回経済財政諮問会議・第18回未来投資会議合同会議の概要を申し上げます。
本日は、「骨太方針2018」と「未来投資戦略2018」について議論を行いました。
まず、「経済財政運営と改革の基本方針2018~少子高齢化の克服による持続的な成長経路の実現~」について、越智副大臣からの説明の後、意見交換が行われました。
民間議員から、「持続的な社会保障の構築が重要。見える化の取組、Society 5.0による技術の活用など、社会保障においても成長と財政健全化の双方の視点が重要。可処分所得の向上を消費拡大につなげていくことが重要。消費税率引上げについては、国民がメリットを感じられるよう、しっかり取り組むべき。とりわけ、現役世代の消費行動などを分析していくことが重要。外国人材の新たな在留資格制度の創設については、大胆に推進してほしい。新たな経済・財政一体改革の改革工程表の作成については、経済・財政一体改革委員会において、多面的に意見を取り入れながら進めていきたい。」
別の民間議員から、「財政健全化について3点。1点目、2025年度のPB黒字化を掲げたが、着実な実施・実行が重要。数字ありきではなく、予算の質・成果を評価していく。2点目、2019年10月の消費税率引上げへの対応について、2019、2020年度の当初予算で、歳出改革の目安とは別途、臨時・特別の措置を講じるということが明記された。消費税率の引上げを乗り越え、可処分所得を増加し、経済の好循環を実現する。3点目、社会保障改革は国民の関心が高く、内容も多岐にわたる。引き続き議論したい。」
この後、「骨太方針2018」を経済財政諮問会議の答申として決定しました。
次に、「未来投資戦略2018~「Society 5.0」「データ駆動型社会」への変革~」について、越智副大臣からの説明の後、意見交換が行われました。
民間議員から、「未来投資戦略は、未来を見据えた分かりやすい形となった。産業界としてもリーダーシップを発揮したい。省庁横断的な内容になっており、業界ばらばらでなく取り組み、産学官が連携していくことが大事。国民の理解を得ていかなければならない。」
別の民間議員から、「技術革新の社会実装が非常に重要。今後の社会においては、新しい技術を利用できるかどうかによって、格差が生み出されてしまう。スピード感を持って政策を進めていくことが大事で、変化を阻害してはいけない。政策立案スタイルを変える必要があり、規制のサンドボックス制度はその先陣を切るもの。産官協議会の重点分野についても、制度をどんどん変えていってほしい。未来投資戦略では、AI人材の取組を大人が若者のサポーターに徹し、叡智を引き出す度量を持って進めていただきたい。」
この後、「未来投資戦略2018」を未来投資会議の取りまとめとして決定しました。
最後に、総理から御発言がありました。
「本日、こうして「骨太方針2018」と「未来投資戦略2018」を取りまとめていただき、心から感謝を申し上げる。
日本経済は、人手不足感が高まる中で、質・量の両面で人材を確保するとともに、生産性の向上により、その潜在成長率を高めていくことが急務となっている。少子高齢化による成長制約の壁を打ち破るため、人づくり革命で待機児童問題解消、幼児教育・高等教育の無償化等を明記するとともに、Society 5.0の実現に向けた生産性革命の具体策を明記した。また、最大のチャレンジである働き方改革の実行・実現を明記している。一定の専門性・技能を有し、即戦力となる外国人材に関する新たな在留資格の創設などの方針も明記した。さらに、財政健全化目標として、2025年度の国・地方を合わせたPB黒字化を明記している。
副題は「少子高齢化の克服による持続的な成長経路の実現」とした。実行が大切である。茂木大臣を始めとする関係大臣には、よろしくお願いする。
実行については、生産性革命の重点分野で「産官協議会」を設け、新たな若い世代の民間の叡智を取り込みつつ、政策形成を進める。経済・財政一体改革については。新たな改革工程表を年末までにお示しする。
議員各位には、多大な御尽力をいただいたことに改めて感謝申し上げるとともに、引き続き御協力をお願いしたい。」
(以上)