第15回記者会見要旨:平成28年 会議結果

石原内閣府特命担当大臣記者会見要旨

  • 日時:平成28年9月30日(金曜日)18時54分~19時20分
  • 場所:中央合同庁舎第8号館1階S101・S103会見室

1.発言要旨

第15回経済財政諮問会議の概要について報告させていただきます。今日は議題が3つありました。
最初に、金融政策、物価等に関する集中審議を行いました。
まず、黒田議員から「総括的な検証」のポイントと金融緩和強化のための新しい枠組みについて説明がありました。
また、民間議員から「総括的な検証」は日本経済をデフレではない状況にあると分析し、有意義なものである、ただし、「しつこいデフレ」の状況にあり、賃金をジャンプさせ、賃上げ主導の物価上昇の実現が必要等々の意見がありました。
この他、日本銀行の政策意図のコミュニケーションを強化すべき、という意見がありました。
また、この10月には、130万円の壁の106万円への引下げや最低賃金の引上げが円滑に実施されるよう、就労調整や下請企業にしわ寄せがないか、厚生労働大臣、経済産業大臣でしっかりチェックをしてほしい等々の要請がありました。
続いて、2番目の議事です。働き方改革とマクロ経済です。ここで、塩崎厚生労働大臣と加藤一億総活躍担当、働き方改革担当大臣が入っています。
民間議員から、デフレ脱却・経済再生のためには、賃上げ主導の2%の物価上昇の実現と可処分所得の増加が重要であり、賃上げに必要な生産性向上に向けて働き方改革や設備投資・人材投資の拡大等が重要との提言がありました。さらに、本年に引き続き来年も、自社は3%の賃上げを目指す、大企業が率先して賃上げに向けたモメンタムを醸成すべき旨の発言がありました。
その他、賃上げに向けて、賃上げのリーダーシップをとる企業の出現を期待する、先行きの物価上昇率を勘案した賃上げについての労使合意の形成が必要、等々発言がありました。
また、関係大臣から働き方改革や賃上げの環境整備に向けてしっかりと取り組んでいく旨の発言もありました。
続いて、3番目の議事ですが、民間議員から、2030年の経済構造を展望した改革について、民間議員と有識者からなるタスクフォースで議論し、年内に諮問会議に報告するとの発言がありました。
ここで総理から発言がありましたので、総理の発言を要約して御紹介させていただきます。
企業の資金調達金利の低下など、金融政策が効果を発揮していることが確認された。日本銀行による金融緩和強化のための新しい枠組みの導入を歓迎したい。金融政策の意図と効果が市場関係者にしっかりと伝わっていくことを期待している。
経済界全体に賃上げの動きが広がり、デフレ脱却につながることを期待している。
タスクフォースでは、2030年の経済構造を展望した改革について、幅広い議論を深めてほしい、というような趣旨で御発言がありました。 私からは以上です。


2.質疑応答


<賃上げ主導の2%の物価上昇の実現>
(問)物価目標2%達成のために、賃上げということがここまで強調されたのは、レジームの転換と捉えてよろしいのでしょうか。
(答)民間議員の御発言については、私もそのように強く感じたところです。


<賃上げに向けた議論>
(問)これまで民間に対する賃上げ交渉というものを政労使交渉で行われてきたかと思うのですが、これからは働き方改革実現会議と両輪で行っていくという認識でよろしいのでしょうか。その場合は、改めて具体的に民間への働きかけをどのように行っていくか教えてください。
(答)働き方改革は、御存じのとおり、目標が最低賃金の話や同一労働同一賃金の話等9項目あります。こういうものの議論も始まったばかりです。
そして、これまでは産業競争力会議と未来投資に向けた官民対話の2つの会議がリードしてまいりましたが、御存じのとおり、未来投資会議に衣替えして、その中に色々な会合がありまして、まだこのアジェンダ設定についても委員の方々から色々な意見を頂いていまして、もう少し詰めてアジェンダ設定をしますが、そのような中にも働き方改革に関する話も入ってまいります。政府は一丸ですので、そういう中でしっかりと方向性を定めて求めていくことになるのだと思っております。


<経済統計の改善>
(問)「より正確な景気判断のための経済統計の改善に関する研究会」は、「骨太方針2016」に基づいて、正確な景気判断のために各種統計の改善を検討し、GDP統計等の精度を高めるという趣旨だと思います。統計の改善もまさにこれから研究会で検討するところだとは思いますが、その改善の結果として、GDPの数値が実態は変わらずとも拡大するということもあり得ると思いますが、その結果、政府のGDP600兆円の目標や財政健全化の目安が達成しやすくなる可能性もあるかと思います。これに関して大臣のお考えがあればお伺いしたいと思います。
(答)今日の諮問会議で、私の方から「より正確な景気判断のための経済統計の改善に関する研究会の開催について」という紙を配付しています、という報告をさせていただきました。この研究会は既に1回目が開催されていますが、御指摘のとおり「骨太方針2016」の中で指摘されたことに対して検討を続けて、年内に取りまとめを行い、諮問会議に報告をしていだくということになっています。どのような形になるかということは、会議が始まったばかりですので、私の方からどうこうということを発言するような材料を持ち合わせていません。


3.黒田内閣府参事官(総括担当)(政策統括官(経済財政運営担当)付)による追加説明


第15回経済財政諮問会議について、概要を申し上げます。
最初に、金融政策、物価等に関する集中審議を行いました。黒田議員から資料1、事務方から資料2、伊藤議員から資料3について説明・問題提起があり、その後、意見交換を行いました。
主な御意見等を紹介いたします。
まず、民間議員から、「今回の金融政策の枠組みの変更は、マイナス金利の負の側面を是正するものであり、金融緩和の強いコミットメントを示し、物価目標2%超への期待を強固なものにするものということで、経済界としても評価する。経済成長のためには金融政策だけでなく、政府の財政運営、成長戦略が重要である。企業としても資金調達環境が好転するということで、設備投資、R&D投資に積極的に取り組んでいきたい。」
また、別の民間議員から、「10月から130万円の壁が106万円に下がり、最低賃金の引上げも行われる。これに伴い就労調整が行われるのではないかとも指摘されている。また、賃上げが中小企業で価格転嫁されるかということも重要である。厚労大臣には就労調整やその支援金の活用状況、また、経産大臣には価格転嫁の実態についての調査をお願いしたい。」
これについて、すでに入室していた厚労大臣は、「しっかり見てまいりたい。」、また、経産大臣からは、「中小企業の価格転嫁については下請企業にヒアリングをしてきている。業界団体にもお願いしており、既に自主行動計画を定めた業界も出てきている。」という発言がございました。
次に、塩崎厚労大臣と加藤一億総活躍担当大臣・働き方改革担当大臣に御参加いただき、働き方改革とマクロ経済についての議論を行いました。事務方から資料4、新浪議員から資料5について説明、問題提起があり、その後、意見交換を行いました。
厚労大臣から、「働き方改革では、一人ひとりの能力のフェアな評価が必須であり、そのための政策が賃金上昇につながっていく。女性、高齢者の労働参加に努力したい。特に、女性に関して働き方に中立な税制が大切。また、家事負担の軽減のため、その家事費が必要経費ではないという考えを見直す必要がある。雇用保険特会による助成についても、地銀等から人材を受けて、全面的な見直しを進めている。」
経産大臣から、「賃上げの環境整備については「4巡目」の働きかけに加えて、中小企業対応についても努力していきたい。働き方改革は人的投資の拡大など、働き手と企業がともに納得できる改革が重要だ。経産省として企業の状況を把握して、働き方改革に取り組みたい。」
財務大臣から、「企業は収益が上がっているので、そのデフレ意識を変えて継続的な賃上げに取り組んでいただきたい。」
日銀総裁から、「賃金決定のメカニズムが、我が国はその前年の物価がベースになる「バックワード・ルッキング」になっている。物価が毎年上がっていくという認識を持って、企業も組合も交渉していただくことが大切だ。」
民間議員から、「自社は来年も3%の賃上げを目指していく」という発言がございました。
別の民間議員から、「内部留保は運転資金の1.6か月分であり、必ずしも過大ではないということを御理解いただきたい。賃金について、引上げのモメンタムを続けていく。しかしながら、個人消費や物価は上向いておらず、社会保険料負担の抑制などが必要だ。春季労使交渉に向けて指針づくりを進めていきたい。」
最後に、2030年の経済構造を展望した改革についての議論を行いました。
高橋議員から資料6について説明がありました。
議論の最後に、石原大臣から、経済統計の改善に関する研究会についての紹介をいたしております。
最後、総理から発言がございましたので、ポイントを御紹介いたします。
「金融政策、物価等に関する審議において、今年に入ってからも、
・企業の資金調達金利が低下していること
・社債の発行残高が増加していること
・金融機関の融資態度が緩やかになっていること
など、金融政策が効果を発揮しているということが確認されました。
日本銀行は「総括的な検証」を行った上で、金融緩和を強化するための新しい枠組みの導入を決定したところです。これは2%の物価安定目標をできるだけ早期に実現するためのものであると理解しており、歓迎したいと思います。金融政策の意図と効果が市場関係者にしっかりと伝わっていくことを期待します。
働き方改革とマクロ経済についての議論の中で、新浪議員から、来春の春季労使交渉に向けて、自社について率先して3%を目指して賃上げに取り組む旨の発言がありました。
経済界全体に賃上げの動きが広がり、デフレ脱却につながることを期待しています。
また、民間議員から、2030年の経済構造を展望した改革を議論するためのタスクフォースを設置する旨の報告がありました。幅広い議論を深めていただきたいと思います。」

(以上)