第11回記者会見要旨:平成27年 会議結果

甘利内閣府特命担当大臣記者会見要旨

  • 日時:平成27年6月30日(火曜日)18時09分~18時33分
  • 場所:中央合同庁舎第8号館1階S101・103会見室

1.発言要旨

第11回経済財政諮問会議、第23回産業競争力会議を合同で行いました。
「経済財政運営と改革の基本方針2015」を答申として決定するとともに、「日本再興戦略」の改訂について取りまとめを行いました。
その後、臨時閣議が開催されまして、「基本方針2015」、いわゆる「骨太方針」、及び「再興戦略改訂2015」を決定いたしました。
臨時閣議におきまして、総理と私からは、お手元の資料のとおりの発言がございました。
次に、臨時閣議前に行われました経済財政諮問会議と産業競争力会議の合同会議の概要について申し上げます。
まず、骨太方針についての主な御意見等を御紹介申し上げます。
民間議員から、「「経済再生なくして財政健全化なし」という基本哲学が盛り込まれたことを評価する。次の2点は、重要である。
1.安倍内閣の3年間の歳出改革の取組を続けるとともに、経済物価動向を踏まえることで、アローワンスをもったこと。
2.公的サービスの産業化とインセンティブ改革で歳出改革に取り組んでいくこと。
また、諮問会議で議論した、歳出改革のメニューがほとんど盛り込まれているのも、初めてのことではないか。今後、この計画を実行していくことが重要である。専門調査会で、KPI、工程表をつくり、PDCAをまわしていきたい。来年度予算編成に向けて、概算要求基準についても議論していきたい。インセンティブ改革等を、全府省で取り組んでいただくとともに、義務的経費も含めて、全ての分野で歳出改革に取り組んでいただきたい。」
同じく、民間議員から、「歳出改革によって、健康年齢が上がるなど、国民の生活の質の向上につながっていくことが本計画のポイントである。情報の「見える化」等によって、広く国民に理解を得ながら、推進をしていくことが重要である。また、計画推進のため、専門調査会でのKPI、改革工程の具体化にしっかりと取り組んでいきたい。」
麻生財務大臣から、「政府・与党が一体となって、実効的かつ具体的な経済・財政再生計画が策定でき、マーケットの信任を得られる内容を示すことができた。財政リスクを考慮し、経済が好調なときほど、着実に改革を行うことが重要である。今後、この計画に基づき、経済再生と両立を図りつつ、予算編成作業などを通じて、着実に財政健全化の取組を進めていきたい。」
続いて、成長戦略の改訂についての主な御意見を御紹介いたします。
民間議員から、「規制改革会議と産業競争力会議の密接な連携により、相応の成果が出ている。今回盛込まれた施策についても、実現に向け、連携して取り組みたい。」
同じく、民間議員から、「成長戦略は「分かりにくい」という批判があるが、今回は2つの点で進展があった。改革2020は、締切効果を持ち、ショーケース化し、レガシーとして残すプロジェクトをまとめた。国家戦略特区も成果が出ている。今後、規制改革会議との連携も更に進めたい。」
同じく、民間議員から、「今回、特に大学改革、ベンチャー創出環境整備、ICTを核とする新産業創生に向けた取組が入ったことが大きい。イノベーション・ナショナルシステムの全体像が出そろい、世界で最もイノベーションに適した国にする準備ができた。産学官の対話を重ね、大学のネットワークを戦略的に活用したい。」
ここで、総理からの発言であります。ポイントを御紹介申し上げます。
「本日、こうして「骨太方針2015」と、「成長戦略改訂案」をおまとめいただき、心から感謝申し上げたい。
経済再生なくして財政健全化なし。我が国経済は、マクロ面・ミクロ面ともにおよそ四半世紀ぶりの良好な状況に達しつつある。この好機を逃すことなく、「経済・財政一体改革」を不退転の決意で断行していく。
今後、甘利大臣には、関係大臣とも協力をして、骨太方針の具体化に取り組んでいただきたい。
安倍内閣の成長戦略は、第2のステージに入る。新たなる課題、供給制約を克服するため、未来への投資を行い、イノベーションを引き起こし、生産性革命を実現する。
また、サイバーセキュリティーを抜本的に強化したうえで、ITをあらゆる経済社会システムに組込むことによって、産業を変革する。
さらに、大学改革、働き方改革によって、未来を切開くための人材を生み出す。
加えて、岩盤規制改革を成就させることにより、我が国の構造改革を進めることで、国内外からの投資を拡大していく。
議員各位には、多くの時間と労力を傾けていただいたことに改めて感謝を申し上げるとともに、アベノミクスを強化、深化させていくために、引き続き御協力をいただきたい。」
以上です。

2.質疑応答

<歳出削減目標、社会保障分野の歳出削減について>

(問)骨太について、2点お伺いしたいのですが、1点目、骨太2006との比較ですけれども、今回、目安としてPBの対GDP比赤字1%、それから、社会保障で1.5兆円程度に削減という目標、目安が定まりましたが、骨太2006に比べて厳しいのか、それとも厳しくないのか、もしお考えがあればお聞かせいただきたいというのが1点。
もう1点、社会保障の部分に、「予断なく検討」というような文言が盛込まれておりますけれども、社会保障のメニューを実行していくためには、どういうことが今後必要になってくるのか。実際に、実行に移せるのかどうか、お考えをお聞かせいただければと思います。

(答)骨太方針2006は、果敢に取り組みましたけれども、キャップをかけて、とにかく無理無理でもやるということでありました。ということは、単価や、単位人件費へのプレッシャーになってくるわけでありまして、言ってみれば、どこまで我慢が続くかということで、我慢がし切れなかったときに、それが暴発して元の木阿弥になるという危険性がありました。今回は、目安、目標はしっかり掲げます。ただ、それを構成する変数、要素は、連立方程式になりますから、そこでの柔軟性として、経済成長と歳出改革の連携を変数と捉えて、達成をしやすくする。
加えて、構造改革を組み込んでいくということであります。かつての歳出改革は、本来歳出のキャップを決めることによって、そこに構造改革が起きることを期待したわけであります。
しかし、実際には単位当たりコスト、単価を強引に押し込めていくということで、期待した改革が行われませんでした。構造改革の具体的なメニューを示しております。インセンティブ改革、産業化など、従来は社会保障、あるいは公的サービスというのは、最初から決められている金額ということでしたけれども、そこの産業化をするという大胆な提案であります。本来、産業としてなじまないところを産業化していって、新たなエンジンにそこを加えているということが極めて斬新な取組だと思います。
あわせて、ベストプラクティスの横展開の実施体制を組んでいくということであります。諮問会議の下に、このKPI、PDCAを回す体制をつくっていきます。これは財務省と内閣府が連携して実行体制、チェック体制をつくっていくということになろうかと思います。それで、改革提案をして、具体的な実施体制に基づきKPIを設け、PDCAを回していくことによって期待された改革が進み、構造改革の結果として財政再建がしっかり進んでいくと。これは一時的な我慢をしていくことによって続けることではなくて、構造的に定着をさせていく財政再建プラン、歳出効率化プランになっていくというふうに思っております。
「予断なく検討」という点についてですが、実は当初、党のプランの中には、一見厳しいように見える目標、社会保障とか社会保障以外ではアローワンスを見ないということで一見厳しく見えるようになっていますけれども、実は、改革についての具体的な時期や実施の可能性も含めて、そこは「検討する」と。つまり、それをそのまま意地悪に読むと、改革を実施しない場合もあるというふうにとられてしまうわけであります。そのために、報道においても、骨抜き条項が入っていて、厳しいことを掲げながら、やるかやらないかはこれから検討するというようなとり方をされてしまっています。そうしますと、本気度が逆に問われるということになろうかと思います。そこで、その骨抜き条項と指摘されたことについては、きちんと決意が伝わるような書き方に変えたというところであります。
ただし、社会保障、それから社会保障以外について、経済・物価動向、つまり物価が上がっていく、賃金が上がっていく、それを全く無視するということは、改革の実現性を逆に疑われるということにもなります。そういう意味で、経済物価動向の変化はきちんとアローワンスとして織り込みながら、しかし改革は具体的な方途を項目別に示して、そしてそこが骨抜きだと言われないような、しっかりとした書きぶりにして、なおかつ今後実施体制についての組織をつくっていくということになるわけであります。


<社会保障分野における取組について>

(問)今の社会保障改革についてですけれども、検討項目が多いですが、2020年のPB黒字化に向けて最低限これだけはやらなければいけないという改革メニューがあったら教えてください。

(答)掲げてあるものは全部やっていきます。

(問)基本的には、もう全部やっていくという理解でいいですか。

(答)はい、全部トライしていきます。もちろん、やってみてむしろ効果がないとか、かえってマイナスになると。そういうことはやっていくうちに明らかになってくると思います。基本的には、トライをしないで最初からやらないということはありません。


<リニア中央新幹線に関する記述について>

(問)本文16ページ脚注で、広域高速ネットワーク、要はリニアについて、最初は「高規格幹線道路整備新幹線、リニア中央新幹線を含む広域交通ネットワーク」というふうに修文されていたものが、更に最終的には「リニアについて全幹法に基づき東京、大阪、建設主体が着実に整備が進められるよう、必要な連携協力を行う」と。どんどん書き足されていっていったイメージがあるのですが、この辺の経緯を御説明いただければありがたいと思います。

(答)リニアについて、全線やるということは最初から決まっていることであります。それについてタイムラグがあるのは、会社の事情でタイムラグがあると。しかし、これは大阪経済界からも、要するに東京一極集中を打破していくためには、少なくとも東京、それから関西圏が日本経済を担っていく必要があるということは、私にもかなり経済界から寄せられている課題です。そこのタイムラグが短ければ、そんなに支障はないのだけれども、長期にわたることによって、結局、東京一極集中が加速してしまって、逆にリニアをつくることによって一極集中が加速するのではないかという心配は経済界から来ております。
そこで、どこまでそのタイムラグについて詰めることができるかも、最初から決め打ちをしないと、経済の変化によって二極構造で日本を支えていくということに対してどういうことができるかということを、最初から東京一極集中に資するようなものということに決め打ちをしないということだというふうに思います。

(問)今、タイムラグを埋めるのに決め打ちはしないでということだったのですけれども、これは可能性としては、財政出動も含めて支えていくというか、そのタイムラグをなくしていくということも考えてよろしいのでしょうか。

(答)国とJR東海のスタンスは、基本的なスタンスを大きく変えるということではありません。


<成長戦略の受け止めについて>

(問)成長戦略についてお伺いします。骨太と成長戦略は表裏一体だと思うのですけれども、骨太の財政再建の前提も名目3%、実質2%の成長達成が前提となっていまして、それに関してなのですが、この成長戦略でこの名目3%、実質2%の成長が担保できるぐらいのものになっているかというところで、専門家に聞きますと若干、構造改革的要素が足りないのではないかとか、供給サイドの改革に焦点当てている割には規制改革なんかにちょっと力が足りないのではないかというような声もあるのですけれども、その辺どうお考えになっていらっしゃいますか。

(答)我々はやるべきことはどんどんやっていきたいというふうに思っております。その具体化を図る際にいろいろ各方面から御意見、提言等を頂戴したいと思います。
第1ステージが需給ギャップをなくして好循環を取り戻していく。人間の体で言えばデフレという病気から健康体を取り戻すということでありました。第2ステージは健康体を更に強靱な体躯にしていくということで、鍛え上げられた体躯にしていくということであります。これから供給制約、人口減少に向かっていくわけでありますけれども、労働市場に参画していない人に参画してもらうということはまずやるべきことでありますけれども、本来の生産性を上げていく、高付加価値産業にしていくということで経済自体の体躯を強靱にしていくということであります。
具体的な環境整備について、現在上がっている手法を通じていろいろ対応していきますけれども、その間でも新たな提言があれば、あるいは改革案などがあればどんどん取り入れていきたいと思っております。
秋にも投資を拡大していくための官民対話がスタートいたします。その中では政府として要請をする、あるいは経営側としてこういう規制緩和が必要だ、こういう環境整備が必要だ、そういう対話を通じて日本経済を強靱なものにしていくということでありますから、そこでもいろいろな現場からの提言は出てくると思っております。
それから、特区がどんどん進んでいきます。そういう中で、既に用意されたメニュー以外に特区から出てくるメニューも積極的に取り組んでいきたいと考えております。


<経済・財政一体改革の考え方について>

先ほどの一部マスコミに指摘をされていました、「骨抜き条項ではないか」という書き方は、当初、党の提言に「各種改革については実施の必要性も含め検討し」というところがありました。では、実施はしないのかということになると、どんな厳しい項目を掲げていてもやりませんということになってしまったら、これは正にマスコミの指摘のように、どんな立派なことを書いても、その最後に骨抜き条項が入っているじゃないかという指摘を受けてしまいます。そういう誤解がないように、そこはしっかりやっていくということが伝わるような書きぶりにさせていただきました。その上で、経済・物価や賃金の変動について全くアローワンスを見ないということは、むしろ実施の推進力を落としてしまうということもあろうかと思いますので、各項目でアローワンスは見ると、経済・物価動向の変動のアローワンスは見ると。しかし、いろいろ掲げた改革についてはしっかりとやっていくという、その両方を合わせて実現可能性を高くしたと。それで目的達成度合いも高くなったと思っております。

(以上)