第14回記者会見要旨:平成29年 会議結果

茂木内閣府特命担当大臣記者会見要旨

  • 日時:平成29年10月26日(木曜日)18時38分~19時16分
  • 場所:中央合同庁舎第8号館1階S101・103会見室

1.発言要旨

第14回経済財政諮問会議の概要について御報告いたします。
本日は2つのテーマ、1つは、「経済・財政一体改革」に関する総論と社会保障改革について、もう1つが、「賃金・可処分所得の継続的な改善・拡大」について意見交換を行いました。
民間議員の皆さんからは、「歳出改革の加速」と「サプライサイド強化」を軸に、経済・財政一体改革をより強力に推進し、2020年度以降できるだけ早期にPB黒字化を達成すべき。骨太方針で最終的に、PB黒字化の達成時期、2019年度以降の複数年の歳出・歳入改革の具体的な在り方及び主要分野ごとの改革方針・主要課題を決定すべきである。
2つ目に、平成30年度は、社会保障改革の節目であり、その予算での取組は極めて重要となる。改革工程表の全44項目の改革を推進し、目安の5,000億円増を下回る増加に抑制すべき。
3点目として、春季労使交渉において、3%の賃上げを実現することを期待する。予算・税制・規制改革等を総動員し、前向きな投資を促進、生産性向上策を抜本的に講じ、賃金引上げの環境整備に努めるべき。
こういった提言がありました。詳細については、後ほど事務方から説明させます。
最後に、総理から発言がありました。内容をお聞きになられた方もいらっしゃるかもしれませんが、その概要を改めて申し上げます。
「安倍内閣では、税収が伸びたことで、新規国債発行額を10兆円減らし、社会保障費の伸びを3年連続で5,000億円以下に抑制するなど、歳出削減努力を積み重ねてきた。
他方、人づくり革命を力強く進めるため、再来年に予定されている消費税率10%への引上げによる増収分を、教育負担の軽減・子育て支援などと、財政再建とに、それぞれ概ね半々ずつ充当することで、PB黒字化の達成時期に影響が出るが、財政健全化の旗は決して降ろさない。これまでの取組を精査した上で、PB黒字化の達成時期を示さなければならない。この時、裏付けとなる歳出改革の具体的な計画を、併せて示す必要がある。
私自ら先頭に立って、全力で取り組んでいきたい。
賃上げは、この4年間、今世紀最高水準で続いている。安倍内閣では、最低賃金をこの4年間で100円引き上げた。パートで働く方々の時給も過去最高となっている。こうした流れを更に力強く、持続的なものとしていかなければならない。
賃上げは、もはや企業に対する社会的要請であり、来春の労使交渉においては、3%の賃上げが実現するよう期待したい。
政府としても、過去最大の企業収益を、賃上げや設備投資へと向かわせるため、予算、税制、規制改革とあらゆる政策を総動員し、一丸となってその環境整備を進め、年末に策定する新しい経済政策パッケージに反映したい」、という発言がありました。
本日の会議のポイントについて、私からは以上です。


2.質疑応答

<3%の賃上げ実現への期待>

(問)賃上げに関する総理の御発言について、3%の賃上げという明確な数字を出されて、尚且つ、今年までの2%前後の平均より少し高い球だと思います。総理の言葉ではありますが、はっきりと高い球を企業に対して投げるというか、ぶつけるというか、政権としてその狙いはどこにあるというようにお考えになりますか。

(答)実際に今の経済の環境を申し上げますと、御案内のとおり、名目GDPは543兆円、そして企業収益75兆円と過去最高水準となっているわけでありまして、こういった高い企業収益が、賃上げ、そして設備投資に向かうような方向性をとっていきたい。もちろん政府としても、そのための環境整備に最大限取り組んでいくということであります。これまで2%でありました。それに対して、今日、民間議員の皆さんから3%の賃上げという御意見をいただきました。同時にこれは定期昇給だけではなくて、ベアや消費性向が非常に高い子育て世代に傾斜配分する、こういったことも含めて3%の賃上げを実現してほしい、こういう意見がありまして、榊原議員もそれに呼応して非常に前向きな発言をされておりまして、最終的にそういった全体の今日の議論も踏まえ、総理として総括的に考えを述べられた、そのように思っております。

(問)賃上げを明確に指示したということで、賃上げを促進する企業に対しての税制上の優遇策も検討されていると思いますが、その辺について大臣のお考えを教えてください。

(答)賃上げについては指示をしたわけではなくて、賃上げが行われるということを期待したい、そういった要請をされた、こういうことだとは思っております。当然、これは賃上げについても、それから設備投資の拡大についても、様々なインセンティブ、こういったものも必要であろう。予算、税制、規制改革、こういったあらゆる政策手段を総動員して、それができるような環境整備を進めていく、これが政府としても大きな役割だと、このように考えております。


<社会保障改革の議論>

(問)民間議員から提言がありました社会保障費の自然増の抑制について、5,000億円を下回るということですが、議論の中で、5,000億円を4,000億円にするのか、5,000億円を少しでも下回ればいいのかといったような議論があったのでしょうか。
また、来年度予算ということになりますと、もう1カ月程しか時間がありません。診療報酬・介護報酬の改定の年でもあります。どのような形で削減する、というような話はありましたでしょうか。

(答)まず、社会保障費の抑制について、5,000億円以下ということでありますが、具体的に、それが4,500億円なのか4,000億円なのかというお話は出ておりません。
まず、今我々がやろうとしておりますことは、キャップをかぶせるわけではありません。基本は改革ありきなのです。まずは社会保障の改革をやる。結果として6,400億円の社会保障費自然増がこれまでも5,000億円以下に抑制されてきたということでありまして、そういった最大限の改革をやるということがまず基本にあると、このように思っております。
確かに、来年につきましては、6年に一遍の診療報酬・介護報酬の改定、極めて重要なタイミングでありまして、そこに向けてどの項目をどう改善していくか、こういったことは極めて重要になってくると思っております。例えば、ゾロ新ではなくてピカ新、これを中心に考えていくとか、薬価についても様々な成功事例を横展開していく話であったりとか、また、地域別に色々なこのコストに差があるわけでありまして、これを半減していく、そういったことも含めて様々な意見が今日も出ました。また、政府の中においてもこういった議論は進んでおりますので、そういった中で、より効率的また効果的な改革は何なのかと、こういった議論を更に進めていきたいと思っております。


<3%の賃上げ実現への期待>

(問)賃上げにお話を戻してしまいますが、これまでも安倍総理から企業に対しては、賃上げの要請というものはなされてきたと思います。それで、一定の実績があると思うのですが、これまでの2%を上回る3%の賃上げを実現するためには、これまで既になされている賃上げ優遇税制といった様々な施策を上回る、もうワンプッシュが必要だという気がしますが、そこら辺に向けての制度設計について、大臣のお考えをお聞かせいただけますでしょうか。

(答)2つの要素があると思っております。その1つは、先程も言いましたが、企業収益が75兆円と過去最高になっている。その分企業は様々な形の努力はされているわけでありますが、ある意味、賃上げ、そして所得向上を図り、それを消費の拡大につなげていく。さらには、設備投資、IT化を進めて生産性を向上することにつなげていく、こういった、ある意味余力というものが企業の側にも出てきているということなのだと思います。それを更に促進をする、後押しするという意味で、現在あります所得拡大促進税制であったりとか様々な制度について、よりそういったものを応援できる、後押しできるものにレベルアップをしていきたいと、このように考えております。


3.新原内閣府政策統括官(経済財政運営担当)による追加説明

本日は、茂木大臣より、資料1、経済財政諮問会議の今後の課題・取組について説明があった上で、加藤厚生労働大臣に御参加いただき、経済・財政一体改革についての議論を行いました。高橋議員から資料2、新浪委員から資料3、加藤厚生労働大臣から資料4について説明、提案があり、その後、意見交換を行いました。
主な御意見を紹介いたします。
麻生財務大臣から、「財政健全化については、集中改革期間の目安達成に向け、歳出改革を強力に推進していく。社会保障については、今回の予算編成において課題が山積しているが、改革努力や歳出削減努力を積み重ね、国民負担の抑制を実現していく必要がある。薬価についても、「抜本改革」にふさわしい結論とし、国民負担を十分に軽減していく必要がある。」
世耕経済産業大臣から、「プライマリーバランスの黒字化達成の時期については、着実に達成できる時期として設定すべき。社会保障の給付削減につなげるために、AI、ロボットなどを活用していくことが大事。介護職員がペーパーワークに追われているという実態があり、ITを活用して改善していくべき。」
野田総務大臣から、「財政健全化については、国と地方を合わせたプライマリーバランスの黒字化に向けて、国と地方が信頼関係を持ってしっかりと努力していくことが重要。国のプライマリーバランスが赤字であるのに対し、地方のプライマリーバランスが黒字であることについては、地方は1,800団体の集合体であって、国と単純な比較はできないこと、地方が収支均衡のために厳しい行革に取り組んだ結果であることに留意する必要がある。」
菅官房長官から、「薬価の見直しを関係大臣に是非お願いしたい。介護職員の処遇改善について、更なる措置をお願いしたい。」
民間議員から、「財政健全化に向けて、団塊世代が後期高齢者となる2025年までに改革を加速させる必要がある。社会保障改革は、来年度予算が試金石となる。財政調整による負担増で達成するのではなく、歳出改革で達成すべき。イノベーションについては、研究開発投資のGDP比で政府1%、民間3%の目標を何としても達成すべき。様々な手段で予算を確保し、税制等の政策の拡充をお願いしたい。社会保障改革について3点ある。第1に、診療報酬・介護報酬の同時改定について、メリハリのある体系としていくべき。第2に、医療保険について、年齢ではなく負担能力に応じた仕組みを将来的に考えていくべき。第3に、薬価改革について、菅官房長官からも御指摘のあったとおり、着実な実施をお願いしたい。」
別の民間議員から、「新薬創出加算は新薬創出の目的に合うようメリハリを考えるべき。医療費の地域差半減に向けたアクセルを再度踏んでいくべき。」
加藤厚生労働大臣から、「新薬創出加算については、革新性、有用性のあるものに重点化していく方向である。薬価の毎年改定については、既に方針として金額の大きいものについて行うこととしているが、薬価調査の実現性、国民負担等を踏まえて検討していきたい。」
別の民間議員から、「改革なきキャップは破綻する。目安の5,000億円の更なる抑制は改革の結果として出てこないといけない。国と地方の信頼関係は重要。対立の構図ではなく、「地方の、地方による、地方のための改革」をやっていただきたい。国と地方の課題について、今後議論を行っていきたい。」
次に、賃金・可処分所得の継続的な改善・拡大について議論を行いました。伊藤議員から資料5について説明があり、その後、意見交換を行いました。
主な御意見等を紹介いたします。
世耕経済産業大臣から、「来年の賃上げについては、特に子育て世代、中小企業を中心に引上げを行い、さらに再来年の消費税10%時にそれをカバーする賃上げを実現できるよう、企業の付加価値を高め、その財源を生み出していく必要がある。経産省としても、生産性革命、人づくり革命を通じて支援していきたい。」
民間議員から、「3%の賃金引上げを是非目指すべき。人づくりはとても大切なので、賃上げの中にはリカレント教育などの人材育成も含めるべきである。」
別の民間議員から、「企業に対して、政府は賃金引上げを何十回も要請してきた。企業の利益、現預金は過去最高水準、労働分配率は低い状況。賃金の引上げは、企業に対する社会的な要請であることを強調したい。デフレ脱却については、「企業が良くなり、賃金が上昇し、消費につながる」というサイクルができてきて、デフレ脱却となると考えている。」
別の民間議員から、「4年連続でベアを含めた賃上げを進めているというモメンタムは継続しないといけない。経済界としては、賃上げが社会的要請であることを踏まえ、労働分配率や現預金の水準も踏まえ、より積極的な賃上げを呼びかけたい。賃上げにおいては、消費性向の高い子育て世代に重点配分がされるように考えたい。政府は所得拡大促進税制などの環境整備を通じて、後押しをお願いしたい。」
ここで、総理から発言がありました。
「安倍内閣では、これまでアベノミクスを進めることで、財政健全化に大きな道筋を付けてきた。税収が伸びたことで、新規国債発行額を10兆円減らし、また、社会保障費の伸びを3年連続で5,000億円以下に抑制するなど、歳出削減努力を積み重ねてきた。
他方、人づくり革命を力強く進めるため、再来年に予定されている消費税率10%への引上げによる増収分を教育負担の軽減・子育て層支援などと、財政再建とに、それぞれ概ね半々ずつ充当する。これにより、プライマリーバランス黒字化の達成時期に影響は出るが、財政再建の旗は降ろさない。これまでの取組を精査した上で、プライマリーバランス黒字化の達成時期を示さなければならない。この時、裏付けとなる歳出改革の具体的な計画を、併せて示す必要がある。
本日、民間議員からは、全世代型の社会保障制度を構築すべき、財政健全化に向けて社会保障改革への取組が極めて重要であるとの御意見をいただいた。私、自ら先頭に立って、全力で取り組んでいきたい。
次に、賃上げについて議論した。この4年間、今世紀最高水準の賃上げが続いている。また、安倍内閣では最低賃金をこの4年間で100円引き上げた。パートで働く方々の時給も過去最高となっている。こうした流れを更に力強く、持続的なものとしていかなければならない。
民間議員からも指摘があったが、賃上げは、もはや企業に対する社会的要請だと言える。来春の労使交渉においては、生産性革命をしっかり進める中で、3%の賃上げが実現するよう期待したい。経済界においては、前向きな取組を是非ともお願いしたい。
政府としても、過去最大の企業収益を賃上げや設備投資へ向かわせるため、予算、税制、規制改革とあらゆる政策を総動員し、一丸となってその環境整備を進め、年末に策定する新しい経済政策パッケージに反映したい。加藤厚生労働大臣、世耕経済産業大臣を始め関係大臣におかれては、しっかりと対応していただきたい。」
以上です。


(以上)