第12回記者会見要旨:平成27年 会議結果

甘利内閣府特命担当大臣記者会見要旨

  • 日時:平成27年7月16日(木曜日)18時13分~18時38分
  • 場所:中央合同庁舎第8号館1階S101・103会見室

1.発言要旨

第12回になります経済財政諮問会議について概要を報告いたします。
本日は、新浪議員が欠席です。
本日の議題の一つ目は、本年第3回目になります金融政策、物価等に関する集中審議でありました。
黒田議員から資料1、内閣府事務方から資料2につきまして説明があり、その後、意見交換を行いました。
まず、麻生財務大臣から、「ギリシャの債務問題が決着したが、支援のためには、まだドイツ、ポーランド、エストニアなどの国々の国会承認が必要であり、関係者と連絡をとりつつ、注視していきたい。」
民間議員から、「賃金上昇は国民の生活実感向上のためにもデフレ脱却のためにも重要である。賃金とともに生産性を引き上げることが必要。また、実質金利が40年ぶりにマイナスとなっていることを活用し、金融資産を投資などに有効活用していくことが重要である。日銀の実質GDPの見通しでは、2017年度が0.2%成長となっているが、トレンドの成長率を高め、消費税増税の反動減があっても、もう少し高い成長を実現していく必要がある。」
同じく民間議員から、「最近は設備投資の潮目が変わってきた。企業が投資や生産性向上に前向きに取り組めるように、ビジネス環境の整備を進めてもらいたい。」
同じく民間議員から、「最低賃金の引上げを続けていくことが重要である。最低賃金を上げることで、賃金全体も上がっていく。また、来年の春闘に向けて、2%の物価目標にふさわしい賃上げ率のコンセンサスを形成していく必要がある。」
続いて私から、「最低賃金を引き上げることで給与全体も上がってくる。3年目も更に上げていきたい。物価が上昇して賃金が上がるのではなく、賃上げが物価上昇を牽引していくようにしたい。」
安倍総理から、「最低賃金を上げることによる経済効果、消費への影響、経営者側への影響などがわかると良い。政策的な観点を加味しながら、最低賃金の在り方を考える上で、どのように最低賃金が影響を及ぼすかを教えていただきたい。」
続いて、2番目の議事として、「予算の全体像」について議論を行いました。
麻生議員から資料3、高橋議員から資料4について説明、問題提起がありまして、その後、意見交換を行いました。
主な意見を紹介申し上げます。
まず、高市総務大臣から、「平成26年度地方税収入決算見込額は36兆円であるが、好調な本年3月期決算法人に係るものが、平成27年度税収にカウントされることなどから、今後更なる伸びが期待できる。また、3大都市圏も地方圏も、今回は同様の伸びを見せており、今後も総務省として地域経済の活性化に全力を傾けて参りたい。」
続いて民間議員から、「「骨太方針」の内容が、各省の予算担当者まで十分に浸透し、来年度予算からしっかりと反映されるよう、政府全体に号令をかけるような取組をお願いしたい。」
同じく民間議員から、「来年度予算から歳出を抑えていくことが「骨太方針」の実現の試金石になる。社会保障改革が特に重要である。これまでの基調が維持されるように、専門調査会で改革の具体化に取り組みたい。」
同じく民間議員から、「「骨太方針」では、包括的に踏み込んだ改革の方向性を打ち出していただいた。専門調査会で具体化して工程表に落とし込んでいく取組は非常に重要である。諮問会議がリーダーシップを発揮して、是非とも成果が上がることを期待したい。」
続いて、麻生財務大臣から、「「見える化」は大事。首長同士が経営コストの比較ができるような取組をしっかりと行うべきである。その際、「見える化」の内容をわかりやすく提示することが重要である。」
続いて、私から、「民間議員御提案の専門調査会による予算の構造改革をしっかり進めていくため、内閣府と財務省が中心となって、各府省にお願いをし、歳出改革、ワイズスペンディングの実現に向けて協力をいただきたいと考えている。」
次に、3番目の議事として、今後の経済財政諮問会議の取組について議論を行いました。
榊原議員から資料5について説明、問題提起がありまして、その後、意見交換を行いました。
高市総務大臣から、「総務省では、ワークライフバランスの観点から、地方在住のままテレワークを行うことを支援している。経済界でも、地方在住のままテレワークで働くという採用をお願いしたい。」
民間議員から、「デフレ脱却・経済再生は道半ばであり、次の4点が重要である。1、法人税改革などのビジネス環境の整備。2、いろいろな形態の格差を捉え、機会の不平等をなくすこと。3、結婚、子育てについて、「異次元の抜本的拡充」をすべき。4、「見える化」は行財政改革だけではなく経済再生にも役立つものである。」
同じく民間議員から、「今まで1年ごとに内閣が交代したが、安倍内閣ではじっくり取り組めるので、1年ではできないが、数年で成果が出ることができる。その上で、次の3点が重要である。1、TPPはこれからの日本の活力に必要なもの。2、法人税改革はできるだけ早く行っていただきたい。3、子育て、子供の貧困対策などを政策パッケージで国民に示すべきである。」
ここで総理から御発言がありました。ポイントは以下のとおりです。
「本日は、民間議員から「予算の全体像」についての御提案をいただいた。平成28年度予算は、「経済・財政再生計画」の初年度に当たる。そして現在は、四半世紀ぶりの良好な経済状況を達成しつつある。この状況を最大限生かしてデフレ脱却、経済再生と財政健全化の双方に資するよう予算編成を進めていきたい。また、経済財政諮問会議で今年の後半に取り組む課題について、民間議員より提示いただいた。最大の課題は、「骨太方針2015」を具体化することであり、経済・財政一体改革を断行してまいりたい。本日の議論も踏まえ、甘利大臣を中心として、関係大臣には、専門調査会を活用して歳出抑制につながる制度改革を強力に推進するなど、しっかり取り組んでもらいたい。」
最後に、私から以下のような発言をしました。
「「平成28年度予算の全体像」については、本日の議論を踏まえ、次回の諮問会議で取りまとめを行いたい。また、民間議員から、政府を挙げて歳出改革に取り組んでほしいとの提案があった。詳細は今後検討しますが、概算要求基準が閣議了解される際、私から全大臣に協力要請するとともに、内閣府と財務省の連携の下、全府省の次官に集まってもらい、周知・徹底するといったことを考えたいと思っている。民間議員から御提案いただいた、今年後半の諮問会議の取組については、本日の議論を踏まえ、私の方で取りまとめたい。」
以上です。

2.質疑応答

<改革努力する府省へのインセンティブ措置について>

(問)民間議員からの説明の中で、頑張る府省とそうでない府省のインセンティブ措置ということについての説明はあったのでしょうか。また、あったとして、他の議員からのいろいろな御質問や御意見というのはあったのでしょうか。

(答)改革努力をしている府省とそうでないところには、当然差がついてしかるべきであります。ただ、今後予算編成に組み込んでいく、今年だけではなく、今後3年分を含めて、集中改革期間に取り組んでいくものについて、これからKPIと、それからいろいろな設計について項目ごとに、専門調査会を中心に具体的設計をして、協力要請をしていきます。内閣府の副大臣あるいは財務省の副大臣、そしてそれ以外の省については、当初、官房長と考えておりましたが、官房長官からは、決意を各府省に徹底的に知らしめるために、次官に来てもらうということになりまして、各府省次官を集めて徹底をしていくことになりました。


<安保法制について>

(問)今日の本筋と離れますが、今日、安保法制の衆議院採決がありましたけれども、この点について、いろいろ野党から厳しい指摘が出ています。「かなり強引ではないか」とか「もうちょっと審議が要るのではないか」とかいろいろな意見があるのですけれども、大臣はどういうふうにお考えになっていらっしゃいますか。

(答)審議を尽くして、そして、最後はやはり国会というのは結論を出さなければならないところであります。最後は結論を出すということで採決が行われたわけであります。審議時間は110時間を超えました。審議の時間数が多いからそれだけで良いということではありません。ただ、特別委員会組織にして、毎日議論ができるはずでありますけれども、1週間のうち何日間という限定があったり、あるいは同じような質問が繰り返されるという事態とか、いろいろともう聞くことがなくなってしまったのではないかというような声が現場から聞こえてきたようであります。審議を尽くしたというふうに現場や国対で判断をされ、いよいよ結論を出すということに至ったのだと思います。
今日の本会議で公明党の議員が賛成討論をされていました。あの中身に尽きるのではないかと思っております。極めて光っていた討論内容だったと思っております。

(問)もう一つ、昨日総理は委員会の質疑の中で、国民の理解は必ずしも得られていない。しかし、かつての安保条約の時もそうでしたけれども、そうであっても正しいと思うことはやらなければならないのだと。それが岸総理だったということをおっしゃりたいと思うのですけれども、理解が得られていないということを総理自ら言っていながら、採決するということについてはやはりかなり疑問の声もあるのですけれども、その辺はどうお考えになっていますか。

(答)国民の理解、了解度がどれくらいであるか。極力多くの国民の皆さんが内容を理解していただくことが大事であることは、総理のおっしゃるとおりであります。しかし、残念ながら、今日の討論にあったような内容がメディアを通じた放送で有権者のもとに届いているかどうかということについては、なぜこの法案が必要なのかというところからまず届いていかなければならないのですけれども、枝葉の論から、これがあるから全部駄目という議論がかなり届けられていました。メディアの皆さんにはなぜこの全体像を考えることが必要であるのか、まず、骨格部分からぜひ国民の皆さんにお届けいただきたかったと思います。こういうリスクがあるから全部駄目ということではなくて、全体が必要でこのリスクを小さくするためにこういう対応が必要だという、そういう議論になってほしかったと思っております。
日本と密接な関係にある国が、日本に関わる安全保障業務をしていて、それが他国との衝突に至った。それを放置すれば日本の存立に関わる、あるいは日本国民の存立に関わる。そういう場合、放っておいて良いか、悪いかということであれば、国民に放っておいて良いと言う方はおられないと思います。何千人も犠牲が出てから立ち上がれば良いということではないと思います。未然に防ぐ際に、武力行使しか手段がない。外交的手段で解決できない。他の手段でもできない。それしか方法がない、しかもその武力行使は最小限の範囲に止める。つまり、これを機会に他国に侵略していくということなんか絶対できません、攻撃を排除するだけですという段取りで、国民に問うていけば、全体としてはそういう必要性は理解するということになると思います。
その際に、こういう問題が出る、ああいう問題が出る、それをどう極小化していきますかという議論が本質論になるはずでありますけれども、先にこういうリスクがある、こういう可能性がある、だから全部駄目という議論になってしまっては、国際情勢の変化に対応して国家がとるべき国民の安全を守るという措置はとれなくなってしまうと思っております。
かつて日米安保、あるいは自衛隊の議論もいろいろありました。しかし、今になってみれば、自衛隊の存在、それから日米安保の存在が今日の日本を導いたということは大多数の国民の皆さんは異論がないと思います。
政治家は、国民から負託された以上、我々を信頼してほしいと。今の理解は100パーセントではないにしても、必ず振り返ってみて、託してよかったと言えるようになっていただけると思うと。そのために全力を尽くして取り組んでいくということであろうと思います。
政治というのは、アンケートをとって、その結果が多いものだけをやっていくというアンケート政治ではありませんから、託された政治家が先見性を発揮して、必ず理解してもらえるということを確信をもってやっていくということも当然あろうかと思います。
今回の安全保障法制は、政府としてはあるいは与党としては、必ず時が経ってみて理解いただけるということを信じて、取り組んでいっていることであろうと思います。


<新国立競技場の見直しについて>

(問)これも少し違う話題ですけれども、全く所管ではなくて恐縮ですが、新国立競技場の見直しが政府内で検討されているということですけれども、それに関連して今日はデザイン案を選ぶ際の委員長だった安藤氏も会見しまして、頼まれたのはデザインの選定までだとか、私もこんなになると思っていなかったという記者会見もあったのですが、こういった日本の世界に対して非常に格好のつかないような状態になっていると思うのですが、大臣の御所感をお聞かせください。

(答)これは、所管外でありますから、一政治家として話をさせていただきますと、世界が認めるデザイナーの安藤さんが中心になって選ばれたデザインであります。世界に向けて誇れるデザインだから選ばれたのだと思います。
私は、どこにでもあるようなものをつくるよりは、ここにしかないものをつくった方が良いと思います。ただ問題はそのランニングコストがきちんと回収できるかという、今後の運営上の設計をしっかりすることが必要だと思います。
ランニングコストというのは毎年かかりますから、むしろ有効に活用して、黒字が出るようなプランをつくっていくことが一番大事だと思っています。その黒字が稼げるような施設はどこにでもあるような施設ではなくて、ここにしかないという魅力を持っているものの方が良いのだろうなと思います。
どうして当初の金額からこうなったかというのは、私は専門家ではないのでわかりません。ただ、冒頭申し上げましたように、いずれにしても1,000億円を超えるとしたら、外観もデザインも含めて、どこにでもあって何の魅力もないようなものよりは、ここにしかないというものを世界に向けてつくっていくということが大事ではないかと。そのために世界的なデザイナーの安藤さんに依頼したのではないかと思いますけれども。


<歳出改革について>

(問)来年度の予算に向けてというところで、歳出改革について、民間議員の方は義務的経費もということで以前求めていたと思うのですけれども、今日はその辺の議論は出たのでしょうか。

(答)もともとの設計は、裁量的部分を削って、あとはお咎めなしというのではなく、また、そうではない部分の1人当たりの人件費を圧縮して賃下げするわけでもありません。制度改革、構造改革、これは聖域がないと思います。
従来はタブーであった部分も、先入観なく構造改革の対象にしていくという意味で、全部に投網をかけています。それは先ほど申し上げました諮問会議の下の専門調査会を中心に各府省に対して厳しい問いかけをしていきます。
現状ではまだやるべきことがわかっていない府省があるという報告を受けています。具体的に何をやるべきかよくわかるように、見える化をして、各府省にそれに向けての取組を促していきたいというふうに思っております。

(以上)