第19回記者会見要旨:平成27年 会議結果

甘利内閣府特命担当大臣記者会見要旨

  • 日時:平成27年11月24日(火曜日)19時11分~19時38分
  • 場所:中央合同庁舎第8号館1階S101・103会見室

1.発言要旨

第19回経済財政諮問会議につきまして、概要を申し上げます。
本日は、林経済産業大臣は海外出張のため欠席、鈴木経済産業副大臣が参加されました。
最初の議事は「平成28年度予算編成の基本方針案について」であります。内閣府事務方から資料1、麻生大臣から資料2について、説明がありまして、その後、意見交換を行いました。
まず、民間議員から、「地方財政について、28年度からの「経済・財政再生計画」の実行に当たり、国の取組の基調に合わせて、地方行政サービスの見える化などに取り組むべきである。地方税収の増もあり、リーマンショックに伴う特別対策は、平時モードに着実に戻していくべきである。」
同じく、民間議員から、「「見える化」によって、ワイズ・スペンディングができているかが見え、無駄も見えてくる。歳出改革には見える化が必要であり、各省にはしっかり見える化に協力をしてほしい。」
同じく、民間議員から、「健康・予防や公共サービスの優良事例の展開を進めている。各省にもしっかり取り組んでほしい。」
高市総務大臣から、「「見える化」については、地方自治体の決算を始め、しっかり取り組んでいる。特に、ハコモノやインフラの管理に関しては横比較ができるように取り組んでいく。地方財政の「特別枠」などについては、アベノミクスの実感を届けることも大切と考えており、「まち・ひと・しごと」の事業費など、効果のあるものはしっかり確保してまいりたい。」
2番目の議事として、前回の経済財政諮問会議の総理からの指示を踏まえまして、「一億総活躍国民会議」で取りまとめる「当面の緊急対応策」に反映させるための「希望を生み出す強い経済実現に向けた緊急対応策」について、加藤一億総活躍担当大臣を加えて議論をいたしました。
まずは、内閣府事務方から資料3について説明がありまして、その後、意見交換を行いました。
高市総務大臣から、「法人税改革はしっかり実行すべきだが、実効税率を引き下げる際には、課税ベースの拡大や、大企業の外形標準課税の拡大等を検討すべきである。地方創生に関連して、先駆的な取組が緊急対応策の案に例示されているが、既存のプロジェクトであっても効果の高いものについては継続できるようにお願いしたい。」
民間議員から、「労働供給の制約がボトルネックとなる恐れがある。いわゆる130万円の壁が制度改正により106万円まで引き下げられると、パート労働等がより一層収縮してしまいかねない。国民全体の総賃金収入を上昇させる必要がある。国民の間の不公平感等も踏まえつつ、壁をなだらかにするための対応を早期にお願いをしたい。農業に関し、農地集約を担う農地中間管理機構のメリットが見えない。インセンティブが生じるようにすべきである。また、企業等から農業への出資制限を緩和すべきだ。」
続いて、民間議員から、「130万円の壁を超え、第2号被保険者となると約19万円の手取り減となり、就労を自己抑制してしまう。可処分所得が減少し、結果的に社会的損失が発生する。また、106万円への引下げという制度改正について知らない人が多いのではないかという懸念もある。ぜひ、予算等で対応するよう塩崎大臣は検討していただきたい。配偶者手当の在り方については、官民が一緒になって大胆な手を打つべきである。」
同じく、民間議員から、「130万円の壁を106万円に引き下げる件については、国民が過剰反応を起こして労働供給が下がるということは避けるべきである。企業に対して中期的な投資を促すため、コーポレートガバナンス・コードやスチュワードシップ・コードなどを念頭に置きつつ、機関投資家を通じて企業行動の見える化に踏み込むべきである。」
麻生財務大臣から、「130万円の壁の課題に対し、公費を投入するというが、負担をどうするのか。103万円についてはなだらかにしたので、130万円の壁もなだらかにしてはどうかと申し上げた。労働者の負担、経営者の負担でやるというのもある。法人税改革については、税率を20%台に引き下げる道筋をつけるということだが、財源なき減税は認められない。外形標準課税の拡大等の検討は重要である。」
ここで、私から、「130万円の壁の件については、現実問題として消費にブレーキになってはならず、国民の間の公平感の問題、財源の問題、色々あるが、厚労省を中心に解を出していただくよう検討をお願いしている。」
菅官房長官から、「130万円の件は、現場の声を受け止めて対応すべきである。法人税改革については、28年度に20%台まで引き下げるよう、様々な方策を検討すべきである。地方によっては経済状況が良くなっているという、有効求人倍率などのデータもあるようなので、総務大臣はデータを示してほしい。」
次に、最低賃金について、塩崎厚生労働大臣、三村日本商工会議所会頭、大村全国中小企業団体中央会会長にもご参加いただき、審議いたしました。事務方より資料4について説明がありまして、意見交換を行いました。
塩崎厚労大臣から、「日本の最低賃金の水準は、他のG7諸国と比較すると低い状況である。最低賃金引上げのためには、中小企業やサービス業等における生産性革命を推進することが必要である。厚労省としても金融機関と連携するなど、積極的に取り組んでいく。」
榊原経団連会長から、「最低賃金の引上げに当たっては、中小零細企業への配慮が必要である。経団連としては、昨年の政労使会議の取りまとめに則り、価格転嫁や支援・協力に取り組むよう、引き続き会員企業へ呼びかけていく。
また、官民合同で立ち上げた「サービス業の生産性向上協議会」にも、引き続き協力していく。政府には中小零細企業のニーズを踏まえた上で、生産性向上に効果のある施策を速やかに実施するようお願いしたい。」
三村日商会頭から、「2年連続で約6割の中小企業が賃上げを実施している。現在の我が国経済にとって、将来の経済規模と、それにふさわしい最低賃金の目標を掲げ、実現に向けて官民で知恵を絞って取り組むことは非常に重要である。日本商工会議所の調査では、企業規模が小さくなるほど、労働生産性の向上に取り組めていない傾向にある。商工会議所としても、当然、生産性向上への支援等を行っていくが、政府としても取引価格適正化も含め、中小企業が求める生産性向上支援策をこれまで以上に強力に推進していただきたい。」
大村全国中小企業団体中央会会長から、「近年の最低賃金の大幅な引上げにより、地方の中小企業は対応に苦慮しており、中でも、小規模事業者からは、「経営の存続にも影響する」との声が上がってきている。賃上げや最低賃金引上げをしていくために、下請代金の引上げに向けた取引条件の更なる改善策や指導を行うこと、そして、収益の改善によって賃上げの原資の確保を図る付加価値化に向けた予算、税制の強化をお願いしたい。全国中央会としては、「ものづくり補助金」など国の支援措置の周知と活用に努め、最低賃金を含めた賃上げを精一杯、後押ししていく。」
鈴木経産副大臣から、「賃金・最低賃金を円滑に引き上げられる環境を整備するため、これまでの取組に加え、各業種ごとに生産性向上に取り組む中小企業・小規模事業者を支援する仕組みなどを早急に検討する。生産性向上に向けた設備投資等の促進や、賃金引上げ等に取り組む企業の支援も検討する。下請取引対策にも万全を期したい。」
菅官房長官から、「戦後最大の名目GDP600兆円を2020年頃に向けて実現していく中で、最低賃金についても、更に思い切った引上げが必要である。そのためには、中小企業にも配慮が必要だ。」
民間議員から、「名目GDP600兆円を目指すのにふさわしく、最低賃金は年率3%程度を目途としつつ引き上げ、全国平均で1,000円を目指していくべきだ。」
ここで総理から御発言がありました。「名目GDPを2020年頃に向けて600兆円に増加させていく中で、昨年12月の政労使合意に沿って賃金上昇等による継続的な好循環の確立を図るとともに、最低賃金についても、これにふさわしいものとしていかなければならない。そのためには、最低賃金を、年率3%程度を目途として、名目GDPの成長率にも配慮しつつ引き上げていくことが必要である。これにより、全国加重平均が1,000円となることを目指す。このような最低賃金の引上げに向けて、中小企業も小規模事業者も生産性向上等のための支援や、取引条件の改善等を図る。厚生労働大臣・経済産業大臣には、最低賃金の引上げに向けて、しっかりと対応していただきたい。産業界におかれては、中小企業の取引条件の改善について、一層の協力をいただきたい。」
塩崎厚労大臣から、「厚労省としても、経産省や金融庁と連携して、最低賃金の引上げや中小企業の生産性向上に取り組みたい。」
私からの取りまとめとして、最低賃金に関する部分については、この総理の御指示を追記し、また、賃上げに関する部分は、次回の官民対話の議論も踏まえて修正することといたしました。また、修文の詳細は私に一任いただき、「一億総活躍国民会議」に経済財政諮問会議として提示するということで御了承いただきました。
最後の議事として、塩崎厚労大臣、石井国土交通大臣に御参加をいただき、経済・財政一体改革の各論「社会保障、社会資本整備等」についての議論を行いました。
榊原議員から資料5、高橋議員から資料6、塩崎臨時議員から資料7、石井臨時議員から資料8について説明、問題提起があり、その後、意見交換を行いました。
民間議員から、「28年度診療報酬改定に向けて、26年度改定の成果について厚労大臣から説明いただいたが、too little too lateではないか。7対1病床も療養病床も僅かしか変化していない。もっと速く大きな成果を目指して今回の改定に臨むべきである。」
同じく民間議員から、「28年度改定はマイナス改定とすべき。患者負担の増加、保険料の増加、手取り収入の減少は経済にもマイナス。マイナス改定は不可欠だ。」
同じく民間議員から、「後期高齢者支援金の現行の加算率0.23%は小さ過ぎる。企業の健康支援にもっとインセンティブをつけるべきである。調剤報酬の評価の適正化、かかりつけ薬局の普及にも一層強力に取り組んでもらいたい。」
財務大臣から、「28年度の社会保障関係費の概算要求額は6,700億円増だが、高齢化要因による5,000億円増程度に抑えていかなくてはならない。」
厚労大臣から、「「7対1」については、深掘りが必要と認識をしている。「療養病床」も検討している。「マイナス改定」は物価や賃金、経営状況を踏まえ議論をしたい。「加算率0.23%」は小さ過ぎると認識。重症化予防のインセンティブとなるよう国民運動化に取り組みたい。「調剤薬局」は、国民が納得する形で見える化に取り組んでまいりたい。」
民間議員から、「建設産業の生産性向上について、コストの抑制を定量的に把握できるよう取り組んでほしい。」
ここで、総理から発言がありました。なお、最低賃金部分については、先ほど御紹介したので省きます。「28年度予算の編成に当たっては、骨太方針2015における改革項目全てについて、改革の具体的な方向性や実施時期を明確にしてほしい。社会保障分野においては、①診療報酬の改定等を通じた、関係者の行動の変化を促すインセンティブ改革の推進、②医療・介護分野での地域間格差等の徹底した見える化、③公的サービスの産業化、これらに徹底的に取り組んでほしい。社会資本整備については、長期的に経済活動・国民生活を向上させるストック効果や、集積効果等が最大限発揮されるよう重点化していく。併せて、コストの効率化を推進してほしい。こうした取組の見える化を進め、質の高い公共サービスが提供されているか、しっかりと検証してほしい。28年度の予算編成の基本方針は、「経済・財政再生計画」の初年度の予算編成にふさわしいものとなるよう、取りまとめていただきたい。」
最後に私から、「来年度の予算編成の基本方針については、本日の議論を反映した上で、明日以降、与党の御意見も伺った上で、次回の諮問会議において取りまとめ、諮問・答申を行うこととしたいと存じます。」
以上です。


2.質疑応答

<最低賃金の引上げについて>

(問)最低賃金の引上げのところで、これまで厚労省の審議会で決めてきたと思うのですが、今後具体的にどのようにそこに働きかけていくのか。大幅にどうやって増やすのか。
もう一つは、最低賃金の決め方がこれまでは労使と有識者で決めてきたものを政府が強く関与するということですが、そこの変化について、一部批判もあるかもしれないのですが、政府としてそこはどういう判断だったかを教えてください。

(答)最低賃金については、きちんと決めていくシステムがあります。そこに働きかけるということです。政府としての意思を、厚労省を通じて働きかけていくということであります。
それから、従来は三者で決めてきたわけでありますけれども、賃金の引上げや最低賃金の引上げが経済を下支えする消費に対して大きな影響を持っております。その原資は、中堅や大企業にはしっかりあるわけであります。ただ、零細・中小企業、なかんずく零細企業に原資がないということで、そこを下請代金の適正化、価格の転嫁の適正化等々、あるいは中小企業政策を通じてフォローして、これが達成できるようにしていく。そのことによって消費が拡大され、経済の好循環がしっかり動いていくという意味から、賃上げと最低賃金、下請代金の改善を非常に重要視しているわけであります。

(問)関連してですが、最低賃金について、総理は、年率3%程度を目途として名目GDPの成長率に配慮しつつ引き上げていくのが重要だというようにおっしゃったとのことですが、名目GDPの成長率に配慮しつつという文言は、名目GDPの成長率次第で、最低賃金の引上げ率も変わり得るということでしょうか。

(答)基本的に名目成長というのは、実体経済上の数字であります。安倍内閣は名目3%の成長を目標に掲げて取り組んでおります。賃金は名目成長にパラレルに向上していく。あるいはそれ以上に向上していくことが望ましいため、そこを目途として上げていくようにしたいということであり、その協力要請をしているわけです。名目成長が3%でぶれずに行けば、最低賃金や賃上げはそれを目安として行けばいいのですが、当然、色々な事象で名目成長は上下動します。名目成長の上下に従って、原資も変わってくるのでしょうから、最低賃金あるいは賃上げもそれを目安としてほしいという意味であります。

(問)仮に名目3%成長に届かない場合は、引上げ率が3%に行かない可能性もあるということでしょうか。

(答)3%できるところは行っていただきたいということですが、当然、名目が3%を切れば、大企業がいかなる場合でも可能だとしても、原資つまり給与の余力の小さい零細企業になればなるほど3%の賃上げは経営を苦しめることになりますので、その辺りはアローワンスを持って目標設定しているということだと思います。


<社会保障関係費の伸びについて>

(問)社会保障の分野で1点確認ですが、今の大臣の御説明ですと、麻生大臣は高齢化要因の伸びについて、5,000億円程度に抑えていかなければならないと発言されたということですが、財政制度等審議会の建議では、この部分は5,000億円弱となっていたと思うのですが、発言としては5,000億円程度ということでよろしいのでしょうか。

(答)財務大臣の発言は5,000億円弱だそうです。

(問)社会保障について伺いたいのですが、今回、診療報酬のマイナス改定を主張されている民間議員からも、財務省からも、5,000億円弱という結構厳しい目安が示されたと思うのですが、これに対して塩崎大臣から何かコメント等はありましたでしょうか。

(答)先ほど紹介したとおりです。御指摘は御指摘として真摯に受け止め、厚労省として「見える化」の中で、最大限の指摘に対する回答はされるのであろうと思います。


<最低賃金の全国平均1,000円への引上げについて>

(問)最低賃金の引上げですが、GDP600兆円を目指すための施策ということで、総理は1,000円を目標にしたいという発言をされておりますが、1,000円を目指すタイミングといいますか、何年程度で1,000円にしたいというようなお考えは、政府としてあるのでしょうか。

(答)明確に目標を政府として共有したことはありません。2020年代半ばぐらいになるでしょうか。

(問)2020年代半ばぐらいですか。

(答)私の予測です。

(問)GDPが600兆円になるタイミングまでには、1,000円になっていてほしいということでしょうか。

(答)GDP600兆円の方が手前の目標でしょうか。600兆円は2020年を超えた頃ですね。


(以上)