第18回記者会見要旨:平成27年 会議結果

甘利内閣府特命担当大臣記者会見要旨

  • 日時:平成27年11月11日(水曜日)18時37分~18時53分
  • 場所:中央合同庁舎第8号館1階S101・103会見室

1.発言要旨

第18回経済財政諮問会議と経済財政諮問会議・産業競争力会議課題別会合合同会議の概要を申し上げます。
最初の議事は、「予算編成の基本方針の骨子について」であります。
内閣府事務方から資料1について説明し、続いて麻生財務大臣より、「2020年度のPB黒字化目標に向けて、「経済・財政再生計画」の初年度である28年度予算において、歳出改革の取組を強化していく。法人税改革については、財源なき減税では手元資金が積み上がるだけではないか。」との発言がありました。
2番目の議事として、加藤一億総活躍担当大臣に御参加いただき、「希望を生み出す強い経済」に向けた議論を行いました。高橋議員から資料2について説明、問題提起があり、その後、意見交換を行いました。
主な意見を紹介いたします。
まず、民間議員から、「(1)法人税引下げはアベノミクスの象徴。28年度に20%台まで引き下げるよう努力してほしい。それが設備投資や賃上げに確実につながるよう、官民対話の場で求めてほしい。(2)賃上げは、GDP600兆円実現のためには3%台の伸びが必要である。(3)配偶者手当の改革は、政府が率先して取組を始めてほしい。」
続いて、高市総務大臣から、「法人税改革について、地方公共団体の意見は、法人実効税率を引き下げる際には、課税ベースの拡大等により財源をしっかりと確保することが必要である、ということ。」
続いて、林経済産業大臣から、「企業による設備投資や賃上げを後押しするよう、法人税改革においては大胆なメッセージを打ち出していくべきである。」
民間議員から、「デフレ脱却に向けて現在は正念場にある。生産と投資、賃上げのサイクルの確立が重要。有効求人倍率が上昇する中、省力化・省人化投資が必要である。名目GDP600兆円を目指す過程で、賃金が3%以上伸びないと労働分配率が低下することになる。世界のマーケットは、日本の法人実効税率に注目しており、20%台までの引下げのタイミングをいかに早くするか。大胆に動いてほしい。」
同じく民間議員から、「法人税率引下げについては、年末までに20%台への道筋を示していただきたい。企業の内部留保の増加について財務大臣から指摘いただいたが、手元のキャッシュが大宗なのではなく、M&Aによる株式保有などが入っていることは御理解いただきたい。」
民間議員から、「投資促進のためには、官民ファンドが積極的な役割を果たし、データヘルス、IoTなどへの投資を引き出していくことが重要である。雇用拡大のためには、103万、130万円の壁を早急に壊すことが重要である。また、雇用保険の保険料率の引下げも企業マインド改善のための検討課題ではないか。」
財務大臣から、「配偶者控除と社会保険料は2つ壁があるので、なだらかにするという方向性で検討するということではないか。」
最後に、合同会議として、「TPP政策大綱の柱立てについて」議論を行いました。
私から資料3、榊原議員から資料4、三村議員から資料5について説明、問題提起があり、その後、意見交換を行いました。
主な意見を紹介申し上げます。
まず、民間議員から、「攻めの農業のためには農地の集約化が重要である。農地中間管理機構の取組の見える化を図るべき。飼料用米について見直しがなされるが、マーケットに合った転作ができるような仕組みを作っていくべきである。」
同じく民間議員から、「国内外で日本企業が稼いでいくことになるので、GDPとともにGNIにも着目をしていくべきである。」
同じく民間議員から、「TPPや観光戦略、オリ・パラなどトレンドができてきているので、2020年に向け、どのような形で進めていくか、具体的に考えていくべきである。」
経産大臣から、「中堅・中小企業はTPP活用の主役であり、JETROや中小機構等とも連携して、総合的な支援方策を検討している。また、中小企業の先進事例の全国展開も進めていく。」
ここで総理から、「オランダのルッテ首相と会談したが、オランダもTPP合意に注目しており、農業分野でオランダの輸出は世界第2位と聞く。農業がイノベーションにより競争力を持っている。オランダは日本と提携したいと言っており、日本の農林中金とオランダの同様の組織が提携して新しい動きを進めている。農業は変わるし、それを後押ししていきたい。」
産業競争力会議の民間議員から、「農林水産業のハイテク産業化が重要である。農協法の改正はできたが、これ以外の制度についても総点検が必要である。産業競争力会議と規制改革会議が連携して取り組んでいきたい。」
同じく産業競争力会議の民間議員から、「資源・エネルギーについて、引き続きコストを下げる努力が必要である。」
最後に総理から発言がありました。「戦後最大のGDP600兆円を5年程度で実現するためには、実質2%、名目3%を上回る成長が必要である。特に、GDPの8割弱を占める消費や設備投資など、民間需要が持続的に成長しなければならない。そのためには、企業収益を設備投資や賃上げに結び付けていくことが不可欠である。政府として、法人税改革については、28年度の税率引下げ幅を確実に上乗せし、税率を早期に20%台に引き下げる道筋をつける。また、来年の賃上げや最低賃金の引上げについても、民間議員からの提案の実現に向けて環境整備を進めていく。
企業においては、そうした政府の取組と歩調を合わせ、設備投資や賃上げにつなげていただきたい。甘利大臣には、本日の議論を踏まえ、関係大臣等とも協力し、次回の諮問会議で当面の緊急対応策を取りまとめるよう御尽力いただきたい。
今月下旬までに取りまとめるTPPの政策大綱は、国民の懸念・不安を払拭するとともに、TPPの効果を真に我が国の経済再生、地方創生に直結させる総合的なものとする必要がある。甘利大臣には、本日の民間議員の提案も踏まえ、取りまとめを行っていただきたい。
「平成28年度予算編成の基本方針」については、本日提示された骨子に基づき、次回、原案を提示し、議論いただきたい。
以上です。

2.質疑応答

<法人税引下げの実施時期について>

(問)法人実効税率のところで、総理は平成28年度に法人税率を20%台に引き下げろと言っているわけではないですよね。

(答)そうです。そこははっきり断言しているわけではありません。民間議員からは平成28年度にもというお話があり、総理からはできるだけ前倒しでやっていくというお話です。総理からは、当初の減税幅に積み上げて、できるだけ早期にというところまでです。


<103万円の壁、130万円の壁について>

(問)麻生大臣が配偶者控除のところで意見をおっしゃっていたとのことですが、その趣旨を教えてください。

(答)年間所得が103万円を過ぎると、突然手取りが減るのではなくて、103万円から増えていく分が配偶者控除に少しずつ吸収されていくという意味で、103万円の壁をなだらかにしてあります。130万円の壁も同様にしては、という意味だと思います。

(問)配偶者控除は税調で議論するとのことですが、経済財政諮問会議でフォローアップするのでしょうか。

(答)パートタイマーが、103万円や130万円の壁でいきなり仕事を止めてしまうことでは、賃上げがGDPの拡大につながっていかない。つまり、パートタイマーの時給を上げても、その壁に突き当たるから早く止めてしまうということになりかねない。11月で止めるのを10月で止めてしまうとか。そうなると、正規社員で必死でカバーするしかないということになってしまうので、そこを何とかならないかという民間議員からの問題提起です。

(問)今年度の税調には軽減税率等、色々なテーマがありますが、この配偶者控除を、税調で今年取り上げてもらわないと困るという趣旨で、経済財政諮問会議で取り上げているのでしょうか。

(答)そうです。できるだけ早くということで、経済財政諮問会議で取り上げています。再来年4月から消費税率が上がります。その時に経済環境を良くしておかないと、相当消費への圧力になることを心配しています。来年も再来年も連続して設備投資が伸びていくのに合わせて、時給を引き上げることによって、労働時間がかえって減少してしまってはあまり意味がありません。
それから、パートタイマーの方々は消費意欲が非常に高く、収入がそのまま消費に直結する傾向、消費性向が高いことから、時給の上昇が、時間の短縮ではなく、手取りの拡大、消費の拡大につながっていくような税・社会保険料制度を、臨時的にもやってもらいたいというのが民間議員からの話でした。

(問)「平成28年度税制改正の大綱」に所得税改革を、盛り込むよう求めたということでよいですか。

(答)103万円の壁、130万円の壁に対して何らかの措置が施されるよう、民間議員は求めているということです。

(問)先ほどの麻生大臣の130万の壁の話は、年金保険料や健康保険料といった社会保険料のことではないかと思うのですが、これは税調でやるということなのか、厚労大臣にも検討してもらうということなのか、どういう取扱いになるのでしょうか。

(答)財務大臣がおっしゃったのがどういう対応かは分かりません。ただ、103万円の壁は、越えるといきなり手取りが減るという形ではなくて、所得の増加分が少しずつ配偶者控除の減少分と相殺されていく形にしてありますけれども、130万円の壁もこれと同じようになだらかにすることで、いきなり手取りが減り消費を抑えてしまうことがないようにするという話なのでしょうかね。


(以上)