第3回記者会見要旨:平成29年 会議結果
石原内閣府特命担当大臣記者会見要旨
- 日時:平成29年3月14日(火曜日)18時46分~19時04分
- 場所:中央合同庁舎第8号館1階S101・103会見室
1.発言要旨
第3回経済財政諮問会議の概要について説明させていただきます。
本日は、御承知のとおり、ノーベル経済学賞を受賞されましたコロンビア大学のジョセフ・スティグリッツ教授をお招きして、世界経済の情勢や先進国が抱えている政策課題について議論させていただきました。
教授からは資料に従いまして「世界的に成長率が低下し、その寄与は上位層に偏っている」「教育、健康医療等のサービス産業を中心とした経済に再構築する必要がある」「市場システムだけでは再構築できないので、教育やイノベーションの促進について政府が関与する必要がある」「成長の成果をより平等に分かち合うためには、賃上げや所得分配の是正や社会保険の提供が必要」「日本の産業政策はうまく働いており、カムバックが必要」「日本で最も重要なのは、三本目の矢やイノベーションでの政府のリーダーシップである」など御説明がありました。
これに対して民間議員から「医療、介護、科学技術への政府の関与が重要との意見は非常に参考になった」「イノベーションを支える人材教育が重要」等々の発言がありました。
最後に、総理の発言の要点を紹介させていただきます。
スティグリッツ教授からは、先進国は生産性の伸びの鈍化や格差拡大といった共通の課題を抱えている。成長の果実は人々が共有することが大切であり、所得の公平化、教育・健康・介護サービス部門の強化、イノベーションの促進などに取り組むべきというメッセージをいただいた。
こうした教授の御意見は、今、我々がアベノミクスの第二ステージとして進めている政策の考え方と相通ずるものがあると感じている。
安倍政権では、研究開発投資の促進、最低賃金の引上げ、働き方改革、介護や保育の環境整備、貧しくても高等教育を受けられる制度といった政策を進めており、これを加速していかなければならないのだと、思いを強くした。
このようなお話がありました。私からは以上です。
2.質疑応答
<スティグリッツ教授>
(問)今日の会議の中で、スティグリッツ教授からは、格差の拡大への対処として、様々な提言がありましたが、その中で特に大臣が一番印象に残ったこと、日本にとってこれが特に必要ではないかというように思われたことは何でしょうか。また、それを今後の諮問会議の議論の中でどのような形で活かしていくかをお聞かせください。
(答)格差ということと成長が鈍っているというところで分配が必要であるという話と、世界経済が大きく変わる中で、政府に役割があるということです。これまでは、民間に任せて、民間が仕事をしやすい環境を作る、民需主導の経済成長が中心でありました。これは中心であるべきでありますが、こういう事態には政府の役割が必要であるというところは非常に印象に残ったところです。
3.新原内閣府政策統括官(経済財政運営担当)による追加説明
第3回経済財政諮問会議について、補足説明を申し上げます。
先程大臣が申し上げたように、スティグリッツ教授をお招きいたしました。また、塩崎厚生労働大臣、加藤働き方担当大臣にも参加をいただきました。スティグリッツ教授から資料1の説明があり、その後、意見交換を行いました。
主な御意見を御紹介させていただきます。
民間議員から、「10年前にスティグリッツ教授から、「アメリカには最強の市場経済と最強の非市場経済が存在している」という話を伺ったことを思い出した。教育や科学技術を諮問会議でこれから議論するようになると思うが、お話は参考になった。」
民間議員から、「世界の所得格差や人的資源など、大変示唆に富むお話だった。潜在成長率を高め、豊かさを構築していくことに経済界は役割を果たしていく。イノベーションを豊かさにつなげていくことができる。我々はSociety5.0と呼んでおり、国家的プロジェクトとして加速している。人的資源の蓄積も重要である。個別課題については、今後、議論を深めていきたい。」
民間議員から、「安倍政権は成長と分配の好循環を目指しており、スティグリッツ教授の話と同じ方向性だと感じた。イノベーションの促進に向けた効果的施策は何か。」
総理から、「企業が収益を上げる中で、格差に注目して、再分配機能を働かせることに重点を置いてきた。最低賃金も、前政権では緩やかなペースで上がってきたのだが、安倍政権では高いペースで上げてきている。また、榊原会長には色々と御協力をいただいており、時間外労働の上限規制の労使合意も画期的であるし、非正規労働者のための同一労働同一賃金も経済界に同意を頂いた。今のアベノミクスでは、働く人の立場に立って労働界の意見を政府が汲み取り、経済界にお願いしているという状態にある。相対的貧困率、特に子供の貧困率が安倍政権で初めて下がった。今後とも、多くの人が勤労意欲を持てるような社会をつくっていきたい。」
スティグリッツ教授から、「イノベーションについて、大学が重要な役割を担っているが、政府が基礎研究をサポートしてきたということがある。今後のイノベーションをリードするのは米国ではないかもしれない。日本でも基礎研究をサポートすることが重要。シリコンバレーのような官民のクラスターをつくっていくことが重要。イノベーションは社会を変革するものでなければならない。教育へのアクセスが重要。質の高い幼児教育が長期的にイノベーションにもつながってくるということを重視しなければならない。これは女性の労働市場への参入にも関係する。格差があると労働者の交渉力が弱くなる。超過勤務の時間の制限の設定は重要。」
最後に総理から発言がございました。
「本日は、私も数度にわたって御意見をお伺いしている、ノーベル経済学賞受賞者のスティグリッツ、コロンビア大学教授をお招きし、世界経済の情勢や政策課題について議論した。教授からは、先進国は生産性の伸びの鈍化や格差拡大といった共通の課題を抱えている。成長の果実を人々が共有することが大切であり、所得の公平化、教育・健康・介護サービス部門の強化、イノベーションの促進などに取り組むべき、というメッセージを頂いた。こうした教授の御意見は、今、我々がアベノミクスの第二ステージとして進めている政策の考え方と相通ずるものがあると感じる。安倍政権では、第四次産業革命を背景とした研究開発投資の促進、年率3%で引き上げて1,000円を目指す最低賃金、非正規の処遇改善のための同一労働同一賃金の導入などの働き方改革、保育や介護の環境整備、貧しくても高等教育を受けられる制度といった政策を進めている。これを加速しなければならないとの思いを強くした。」
以上でございます。
(以上)