第9回記者会見要旨:平成28年 会議結果
石原内閣府特命担当大臣記者会見要旨
- 日時:平成28年5月18日(水曜日)18時48分~19時19分
- 場所:中央合同庁舎第8号館1階S101・S103会見室
1.発言要旨
第9回経済財政諮問会議の概要を私から説明させていただきます。
今日、骨太方針の素案について議論をしました。
まず、事務方が骨太方針の素案を説明しまして、その後、高橋議員から、資料2で、当面の経済財政運営について、個人消費や海外経済などの動向に細心の注意を払い、必要に応じて機動的な政策対応を行うべき、平成29年度予算編成に当たり、人口減少、少子高齢化という構造的課題に対処するため、アベノミクスの成果を活用しつつ、重要課題に取り組むべき、等々の提言がありました。
続きまして、高市総務大臣から、地方の財政健全化と国の債務縮減との関係について発言がありました。
その後、子育て支援等に対するアベノミクスの成果の活用について、労働分配率を意識すべきこと、個人消費の喚起について、税と社会保障の一体改革の在り方について、検診率向上の必要性について、経済統計の改善の在り方についてなどの議論がありました。
その後、消費税についても意見が出されましたので、紹介させていただきます。
民間議員から、子育て世帯支援のためにも、消費税率引上げは必要と考える、3党合意の枠組み自体も見直しがあってもよいのではないか、という意見が出されました。
また、別の民間議員から、消費は2014年度、2015年度とマイナスである、マインドも縮んでいる、こうした中で消費税率引上げはデフレ脱却を困難にする、消費の構造問題は現役世代の負担感にある、どちらにしても、未来志向のアベノミクス版税・社会保障制度一体改革の在り方を見直すべきである、というような意見がありました。
続きまして、総理から発言がありましたので、要約を紹介させていただきます。
「成長と分配の好循環」により、実質2%程度、名目3%程度を上回る経済成長を実現し、戦後最大のGDP600兆円を目指す。これが、安倍内閣が掲げる新たな経済社会システムの基本方針である。そのため、あらゆる政策を総動員していく。この「骨太方針」は、その羅針盤となるものである。
同時に、「経済再生なくして財政健全化なし」との基本方針を堅持し、2020年度の財政健全化目標の達成も目指すことも示した。
1-3月期のGDP速報はプラスとなったが、経済動向に細心の注意を払い、必要に応じ機動的な政策対応を行うことにより、デフレからの完全な脱却を目指す。
私に対しまして、先進事例の横展開や「見える化」についての改革の進捗状況を諮問会議に報告するよう指示がありました。また、これまでの議論を踏まえて与党とも議論を進め、「骨太方針」を取りまとめるよう指示がありました。
私からは、今後の与党の審議等を踏まえ調整した上で、諮問・答申を行いたい。関係大臣においては、引き続き、御協力をお願いしたいと話をさせていただきました。
私からの説明は以上です。
2.質疑応答
<基礎的財政収支黒字化の中間目標>
(問)素案の中で、2020年度の基礎的財政収支黒字化に向けた2018年度の中間目標が記載されていないのですが、中間目標は取下げたのでしょうか。また、明記されなかった経緯を教えてください。
(事務方)中間目標については、昨年の「骨太方針」に記載されていますので、改めてここで再確認をする必要性はないということです。現状、上書きをするとか、同じことを何度も書くということは、基本的にしていません。
(答)補足しますと、今年度は中間年度です。昨年、やるということを示して、それに変わりはないということです。
<消費税率引上げ>
(問)消費税率引上げについて、総理が前回延期を決断された際に、国民生活、国民経済にとって重い決断をする以上は国民に信を問うべきと考えたということで衆議院を解散されたわけですが、今回、総理が仮に増税延期を判断するとすれば、同じような理屈で国民生活に重い決断をするということで、国民に信を問うという理屈になるのかとも考えるのですが、大臣は、今回消費増税を安倍総理が判断する際に、前回同様に国民の信を問うべきだとお考えでしょうか。その国民の信を問う際には、政権選択の総選挙によって行うべきか、それとも参院選においても国民の信が問えるというようにお考えかどうかお伺いしたいと思います。
(答)なぜ消費税率を10%へ引上げるかというと、世界に冠たる社会保障制度を持続可能なものとして次世代に引き渡す責任があるからこそ実施をするわけです。また、海外の皆様からの信任を確保するためにやらなければならないと考えているということも従前から申しております。総理も変わらないお気持ちだと思いますし、リーマンショックや大震災のような重大な事態が発生しない限り実施すると、今日も党首討論で述べられていました。経済の好循環を力強く回していくことにより、そのための経済環境を作るのが経済財政政策担当相の仕事であると私は認識しています。また、解散につきましては、予算委員会で、解散の「か」の字も考えていないと総理が申しておりますので、質問にはお答えすることはできないのではないかと思います。
<民進党からの提言>
(問)今日、党首討論で岡田代表がした提案について2つお聞きしたいのですが、1つは、消費税率を上げられないような経済運営がされて、経済環境になってしまったということについて、そうだとすると、それは前回の解散時の約束を守れなかったということであり、これは内閣総辞職すべきではないか、と岡田代表は言っていますが、この点についてどう考えていますでしょうか。それから、民進党は、元は民主党で3党合意を主導してきた立場にいますが、今回、消費増税を延期するべきだと、そういう経済環境になっていないということを岡田代表は言いました。その中で4つ提案があって、お聞きになったと思いますが、そのうち赤字国債発行による社会保障政策の充実というような提案も入っているのですが、このような4つの提案が検討に値する案であるかということについて、大臣の見解があれば教えてください。
(答)率直な印象から申しますと、3党合意当の時に副総理として担当していらっしゃった岡田代表が、赤字国債で手当をして消費増税を見送れと言われたので、びっくりいたしました。そういうことをやってしまいますと、全て赤字国債で賄え、と思われかねない。また、一度それに手を付けてしまいますと、戻ることはできないと思っています。正直言って驚きましたし、意外な提案であったと思いました。
(問)大臣は、提案としては検討に値しない、とお考えですか。
(答)先ほども申しましたとおり、物を作って後世代に伝えるものならいいのですが、ただ経費としてなくなっていくものを手当てするのはサステナブルではないわけですので、一度そのやり方をしてしまいますと、財政規律は崩れてしまうのではないかと、そのように考えています。
<今年度の骨太方針>
(問)今回の骨太方針は、消費増税を前提にしたものと考えてよろしいでしょうか。
(答)そのとおりです。
(問)一部報道で、増税を前提とした経済財政運営を描いてきたが、先送り方針を受けて軌道修正した形だという指摘もありますが、その点に関してはどうお考えでしょうか。
(答)どこを指してそのように言われているのか分かりませんので、コメントできませんが、例えば資料1の6ページ、「第2章 成長と分配の好循環の実現」の部分の文言は変わらず「来年4月の消費税率引上げを控え、予算や税制などを通じた消費喚起策や可処分所得の増加策等により環境を整備する。」という内容になっています。何をもってそのように判断されているのか、私には理解することが難しいと思っています。
(問)一部報道では、民間議員が、これまで訴えていた増税の反動減対策は取りやめてデフレ脱却に向けた万全の対策をすべきだと提言するという指摘もあるのですが、それに関してはどうお考えでしょうか。
(答)民間議員からの提言のどこにそのようなことが書いてあるのか是非教えていただきたい。そう読めるようなところがありますか。
(事務方)資料2の1ページは、当然、消費増税を前提にしておりますので、その場合、耐久消費財には影響があるという前提で議論をこれまでもしています。「1.」の第2段落目の3行目のところ、住宅・自動車等の耐久財などの動向という形で、当然そういったことも念頭に置きながら当面の経済運営はすべきだということを言っています。
3.前川内閣府政策統括官(経済財政運営担当)による追加説明
それでは、第9回の諮問会議について、補足の説明を申し上げます。
本日は塩崎厚生労働大臣、加藤一億総活躍担当大臣に臨時議員として議論に参加いただき、骨太方針素案について議論を行いました。
事務方から資料1について、高橋議員から資料2について、説明がありました。なお、高橋議員の資料2の説明の際に、科学技術の研究開発投資に関しまして、総合科学技術会議と経済財政諮問会議の連携が必要という補足の提言がありました。
その後の意見の主なものを御紹介いたします。
まず、厚労大臣から、「社会保障改革と一億総活躍社会の実現に取り組んでいきたい。子育てや保育士、介護士の処遇改善などにアベノミクスの成果を有効活用すべきと考える。」
財務大臣から、「財政健全化と経済再生の両立や、アベノミクスの成果の活用と2020年度のPB黒字化目標との整合性について、素案に記載された。労働分配率について、安倍内閣では最高で2012年の第3四半期に約75%あったものが、67%まで下がっている。労働分配率に留意することが必要だ。」
加藤大臣から、「本日、「ニッポン一億総活躍プラン」の国民会議案をまとめた。アベノミクスの成果を活用しつつ、安定財源を確保して継続的に取り組んでいきたい。麻生大臣の労働分配率に関する御指摘は、非正規社員の処遇改善のため、正規を落とすのではないかといった議論もあるので、大切な指摘だ。」
民間議員から、「本日のQEで消費が改善したのは良いサインだが、これをトレンドにしていく必要がある。消費テコ入れ策が重要だ。経済界も積極的に取り組みたい。
子育て世帯支援のためにも消費税率引上げは必要と考える。3党合意の枠組みの見直しもあってもいいのではないか。」
別の民間議員から、「子育て支援は、消費・投資喚起のためにも非常に重要だ。予算を子育て支援に振り向けていくべき。健康増進も重要。特に検診の受診率向上に注力すべき。また、働き方改革として、有休未消化を負債として計上する等の検討を進めてもらいたい。」
別の民間議員から、「消費は景気に後からついてくるもの。景気の牽引には投資の増加が重要であり、スピード感を持って取り組むべき。PPP/PFI、対日直接投資、オリパラなどを柱とすべき。経済統計について、プロは役所ではなく世の中にいる。専門家に使ってもらうことでシステムを変えるよう見直す。」
別の民間議員から、大臣が紹介したところですけれども、「消費は2014年、2015年度とマイナス。マインドも縮んでいる。こうした中、消費税引上げはデフレ脱却を困難にする。消費の構造問題は現役世代の負担感にある。どちらにしろ、未来志向のアベノミクス版税・社会保障制度の一体改革の在り方を見直すべき。働き方改革には、男性の改革も加えてほしい。有給休暇の取得促進、テレワーク等もきちんと扱ってほしい。行政手続の簡素化については、対日直接投資促進だけではなく、全てを対象に幅広い分野で取り組むべき。コントロールする部署も明確化すべき。」
厚労大臣から、「検診率についての民間議員の御指摘は、我々も全く同じ方向を向いている。女性特有のがんについての検診率についても、検討してまいりたい。」
ここで総理からの発言のポイントを御紹介いたします。
「本日は「骨太方針」の素案について、議論をいただいた。「成長と分配の好循環」により潜在成長率を押し上げる。
これにより、実質2%程度、名目3%程度を上回る経済成長を実現し、戦後最大のGDP600兆円を目指す。これが、安倍内閣が掲げる新たな経済社会システムの基本方針。そのため、あらゆる政策を総動員していく。この「骨太方針」はその羅針盤となるものである。
同時に、「経済再生なくして財政健全化なし」との基本方針を堅持し、2020年度の財政健全化目標の達成も目指していく。
このため、「経済・財政再生計画」における改革メニューを着実に実行していく。更に、歳出改革に当たり、自治体などの現場の創意工夫を引き出すことが大切である。
石原大臣には、先進事例の横展開や「見える化」についての改革の進捗状況を、この諮問会議に報告いただきたい。
本日、1-3月期のGDP速報が発表された。2期ぶりにプラス成長となり、年度を通じてもプラス成長となったが、万が一にもデフレに後戻りするようなことがあってはならない。経済動向に細心の注意を払い、必要に応じ機動的な政策対応を行うことにより、デフレからの完全な脱却を目指す。
石原大臣には、これまでの議論を踏まえて、与党とも議論を進め、骨太方針として取りまとめるよう御尽力いただきたい。」
最後に、本日の素案では空欄になっている第4章の具体的な文案は資料2の民間議員からの提言と本日の議論を踏まえて作成する、ということで御了承を石原大臣がとられました。その上で、石原大臣から「今後の与党での御議論等を踏まえ調整した上で、諮問・答申を行いたい。関係大臣におかれては引き続き、御協力をよろしくお願いしたい」との御発言がありました。
私からは以上です。
(問)資料1の29ページの「経済・財政一体改革の推進」1ポツに、追加的な歳出増加要因(子ども子育て・家族支援等)については適切な財源を確保する、その後ろに、一定期間内の追加的歳出増加要因は、ということで書き分けられているように思うのですが、この一定期間内の追加的歳出増要因というのは、どういうものが念頭にあるのでしょうか。
(答)前段の例えば「子ども・子育て」は、恒久的なものがほとんどですから、一時的ではないわけです。そうではない一定期間内の追加的な歳出増加要因というのは、色々なものがあると思いますが、例えば震災に対する対応はその例だと思っております。
(問)「骨太方針」を今月末までに策定することを目指すように総理が前回会議で明言されました。例年は6月末を目途に策定されているかと思うのですが、今回5月末を目指すというところの背景として、参院選やサミットがあるという理解でよろしいでしょうか。
(答)総理の指示の理由は私も分かりませんが、国会日程やサミットが例年に比べても早いですね。そういうことは類推としてはあるのではないかと思っております。
(問)その後、通常の手続でいくと、概算要求基準の提示があって、概算要求の締切りが8月末ということがあるかと思うのですが、その辺りの日程は、例年どおりでしょうか。
(答)それは財務省の所管になりますので、私はお答えする立場にありません。
(問)追加的な歳出増加要因については安定財源を確保するということが書かれた一方で、昨年定めた「経済・財政再生計画」の中に、特に今回明記されている「子ども・子育て」や「家族支援」は社会保障の分野だと思うのですが、3年間で1.5兆円という社会保障の伸びの目安のようなものが去年定められたかと思います。この追加の歳出増加要因は、この目安の中で考えていくということなのか、それとも昨年定めた目安とは別枠で考えるという意味なのか、考え方を教えていただけますか。
(答)このなお書きのところは、昨年の「骨太方針」にもあります。昨年の「骨太方針」の30ページに社会保障に関する記載がありまして、本文では、今おっしゃったように、目安のことが書いてあって、その注釈として、安定的な財源を確保して実施する追加的な歳出増加要因(子ども子育て・家族支援等)については別途考慮する、と書いてありますので、別途考慮するということです。
(問)別ものだという理解でよろしいですか。
(答)昨年からそのように表現しています。
(問)民間議員から消費増税に関する意見が出まして、会議の最後に、今日の議論を踏まえた上で、骨太の案を取りまとめるということでしたが、消費増税をめぐる議論についても反映させていくのでしょうか。
(答)諮問会議の今日の議論のどこを除外してとか、あるいはどこを特に取り上げるという御指示はありませんので、出た意見は全て、ということになると思います。
(問)消費増税に対する民間議員の意見について、特に麻生大臣あるいは他の閣僚から反応はなかったのですか。
(答)ありませんでした。
(以上)